2019年03月17日公開
2024年09月08日更新
カカオマスとカカオニブの違いは?チョコレートの材料や製造過程まとめ
カカオマスというとチョコレートの材料のひとつとして有名ですが、カカオマスとカカオニブの違いを言える人はかなり稀です。カカオニブという言葉自体、聞いたことがない人のほうが多いのではないでしょうか?実はカカオマスもカカオニブもチョコレートを作る際の材料なのです。そんなカカオマスの栄養や効果効能、カロリーの他に、カカオマスを材料として作られるココアバター(カカオバター)についての説明も交えながら、カカオマスを使ったチョコレートの製造過程を紹介します。
目次
カカオマスとカカオニブの違いが知りたい!
出典: http://kuime.jp
カカオマスとカカオニブは、どちらもチョコレートの材料として、耳にしたことがある人もいることでしょう。ですが実際にカカオマスとカカオニブの違いとなると、説明できる人のほうが稀になります。カカオマスがどんなもので、カカオニブとどんな違いがあるのかも交えながら、チョコレートの作り方を紹介していきます。
カカオマスが原料の製品
カカオマスを原料として作られるものには、そのもの自体が私たちにとってなじみの深いものと、チョコレートの材料のひとつとしてなじみの深いものがあります。カカオマスを原料として作られる代表的なものを紹介します。
ココアバター
カカオマスを原料として作るココアバターは、別名カカオバターとも呼ばれるカカオ豆の脂肪分です。カカオの脂肪分なのでカカオバターとも呼ばれているものですが、正式にはココアバターとしてチョコレートの材料としても表記されています。
ココアバターは、通常カカオマスになる前の液体状であるカカオリカーを圧搾して、脂肪分だけを搾り取ったものです。ココアバターはカカオ豆には40%~50%、カカオマスの中には約55%含まれているため、ココアバターの材料としても使われるのです。
ココアバターはカカオ豆のもっている抗酸化物質を微量ながらも含んでいるため、その効果効能によって酸化しにくい特徴があります。しかも融点が低く25度から溶け始めるため、座薬などの基礎薬剤やスキンケア製品としても良く使われます。
ココアバターは、わかりやすいように今でもカカオバターとしても売られています。通販でもカカオバターとして売られているので、ココアバターでもカカオバターでもどちらで覚えておいても購入に困ることはありません。ココアバターとカカオバターは同じものなのです。
ココアパウダー
カカオマスからカカオバターことココアバターを絞った残りは、圧搾機によってかけられた圧力で固まった状態の、ココアケーキと呼ばれるものになります。このココアケーキを粉砕機にかけて粉末状にしたのがココアパウダーです。
この他にもアルカリ性のもので中和しながらココアパウダーを作る製法もあり、圧搾機で作ったものよりも穏やかな風味で滑らかさがあり、よりチョコレートに近い色のココアパウダーを作ることができます。ただしカカオに含まれる抗酸化成分が減ることもあり、健康面での効果効能は減ると言われています。
カカオマスの時点では約55%含まれていた脂肪分は、脱脂されたココアパウダーの時点では11%~23%に減っています。カカオマスを材料として作る食品の中では、最もカロリーが少ない食品になります。
チョコレート
カカオマスを原料とした食品の筆頭ともいえるのが、このチョコレートです。チョコレートはカカオマスに砂糖や練乳、ココアバターなどを足して固めたものです。
このチョコレートは非常に古い食品で、紀元前2000年程前にはアステカ人やマヤ人などメキシコの人たちに食べられていました。ですがその食用目的は薬としてであり、16世紀のヨーロッパの記録とも同じものになっています。
ヨーロッパに残っている記録によると、チョコレートは滋養強壮や疲労回復、長寿を始め100以上もの効果効能が記されていて、中世ヨーロッパにおいてもチョコレートが薬として珍重されていたことがわかります。
カカオマスとカカオニブの違いとチョコの製造過程
カカオマスとカカオニブの違いとは一体何なのでしょうか?カカオマスとカカオニブの違いには、チョコレートの製造工程が大きく関係しています。チョコレートの製造工程を見ながら、その違いを確認してみましょう。
チョコレートの材料
チョコレートの材料はカカオ豆です。カカオ豆とはカカオの種子で、中央アメリカから南アメリカの熱帯地域の原産です。長さ15cm~30cm、直径8cm~10cmの楕円形の果実の中に、20個~60個ほどの種を持ちます。この種がカカオ豆と呼ばれるものであり、チョコレートの材料となるのです。
発酵と乾燥
収穫されたカカオの実から種であるカカオ豆を取り出したら、およそ一週間ほどの間、バナナの皮に包んだり木箱に入れられたりして発酵させます。カカオ豆は発酵によって熱を帯び、最終的には50度近くにまでなります。
カカオの実を発酵させる目的は2つあります。1つは発芽能力を失わせることによって、カカオバターやタンパク質、アミノ酸といった栄養素の消費を防ぐためです。もう1つの目的は、ポリフェノールとタンパク質などの栄養素を反応させて、渋みを減らし酸味を増やすことで、焙煎でより良い香りになるようにするためなのです。
発酵を済ませたカカオ豆は、今度はその発酵を止めるために乾燥させます。天日で発酵したカカオ豆を乾燥させて、水分量が6%以下になるまで干し続けます。保存性を高めるだけでなく、再発酵を防ぐためにも乾燥は欠かせないのです。
洗浄や選別と焙煎
発酵と乾燥を済ませたカカオ豆は、主に麻袋に入れられて各地に輸出されます。決して衛生的ではない一次加工を経て輸入されたカカオ豆は、まずはきれいに洗浄するところから二次加工に移るのです。さらに洗浄されたカカオ豆は、品質の良い豆と悪い豆とに選別された後、焙煎工程に移ります。
この焙煎工程でカカオ豆の持つ香味や風味が引き出されます。ですがカカオ豆は産地によって香りも味も異なります。そのためメーカーごとにカカオ豆の焙煎方法や時間などを調節しながら、思ったとおりの風味を出すよう焙煎しているのです。
粉砕と分離でカカオニブに
焙煎されたカカオ豆は、粉砕されて皮とカカオニブに分離されます。つまりカカオニブとはカカオ豆の皮をとった、中身の胚乳の部分の事を指して言うのです。カカオ豆の外皮はこの分離の過程で取り除かれます。
またメーカーによっては、焙煎前に粉砕して皮とカカオニブに分離するところもあります。最初のカカオの実の量から見ると、この皮とカカオニブとに分離した時点で、実際にチョコレートの材料として使われる部分がいかに少ないかがわかります。
複数のカカオニブをブレンド
カカオニブができたところで、メーカーや商品によって複数のカカオニブをブレンドして、風味の調整をしていきます。先に皮を剥いて粉砕されて焙煎したカカオニブは、火がムラなく通るだけでなく酢酸がとんでまろやかになり、メイラード反応によってあの香りや風味が出てきます。
先に焙煎してから粉砕して皮を剥いて作ったカカオニブもあり、それぞれを混ぜ合わせることで味を複雑にしたりより食べやすく調節したりします。またあえて混ぜ合わせないことでそのカカオニブの個性を強調する作り方もあり、商品に合わせてカカオニブの配合が決められているのです。
摩砕するとカカオバターが露出しカカオリカーに
配合したカカオニブは、摩砕と呼ばれる工程に進みます。摩砕とはカカオニブをすりつぶして、ペースト状にしていくことを指して言います。カカオニブはすりつぶすと、それまでは固体であったものが液状になるのです。
カカオニブが摩砕することで液状になるには理由があります。カカオニブはその半分ほどが先に紹介したカカオバターと呼ばれる脂肪分でできているからです。カカオニブは摩砕することでカカオバターが露出してきて液状となり、カカオリカーと呼ばれる状態になるのです。
カカオリカーの個体がカカオマス
カカオマスはこうしてできたカカオリカーを固めたもののことを言います。そしてこのカカオマスに砂糖や練乳、カカオバターの他、風味付けに香辛料やお酒などを足して作ったものがチョコレートになるのです。
このようにカカオマスとカカオニブの違いとは、カカオニブがカカオ豆の胚乳のことを言うのに対して、カカオマスはそのカカオニブを摩砕してペーストであるカカオリカーにした後、さらに固めて作ったもののことを言うのです。
カカオマスの栄養成分やカロリー
カカオマスとカカオニブの違いがわかったところで、今度はカカオマスの栄養成分やカロリーについてみていってみましょう。カカオマスには一体どんな栄養成分が含まれていて、どのくらいのカロリーがあるのでしょうか?
ポリフェノール
カカオマスに含まれている栄養成分の中でも有名なのが、このポリフェノールでしょう。カカオマスにはカカオポリフェノールが豊富に含まれています。ポリフェノールは植物に含まれる抗酸化物質として有名であり、植物の渋みや苦味、そして色素の成分でもあります。
カカオマスに含まれるカカオポリフェノールは、高い抗酸化力でコレステロールの酸化を防ぎ、動脈硬化の予防に効果効能があると言われています。さらにガンを予防するだけでなく、抗ストレス作用もあるとして注目を集めているのです。
ビタミンやミネラル
出典: https://cakes.mu
カカオマスには、抗酸化ビタミンのひとつであるビタミンEや、ビタミンB群の栄養素のひとつで糖質や脂質、タンパク質の代謝に不可欠とされるナイアシンを始めとしたビタミン類を、豊富に含んだ食品です。
さらにカカオマスには、カルシウムやマグネシウムがバランスよく含まれているほか、鉄分やヘモグロビンの酸素補給を助けてくれるマンガン、肝臓や皮膚の健康維持にも大切な亜鉛などのミネラル分も豊富に含んでいる、薬として珍重されるだけの栄養を豊富に含んだ食品なのです。
テオブロミン
カカオマスには集中力や記憶力を高め、自律神経のバランスを正常に保つ効果があるとされる、テオブロミンという栄養素も豊富に含まれています。
またこのテオブロミンには血管拡張による血圧安定の効果効能が期待できるほか、利尿作用によるむくみなどの改善も期待できますが、カカオマスに含まれるテオブロミン量はかなり多いため、人によっては興奮作用などの副作用に注意が必要とも言われています。
カロリー
カカオマスは脂肪分を多く含んでいるため、高カロリーな食品です。カカオマスは100gあたり約657kcalにもなるのです。そのためチョコレートも、意外に思うかもしれませんがハイカカオチョコレートほど高カロリーとなります。
ただしカカオマスのカロリーの多くはその脂肪分によるもののため、カロリーの高さに対して太りやすいかというとそこまででもない、というのが本当です。チョコレートはカカオマスの含有量が下がっていくに従って糖質の量が増えていくため、カロリーは低めになるけど太りやすくなるのです。
またカカオマスに含まれている脂肪分は、カロリーこそ高いものの健康的な脂肪分でもあります。カロリーを計算しつつ適量で摂る分には、ハイカカオチョコレートのほうが太りにくく、カカオマスの健康成分をより効率的に取り入れることができることになるのです。
カカオマスの効果効能
カカオマスにはさまざまな栄養成分が含まれていますが、その効果効能は具体的にはどんなものなのでしょうか?カカオマスに含まれる栄養素の効果効能に焦点を当ててまとめてみました。
ストレスを抑制
カカオマスには別名「幸せホルモン」とも呼ばれる「セロトニン」や、ストレス防止に効果効能があるとされる「トリプトファン」も含まれています。特にトリプトファンはセロトニンやメラトニンといった、ストレス軽減に効果効能のあるホルモン物質の原料となる必須アミノ酸なのです。
ただしトリプトファンには熱に弱いという特徴があります。そのため生のカカオには多く含まれていますが、チョコレートまで加工されたカカオマスには少ないと言われています。
さらに先に紹介したように、テオブロミンも適量を摂取することで、リラックスに効果効能が期待できる栄養素と言われています。
コレステロールの減少
カカオマスに含まれる脂質には、悪玉コレステロールを減らし善玉コレステロールを増やす効果効能が期待できる、オレイン酸が多く含まれています。またカカオポリフェノールの悪玉コレステロールの減少効果も、大きな期待を集めているのです。
抗酸化作用
カカオマスの持つ健康効果で最も期待が高いのが、このカカオポリフェノールによる抗酸化作用です。ココアやチョコレートの独特な苦味を作っているこのカカオポリフェノールは、赤ワインなどのポリフェノールよりも高い抗酸化力があると言われています。
さらにカカオマスには多くのポリフェノールが含まれているため、老化防止効果は非常に高いものとして期待されているのです。
カカオマスとココアバターの違い
カカオマスとカカオニブの違いをはっきりさせた以上、もうひとつのカカオ製品であるココアバターについてもその違いをはっきりさせておきましょう。カカオマスとココアバターの違いをまとめてみました。
ココアバターの原材料
ココアバターの原材料は、先にも紹介したようにカカオマスです。カカオマスがまだ固まる前のカカオリカーに圧力をかけて、搾り出した脂肪がココアバターなのです。
カカオマスの原料であるカカオニブには、約55%の脂肪分が含まれています。この脂肪分を搾り出したのがココアバターであるため、カカオの成分も含んだ脂肪分です。カカオニブをすりつぶしてカカオマスにすると、まずは液状のカカオリカーになるのも、このココアバターによるものなのです。
ココアバターの融点
ココアバターの融点はとても低く33.8度と言われています。そのため25度になると溶け始め、32度~33度という低温でほぼ完全に溶けてしまいます。乳製品のバターと同様に、25度を過ぎると急激に溶け始めるのがココアバターの特徴なのです。
実はチョコレートが「神の食べ物」と言われる由縁は、このココアバターの融点の低さにあります。口に入れるまで固形であるチョコレートが、口に入れた途端溶け始める性質は非常に珍しいものです。そのため人間のために作られたと考えられたのでしょう。
ココアバターはなめらかな口どけ
カカオマスでチョコレートを作るのに、すでに十分含んでいるココアバターを、わざわざ足すことに疑問を持つ人も多いのではないでしょうか?その理由はココアバターを足すことにより、チョコレートの口どけがよりなめらかになるためなのです。口どけをより良くするために、さらにココアバターを加えているのです。
カカオマスを使ったおすすめレシピ
カカオマスは通販などでも購入することができます。自宅でカカオマスを使ってチョコレートのお菓子を作ってみませんか?おすすめのレシピを紹介します。
ガトーショコラ
- A・カカオマス30g
- A・無調整豆乳50cc
- A・菜種油45cc
- 木綿豆腐50g
- B・てんさい糖シロップ(てんさい糖を水で煮溶かしたもの)90cc
- B・無調整豆乳25cc
- B・白味噌小さじ1
- C・薄力粉30g
- C・強力粉か中力粉15g
- 沸騰したお湯で豆腐を1分間ゆでたら、ザルで水切りします。
- オーブンを170度に余熱しておきます。Aをボウルに入れて湯銭で溶かして、泡だて器で乳化させます。
- 水切りした豆腐とBをフードプロセッサーに入れて攪拌します。さらに2を加えて攪拌します。
- 2の入っていたボウルにザルをセットして、Cを振るって入れます。3をボウルに加えてさっくりと混ぜます。生地がゆるめでも焼き上がりに問題はないので大丈夫です。
- パウンドケーキの型に油を塗るかクッキングシートを敷いて4を入れます。170度のオーブンで30分焼き上げます。
- 焼きたては平らですが冷めるとへこむので、切り分けて盛り付けて完成です。
カカオマスのホットチョコレート
- カカオマス40g
- マスコバド糖(なければお好みの砂糖)25g
- 牛乳(または豆乳)400ml
- カカオマスは溶けやすいように細かく刻みます。
- 小鍋に牛乳を入れたら、ふつふつと小さい泡が立ってくるまで温めます。
- 温まった牛乳に1とマスコバド糖を入れて、木ベラで焦げ付かないようかき混ぜながら溶かします。
- 材料が全て溶けて混ざり合ったら、カップに注いで出来上がりです。
カカオマスとカカオニブはチョコレートの材料だった!
カカオマスとカカオニブはそれぞれ呼び名は違うものの、チョコレートを作る途中のカカオ豆の状態を表す呼び名であり、最終的には同じチョコレートに行き着く食材でした。それぞれの特徴を理解して、チョコレート作りにぜひ活かしてみてください。