ポートエレン蒸留所が復活?幻のウイスキーと呼ばれる味の評価まとめ

ポートエレン蒸留所の再稼動が発表されて、「スコッチの聖地」と呼ばれるアイラ島が世界中のスコッチファンの注目を再び集めています。蒸留所が1983年に完全に閉鎖された後もすでに樽詰めされたウイスキーは大切に管理され続け、蒸留所の名を冠しポートエレンとして度々少量ずつ売りに出されてきました。幻のウイスキーと呼ばれ多くのファンを魅了するその味が復活するというのは本当なのでしょうか?その味の評価とともに調べてまとめてみました。

ポートエレン蒸留所が復活?幻のウイスキーと呼ばれる味の評価まとめのイメージ

目次

  1. 1ポートエレンは幻のウィスキー
  2. 2ポートエレンの味わいなどの評価
  3. 3ポートエレン蒸留所が復活するのは本当?
  4. 4ポートエレン蒸留所の再稼働が待ち遠しい

ポートエレンは幻のウィスキー

ポートエレンは幻のウイスキーと呼ばれているだけでなく、愛好家の間ではコレクターアイテムとしても珍重されている銘柄でもあります。そこまで特別扱いされる銘柄とは一体どんなウイスキーなのでしょうか?ポートエレンについてまとめてみました。

スコッチウイスキーの一つ

ポートエレンはスコッチウイスキーの6大生産地の中でもスコッチの聖地と呼ばれているアイラ島の、ポートエレン蒸留所で醸造されていたシングルモルトウイスキーのひとつです。アイラ島の南部の港町にある町の名前を採った蒸留所で作られていたこの銘柄は蒸留所の名を冠して売られてきました。

大麦麦芽のみを使って単一の蒸留所で作られたシングルモルトウイスキーの銘柄であり、スモーキーでとても個性的なアイラウイスキーと呼ばれる銘柄でもあります。このアイラ島の銘柄の特徴こそこの個性の強さであり、「好きか嫌いかどちらか。中途半端はない。」と地元の蒸留所所長の口癖にもなっているほどです。

ファンは華やかで繊細な香りと味わいと表現するのに対して、苦手な人は薬臭くてヨードチンキのような臭いの正露丸みたいな味などと表現します。そんな銘柄の中でもその品質の高さで多くのファンに愛され支持されてきた銘柄のひとつがポートエレンです。

1983年にポートエレン蒸溜所が閉鎖

ポートエレン蒸留所の名は建てられた港町から付けられ、1825年に創業してから100年以上にわたってその品質の高さから多くのファンの支持を受けてきました。ですがそんな醸造所でありながら1929年に操業を停止してしまいます。その後1967年に拡張工事を行って再操業を開始したものの1983年5月に再び閉鎖してしまいました。

閉鎖の理由として考えられるのがカクテルの流行の変化です。ちょうどこのころはアルコール度数が低くフルーティなカクテルが流行し、そんなカクテルに合うリキュールやスピリッツが売り上げを伸ばした時期でした。そんな中ウイスキーは売り上げが大幅に落ち込んでしまい生産調整が求められたのです。

そんなときに当時の蒸留所の保有会社だったUDV(ユナイテッド・ディスティラーズ&ヴィントナーズ)社がアイラ島に持っていた2つの蒸留所のうちのひとつを閉鎖したのです。それがポートエレン蒸留所だったのです。閉鎖後は他の蒸留所で使う麦芽だけを専用に作るモルトスターとして操業を続けています。

閉鎖後も残った原酒で製造されてきた

ポートエレン蒸留所が閉鎖されたとき先に樽詰めにされた原酒が残っていました。そのため閉鎖後も厳重に管理された原酒をいくつかの会社がボトリングして、「ポートエレン」として度々売りに出されました。シグナトリー社、ダグラス・マックビボン社、ゴードン&マクファイル社など、商品名こそ同じもののボトルやラベルは異なります。

現在蒸留所とその原酒を所有しているのはギネス社とグランドメトロポリタン社が合併してできたディアジオ(Diageo plc)社です。日本法人としてはMHD(モエ ヘネシー ディアジオ)社として数量限定の「ディアジオ スペシャルリリース」として数回発売しています。

2018年5月には「ポートエレン37年」が発売されました。1979年に蒸留・樽詰めされた後37年間熟成されたものを700ml入りボトルを2,988本の限定販売したもので、その価格は驚きの46万円だったといいます。いまだに日本でも愛されている銘柄であることが良くわかります。

ポートエレンの味わいなどの評価

ポートエレンは残量に限りがあることと熟成年数が延びていくことからその価値は年々高まっています。閉鎖前からその品質の評価は高かったものの実際にその香りや風味はどうなのでしょうか?口コミを交えて紹介します。

色と香り

ポートエレンを始めシングルモルトウイスキーは大麦麦芽を使い単一蒸留所で作られることは紹介した通りですが、熟成に使われる樽は何も1種類ではありません。蒸留所でもアメリカンオークの樽とヨーロピアンオークの樽を使い、さらにその樽での仕込みが何度目かでもその色や風味は変わってきます。

出荷の際にも誰がどの樽のものを調合するかで色も香りも変わってくるため一概には言えません。そのため色は琥珀色を基本としますがその色の濃さにも差があります。18年物として売りに出されたものは濃い琥珀色と評され、17年物は明るい金色のような琥珀色をしています。

アイラウイスキーは麦芽を乾燥させるときに泥炭を使うことから、そのときの香りがウイスキーにも残りスモーキーでピーティな香りがすると評されます。ポートエレンも王道をいっているもののフルーティで甘い香りと評されることもあります。一方でアイラの中では中庸と評されることもあり好みの分かれる香りをしています

味と余韻

ポートエレンは過去にも幾度となく限定品として販売されてきましたが、配合を行ったマスターディスティラー(蒸留責任者)によって味に違いがあります。ですが一般的にはオイリーでスパイシー、モルティでピーティさもあり、甘さと塩気とフルーティさが同居する複雑でアイラモルトらしい特徴を持っているとされています。

余韻は元の味わいそのままにフルーティでスパイシー、ピーティではっきりとした塩味がありますが、絶妙なバランスが最後まで続きます。水割りにすると印象はソフトになりますが、アイラモルトらしい複雑でスパイシーな風味はぶれることなく残り続けます。

口コミ

ポートエレンはその値段に驚く声が多い一方でその味を讃える声もまた多く見られます。さすが幻といわれるだけあってその味の評価はみな一様に高く、飲めるものならまた飲みたいという声も多く見られます。若いときにはわからなかったものの、年を重ねて良さがわかるようになったという声もありました。

ただし専門家や取り扱い業者の中ではポートエレンの味の評価は、アイラウイスキーが好きな人の間でも分かれています。アイラモルトらしい塩分もヨード臭もピート感も大人しいものの、熟成の極みに達したことでアイラモルトらしさはよりバランスが良くなりエレガントで心地良いと絶賛する声があります。

一方でボトリングした会社がどこかで、せっかくの個性が強かったり弱かったりして味わいにばらつきがあるという業者もあります。この他にもアイラモルトとしては中庸でやや個性に乏しく際立つものがないため、閉鎖蒸留所に対するノスタルジーから過大評価されているという声もあり、評価の高さは人それぞれのようです。

ポートエレン蒸留所が復活するのは本当?

ポートエレンは蒸留所の閉鎖後もアイラモルトらしさを感じられる優れた銘柄として根強い人気があります。そんな銘酒を長年造ってきたものの閉鎖された蒸留所が復活するという話が、2017年に原酒の所有者であるディアジオから発表されたのです。

蒸留所は果たして本当に復活するのでしょうか?ポートエレン復活に向けたディアジオ社の活動やその背景、今後の予定などを調べてまとめてみました。

ディアジオが再稼働を発表

ポートエレン蒸留所の現所有者であるディアジオから2017年に蒸留所の再稼動が発表されました。スコッチウイスキーはスコットランドの貴重な輸出産業であると同時に世界中から観光客を集める観光資源でもあるため、スコッチの名品を復活させようというのです。

ディアジオが生産するスコッチウイスキーの85%が海外に輸出されていることからもわかるように、スコットランドにとってスコッチは重要な輸出品です。スコッチウイスキーが再び世界的に評判が高まったためウイスキー・ツーリズムも確かなものとなっています

このことを裏付けるようにディアジオはスコッチウイスキーの蒸留所を12ヵ所所有していますが、2016年7月~17年6月の1年間で訪問者数が始めて40万人を超えました。発表のあった2017年までの8年間の観光者数は実に2倍以上に増加しているだけでなく、10年間にわたって増加が続いているのです。

ディアジオは再開予定の蒸留所に来訪者の歓迎用にビジターセンターを開設する予定で、今後もさらにスコットランドへの観光客増加が期待されています。スコットランド観光の象徴的な名所のひとつとして、世界中から「ウイスキー巡礼者」の脚光を浴びることでしょう。

2021年には再稼働の予定

ポートエレン蒸留所は現在はモルト製造のみの稼動のため、蒸留器が取り外されていたり建物自体もかなり傷んでいるといいます。さらにすでに製造許可も失っていることから、今後は再稼動計画の許可と規制当局の承認といった法的問題の解決や醸造所の詳細な設計や再施工を行い、さらに設備の試運転を経て2021年までに再稼動の予定です。

ただし再稼動してもウイスキーには熟成が必要なことや設備の刷新もあり、蒸留所の閉鎖前の蒸留法や樽での熟成方式などの特徴を可能な限り再現するとしているものの、市場に出てくるまでにはまだまだ時間がかかります。ポートエレンの完全な復活には乗り越えるべき壁がまだいくつも残っているのです。

閉鎖の歴史に名を残す「ポートエレン39年」

「ポートエレン39年」の販売が今年2019年4月23日に世界限定1500本で開始されました。マスターディスティラーが唯一無二のポートエレンをテーマに、貯蔵樽の中でもアメリカンオーク樽とヨーロピアンオーク樽のリフィル樽(すでに熟成過程を経験したことのある樽)を厳選して熟成させた原酒です。

輝く金色の琥珀色とわずかな刺激のあるピーティな香りに始まるフルーティで複雑な香りが特徴で、舌触りの滑らかさと甘さに塩気、そしてスモーキーでスパイシーな複雑で絶妙な味わいをしているといいます。蒸留所閉鎖前の歴史を知る機会の最後のひとつとして特別な1本といえます。

ポートエレン蒸留所の再稼働が待ち遠しい

ポートエレン蒸留所が再稼動を開始してもその名を冠した銘酒が出てくるのはまだまだ先になります。再びその名が店頭に並ぶようになる日が1日でも早く来ることを多くのファンが待ち望んでいます。無事再稼動を果たし復活する日が待ち遠しいものです。

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