ぬる燗と熱燗の温度の違い!日本酒の「燗」の温度の違いを解説

「ぬる燗」を気心の知れた仲間たちと一杯酌み交わして家路に着く、昔からある日本人サラリーマンの帰宅風景ですが、近年再び脚光を浴びている日本酒は国内はもちろん海外でも高い評価を得ています。気軽に日本酒が飲めるバーや日本酒を楽しむ野外イベントなるものも存在しているようです。今回は日本酒の「燗」の温度の違いに着目し「ぬる燗と熱燗の温度の違い!日本酒の「燗」の温度の違いを解説します。電子レンジでのおすすめの作り方やとびきり燗についても詳しく紹介しています。

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目次

  1. 1ぬる燗と熱燗の違いを知ってる?
  2. 2ぬる燗や熱燗の「燗」の意味
  3. 3ぬる燗の特徴
  4. 4ぬる燗と熱燗の違い
  5. 5ぬる燗の作り方
  6. 6ぬる燗など日本酒温度の違いや呼び名
  7. 7ぬる燗を上手に作って体の芯から温まろう

ぬる燗と熱燗の違いを知ってる?

日本酒といえば、幅広い温度で楽しむことができる世界的にみても珍しいお酒です。温めて飲むのも日本酒の醍醐味で、ひと昔前では中年のサラリーマンたちが嗜むものといったイメージがありましたが、現在では若い女性の間でも好んで飲まれるようになりました。

また海外でも日本酒の奥深さや味わいが徐々に浸透し、日本酒の良さが認められ人気があります。そんな日本酒ですが、温めた日本酒を指す言葉として「熱燗」以外にも「ぬる燗」などがあることを知っている方も多いと思います。しかし、熱燗は何となく熱くしたもので、ぬるくしたものはぬる燗と覚えてはいませんか?

実は、日本酒の温度を指す用語には、基準が定められています。そこで今回は日本酒の「燗」の温度の違いに着目し、ぬる燗と熱燗の温度の違い!日本酒の「燗」の温度の違いを解説します。実際に自宅の電子レンジや湯煎で簡単に作れるおすすめの「ぬる燗の作り方」も紹介するなど、満載にしてお届けします。
 

ぬる燗や熱燗の「燗」の意味

それでは最初に、日本酒でよく使われる言葉でぬる燗や熱燗などがありますが、これは酒を温める温度帯による呼び名ですが、その呼び名の最後はいつも「燗」で締めくくられています。これからこの燗の意味についてみていきましょう。

燗とは?

熱燗やぬる燗は日本酒を飲まない方でも何となく聞いたことがあると思いますが、そもそも「燗(かん)」とは酒に徳利を入れ、適度に温めること、またその加減のことを言います。一般的には「燗をつける」や「燗をみる」「お燗する」と言う使い方をします。また、温かい日本酒全般を指すには「燗酒(かんざけ)」という言葉を使います。

奈良時代に始まった燗の文化

酒を温めて食事中に飲む習慣は、世界中でみても中国の紹興酒くらいで、日本酒は世界に誇る日本の伝統文化です。燗酒の歴史はとても古くて奈良時代に始まったと言われています。そして平安時代には貴族社会に広まり、一般の民衆にも伝わるようになったのは江戸時代中期以降と考えらえています。

記録に残っている一番古いものは、万葉集の「貧窮問答歌」で、塩を舐めながら酒粕でお湯を溶いて暖をとることが庶民の間で行われていたようです。

少し下って平安時代の延喜式(927年)には、お酒を温めた鍋だとされる土こう鍋という文字があり、おそらく直接火にかける「直燗」用の鍋のようですが、どのような形をしていたのか不明ですが、この頃から酒を温めて飲んでいたのは確かなようです。

そして江戸中期ごろから一般の民衆にお燗を嗜む習慣が広まると、そのまま火にかけて燗がつけられる燗鍋や湯煎する1、2合入りの燗徳利も登場しました。燗酒の普及に一役買ったと思われるのが、福岡藩医で儒者の貝原益軒(1630~1714)の著書「養生訓」の影響だったようです。

この著書には「酒は冷飲も熱飲もよくない。胃腸をこわす。ぬる燗の方がいい」この言葉がたちまち広まり、燗をする道具や徳利にお猪口が出回り、日本酒は燗をして飲むのが常識となりました。

ぬる燗の特徴

お燗の酒の美味しさは温度で決まります。その温度によって呼び名が変わります。まずはぬる燗の意味や特徴について詳しく紹介します。

香りが残る

ぬる燗とは、40度に温めた温度帯のことです。徳利を持っても「熱い」と感じられない温度がぬる燗のベストな温度になります。この40度というのは、日本酒の香りがよく出て残る温度と考えられています。ふくらみ感が生まれ、特に純米酒におすすめです。

口当たりがいい

ぬる燗の味の特徴は、ほんのり温かくて飲みやすい温度なので、日本酒の香りもよく出て口当たりが良いです。飲んだ後も日本酒の香りが残り、ふくよかでまろやかさを感じます。料理ともよく合い、日本酒が初めての方でも挑戦できる温度なります。

冷や常温にはない味わい

日本酒は燗酒だけではなく、常温冷やで飲む方法ももちろんあります。常温15~20度のことで、口に含んだ時に冷たくないけれどぬるくもない温度を言います。常温と言っても気温と同じではなく、暑い夏の時期は冷やしたり、寒い時期は少し温めたりで微妙な温度調整が必要になります。

また、常温であっても栓を開けた後は冷蔵庫で保管します。常温に適している酒は本醸造酒や純米酒で、甘みや酸味、苦みのバランスがよく感じられます。次に冷や5~10度のことで、夏場に蕎麦を食べる時に一緒に飲むのがぴったりです。

冷やが適しているのは香りが華やかだったり、フルーティーであったりする吟醸酒です。冷やすことでキリっとした口当たりと爽やかな後味が残ります。また、口の中で酒が温まっていく別の心地よさも楽しませてくれます。

このように常温や冷やの特徴と良さを紹介しましたが、常温で飲むよりも少し温めることで甘みや酸味、苦みなどのバランスはぬる燗の方がより感じられたり、冷やは酒の種類によっては香りや味わいが固くなってしまいます。

甘みや旨みを感じられないこともある常温や冷やに対して、ぬる燗は程よく温めるのでそのようなことはなく、甘みや旨みがしっかりと感じられます。

体が温まる

燗酒の良さは飲むと体がポカポカと温まることです。冬の寒い時期に北風が吹き荒れる中、提灯のほんのりとした灯りを見ているとつい、のれんをくぐって熱燗で1杯飲んでから帰りたい気持ちも分かるような気がします。

では、ぬる燗はぬるい温度なので体は温まるのかと言うと、実はこの温度が口の中で酒が温まり、その心地よい1杯から飲み続けていくと気が付けば体中がポカポカと温まっていたということが多いようです。

向いている日本酒は?

ぬる燗に向いている日本酒を紹介します。ぬる燗にはしっかりした旨みや乳酸を持っている純米酒が向いていると言われています。米本来の柔らかな旨みと香りを思う存分引き出した純米酒です。冷やでも飲めますが、燗にするとさらに冴える飲み心地です。

穏やかで落ち着いた香りで、口に含むとふわっとしたやさしさとほのかな甘みが広がります。おすすめは「梅の宿 特別純米酒 (温)」です。1800mlで2,000円を切った手ごろな値段で購入できておすすめです。

次に旨みのある本醸造酒山廃造りの酒普通酒などでも楽しめることができます。基本的には生酒や吟醸酒は向いていませんが、それ以外ではほぼ合いますので、色んな日本酒で試してみましょう。

ぬる燗と熱燗の違い

ここからは、ぬる燗と熱燗の違いについて紹介します。ぬる燗も熱燗も酒の種類ではなく日本酒の飲み方の1つです。また何かを加えるのでもなく、あくまでも日本酒そのものの温度を温めたり、冷やしたりすることで、同じ酒でも違った風情を感じることができます。そんなぬる燗と熱燗の温度や味わいの違いについてみていきましょう。

温度

ぬる燗も熱燗も日本酒を温めて飲むところまでは同じですが、それぞれの違いは温度にあります。一般的には55~60度に温めたものを熱燗と呼び、40~45度に温めたものをぬる燗と呼びます。自宅で日本酒を楽しむ場合は、好みによって温度を調節する場合が多いようです。また、熱燗とぬる燗の間を上燗と呼びますが、こちらを好む方も多くいます。

燗の温度を60度以上に上げてしまうとせっかくの風味が損なわれてしまうので、注意が必要です。また、熱燗くらいの温度になるとお風呂の温度よりも熱くなりますので、火傷をしないように気を付けましょう。

味わい

日本酒は冷やすことで香りが華やかになり、飲み口がキリッとします。そして旨みが軽やかになり、アルコール感が少なく思う時があるので、日本酒初心者は冷酒からチャレンジする人が多いと聞きます。一方、温めることで香りが広がり、旨みがふくらみ甘みが広がってきます。このように、同じ酒でも温度によって全く違う香りや味わいになります。
 

Thumb熱燗の温度と温度別の呼び方とは?おいしい燗酒の作り方も解説! | お食事ウェブマガジン「グルメノート」

ぬる燗の作り方

次は、ぬる燗の作り方を紹介します。近頃では従来の湯煎での作り方の他に、電子レンジでの作り方があるなど、簡単で便利に作れるようになりました。では早速、湯煎と電子レンジ簡単な作り方を紹介します。

湯煎での作り方

湯煎を使ったぬる燗を紹介します。取っ手付きの鍋に水を入れて湯を沸かします。酒を注いだ徳利を湯の中にそっと入れて温めます。こちらは温度計を用いて酒の温度を計りながら正確に温められるので、手間はかかりますが理想的な温度に調整することができます。

作る上での注意点があります。ぬる燗を一定温度の40度になっているにもかかわらず、時間をかけて温めているとアルコール分が飛んでしまうことがあります。そのためさっと熱めの温度で温めてから取り出して少し冷ましてから飲むのが良いでしょう。

電子レンジでの作り方

電子レンジを使ったぬる燗の作り方を紹介します。現代らしい、最も手軽で簡単な方法です。酒を注いだ徳利にアルミホイルをかぶせて酒1合に対して500wの電子レンジで約45秒加熱します。熱燗を作りたい場合は60秒ほど加熱します。使用している電子レンジによって加熱時間は微妙に違うので、何度か試してみると良いでしょう。

ただし、電子レンジでの作り方は、温度を計りながら作ることができないので、加熱時間によってはあっという間に60度になってしまうこともあり、またそれ以上温めてしまうと風味を損ねてしまいますので、電子レンジの取り扱いには注意しましょう。

ぬる燗など日本酒温度の違いや呼び名

ここからは、ぬる燗など日本酒の温度の違いや呼び名について紹介します。同じ日本酒を使用した場合でもその温度の違いだけで呼び名が変わります。熱燗よりも熱い温度でつくるのがとびきり燗です。日本酒をこよなく愛し、辛口でアルコールに強い方はこのとびきり燗がおすすめです。

極寒の冬は、熱燗やとびきり燗で暖をとる日本酒党の方もいます。逆に夏は口当たりの良い涼冷え、花冷えを好んで飲む方も多くいます。このように温度別で日本酒の飲み方が楽しめるのも醍醐味です。では早速それぞれの呼び名や特徴をみてみましょう。

とびきり燗

とびきり燗は温度が55度以上にもなり、味わいが大きく変化して基本的に辛口になるので、日本酒の飲みなれている方や上級者の方にこのとびきり燗はおすすめです。日本酒の種類は本醸造酒や普通酒で作るのがおすすめです。徳利をそのまま持つと熱いと感じる方が多いので、火傷には十分に気を付けましょう。

とびきり燗を徳利ごと温めると酒が冷めにくく、繊細な香りを保つことができます。火加減や鍋、徳利の大きさにもよりますが、55度のとびきり燗を作る場合、小さい徳利で約2分半かかります。とびきり燗はアルコールを感じる辛口なので酒の強い方におすすめします。

熱燗/上燗/ぬる燗

次は熱燗上燗ぬる燗について紹介します。既に熱燗やぬる燗は紹介していますが、熱燗(あっかん)はとびきり燗の次に温度が高く、50度になります。日本酒に理解がある店ではこの温度で提供されています。香りや味ともにシャープな味わいです。純米酒、普通酒、本醸造がおすすめです。

次に上燗(じょうかん)45度くらいで、香りや味が引き締まり、ふくらみが出ます。主に純米酒がおすすめです。次はぬる燗40度くらいになります。徳利を持っても熱いとは感じません。ふくらみ感があり、おすすめな日本酒は純米酒になります。

人肌燗/日向燗/常温

次は人肌燗日向燗常温について紹介します。人肌燗(ひとはだかん)35度くらいで、その名の通り人の体温と同じになります。米本来の旨みを感じやすくなります。次に日向燗(ひなたかん)30度くらいで、温かくも冷たくも感じない温度になり、なめらかな味わいです。ちなみに、日向燗あたりからお燗に分類されます。

常温(じょうおん)20度くらいになり、香りや味はまろやかになります。古酒や熟成タイプの日本酒は冷やしすぎないのがおすすめです。

涼冷え/花冷え/雪冷え

次に、涼冷え花冷え雪冷えについて紹介します。涼冷え(すずひえ)15度くらいになり、冷蔵庫から出して15~20分経った頃の温度になります。華やかな香りを感じやすく、純米大吟醸や大吟醸がなどがおすすめです。次に花冷え(はなびえ)10度くらいで、冷蔵庫から出して数分くらいの温度になります。

香りや味は小さくなり、爽やかなな味わいです。次は雪冷え(ゆきびえ)で温度はほぼ5度になり、冷蔵庫の冷蔵室とほぼ同程度の温度です。香りや味ともに閉じた印象になります。

ぬる燗を上手に作って体の芯から温まろう

今回は、ぬる燗と熱燗の温度の違い!日本酒の「燗」の温度の違いを解説してきました。日本酒は世界中を見ても燗で飲む日本酒は珍しく伝統的な日本文化で、日本酒の温度の違いで呼び名が変わることも分かりました。温度の高いとびきり燗から一番低い雪冷えまで、温度だけで香りや味わいが変わる奥深さについて知ることができました。

作り方は湯煎の他、現代では電子レンジで手軽に温めて作る方法もあることが分かり、コツをつかめば電子レンジの方が手間いらずです。温かい酒には温かい煮魚や煮物、冷たい酒には冷たいおつまみがよく合います。皆さんもぬる燗を上手に作って体の芯から温まり、日本酒の奥深さや味わいを楽しんで下さい。

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