人参の育て方と栽培のコツを解説！秋蒔きや水やりの基礎【初心者必見】

煮物料理には欠かせない食材の一つに人参があります。独特で固めの食感が特徴な人参ですが、栄養素も豊富で子供にも食べてもらいたい食品です。人参を家庭菜園で育てることも可能です。人参の栽培は難易度が高く、初心者には難しいと考えられがちですが、コツをつかめば、初心者でも上手に人参を栽培できます。人参の栽培方法や種類は複数存在する為、どの栽培方法が最も適しているのかなどを見極める必要もあります。

人参はせり科の野菜で、ヒマラヤ山脈の麓のアフガニスタンなどが原産地となっています。原産地から東西に分かれ、日本には細長い人参が最初に到来しましたが、今では西洋系の人参の栽培がほとんどです。西洋系の人参は甘みがあり、比較的柔らかいのが特徴です。中には金時人参など京料理などで使用される高級人参も存在します。難易度の高い人参栽培を初心者でも可能な育て方とそのコツを紹介します。

人参の栽培時期は春に種まきをして夏から秋までに収穫する春蒔き栽培と、夏の終わりに種まきをして晩秋までに収穫を行う夏蒔きが一般的な方法です。農家が市場に出すために生産している栽培方法はどちらかになります。人参の発芽の適正な温度や、環境などによって栽培時期は使い分けます。しかしこれ以外にも人参の栽培時期が存在します。それは秋蒔きです。9月初旬に種まき、収穫は11月から2月頃に行う栽培方法です。

北海道や東北地方などは、春蒔きがメインです。夏でも比較的寒冷である事と、冬は早く寒くなる為、人参の生育に適した環境はごく限られた時間になるため、これ以外の選択肢はないのです。しかし関東から西日本では、夏蒔きをメインで行っています。7月から8月に種まきしてその年のうちに収穫まで完了させます。日本全国でまんべんなく生産されているため、常に旬の人参が市場に出回る特徴があります。

人参の日本での生産は各地で行われていますが、生産量第一位は北海道です。国内生産量の30パーセントを占めています。人参は暑いよりは涼しい気候を好むため、北海道の夏の涼しさは栽培環境にはとても適しています。二位に千葉県、三位に徳島県と続きます。千葉県や徳島県では夏蒔きが中心です。以下、どの県や地域でも少なからず人参を栽培しています。一方輸入もしており中国が一番の輸入先です。

野菜ジュースや野菜サラダなどに欠かせない存在となっているのが人参です。ウサギも大好きな人参には多くの栄養素が含まれています。人参に最も含まれている栄養素はカロテンです。カロテンを意図的に摂取することを目的としたサプリメントも発売されているほど、カロテンは健康に好影響を与える栄養素です。緑黄色野菜の一つである人参は、健康上欠かせない栄養補給源として利用されています。

カロテンには免疫力を向上させる効果があります。風をひきにくくなる、インフルエンザにかかりにくくなるなどの効果があります。抗がん作用にも効果があります。抗酸化作用が働くためです。カロテンには血圧を低下させる働きもあります。毎日摂取し続けることで生活習慣病の予防や細菌感染の予防に大きな効果をもたらします。カロテンは熱を加えたほうがより効果的になります。そのため生より煮物の方が効果的に摂取できます。

カロテンは人参の皮に特に多く含まれています。料理の時には皮をむくのが基本ですが、できれば皮をむかずに調理するのがおすすめです。毎日人参を摂取することは難しい人には人参が多く含まれている野菜ジュースなどがおすすめです。皮ごとジュースに加工しているため、カロテンの摂取量が多くなります。ジュースが苦手な人ははちみつを混ぜると口当たりがよくなるため、試してみてください。

人参の育て方ですが、基本の栽培方法は他の野菜と同じです。しかし種から発芽させるのがとても難しい野菜であることが人参の特徴でもあります。発芽させることに成功すれば、あとは収穫を待つだけといわれるほど、発芽させることが難しいのです。どの野菜も発芽が難しいのですが、人参が特にその傾向があります。人参の発芽するための適正温度は15度から25度、生育適正温度は18度から22度です。

人参の栽培期間は短くても90日前後、長ければ120日前後かかります。3ヵ月から4ヶ月かかりますが、適正温度はほぼ一定なのです。日本は四季がありますが、4ヶ月の間気温が変化しない時期はありません。10度以上温度差があるのが一般的です。発芽と成長どちらを優先させるかといえば成長です。成長期に適温でないと大きな実が育たず、収穫に影響を及ぼすためです。そのため発芽におけるタイミングは適温にならないのです。

人参の種まきから発芽において、適正温度でないことが発芽させる難しさの要因です。発芽させる時期が適温より寒い場合には、防寒対策でしのげますが、暑い場合には、水などを利用して発芽させるように工夫しなければならないのです。そのため春蒔きでも夏蒔きでも人参の育て方は難しいとされています。しかし秋蒔きは異なります。発芽時期を適温に設定した時期の栽培である為、発芽の難しさが軽減できます。

人参は発芽までの育て方が最も難しい野菜です。そして土を常に湿った状態に保つ水やりが必要です。発芽までの10日から二週間程度は一日数回の水やりが欠かせません。他の野菜がやや乾燥状態でも育つのに対して人参は乾燥状態は発芽しなくなるほど水やりが欠かせない野菜です。そのため水やりの手間暇がかかることを認識しておかなければなりません。

家庭菜園や初心者におすすめな栽培方法は秋蒔きです。しかし秋蒔きの場合、収穫時期は真冬になってしまいます。沖縄を除く日本では真冬の温度はかなり低く、人参の成長が止まってしまう気温です。そのため通常の人参栽培はできません。家庭菜園や初心者におすすめなミニ人参であれば可能です。根が小さく、収穫までの時期も短いからです。夏蒔きと同じ11月末までの収穫が可能になります。

人参は温度管理がシビアで12度を下回ると根の着色が悪くなります。そのため発芽までの時期は12度以下にならないことが最低条件です。また気温が2度以下になると成長が完全に停止してしまいます。寒くなる前に収穫まで済ませることが必要です。さらに温度が高い場合はとう立ちします。発芽までの時期に温度が高すぎると種が腐ってしまいます。その年の気候状況に合わせて種まき時期をシビアに計算することが必要です。

基本事項を理解したら、次は人参の栽培のための用品の準備です。家庭菜園は畑や庭で栽培する方法とプランターで栽培する方法があります。大きな人参を育てるのであれば、畑や庭などしっかりとしたスペースを確保することができる環境がおすすめです。しかし春蒔きや夏蒔きが必要になるため、初心者には難しい育て方です。プランターで通常サイズに人参を育てることはおすすめできません。プランターに対して大きすぎます。

プランターで育てるのに適しているのはミニ人参です。サイズも手ごろであるため、市販されているプランターで育てることができます。また、畑や庭でもミニ人参を育てることで秋蒔きを可能にするため初心者にはおすすめです。ミニ人参を育てるためのプランターサイズは一般的に市販している60センチ程度のもので十分です。ただし深さが確保できるプランターがおすすめです。

野菜の栽培で気を付けなければならないのが連作障害です。毎年同じ作物を栽培すると病気になりやすくなります。期間は作物によって異なります。スイカやえんどう豆など5年は同じ土地で栽培できないといった作物も存在します。人参は野菜の中では珍しく連作障害はありません。次の年にも同じ土地で人参を栽培することができます。しかし土は確実に酸性になるため、アルカリ性に変換させたり栄養の補給などは必須です。

人参の栽培には適した土づくりをしなければなりません。発芽が順調に行われることと、成長を良くすること、そして病気になりにくくするためには土づくりが関わります。人参が好む土壌のphは5.5～6.5です。ph7が中性ですので、やや酸性よりの土壌を好むのが人参です。作物を一度作成するとかなり酸性よりになります。そのため、全く土壌整備をしなくても良いわけではありません。

土壌を整備するには種まきの最低でも一ヶ月前には石灰を撒いて酸性度合いを弱めることが必要です。また土は保水性と排水性が良いものを利用します。人参はまっすぐ地中下に根が伸びるため、耕土は深くしておくことが必要です。ミニ人参であっても構造は同じであるため、深さは確保しておく必要があります。石灰を撒いた後、たい肥を入れて栄養分を増強します。

プランターで栽培する場合には、園芸店やホームセンターで販売されている野菜栽培用の土を購入するのがおすすめです。野菜栽培に適した栄養素やphなどを管理された土なので初心者には馴染みがない土づくりに悩む必要がありません。庭や畑でも販売されている土を利用すると失敗しにくくなります。また、連作可能であっても昨年の土を使わず、毎年新しい土を購入することが栽培を順調にするコツです。

プランターの場合、水はけをよくするための工夫をすることがコツです。プランターに土を入れる前に軽石や目の粗い石を底部に敷き詰めると水はけがよくなります。最近のプランターはすでにこのような仕組みを取り入れた二重底になっているプランターもあります。排水性が悪いと人参の生育に影響を及ぼします。地植えの場合も、耕土の最深部に石を敷くと効果的ですが、石の層を厚くしておくのがポイントです。

人参の種は園芸店やホームセンターで販売されているものを購入します。通常の西洋人参から東洋品種である金時人参やミニ人参など種類は豊富です。初心者でも育てやすいミニ人参を選びますが、最近は発芽しやすいように改良や工夫された品種が多くなっています。種子パッケージの注意書きに書かれている種まきの時期や発芽のしやすさなどを確認しておすすめの品種を選ぶのがコツです。複数種を同時栽培する事もOKです。

人参は苗の植え替えができない野菜です。種まきから発芽までが難しい野菜の栽培において、初心者は苗を購入してきて植え付ける方法で栽培方法を簡単にする育て方がありますが、人参はそれができません。あくまでも種から栽培する必要があります。まず種を植える前にたっぷりと土に水をまきます。種は1センチ間隔で約1センチの穴を棒で掘って種を入れていきます。地植えする際の条間は20センチから30センチです。

種はコーティングされているベレット種などを利用すると便利です。人参の種はとても小さいため細かい作業です。一粒ずつ丁寧に蒔きます。種をまいた後は軽く土をかぶせます。土をかぶせる量が多いと、発芽しなくなってしまうケースもあるため、土のかぶせる量に注意します。かぶせた土を上から軽く押さえてあげます。水やりが頻繁に発生しますが、種が水に流れ出ないようにする工夫です。

種まきをする前日に種を水につけておくと発芽率を高めることができます。つけすぎると腐ってしまうため、24時間が限界です。また、種まきは晴天時に行うことがコツです。発芽するまでは、水やりの連続です。乾燥は人参の発芽を妨げます。そのため乾燥しないように頻繁に水やりを行います。そして水やり後は乾燥しないようにマルチを敷いておくのがベストです。マルチは透明な素材を使用します。

人参は好光性の植物です。日光を浴びないと発芽しません。日光が育てるといっても過言ではないのです。日光を浴びる量によって発芽までのタイミングも異なります。夏蒔きの人参は日光の量が一番多い時期の種まきであるため、発芽までの成長が一番早いのです。秋蒔きは日光の量が少なくなっているため、発芽までの時間がかかる可能性もあります。発芽するまで辛抱することも必要です。

乾燥防止のマルチを透明にするのも日光を遮らないようにするためです。新聞紙などでも乾燥防止の代用になりますが、完全に日光を遮ることになるため、おすすめできません。色の濃いマルチを使うのもNGです。マルチを使わずに一日数回水やりをできるのがベストです。家庭菜園に付きっきりになれる環境であれば、水やりを頻繁に行うようにしましょう。

人参は10日から二週間で発芽します。この期間を過ぎても発芽しない場合には、生育に失敗している可能性があります。人参の種が発芽しにくい理由は温度以外にも種子に未熟が含まれやすいことがあります。種子は見た目では区別できない為、未熟種子が混合されていても気づきにくいのです。さらに種子に発芽抑制物質が含まれていること、種子の寿命が短く1年程度であることが挙げられます。

すべてが発芽しない場合には水やりを見直すことが必要です。発芽までやや湿った状態を継続させる水やりが必要です。二週間経過しても発芽していない場所があれば、種を植えなおすのがベストです。何回も繰り返すことは時期的な問題でできませんが、1回～2回程度は猶予期間があります。種を植えなおすのが最も早いやり方です。発芽している人参と種の人参が混合するときには水やりの仕方が異なりますので注意します。

人参は肥料をそんなに必要としない野菜です。そのため、追肥にシビアになる必要はありませんが育つにつれて土の栄養素は使用されて少なくなるため、定期的に追肥を行います。秋蒔きでも追肥のタイミングは同じです。一回目の追肥のタイミングは二回目の間引きを行った後です。一株当たり5グラム程度の化学肥料を全体の土に馴染ませるようにして与えます。二回目の追肥は三回目の間引きの後に行います。

追肥とともに気を付けなければならないのが雑草処理です。追肥を行うと雑草が生えやすくなります。せっかく与えた栄養分が雑草に取られてしまっては意味がありません。雑草は定期的に処分するように心がけます。プランター栽培の場合でも雑草は生えることがあるため、油断せずに雑草処分をこまめに行うようにします。

人参の栽培で発芽した後の水やりは土が乾いた時に実施する程度に抑えます。発芽後に多湿と乾燥を繰り返すと裂根を起こしてしまうことがあります。乾いたからといって多めに水をやりすぎると乾燥と多湿を繰り返す結果になるため、水やりも適量に行います。秋蒔きではこの頃ちょうど寒くなってくる時期です。乾燥しにくくなるため水やりの回数も必然的に減少します。

そして成長期に大事なのが間引きです。全部で三回の間引きを実施します。苗の成長は比較的遅いため、間引きを行う一回目のタイミングは葉と葉が触れ合うようになった頃です。株間隔が2センチ程度になるように間引きます。本葉が3枚から4枚になったころ二回目の間引きを行います。株間隔を3センチ程度になるように間引きます。本葉が5枚から6枚程度になったら最後の間引きです。株間隔が10センチ程度になるようにします。

間引きする苗はそのまま根元から抜いてしまいます。間引いた苗も食べることができます。葉も柔らかい状態であるため、天ぷらなどにするとおいしく食べられます。また根本の土寄せも大事な作業です。人参の頭の部分が土から出ていると日光が当たって緑化してしまいます。きれいな人参の色を確保するために、肩の部分までしっかりと土が被るように根元の土寄せも定期的に行います。

人参は比較的ゆっくり成長します。春撒き、夏蒔きの通常人参と秋蒔きのミニ人参の栽培で異なるのは成長期の時間です。発芽するまでの時間は秋蒔きでも大差ありません。秋蒔きの場合の収穫は年内に行います。人参の収穫期の見極めは土を掘ってみて人参の成長具合を目視して確認します。程よい大きさに育っていることが確認できれば収穫です。茎の下の方をもってまっすぐ上に引き上げます。

秋蒔きは収穫時期が11月下旬ころです。この頃の気候は寒く人参の成長も停止するに近い状態にまでなっています。そのため、収穫時期にすこし遅れてしまっても人参の収穫に影響を及ぼすことはありません。逆に成長する気温に収穫期を迎える人参は裂根を起こす恐れなどがあるため、適度に収穫する必要があります。また収穫は晴天時に行うようにします。収穫後の人参は暗く涼しい場所で保管するようにします。

人参のトラブルは裂根と又根です。人参に裂け目が入ってしまう裂根は土壌水分の劇的な変化などによって生じます。また収穫時期を見逃すと裂根しやすくなります。特に水分管理は重要で発芽した後でも水分量変化に葉注意します。又根は根の成長過程の先に障害物がある場合や、肥料過剰によって生じます。深くまで土を耕していなかったり、肥料タイミングを間違うときれいな人参ができなくなります。

人参の成長過程で病気と害虫にも気を付けなければなりません。土の栄養分がしっかりしていれば病気になりにくいため、ポイントを守った栽培が重要なポイントです。また害虫は雑草などが多くあると発生しやすくなります。雑草をこまめに処分することや毎日の観察が害虫被害を最小限にする方法です。病気が発生した人参は根から抜いて他の人参に影響を及ぼさないようにします。

栽培の難易度が高いとされる人参ですが、秋に種まきを行う秋蒔きを利用したミニ人参の栽培であれば、初心者にも可能です。苗を移植することができないぶん、種まきから発芽の過程は避けられないですが、水やりと温度管理を適切に行うことで発芽させることはできます。またもともと種の成分が発芽しにくいことを考慮して発芽しなくてもめげずに育てることも人参栽培では大事なポイントです。ぜひチャレンジしてみてください。