2019年07月05日公開
2024年09月20日更新
キビヤックの衝撃的な食べ方と作り方!気になる味は一体どんなの?
キビヤックという食べ物を知っていますか?グリーンランドのカラーリット族やカナダのイヌイット族、アラスカ州のエスキモー民族の間で食べられてきた伝統食品で、その作り方・食べ方はとても衝撃的です。北極圏の民族達にとってもご馳走としてクリスマスや結婚式、成人式などで食べられており、国外に輸出されることはほぼないため貴重な食品と言えます。キビヤックはどのように作り食べるのか、いったいどんな味がするのか紹介します。
キビヤックとは?
キビヤックは主に北極圏で親しまれている食品で、その作り方や食べ方は想像がつかないほどの奇想天外な代物、特に臭いが強烈なことで有名です。
アラスカの発酵食品
キビヤックは何世紀もの間グリーンランドのカラーリット族やカナダのイヌイット族、アラスカ州のエスキモー民族の間で食べられてきました。北極圏では伝統的な発酵食品で、漬け物に分類されることもあります。
極寒の地である北極圏では太陽光があまり得られず、野菜や果物を育てることができません。そのためビタミンやミネラルを効率よく摂取する必要があり、北極圏の民族達は火を通さないことで栄養を失わずに得られる生肉や、ビタミンを増やすことができる発酵食品で栄養を補給してきました。
キビヤックはビタミンの補給源の一つとして今でも食べ続けられており、主に誕生日やクリスマス、結婚式、成人式などで食べられるご馳走です。
作り方が特徴的
キビヤックは海鳥の漬け物と呼ばれており、作り方が非常に特徴的です。簡単に作り方を説明すると捕まえた小型の海鳥をアザラシの中に入れ、3ヶ月以上地中に放置することで出来上がります。現代では考えられない作り方ですが昔は効率的な調理方法でした。
なぜこのような作り方をするようになったかは分かっていませんが、この作り方は長期間海鳥入りのアザラシを寝かせて作られるため、その間に空気が入り込んだり凍結したりすることを防がなければなりません。
アザラシは皮がとても分厚く断熱性に優れているうえ、北極圏ではアザラシが多く生息しており日常的に手に入りやすいことから、この作り方になったのではないかと言われています。
キビヤックの作り方
日本人にとってアザラシといえば水族館にいる海のかわいい人気者というイメージです。そんなアザラシの中に海鳥をいれるなんてとても想像できるものではないでしょう。ここから作り方を詳しく紹介しますが、人によってはグロいと感じるので注意して下さい。
海鳥を冷やす
材料に使われるのはアパリアス(別名ウミスズメ、ヒメウミスズメ)という海鳥です。頭から背中が黒く腹部は白い羽で覆われており、北極圏に短い夏の間だけ繁殖のために飛来します。アパリアスの群れを虫取り網のような道具で捕獲することから、とても小型な鳥であることがわかります。
捕獲したアパリアスは羽根をむしったり頭を落としたりせず、そのままの状態で日光の当たらない涼しい場所で1日放置します。涼しい場所で放置することによってアパリアスの身体及び内蔵を冷やします。
アザラシのお腹を開く
次にアザラシのお腹を開きます。アザラシはカラーリット族やイヌイット族、エスキモー民族達の中でも一般的な食材です。捕獲したアザラシは内蔵や肉を全て取り除き、皮下脂肪を残して袋状にします。取り出したアザラシの内臓や肉も栄養源として食べられますが、生肉は獣臭く日本人には馴染みのない味です。
アザラシのなかに海鳥を詰める
1日放置して冷やしたアパリアスをアザラシの袋に詰め込みます。この時もアパリアスの羽根はむしりません。詰め込むアパリアスの数は数十羽から数百羽、アザラシとアパリアスの大きさによっては700羽近く詰め込むこともあります。
お腹を縫い合わせて熟成させる
アパリアスを詰め込んだら、アザラシのお腹を縫い合わせ地面に埋めて熟成させます。この時、プヤと呼ばれる日干ししたアザラシの脂を縫合口に塗りつけます。これはハエが卵を産み付けるのを防ぐためのコーティングです。
空気抜きをつけて地面に埋めたら野生動物に掘り返されないよう石を置き、3ヶ月~18ヶ月放置し、アパリアスが乳酸菌発酵するのを待ちます。発酵したら完成です。
キビヤックの食べ方と味
アザラシの中に詰め込んだアパリアスをどうやって食べるのでしょう?食べ方も想像つきがたいのがキビヤックです。
キビヤックの食べ方
もやしもんでもおなじみキビヤックきた #クレイジージャーニー #tbs pic.twitter.com/FO3lb2iwjY
— YOSH (@m_yosh) July 28, 2016
キビヤックの食べ方はさらに衝撃的です。アザラシの中からアパリアスを取りだし、羽根を全て引き抜き丸裸にします。そしてアパリアスの肛門に口をつけ、内蔵が発酵して液状になった体液をすすります。
残ったアバリアスの皮や肉も引き裂きながらそのまま食べ、さらに歯で頭蓋骨を割り中身の脳味噌も食し、最後残った翼や背骨、骨盤などをガムを咀嚼しながら咬むようにして楽しむのが一通りの食べ方です。食べられる部位をすべて食べつくしたら骨盤などを吸って余韻を楽しみます。
保存に使ったアザラシは食べないため、贅沢な作り方だと言えます。また、液状になった内蔵はすするだけでなく調味料として焼いた肉につける食べ方もあります。
発酵により生成されたビタミンを豊富に含むため、焼いた肉につけることによって加熱により失われた生肉中のビタミンを補うことができるのです。極北地域においては貴重な栄養補給源であることがよくわかります。
キビヤックの味は?食べた人の口コミ情報
キビヤックの味わいは #クレイジージャーニー #tbs pic.twitter.com/JAROM1ZRKU
— YOSH (@m_yosh) July 28, 2016
キビヤック食べた時の悶絶淳太くん pic.twitter.com/Kslvl3fO0O
— 七咲める (@saki_punch) September 23, 2015
衝撃的な作り方・食べ方から味は美味しくないのでは?と思う人が多いですが、味は美味だと言われています。その味はブルーチーズや海苔を巻いたゴーダーチーズのよう、日本を代表する冒険家の植村直己はグリーンランドで実際に食べ、好物の一つとして挙げるほど気に入っていました。
もっと身近な口コミがほしいところですが日本で手に入ることはほぼないため一般人の口コミは見つかりませんでした。おそらく2016年7月28日に放送されたTBSの人気番組クレイジージャーニーで芸能人が食べた反応が最新の感想ですが、あまり美味しくは感じられなかったようです。
キビヤックは一般的にはとっつきにくいものですが、冒険家たちには親しまれています。とっつきにくい原因は臭いです。臭いにさえ慣れれば濃厚な鶏肉の味がし、美味だと言われています。
キビヤックは世界4位の臭気
作り方から想像できるように、臭いはとても強烈でその臭気は世界第4位だと言われています。日本人にとって身近なくさい発酵食品といえば納豆ですが、キビヤックはその約3倍の臭気です。
また日本で最もくさい食品はくさやと言われていますがくさやの臭いは世界第5位の臭気、くさやの臭いを知っていればキビヤックがどれだけくさいか想像がつきます。実は元々アパリアス自体にはくさみはなく、発酵させることで濃厚になるそうです。この臭いにさえ慣れれば味が美味しいと感じることができます。
キビヤック以外の代表的なくさい料理
くさい料理は世界中に点在しており、どの食品も臭いに反して美味だと言われています。キビヤックが4位という事はそれ以上にくさい料理、レベルの近い料理もあるという事です。どのような匂いの料理があるのか見ていきましょう。
ホンオフェ
ホンオフェとは韓国料理のひとつで洪魚膾(こうぎょかい)とも言います。韓国全羅南道の港町である木浦地域の郷土料理で、ガンギエイの刺身あるいは切り身を壷などに入れ冷暗所に10日ほど置き、オガクズや堆肥の発酵熱を利用して4日ほど発酵させたものです。
発酵が進むにつれて身が柔らかくなり、その味は美味だと言われています。プサンやソウルなどでも食べられますが、多くは軟骨が付いたエイの切り身で食感はコリコリとして風味はさっぱりとしたものが多いです。朝鮮半島南部ではカオリフェとも呼ばれます。
世界第2位、アジア最強とされる強烈な臭気でホンオフェを口中で長く置くとアンモニアで口内粘膜がただれるとも言われています。この強烈な臭気で外国人や初心者に敬遠されますが、朝鮮半島南部では冠婚葬祭に欠かせない高級な料理です。
マッコリと共に食することが通とされており、この食べ方をホンタクと言います。また、豚肉とキムチを一緒に包んで食べるのもメジャーな食べ方でサマプと呼ばれています。
エピキュアチーズ
エピキュアチーズはニュージーランドの缶詰チーズです。オセアニアで最もくさい食べ物と言われており、世界第3位の臭気だとされています。熟成を缶の中で行うため乳酸菌発酵によって炭酸ガスや硫化水素発生し、缶詰は膨張して破裂しそうな形状になります。
2~3年熟成されたエピキュアチーズの缶を開けると、乳酸菌発酵に伴う強烈な臭いが広がります。味は酸味が強くコクがあり、くさい食べ物のなかでは珍しく人気な食べ物です。最近ではエピキュアチーズの製法を変えることによって、これまでのような臭気を減らしたエピキュアチーズも各国で販売されるようになりました。
くさや
日本で最もくさい食べ物がくさやです。くさやは魚類の干物のひとつで伊豆諸島の特産品として知られています。クサヤモロなどの新鮮な魚をくさや液と呼ばれる魚醤(ぎょしょう)に似た独特の匂いや風味をもつ発酵液に8~20時間浸した後、これを天日干しにして作ります。
近年は天日に限らず、乾燥機などを使用した強制乾燥のくさやも増えています。くさやは長い歴史をもつ食品で、江戸時代には献上品として使われていた記録が残っており、伊豆諸島の新島を元祖とする説が有力ですが正確な発祥地は不明です。
当初は単純な塩水に浸けた魚を干したものでしたが、貴重な塩を節約するために塩水を使いまわしながら干物を作っていたところ魚の成分などが蓄積し、さらに微生物などが作用することで現在のくさや液のもととなるものができました。
味は塩辛いながらもまろやかさがあり、ご飯のおかずやコシの強い日本酒によく合うとされています。臭いは銀杏のような不快臭で人によって好き嫌いが分かれますが、日本人が好きな発酵した魚の香りやうま味は人気が高いです。
銀杏の他に塩水やマール、ワイン、ブランデーなどを定期的に吹き付けて熟成させるウォッシュチーズの臭いとも似ていると言われています。
シュールストレミング
世界で最もくさいと言われている食べ物がシュールストレミングです。シュールストレミングは主にスウェーデンで生産・消費される塩漬けのニシンの缶詰で、日本でもテレビ番組などで取り上げられることが多くよく知られています。
バルト海で4~5月にかけて獲れた産卵期直前のニシンを薄い塩水に漬け、12~18℃くらいの温度で約12週間発酵させて作ります。商品によって切り身のままや頭や腸も使っているもの、カズノコが一緒に入っているものなどがありますが、カズノコは食べるべきでないとされています。
中世ヨーロッパでは肉の代わりに塩漬けの魚が流通していましたが、保存に必要な塩がスウェーデンでは貴重品だったため塩を節約して使っていました。塩は腐敗は防げても発酵は止められないため、その過程でシュールストレミングが出来上がったとされています。
発酵食品ですので食べ頃があり、スウェーデンでは販売の解禁日は8月の第3木曜日とされています。臭いは魚が腐った臭い、または生ゴミを直射日光の下で数日間放置したような臭いともいわれ、とてつもない臭気であることが想像できます。
塩気が強いため、ジャガイモ・ニラ・ポテトサラダなどを付け合わせにして食べたり、スライス玉ねぎとブラーナ(ヤギ乳のバターにクリームとシナモンを加えたもの)とともにパンやクラッカーに載せて食べたりします。
シュールストレミングは気圧による破裂の恐れがあるため、空輸することができず船舶による輸送で外国に運ばれます。しかし船舶による輸送は時間がかかるためインターネットによる通信販売はされていますが、日本に着く頃には発酵が進みすぎて固形が残っていないことがあります。日本で食べられるシュールストレミングはとても貴重なのです。
キビヤックが登場したアニメ
世界一くさいシュールストレミングは開封時に派手に液体が飛び出すなどテレビ的パフォーマンスにも適しており、他のくさい食べ物は注目されることがありませんでした。しかしとある作品に取り上げられることによって、キビヤックの知名度は上がりました。
もやしもんについて
初めて知ったのはもやしもんだったわ。キビヤックって食べ物だそうです(๑˙灬˙๑) pic.twitter.com/wyA8KVQCZO
— 柴犬@7/7beam (@gesudo_shiba) November 8, 2018
漫画もやしもんは石川雅之により2004年から2014年に青年漫画誌イブニング・月刊モーニングtwoにて連載された作品です。肉眼で菌を見ることができる主人公沢木を中心に、菌・ウイルスに関わる農業大学の学生生活を描いており、アニメ化だけならずドラマ化もされました。
キビヤックの登場シーン
ふと「キビヤック」という単語が思い浮かんで、食べものだった気がして調べたら、そうかアレか( ˙-˙ )
— 梅雨@クレアァァァ!! (@Brille2525) October 6, 2018
🔻もやしもん一巻より pic.twitter.com/vGEXxFei5N
もやしもん第1話でキビヤックは登場します。沢木の祖父から樹教授に会うように言われた沢木とその友人結城は農大に入学したその日、樹教授の研究室に向かいます。その道中大量に菌が発生している場所を沢木は発見します。
菌の発生場所は1.2m~2.0mほど、ハセガワと書かれた木の板が地面に刺してあります。沢木と結城の脳に思い浮かんだのは入学式で聞いた、長谷川遙という女性が行方不明になっているという情報でした。警察を呼び掘り返そうとしたところスコップを持った樹教授が登場し、動揺する周囲を置いて地面を掘り返します。
地面からはアザラシの死体が現れ、菌の発生場所は樹教授の研究室で長谷川が始めた日本で作るキビヤックの実験だったというシナリオです。やはりその作り方・食べ方はインパクトが強く、読者や視聴者に強烈な印象を残しました。
キビヤックはアラスカの伝統食品
キビヤックはグリーンランドのカラーリット族やカナダのイヌイット族、アラスカ州のエスキモー民族に伝わる伝統食品です。その作り方・食べ方はともに日本人の生活文化では想像しがたいものですが、寒い地方に住む民族の栄養源として活躍してきました。
日本で食べられることはほぼありませんが、もしアラスカやグリーンランド、カナダなど食べられる地域にいった際はチャレンジしてみてください。