桃の種に毒性がある?安全な桃の食べ方や種子「桃仁」を解説
桃の種のある桃といえば夏を代表する美味しい果物のひとつですが、実は種に毒があります。あんなに美味しいのに毒があるなんで意外ですが、一方、桃の種には発芽するための栄養が詰まっているので桃仁という生薬にもなるのです。青酸など毒を含んでいる桃の種子ですが、ちゃんとした食べ方をすれば安全で毒を気にすることはありません。桃の品質をはじめ、正しく安全な食べ方や桃仁について調べました。
目次
桃の種には毒がある?
みずみずしく、甘くて美味しい桃ですが、桃の種には毒があることを知っているでしょうか?実は食物の種には桃の種のように毒が含まれていることが少なくありません。桃の種の毒というのは種の殻の中に含まれている種子が持っているものなのです。
桃の種子から青酸が発生する仕組み
桃の種をはじめ、そもそも種子には多くの栄養が詰まっています。これは、発芽するために必要とされるものです。この中に人の体に有害とされる毒が含まれています。桃の種と同じように毒を持っているのはバラ科に多く、桃だけでなく、アンズや梅、びわなども同じバラ科の植物です。
アミグダリン
桃の種の種子に含まれれいるのは「アミグダリン」や「プルナシン」というシアン化合物の毒です。これはバラ科の植物の種子に含まれています。しかし、アミグダリン自体には毒はないといわれています。アミグダリンが毒に変化するには、ある作用が働いたときです。
アミグダリンはエムルシンという酵素か、腸内細菌のβ-グルコシダーゼという酵素によって加水分解されます。エムルシンで分解されると糖に代わりますが、ここで生成されたエムルシンがさらに分解されるとシアン化合物を発生させ、毒に変化します。人は濃度の高いシアン化合物を摂取すると中毒症状などを引き起こすことにつながります。
またアミグダリンはビタミンCとともに摂取すると毒性が高まるとアメリカで報告されています。そのため、アメリカではアミグダリンの販売は禁止されています。
青酸
桃の種の種子が分解され発生したシアン化合物には青酸が含まれています。青酸はシアン化合物の中でも最も毒性が高いとされています。しかしこの青酸も長期保存することで種子の中で分解され、人の体に害を与えることはありません。種子に青酸が含まれているため注意したほうがよいのですが、食べ方さえきちんとしていれば問題ありません。
多量摂取するとどうなる?
桃の種の種子に含まれている青酸などシアン化合物を多量摂取すると、まず引き起こされるのが青酸中毒です。青酸中毒とは軽度の場合はめまいや、のどや胃に灼熱感を覚えたり嘔吐や発汗などの症状が現れます。
ひどい場合には神経障害による歩行困難、発熱、意識混濁、昏睡、呼吸困難に陥って死にいたることもあります。アメリカでは過去、アミグダリンや青酸を多量摂取し、健康被害を引き起こしたケースが報告されています。
桃の安全な食べ方とは?
桃の種には青酸などの毒が含まれていることがわかりましたが、春から夏にかけ季節を代表する桃だけに美味しく食べたいもの。では、どうすれば桃は安全に食べることができるのでしょうか?桃の安全な食べ方について説明します。
良く熟れた桃は安全
出典: https://tenki.jp
桃の種の種子には毒がありますが、この毒も食べ方を間違えなければ安全です。桃の種に含まれているアミグダリンは、エムルシンという酵素によって分解されていきます。エムルシンによって分解されたアミグダリンは糖に変化し消えていきます。つまり、青酸などの毒も消えてしまうのです。
そのため、長期保存され熟した桃であれば、桃の種含まれる毒による青酸中毒などの危険性は無くなるといわれていますが、アミグダリンがまったくなくなるわけではありません。
少量なら無害
桃の種の毒は1~2個など少量では、青酸中毒などの心配はありません。そもそも桃の種は大きいので、そのまま間違って食べることも少ないでしょうし、齧ったときに多少食べてしまっても毒に犯される心配する必要はないので、安心して食べても安全です。桃の種を食べて青酸中毒などの症状が出るのは、驚くほど大量の桃を食べた時です。
桃の種子「桃仁」について
桃の種には毒があることを説明してきましたが、一方桃の種子は「桃仁(とうにん)」といわれ漢方薬の世界では、一般的に使われています。この桃仁とは、桃の種の殻の中にある白い種子を指しています。毒と薬は裏一体、そのまま食すると毒でも、桃仁になると人の体に有益なものとなります。
生薬として使われる
古くから中国では、桃は邪気をはらう不老長寿の果物として親しまれてきました。またその桃の種も同じように生薬として親しまれています。桃の種は桃仁という名で漢方薬の生薬として使われています。生薬とは、加工などをほとんどせずに、ほぼ原料のまま使われる薬のことを指しています。
桃仁として使われるのは、熟した桃で、その桃の種の種子を集め乾燥したものです。つまり、完熟し酵素で糖に変化していても多少のアミグダリンは含まれています。そのアミグダリンが生薬になると意外な効果を発揮するのです。また限りなく野生に近い品質の桃の種のほうが効果があるとされています。
効果・効能
桃仁は主に婦人系の悩みがある人に処方されることが多い生薬です。桃仁を使った漢方薬は主に生理不順や下腹部の痛み、更年期障害などに効果があるとされています。また産後のむくみが気になる方にも効果があるといわれています。
さらに、血滞といわれる血の粘度が高くなり血流が悪くなる症状や高齢者などに見られるコロコロとした難い便が出る潤腸、いわゆる便秘症状にも効果があるとされています。桃仁はそれだけの生薬ではなく、ほかの生薬とブレンドされるなどし、漢方薬として使われています。漢方薬の目安としては1日3g~5g程度を服用します。
注意点
生薬として婦人病をはじめとした症状に効果があるとされる桃仁ですが、そもそも漢方薬というのは毒を毒を組み合わせ、互いにその毒を打ち消すことで人の体に有効とされる薬を作り出しているものです。比較的副作用が少ないといわれている漢方薬ですが、間違った服用をしないよう注意しなければいけない点があります。
婦人系に効果がある桃仁は、妊娠中の人の服用は避けましょう。桃仁には子宮を収縮させる作用があるので妊娠中に桃仁を服用すると流産してしまう可能性があります。また、生後3ヶ月以内の乳児や授乳中の服用も発疹やかゆみなどの症状がでる可能性があるとされています。決められた容量を守り、医師などへの相談することが安全な服用方法です。
桃の種に含まれる毒の致死量は?
毒にも薬にもなる桃の種ですが、1~2個程度の少量を食べても中毒などの症状が起きたり、死に至ることはないので安全だと説明しました。では、いったいどれくらい食べれば桃の種に含まれる毒が体を死に至らせるのでしょうか?桃の種に含まれる毒の致死量は意外な数値を示しています。
アミグダリンは猛毒
桃の種の種子「桃仁」に含まれているアミグダリンは加水分解されることで、毒に変化し、痙攣やめまい、呼吸困難などを引き起こし、死に至らせるケースもあります。しかし、それは一度に多量摂取した場合で、普通に食べている分には問題はありません。桃の種の種子1個あたりに含まれているアミグダリンの量は、およそ1.5%ほどととても少ないためです。
もちろん、完熟していない桃だと含有率は高まる可能性はありますが。青い桃を食べることはほとんど無く、桃仁に使われている種子は完熟桃であることが基本なので、生薬などで服用するときも品質的に問題なく服用方法を守っていれば安全です。
1個や2個では問題ない
桃仁に含まれているアミグダリンは1.5%ほどですが、アミグダリンが分解され青酸になった場合の致死量はどれくだらいでしょうか?一般的に青酸の致死量は60g~68gとされています。青酸はアミグダリンからさらに分解されたものなので、アミグダリンの量は膨大なものとなります。
桃仁に含まれるアミグダリンだけの場合、致死量に至る数はなんと100個以上で、青酸に至ってはさらにその数は増えます。つまり、一度に100個単位で桃仁を摂取するような食べ方をしない限り、桃の種が原因で死に至ることはないといえます。
桃の品種と特徴
桃の種の毒性について説明しましたが、そもそも桃というと一般的にスーパーなどで売られている桃のイメージがあるのではないでしょうか。しかしそれは「桃」とうカテゴリーであって、桃にはいくつもの種類があります。代表的な桃と品質について紹介します。
黄桃
黄桃とは皮も果肉もきれいなオレンジ色をしている桃で、黄肉種と呼ばれています。大きさも白桃より少し大きく、香り高いのが特徴です。また缶詰の桃などに使われることが多いのも黄桃です。これは白桃などの桃と比べると果肉がしっかりしているため、缶詰にしやすいこと、白桃などより糖度が低いことから、シロップ漬けにしやすいという理由からです。
近年、黄桃そのものを美味しく食べられるよう品質管理をされていて、甘さと酸味のバランスが良い黄桃が生産されています。黄金桃、黄貴妃、黄ららのきわみなどといった生食として美味しく食べられる品質ものが岡山、山形、山梨など桃の産地で栽培されています。
白桃
いわゆる桃といわれる代表的なものが白桃です。白桃は別名水蜜桃とも呼ばれるほど甘く、ジューシー、原産地は岡山県で、ブランド化されています。皮が薄く手で軽くむくことができ、この白桃は日本の多くの桃の品種のベースとなっています。大きさは手のひら程度で、黄桃と比べると果汁が多いのが特徴です。
日本の白桃は品質が高いことで有名で、他国と比べると大きめでずっしりと重く、桃がもつ繊維質をあまり感じさせない本白桃なども生まれています。現在の白桃が生産されるようになったのは明治時代で、そこから品質改良などを行い、現在ではさまざまな桃の品種が生まれています。
白鳳
白鳳は、神奈川県で白桃をベースに品質改良され、昭和初期に生まれた桃です。白鳳は白桃の良いところ取りをしたような桃で、ずっしりと重みがあり、繊維質がほとんどなく、果汁が多いのが特徴です。また甘みが強く、酸味がほとんどありません。桃を齧って果汁が滴り落ち、甘さが広がるものは、ほぼこの白鳳だといわれています。
桃の種から発芽させる方法
桃は食べようと切るときに捨ててしまうのが一般的ですが、実は購入した桃の種は発芽します。庭がある家なら発芽させた桃を立派な桃の木に成長させることも可能なのです。桃の種から発芽させるには休眠打破がポイントです。
ぬめり取り
まず、桃を発芽させる場合、桃の種の周りについている果肉のぬめりをしっかりと洗い流し、取ってしまいましょう。桃の果肉には発芽抑制物質があるので、ただ植えても発芽しません。果肉のぬめりをしっかり取るために硬いスポンジや砂などを使ってもみ荒いするとぬめりは取れやすくなります。
敢えて傷つける
桃の種のぬめりをとるとき、硬いスポンジや砂を使うと、種に傷がついてだめになるイメージがありますが、それは逆です。桃の種は殻が固いので、「あえて傷をつける」ことで発芽抑制物質を除くだけでなく、吸水しやすくなり、発芽にも役立つためです。ただし種子部分を傷つけないよう気をつけてください。
休眠打破がポイント
桃の種を発芽させるには、ただ植えるだけではだめです。桃の種は基本寝ている状態なので、起こしてあげる必要があります。桃の種は寒さで目を覚ますので、乾燥しないよう冷蔵庫で保管、秋に播くのがポイントです。冷蔵庫で保管する以外には地中に埋めて乾燥を防ぐ方法もあります。
桃の種の毒性を理解して安全に食べよう!
桃の種にはシアン化合物の毒があることがわかりましたが、食べ方を間違えなければ安全に美味しく食べることができます。桃の種の毒性さえきちんと理解していれば中毒などになることは、ほぼ無いため、完熟した美味しい桃を堪能してください。