2018年03月05日公開
2024年06月26日更新
魚には痛覚があるって本当?最新の研究から判明した驚きの真相とは?
魚には痛覚がないから痛みを感じない。以前はそのように言われていたのですが、最近は魚には痛覚があるというのが定説になってきているようです。痛みはどこで感じるの?その根拠は?痛覚について研究はされているの?など知りたいことはたくさんありますね。
目次
痛覚とは
痛覚の定義
痛覚とは痛点の受容体のことをいいます。痛点とは皮膚や粘膜に分布する感覚点の一つで、いろいろな強さの刺激を加えたとき痛みがおこる点状の小区域で人間の全身には皮膚の他、口腔、咽頭、鼻腔などの粘膜にも散在し、その数は200万~400万ほどあるといわれています。一般的には侵害受容器と呼ばれています。
痛みの伝達方法
人間の体内には神経が張り巡らされており、末梢神経にある侵害受容器が刺激を感知すると電気信号となり脊髄を通り脳へ伝わり「痛い」と感じます。例えばバラのトゲが刺さったとき指先の細胞が損傷を受けます。損傷を受けた細胞が痛みの成分を出し、その痛みの物質が神経に達して電気信号に変化して脊髄に伝わり脳が痛みを感じます。
魚に痛覚はある?ない?
痛覚がないというのが定説だった
魚に痛覚があると信じられていたら踊り食いや活け造りといった調理法は生まれてこなかったでしょう。テレビ番組でよく紹介されている宿泊施設の豪華海鮮料理に踊り食いや活け造りは欠かせません。これは昔、冷蔵庫のない時代に鮮度がいいことを目で見てわかるようにしたことがはじまりです。日本人には活け造りイコール新鮮で美味しそうという先入観があり、痛そうと思うより美味しそうと思うよう刷り込まれているのです。
魚には痛覚がない説
魚の痛覚がないことを証明した研究はありません。実際に魚が痛みを感じているかは痛覚受容体の有無や魚自身に聞いてみないと正確な答えはでてきません。魚には痛覚がない説は研究結果から導き出されたものではなく人間の主観から導き出された説と言えるでしょう。
どうして魚には痛覚がないといわれていたのか
魚には人間のように表情がありません。もし、痛みを感じていても苦痛にゆがんだ表情を見せることはありませんし、人間の言葉も喋れません。人間が勝手に自分と置き換えて痛みを感じそうなシチュエーションでも痛そうに見えないことから痛みはないと言われてきました。例えば釣られた魚は口の端に針が刺さっているのに逃げるときには痛みを感じる方向に引っ張って逃げようとします。人間の感覚ではそんなことできません。
魚の痛覚の研究
研究の内容
ある研究ではニジマスの頭部にマーカーを付け、痛みを感じるであろう刺激を与えたところ著しい神経活動と行動の変化が見られたそうです。他の研究でも人が痛みを感じている時、呼吸数が増加することから麻酔したマスの口周りの皮下に刺激物を注射し水槽に戻して呼吸数が増加したかの実験を行い、結果は休息時の呼吸数の2倍になったと報告されています。
研究の結果
研究結果からニジマスには痛みを感じる感覚受容体およびそれに付随する神経回路が存在すると断定されています。痛みに対する反応は哺乳類とさほど変わらない反応をしているとのことで、研究チームによれば少なくとも頭部周辺には約58か所の痛みの受容体を確認したと発表しています。
もし痛みを知らなければ
人間の場合
痛みを感じない人が知らない間に骨折していたのにそのまま普通に過ごしてしまうという事があります。一見うらやましい話ですが痛みを感じないということは生命の危機に気づかないということ。痛みを感じることで体を休めたり治すように伝えてくれているのです。
魚の場合
魚も同じように痛みを知らなければ泳いでいるうちに水中のいろいろな障害物にぶつかっても平気で泳ぎ、体を守る鎧の役目をしてくれている鱗は剥がれ、体に深刻なダメージを受けていても体を休めることなく泳ぎ続けてしまうでしょう。まな板の上に乗せられ捌かれていても何も感じないでしょう。
魚の察知能力
群れになって泳ぐ魚
水族館などで群れになって泳ぐ魚を見て綺麗と感じますが、なぜぶつからないのでしょうか?群れになって泳ぐ魚たちには側線という部分があります。魚の側面の表面に通っている一本の線です。この側線が水の流れを感じ取れるのです。水の流れを感じ取ることができるため魚同士がぶつかりあわずに泳ぐことができます。
水温が低いと死んでしまう魚
人間は恒温動物で魚は変温動物です。変温動物である魚は水温の冷たさを感じて暖かいところへ行こうとするわけではありません。外部の温度により体温が変化するので水温が低い場所へ行くと魚自身の体温が低くなり動きが鈍くなります。動きが鈍くなるということは致命的で、他の肉食魚などに襲われてしまうかもしれません。動きが鈍くならない快適に過ごせられるところへ移動しています。
魚に痛覚があるかないかの真相
判断は難しい
言葉を話せない魚が痛みを感じているかを判断するのは難しい。痛みの実験での反応があるとはいえ、それが反射なのか、痛みを感じての反応なのかを判別するのは難しい。痛みはないとする研究者も、刺激に対する反応はあるがそれを「痛み」という表現での説明は適切ではないと語っている。
痛覚はある説が最近の定説
研究結果からわかることは痛みに近い感覚を感じる器官があるため痛覚があると結論付けている研究結果が多い。このことから最近は痛覚がある説が優勢となっている。 痛みを感じる場所は頭部へ集中しているので痛みを強く感じる部分とそうでもない部分は存在する。
魚愛護
動物愛護と同じように
動物愛護法とは、動物の愛護及び管理に関する法律です。動物への虐待等の防止について定めた法律で、目的は虐待等の禁止により「生命尊重、友愛及び情操の涵養(かんよう)に資することと、「動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害を防止する」ことです。
簡単に言うと愛護対象となる動物に対して愛を持って接し、責任を持って管理をするといった内容です。愛護対象の動物の中に魚は今のところ入っていませんが対象となるのも時間の問題かもしれません。
ロブスターは法律で守られている
オーストラリアでは「食物を苦しませずに殺す法律」があり、ロブスターに痛点があることが確認されたことによりオーストラリアでは調理の際のロブスターの絞め方が法律で決められています。冷水に入れて仮死状態にしてから脳がある頭部に一気に包丁をいれ、ロブスターの痛みや苦しみを極力感じないように即死させるようにしないといけません。
魚の扱い方によっては犯罪になるかも
漁の方法から調理法や料理の提供まで
魚が痛み感じないように、魚愛護の観点から漁の仕方や魚の取り扱い方などにもルールができるかもしれません。もちろん調理や食事の提供方法にもルールができるでしょう。生きたまま食べる踊り食いや生きたまま茹でる調理法なども禁止になるかもしれません。
スポーツフィッシングは虐待?
魚愛護がさけばれるようになるとスポーツフィッシングは犯罪と言われるようになるかもしれません。キャッチアンドリリースというスポーツフィッシングの精神はただの虐待と言われるようになるでしょう。現在でもキャッチアンドリリース反対派は、釣った時点で魚はダメージを受けている。リリースしてもだんだんと弱っていくので最終的には死んでしまうためキャッチアンドリリースは偽善だと言っていました。
神経締めをすることは魚への愛
活け締めと神経締め
活け締めは生きている魚を瞬殺することで劣化を遅らせることができ、同時に血抜きをして死後硬直を遅らせることで鮮度を保つ方法。神経締めは活け締めした魚の中枢神経にワイヤーを通して神経を破壊して死後硬直を遅らせ魚の鮮度を保つ方法。どちらも人間が美味しく魚をいただく為の処理ではあるが生きたまままな板に乗せて捌くより痛みの持続時間を考えると一思いに活け締め後神経締めをした方が魚にはやさしい。
神経締めの道具
活け締め後血抜きをしてから神経締めをするのでピクリとも動かないかと思いきや、さっきまで生きていた魚の神経にワイヤーを挿すのでビクビク動きます。ちょっとホラーな光景ですが、釣りをする方で今から魚愛護に尽力しようと思う方はネット通販でも神経締めの道具が手に入ります。ホームセンターで材料を買ってきて自作する人もいるようなので自作の道具を作ってみてはいかがでしょうか?
真相解明?
痛覚ある派とない派の意見
魚に痛覚はあるのか?ないのか?その真相はまだ決着がついていない。研究結果から痛覚ある派の意見としては、魚には痛覚があると断定されていたり、痛覚ない派の意見としては痛覚に似た感覚はあるが、痛覚ではないという結論づけであったり。この問題の決着がつくのはまだ先のことになりそうです。魚には痛覚はない派の研究数はまだ少なく、こちらの研究も進めてもらい真相解明をして欲しいと思います。
真相よりも大切なこと
魚に痛覚があるかないかの真相はどちらであれ、人間には相手を想う気持ちがあります。それは対人であったり対動物であったり。自分がされたら嫌なことを相手にしてはいけないと教えられてきた私たちは痛覚があるないといった理由など関係なく、自分に置き換えて生き物に接していくべきだと思います。
真相の決着はつきませんでしたが、魚や動物にもいのちがあります。そのいのちをいたずらに奪うようなことはしないという前提が大切なのではないでしょうか。