ジンの原料は?テキーラ・ラム・ウォッカとの違い!歴史や種類も解説
ジンはどんな原料から作られているか、知っているでしょうか?ジンはストレートでも飲めますが、やはりジントニックなどカクテルとして好まれることが多く、知らないうちにカクテルに混ざっていることも少なくありません。そんな脇役のような蒸留酒のジンですが、実は世界4大スピリッツの一つとして名高く、深い歴史があるお酒なのです。今回はそんなジンについて、原料や歴史、他のスピリッツとの違いなどを徹底的に解説していきます。
ジンは4大スピリッツの一つ
ジンは、ジントニックやマティーニなどいろいろなカクテルのベースとして使用されること多いので、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?ウォッカ、テキーラ、ラムとともに、世界4大スピリッツとして古い歴史を持ち親しまれています。
スピリッツとは蒸留酒のことで、蒸留酒とは醸造酒を蒸留して作ったお酒のことをいいます。醸造酒とはビールやワインなどのことで、これらの度数の低いお酒に火をかけて蒸留させて、水分を飛ばします。そうしてアルコール度数を高めたものが、スピリッツと呼ばれます。
スピリッツの中でも、特にジンとウォッカ、テキーラ、ラムの4種類が世界の4大スピリッツとして掲げられており、それぞれ歴史や原料、製造方法などが異なるのです。
ジンの原料と特徴
それでは、世界4大スピリッツとして親しまれているジンは、どんな原料から作られており、どんな特徴を持っているのでしょうか?
ジンの原料
ジンは、大麦やライ麦、じゃがいもなどを原料とした蒸留酒です。そこにハーブや果物の皮、スパイスなどボタニカルといわれる材料で風味づけされます。ジンには原料から作られたベースとなるスピリッツが存在し、そこに主原料として欠かせないジュニパーベリー(杜松の美)を基本に何種類かのボタニカルを加えて、蒸留させて作られます。
ベースのスピリッツには、糖蜜やとうもろこしなどの穀物類を原料として発酵し、蒸留させたものが使用されます。原料にボタニカルを数種類加えるため、ジンはボタニカルの香りが強く残っており、ハーブのようなすっきりとさわやかな風味の蒸留酒に仕上がります。
蒸留酒「ジン」の最大の特徴
ジンはその製法によって、いくつかの種類に分類されます。現在主流として扱われているのがドライジンで、昔ながらの製法で作られているジュネヴァなどがあり、それぞれ製法や味わいに特徴があります。
ジンは多数のボタニカルを混ぜ合わせるため香りのクセが強い蒸留酒なので、好みが分かれるお酒でもあります。各ボタニカルもそれぞれアロマオイルや香水などに使用される素材でもあり、ジンはお酒の香水と呼ばれるほど華やかな香りを放つことでも知られています。
ジンは、原料となるジュニパーベリー以外のボタニカルは特に決まっておらず、使われるボタニカルやレシピによって銘柄が異なるという特徴があります。一般的には、1つの銘柄に5~10種類のボタニカルが使用されており、中には40種類ほどボタニカルを使用するジンも存在します。
ボタニカルには、アンジェリカの根やコリアンダーの種などがよく使われ、きゅうりやバラ、ブルーベリーなど一般的に知られている素材を使うこともあります。日本では、茶葉やゆず、山椒などを使ったジンが作られます。
ジンの度数は40度ほどあり、一般的にはカクテルとして飲まれることが多く、ジンの9割はジントニックとして利用されているようです。度数が高いので冷凍庫に入れても凍らず、ストレートで飲むならキンキンに冷やしたものが人気です。ロックやソーダ割などの飲み方もあり、いろいろな飲み方で楽しめるのが蒸留酒「ジン」の魅力でもあります。
ジンとテキーラ・ラム・ウォッカの違い
以上のような特徴のあるジンですが、では他の4大スピリッツであるテキーラやラム、ウォッカとはどんな違いがあるのでしょうか?それぞれのジンとの違いを比較してみましょう。
ジンとテキーラの違い
4大スピリッツの一つであるテキーラは、アガベという多肉植物を原料としています。アガベにはいろいろな種類がありますが、テキーラに原料として使用されるのはブルーアガベのみです。テキーラにはこのブルーアガベを原料の51%以上使用するという規定があります。アガベの中でテキーラの原料に使用するのは、ピニャと呼ばれる茎の部分です。
メキシコのみで生産が許されている蒸留酒で、度数は40度ほど、アガペ特有の青っぽい独特の香りと、まろやかな甘みが特徴です。透明なタイプと、樽で熟成した茶色いタイプに分かれます。
テキーラというと、罰ゲームで飲むというイメージがありますが、最近ではアガベのみを使用したプレミアムテキーラが日本でも人気を集めています。クセが強いテキーラですが、コンチータなどグレープフルーツと合わせることで飲みやすいカクテルになります。
ジンとラムの違い
4大スピリッツの一つ・ラムは、さとうきび、または糖蜜などを原料として作られています。ラムの原料として使用するのは、さとうきびの中でも砂糖を精製する際にできるモラセスやしぼり汁です。度数は40~50%程度と高めですが、甘くてまろやかな飲み口なので、初心者の方でも比較的飲みやすい蒸留酒です。
ラムの起源はカリブ海の島とされていますが、原料であるさとうきびはもともと自生していませんでした。15世紀にコロンブスがアメリカ発見を大陸して以来さとうきびが持ち込まれると、カリブ海の島はさとうきびの一大産地となっていきました。
原料であるさとうきびの産地であるキューバやジャマイカなどが、ラムの主な産地になります。基本的に樽で熟成され、透明タイプと茶色いタイプがあります。ラムは製法や醸造原料によって、さらに種類分けされています。
最近では、ラムを使用したカクテルとしてモヒートが注目を浴びています。ラムにライムとミントで香り付けし、砂糖を加えてソーダで割ったカクテルで、南国をイメージするような清涼感あふれる特徴が魅力です。またラムはラムレーズンなど、お菓子作りにも利用されています。またイギリスでは、風邪を引いた時に体を温めるカクテルも人気です。
ジンとウォッカの違い
同じ4大スピリッツの中でも、ジンとウォッカは実は使用されている原料は基本的に同じで、大麦やライ麦、じゃがいもなどの穀物を原料としています。ではどこが違うのかというと、蒸留する際に違いがあります。
ジンの場合、蒸留した後にジュニパーベリーで香り付けをします。一方ウォッカは、蒸留した後さらに白樺の炭を使ってろ過をします。ろ過することにより、よりクセのすくない蒸留酒になります。
ウォッカは産地によって原料に違いがあるものの、ウォッカ自体が純度の高い蒸留酒のため、原料による味の違いはほとんどないといえます。しかしアイルランドなどの酪農地域では、ミルクを原料としたミルキーウォッカを作られることもあります。また、日本では甜菜と呼ばれるビートを原料としたウォッカは、クセがなくほんのり甘い味です。
ウォッカは、「生命の水」という意味であるロシア語が縮まったウォッカになったという語源があるほど、水のようにクセの少ないという特徴があります。ウォッカの本場であるロシアでは、ウォッカを水のように飲むことでも知られています。カクテルとして使われることが多く、スクリュードライバーなど柑橘系のカクテルによく利用されています。
ジンの歴史
4大スピリッツであるジンを筆頭に、それぞれ違った特徴を持っていました。それではよりジンについて知識を深めるために、ジンの古い歴史について触れていきましょう。
ジンが一般化されるまで
ジンの歴史は古く、発祥とされる説は諸説あります。その中では、11世紀頃イタリアの修道士がジュニパーベリーを主体としたスピリッツを作っていたという記録があるのが発祥である、という説が有力とされています。
まだ薬用酒として作られていた段階で、一般的に酒として知られるようになったのは、1660年にオランダのライデン大学の医学部教授フランシスクス・シルヴィウスが作った解熱・利尿用薬用酒ジュニエーヴェル・ワインが起源とされます。普通に飲んでも美味しいとされて一般化されていきました。
その30年後、オランダからイギリスに持ち込まれるようになると人気を集め、ジンという呼び名になったのもこの頃のようです。19世紀半ばには蒸留酒の技術が向上し、より精錬された度数の高いスピリッツが蒸留されるようになります。
人気が落ちた時期
古い歴史の中で少しずつ人気を集めてきたジンですが、実は産業革命の前後に人気が落ちた時期があります。この頃ロンドンなどの大都市には労働者が増加し、スラム街が形成されるようになると、低所得者の間でジン中毒のような現象が起こりました。
またジンは価格が安いわりに度数が高く、労働者や庶民の酒、不道徳の酒というイメージが付いてしまいます。ジンに対する悪いイメージが社会的に高まっていくと、貴族や健全な者が飲む酒ではないとされ、次第に人気が落ちていきました。
カクテルのベースとして再び人気に
新しく蒸留器が開発されたことにより、20世紀に入ってカクテルのベースとして使用されるようになります。高級なジン作りが進んでいき、品質やイメージが向上するにしたがって、上流階級の間でもカクテルのベースとして嗜むのが一般的になっていきました。
名門貴族の出であったウィンストン・チャーチなども、ストレートに近い特注品のエクストラ・ドライ・マティーニを愛飲していたとされるほど、人気の高いお酒へと進歩していきました。
日本での流通
長い歴史を経て日本で初めてジンが蒸留されたのは、まだ日本が江戸時代後期だった1789年のフランス革命戦争の時期といわれています。この頃、フランス革命戦争で補給線を絶たれた長崎出島のオランダ人のために、長崎奉行所の茂伝之進が1812年ジンやブランデー、ビールを作ったのが始まりだとされています。
当時の記録は「日本回想録」に残されており、ネズの匂いが強すぎてあまりいい出来ではなかった、という記録が記されているようです。
ジンの種類と製法の違い
古い歴史を持つ4大スピリッツの一つであるジンですが、ジンはさらに製法によって大きく4種類に分けることができます。ではそれぞれの特徴と製法を見ていきましょう。
ドライジン
ドライジンは、現在ジンの主流となっている種類で、お店でジンを頼めばたいていはドライジンが出てきます。主な生産地はロンドンで、ロンドン・ジンやイングリッシュ・ジンと呼ばれることもあります。
ドライジンは19世紀にイギリスで生まれた連続式蒸留器によって誕生し、度数の高いスピリッツを蒸留してから、ジュニパーベリーなどのボタニカルを加えます。柑橘系のさわやかな香りが特徴で、そのためそのまま飲むにはクセがあり、ジントニックやマティーニなどのカクテルとしてよく使用されています。
またロックで飲む場合は、度数が高いので少しずつ口にすると、一気に酔いが回ることなく楽しめるでしょう。
製造方法
ドライジンは、連続式蒸留器で蒸留したスピリッツに、ジュニパーベリーやコリアンダーなどのハーブ、レモンやオレンジなどの果皮を原料として加えます。さらに単式の蒸留器でゆっくりと再蒸留させて作ります。
再蒸留する方法は2つあり、1つはスピリッツにボタニカルを加えてポットスチルで蒸留する方法です。もう1つは、ポットスチルにボタニカルを詰めて蒸留させることで、スピリッツ蒸気とともに香味成分を抽出するという方法があります。
ジェネヴァ
ジェネヴァは、古い歴史の中で作られてきた原型に近いジンで、現在でもオランダとその周辺で生産され続けています。そのためオランダ・ジンとも呼ばれており、原料は他のジンと同じくライ麦や小麦、コーンなどを使用しています。
ジンが基本的に連続式蒸留器で蒸留されるのに対して、ジェネヴァは単式蒸留器で作られるのが特徴です。その後に原料としてボタニカルを加えることで、ウイスキーのような滑らかで複雑な味わいを含みながら、カクテルのベースとしても使用されるユニークなジンです。
製造方法
ジェネヴァは、原料を糖化して単式蒸留器で3度蒸留させ、モルトワインを生成します。これを50%以上使用し、さらにジュニパーベリー単独の蒸留液と、ジンジャー、コリアンダーなどのボタニカルを数種類加えて作られています。ドライジンよりも香りが濃く、コクが強い味わいになるのが特徴です。
シュタインヘーガー
シュタインヘーガーは、生のジュニパーベリーを発酵して作られるジンで、ドイツのシュタインヘーガー村で製造されることから名づけられました。ドイツ人はスパイスを好む傾向があり、ジンにさまざまなスパイスを入れたアレンジしたのが起源といわれています。
原料に糖分が多い生のジュニパーベリーを使用することで、飲みやすく穏やかな口触りが特徴で、ドライジンとジェネヴァの中間くらいになります。ストレートで飲む方も多く、ぎりぎりまで冷やした状態で飲むとよりシュタインヘーガーの美味しさが際立つといわれます。カクテルなら、ジンジャージンジャーなどがおすすめです。
製造方法
シュタインヘーガーは大麦を原料としており、新鮮な生のジュニパーベリーを25度で発酵させて、1~2週間ほど寝かせます。その後単式蒸留器で蒸留してスピリッツを製造します。同時にとうもろこしやライ麦などを原料として、連続式蒸留器で濃度の高いスピリッツを作り、2つのスピリッツをブレンドして再蒸留して作り上げます。
オールド・トム・ジン
オールド・トム・ジンは、ドライジンが作られるより前に、雑味を抑えるために砂糖を入れて作られていたジンです。18世紀のイングランドに流行した、猫の口にコインを入れると足元からジンが出てくる自動販売機の名前が由来になっています。オス猫のことをトムキャットと呼んでいたことから、オールド・トム・ジンの名前が付きました。
18世紀頃、ドライジンの粗悪な味を隠すために原料に砂糖を加えて作られたものの、19世紀末にはアメリカでも時代遅れの酒として扱われるようになっていきました。現在では廃れていて希少なものとなっていますが、クラフトカクテルとして再評価されつつあります。
製造方法
オールド・トム・ジンの製造方法はドライジンと同じで、そこに砂糖を2%加えることで製造できます。原料には砂糖を加えるほかに、さとうきび由来のスピリッツを加えるという方法もあります。おすすめのカクテルはトム・コリンズで、オールド・トム・ジンを円筒のグラスで飲むことが特徴です。
ジンは原料によって無数の個性や味わいが楽しめる蒸留酒!
4大スピリッツの一つであるジンは、原料や製造方法の違いによって大きく4種類に分けることができ、さらにボタニカルをいろいろ組み合わせることのよって、無限の個性や味わいを引き出すことができます。
今回紹介したジンの特徴や歴史を参考にして、他の4大スピリッツとの違いを味わいながら、さまざまな種類のジンの味わいや香りを飲み比べて、自分好みのジンを見つけてみましょう!