2018年06月16日公開
2024年07月16日更新
日本酒の保存方法と保存期間は?温度や開封後の保存法も解説!
日本酒の保存方法と聞くと、「発酵させたものだから、そんなに気にしなくていいのでは?」と思う人が多いでしょう。確かに発酵させて作っているものですから、元から腐っているのにそれほど気を払う必要はないともいえます。ただ、いくら発酵させているといっても、やはり保存方法には注意を払った方が「美味しく」飲むことができますし、非常識な保存方法では品質の劣化を招く結果にもなります。また、一口に日本酒といっても色んな種類があり、その種類ごとに適した保存方法があります。ここではそれらについて詳しく説明していきます。
目次
保存方法の前に日本の伝統文化である「日本酒」について
日本の歴史と共に歩んだ日本酒
日本酒は誰もが知っているように、稲作文化である日本で生まれた奇跡のお酒です。豊かな自然環境の中で育まれた美味しいお米や米麹、新鮮で清冽な水などを使って作られています。文献上、奈良時代から平安時代にかけて酒づくりの製法が発見、次第に洗練された後、確立されていったようです。日本神話の中にも、スサノオノミコトがヤマタノオロチを退治するとき、「八塩折之酒」を飲ませて酔わせたという記述があります。
日本酒の独特で高度な製造技術
日本酒の製造技術は独特です。お米の糖化や発酵を同時並行的に行う「並行複発酵」「三段仕込み」という製法は、アルコール度数を約20度という高度な状態にまで導くことができます。この糖化と発酵のバランス操作が職人としての腕の見せ所です。また、しぼったばかりの日本酒を65度まで加熱する「火入れ」という製法は、殺菌効果と同時に酵素の働きが止まり、香味が増してさらに美味しくなる効果をもたらしてくれます。
日本酒の需要は昔と比べて減少
日本文化の歴史と伝統が誇る日本酒ですが、残念なことに、その需要は減少の一途を辿って来ました。その原因はビールやワイン、ウイスキーに焼酎などといった日本酒以外の種類のお酒が増えたからなのと、食の洋食化とともに、日本酒が次第に飲まれなくなっていったからというのがあります。せっかくの日本酒もこうなっては台無しなので、酒好きな人は和食の良さも見直し、日本酒をしっかり買い支えていく必要があります。
日本酒に賞味期限の表示なし
砂糖や塩などと同様
保存方法に入る前の大前提として、日本酒には賞味期限の表示をしないでよいということが食品衛生法で決められています。賞味期限の表示義務がないものには他にも砂糖や塩などがあります。これらはとても劣化しにくくて、長期に渡る保存が可能なため、別に表示する必要がないのです。ただし、日本酒の場合は製造年月日が表示されていて、このおかげで作られてからどれくらいの期間が経過したのかが分かるため便利です。
保存方法によっては劣化する速度が速まる
賞味期限の表示がないからといって杜撰な方法による保存をしていると、品質の劣化速度が速まります。砂糖や塩に水分が含まれた状態で放置しているとカビが生えるのと同様、日本酒も保存状態が悪ければ菌が繁殖することもあり得ます。その点にだけ注意してより良い保存方法を選択することができれば、劣化速度が遅くなり、また熟成が進んで美味しさが増すケースさえ生じる可能性が高まります。
日本酒の種類による保存期間の大まかな目安
加熱処理を2回行い加水調整した日本酒なら1年程度の保存期間
「火入れ」という加熱処理を行った日本酒では、酒を酸化させて臭みを発生させる「火落ち菌」と呼ばれる乳酸菌の一種が殺菌された状態になっています。そのため品質保持期間が長くなり、正しい保存方法でだいたい1年ぐらいは美味しい状態を保つことができます。この加熱処理は貯蔵する前と出荷する直前の計2回、念入りに行っています。そしてアルコール度数を低くするために加水調整をしたものが「通常の日本酒」になります。
火入れしてない「生酒」なら半年程度の保存期間
日本酒には火入れを全くしていない種類のものもあり、これが「生酒」と呼ばれるものです。加熱処理していない生酒には火落ち菌が生きていますので、品質の劣化スピードがどうしても速くなっていまします。そのため美味しさを保てる保存期間は正しい保存方法で半年程度ということになります。しかし火入れをしていないということは、そのぶん日本酒の新鮮さを「そのまま」味わうことができますので、この点が魅力的です。
加熱処理1回だけの「生詰酒」や「生貯蔵酒」は10ヶ月程度
「生」と付く日本酒には他にも「生詰酒」や「生貯蔵酒」があります。前者の生詰酒は貯蔵する前に火入れを1回だけ行い、後者の生貯蔵酒は出荷する直後に火入れを1回だけ行っています。これはフレッシュさと保存性を両立することに配慮した日本酒で、正しく保存した場合での保存期間は10ヶ月程度になります。両者の中間という中途半端といえば中途半端な存在ですが、それぞれの良いとこ取りをした都合のいい日本酒になります。
アルコール度数の高い「原酒」なら2~3年程度の保存期間
火入れを2回した日本酒の中には、加水調整をしていない「原酒」というものがあります。この原酒は水を加えてアルコール度数を12度から16度ぐらいの飲みやすいレベルにまで調整をしていないため、20度程度のアルコール分が存在します。この高いアルコール分のおかげで大きな殺菌効果が得られ、美味しさを維持できる保存期間も2年から3年と長くなっています。その代わり高いアルコールが苦手な人にはおすすめできません。
日本酒を保存する上で注意点は「光」と「温度」と「空気」!
光に当たることで成分が変化するため「暗い場所」で保存
日本酒に限った話ではありませんが、干物や干し柿など一部の食べ物を除き、多くの食料や飲み物などは太陽光や蛍光灯などの光を浴びることで、その品質の劣化スピードが急激に速まります。これは日本酒の液中に含まれる成分に光が当たることで、その成分に変化が生るためです。そうすると劣化した臭気を発し出し、とても口を付けて飲めなくなります。光に当たるとどんなに良い日本酒でも保存期間が大幅に短くなってしまうのです。
温度が高いと腐敗しやすくなるので「涼しい場所」で保存
いくら日本酒に殺菌効果の高いアルコールが含まれているといっても、やはり温度の高い場所では菌が繁殖しやすくなります。そうなると腐敗が進行し、酸い味や臭いがし始めます。これも日本酒に限らず多くの食品や飲み物でも言えることですが、温度が高いところでの保存は劣化速度を上昇させます。そうなるとあっという間に保存期間が短くなってしまいますので、日本酒の保存の際は温度管理にも十分に注意しなければいけません。
空気に触れ続ければ酸化するので開封後の「閉め忘れ」に注意
日本酒には賞味期限がありません。が、「飲み頃」はあります。
— 鷹ノ目(ホークアイ) (@hawkeye_sake) November 21, 2019
まだ飲み頃じゃないなと感じたときは、正しく保存すれば日本酒が熟成し、より美味しく飲めます!
日本酒の敵は「日光・空気・高温」です。
せっかく手に入れた日本酒は最も美味しい状態で飲みたいですよね🍶https://t.co/mjYi6J4DXv
食品は空気に触れ続けることで酸化という現象が起こります。これは鉄が酸化して錆びたり、活性酸素によって人体の細胞が酸化して傷つき、老化が早まったりするのと同じようなものです。日本酒も同様で、空気に触れれば酸化を起こし、味わいが少しずつ悪くなっていきます。よって開封後の管理が重要になり、フタの閉め忘れには十分に注意しましょう。しかし少しぐらいの酸化でしたら日本酒の美味しさが増すケースもあります。
日本酒の具体的な保存方法
20℃位までの常温の冷暗所にて保存する
先に紹介した火入れを2回きちんと行った通常の日本酒(原酒も含む)は、常温の冷暗所にて保管するという保存方法で十分です。常温の冷暗所というのは20℃ぐらいの薄暗い場所のことです。どうしても明るくて容器が透明に近い場合は、新聞紙や広告、箱などで包んで遮光しても良いでしょう。光や温度変化が少ない場所では日本酒の熟成が促され、美味しさが増します。そして品質が長期に保たれるため、安心して放置が可能です。
冷蔵庫で保存する
おとうしゃんが飲み干すたお酒
— POKA (@KerokeroPeroko) November 23, 2019
宮城県村田町、大沼酒造店さんの純米吟醸原酒、乾坤一(けんこんいち)おとうしゃんがいぢばん好きな酒蔵さんなんですよ。1回火入れの生酒なので要冷蔵保存。アルコール分17度。精米歩合50%日本酒度+14~15超辛口だけど火入れのとは違うなめらかさがべりぐっ!! pic.twitter.com/odLuR2hhhJ
火入れを1回しかしていない生詰酒や生貯蔵酒、火入れを全くしていない生酒などは、すべからく冷蔵庫にて保存しましょう。これらのお酒は新鮮な味わいを楽しむことができますが、それだけに冷蔵保存しなければ品質を維持できません。冷蔵庫の温度は2℃から7℃位までの範囲であり、これは冬場の温度と同じ位のものです。したがって冬は室内で保管しても良いということになりますが、温度変化の激しい暖房のある部屋は厳禁です。
基本的に冷蔵保存した方が無難
暑い夏場は冷蔵保存
【定期】世界中のありとあらゆるお酒が飲めるMilkcafe。
— milkcafe (@milkcafe1) November 25, 2019
もちろん日本酒だって冷蔵保管でこんなに。(季節で入れ替わります。)
HP https://t.co/vVh83wHXFwpic.twitter.com/PP3XUorDPJpic.twitter.com/bQQj9Pw9jC
20℃ぐらいまでの常温を大きく超えるような夏場は、全ての日本酒を冷蔵庫にて保存した方が無難です。夏場の室内は30℃を優に超えます。しかも冷房を効かせれば一時的には温度が下がりますが、冷房を1日中稼動させるわけにはいきませんし、つけたり消したりすれば温度変化も激しくなります。よって、うだるような暑さになる夏季のおいては、火入れの有無に関係なく全ての日本酒は冷蔵保存が望ましいといえます。
開封後も冷蔵保存
出典: https://latte.la
全ての日本酒で冷蔵保存をした方が良いもう一つのケースは開封後です。開封後はやはり空気に触れて酸化が始まります。埃や汚れが入るケースも考えられ、それが原因で菌が繁殖することもあるでしょう。火入れを念入りに行った日本酒でも開封後は品質の劣化が進みやすくなるため、少し酸化させて旨味を醸したいという以外では速やかに冷蔵庫へ入れた方が無難です。そうすることで開封後の劣化速度を大幅に遅らせることができます。
正しい保存方法で美味しい日本酒をさらに美味しく飲もう!
これまで見て来たように、日本酒を正しい方法で保存した場合、その保存期間はとても長いことが分かりました。殺菌作用のあるアルコールを含んだ飲み物なので当たり前といえば当たり前ですが、それでも保存状態が悪ければ、せっかくの美味しいお酒も短期間のうちに不味くなってしまいます。日本の歴史と伝統あるお酒の味を舌の上で心ゆくまで味わうため、保存方法には十分に気を配りましょう。そうすれば満足度が高くなります。