バターとマーガリンの違いとは?お菓子作りには?味やカロリーは?
バターとマーガリンにはどのような違いがあるのでしょうか?トーストなどのパンに塗る、お菓子作りに使う、ソースの材料として使う、コクを出すために使う、焼くときにフライパンにひく、ホワイトソース作りに使う、様々な場面でバターとマーガリンは同じ使い方をされます。しかし、バターとマーガリンを食べ比べてみると、味や香りや舌触りに違いがあり、お菓子作りなどで混ぜたり練ったりすると柔らかさも違います。そこで今回の記事では、そんなバターとマーガリンの違いについてまとめました。
目次
バターとマーガリンは似ている?
バターとマーガリンは、スーパーなどの売り場ではだいたい同じ場所に並んで売られています。それは、バターとマーガリンの使い道が似ているからでしょう。よく使われるのは、パンに塗るといった使い方です。また、お菓子作りやお料理にも使われ、家庭の冷蔵庫に常備されている印象です。使い方だけでなく、見た目もよく似ています。
マーガリンはバターの代用品だった?
実はバターとマーガリンは似ていて当たり前なのです。それは、マーガリンの誕生のいきさつを知ればよくわかります。マーガリンは、フランスでバターが不足していた時に、バターの代用品として開発されたものだったからです。
マーガリンの起源
マーガリンは、1869年、戦争真っただ中のフランスでバターが不足した時、ナポレオン三世がバターの代用品を募集したことで誕生しました。開発したのは化学者のメージュ・ムーリェです。牛脂と牛乳を混ぜて固めたのが始まりとされています。日本では昔、人造バターと呼ばれていました。日本に初めて輸入されたのは1887年です。
バターの起源
マーガリン誕生よりもずっとずっとはるか昔、紀元前2000年頃にバターと似たようなものが医薬品や化粧品として存在していました。食用として登場したのは紀元前60年頃のことです。バターには、マーガリンよりも長い長い歴史があるのです。
日本においては、江戸時代に徳川吉宗がバターを試作し、わずかながら生産もされていました。明治維新の後、外国人に乳製品を提供するために、時の政府が酪農を普及するよう指示をし、そこからバターは日本に広まり始めました。この明治時代には、エドウィン・ダンがバターを試作しています。
バターとマーガリンの違いはまず原料が違うこと
前述したように、マーガリンはバターの代用品として開発されたもので、バターとはそもそも原料が違います。バター不足が話題になった時もマーガリンは売り場に並んでいたのは、原料が違うので生産可能だったわけです。戦争中でも別の原料で似たものが手に入り、ナポレオン三世は満足できたのでしょうか?それともやっぱり偽物だと思ったのでしょうか?
バターの原料
バターの原料は牛乳です。牛乳から分離させたクリームの乳脂肪を使って作られています。「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」において、バターは乳脂肪分80%以上と決められています。一般によく使われるバターは非発酵バターですが、乳酸菌を使った発酵バターもあります。また、よくお菓子作りに使われる、食塩を加えていない食塩不使用バターもあります。
食塩不使用バターは、以前は無塩バターと呼ばれていました。しかし、生産の過程で塩を使っていないものでも、生乳そのものの塩分が微量ながら含まれるため、完全な無塩ではありません。そこで厚生労働省・栄養表示基準にのっとり正規な表記が求められ、無塩バターという呼び名は使われなくなりました。
マーガリンの原料
マーガリンの原料は、コーン油や菜種油や大豆油などの植物性油脂に乳製品やビタミン、乳化剤を添加して冷やして固めた食用加工油脂です。日本農林規格(JAS)において、油脂含有率80%以上と定められています。80%未満のものはファットスプレッドと呼ばれていて、カロリーが抑えられています。また、原料に加えるものによって、味や柔らかさも違います。
バターの味と特徴は?
バターの味はコクがあり、風味や香りもよく、お菓子作りやパン作りによく使われています。コクを活かしてお料理全般にも使われ、ステーキやじゃがいもにのせられるバターもよく合って美味しいです。ソースの材料になって風味とコクを味わう料理も多いです。
また、他の食材や香辛料を加えたバターもあります。よくバター売り場で見かけるのはレーズンが入ったレーズンバターがあります。レモンバター、にんにくバター、パセリバターなどもあり、クラッカーにトッピングして食べたり、お料理に添えられたりしています。
マーガリンの味と特徴は?
マーガリンは油脂ですが、バターよりあっさりとしていて軽い味わいです。バター同様、マーガリンにもお菓子作り用の食塩不使用マーガリンがあり、ふんわりしたお菓子になります。冷やしてもやわらかく、パンにも塗りやすい上にあっさりしているので、サンドイッチによく合います。
バターとマーガリン・カロリーの違いは?
バターは100gあたり745kcal、マーガリンは100gあたり769kcalです。カロリーはそれほど違いがないようです。どちらも大さじ1で90kcalほどになります。低カロリーのものだと、油脂含有率80%未満のファットスプレッドにすると、100gあたり635kcalでいくらか抑えることができます。マーガリンは原料に加えられたもので味や特徴が変わるので、カロリーハーフタイプのものもあります。
バターとマーガリンの違いは他にも
バターとマーガリンの違い・ビタミンA
バターは原料である牛乳のおかげで、ビタミンAが多く含まれています。マーガリンに含まれるビタミンAが100g中24μgであるのに対して、バターは100g中520μgもあります。栄養価の高い牛乳から作られている食品だと言える点です。
バターとマーガリンの違い・コレステロール
ビタミンAの多かったバターですが、残念ながらコレステロールがマーガリンよりもかなり高めです。マーガリンのコレステロールが100g中5mg、ファットスプレッドが4mgであるのに対して、バターのコレステロールは100g中210mgにもなります。いい香りでコクのある美味しいバターですが、食べ過ぎには注意です。
逆にマーガリンは原料が植物性油脂なので、中性脂肪やコレステロールを減らす働きがあります。どの植物かによって含まれる栄養素は違いますが、植物油は人間が体内で作ることができない必須脂肪酸を含んでいて、生活習慣病予防に効果があります。オレイン酸やリノール酸などです。
バターとマーガリンの違い・価格
少し前に、バターが品薄になり売り場からなくなって、パン屋さんなどが非常に苦労されたことがありましたが、バターは牛乳から生産されるものですから、原料の生産状況によって価格が左右されます。一方、マーガリンは加工食品であり、バターに比べて一定の生産が見込まれるという違いがあります。そういったことからも、価格面ではバターの方がマーガリンより高価になります。
バターとマーガリンの違い・賞味期限
自然の牛乳から作られたバターと、加工品のマーガリンでは、賞味期限にも違いが出ます。加工品であるマーガリンの方が、バターより賞味期限は長いです。また、一度開封してしまうと、マーガリンは冷蔵しておけば比較的状態が安定しているのに比べ、バターは劣化が早いです。開封したら、美味しいうちにいろいろな料理に使って早めに使い切りましょう。
お菓子作りにおける違いは?
お菓子を作る場合は、やはりバターの香りと風味が適しています。コクがあって食べ応えのあるお菓子ができるのもバターの方でしょう。しかし、マーガリンのメーカーも最近では様々の工夫を凝らし、バターに負けないコクのあるマーガリンや、バターの風味が楽しめるマーガリンなどを作っています。お菓子用のマーガリンもあります。では、バターとマーガリンをお菓子作りに使った場合の違いはどんなものなのでしょうか?
作業のしやすさの違い
バターとマーガリンの違いと言えば、やわらかさがありますが、これがお菓子作りには大きな違いになります。例えばパウンドケーキを作るとき、バターをクリーム状になるまで練って砂糖と擦り混ぜますが、バターは硬いので練ったり混ぜたりがしにくいのです。その点、マーガリンはやわらかいため、練ったり混ぜたりがとても簡単です。
味と食感の違い
バターを使ったものに比べて、マーガリンを使ったお菓子は、味はあっさりしていて食感はふんわりします。例えばスポンジケーキは、ふんわり軽くてあっさりしたスポンジに仕上がります。バターで作るとしっかりとコクがあって、少々重たくなりがちですが、マーガリンであれば軽い仕上がりになるという違いがあり、生チョコケーキやブラウニーなどこってりしたものにマーガリンを使ってみるのもおすすめです。
また、クッキーなどにマーガリンを使うと、サクッとした軽い食感になります。パンにマーガリンを使うと、ふんわりしてしっとりした食感になります。バターと違って、マーガリンは水分があるためです。原料の違いが食感の違いにもなります。
風味とコクの違い
どうしても、風味とコクはバターの方がマーガリンより勝ります。ただその分、コレステロールはバターの方が高いですから、コレステロールを抑えつつ、バターの風味やコクを楽しみたいのであれば、各メーカーが工夫を重ねて開発した、お菓子用のマーガリンやバターのいいところを兼ね備えたマーガリンを試してみるのもいいでしょう。
作りたい生地の種類による違い
クロワッサンやデニッシュなどの層が何層にもなってサクッと食べるタイプのものは、生地を伸ばして間に薄くした硬いバターをはさむようにして折り込んでいくことを繰り返し繰り返し、途中で冷蔵庫に寝かしながら時間をかけて作ります。そういった、間にバターを折り込みながら層を作っていく生地の場合は、硬さのあるバターの方が、均一に薄く延ばしたり層をキープするのには向いているでしょう。
ただ、バターが手に入らなかったり、マーガリンの方が安価ということで、マーガリンでクロワッサン作りをする人も多く、レシピや画像がたくさんアップされています。やはりどなたも、やわらかいマーガリンだと折り込みが難しいようです。しかし、お菓子用のマーガリンを使ったり、あらかじめ成型してよく冷やすなどの工夫をしていました。バターより柔らかいので、発酵温度を低めにするという工夫も必要のようです。
マーガリンの気になるトランス脂肪酸
マーガリンについて、その中に含まれる「トランス脂肪酸」が近年問題視されていることを気にされている方も多いでしょう。トランス脂肪酸は、摂りすぎると健康に悪影響を及ぼす危険があるとして、アメリカではすでに規制されている脂肪酸です。
なぜマーガリンにトランス脂肪酸が?
マーガリンの原料は植物性油脂ですが、これは常温では液体です。これをあのマーガリンの利点である柔らかさを保った半固形状にするために加工する過程で、トランス脂肪酸を生成してしまいます。当然、そのようなマーガリンやファットスプレッドを使ったお菓子やパン、揚げ物にもトランス脂肪酸は含まれてしまいます。アメリカの食生活では口にする量が多く、危険視されて規制されたわけです。
ちなみに、マーガリンから水分と添加物を取り除き、クリームにしたものがショートニングで、パンや洋菓子、スナック菓子や揚げ物、レトルト食品などに使われています。以前、ファーストフード店の揚げ油にこのショートニングが使われており、トランス脂肪酸の危険性が指摘されてから問題になりました。現在は改善されていますが、マーガリンだけを避けたとしても、いろいろな加工食品に含まれていることが多いと言えそうです。
トランス脂肪酸が体に与える悪影響とは?
そもそもトランス脂肪酸は食料から摂取する必要のない物質です。そのトランス脂肪酸を摂取することでおこる悪影響は、血中の悪玉コレステロールを増やし、善玉コレステロールを減らすというものです。突然死、糖尿病、高血圧、メタボ、健康被害などの影響があり、WHOで心臓疾患のリスク増加と強い関連がある物質だと指摘されています。
トランス脂肪酸を摂取する量はどのくらいにする?
国際機関の専門家会合で公表されたトランス脂肪酸を摂取する量は「総エネルギー摂取量の1%未満」に抑えることとされました。これを受けて農林水産省では、日本人の1日のエネルギー摂取量の平均は1900kcalであることから、1日あたりの摂取量は約2g未満であると計算しています。
現在日本人が摂取しているトランス脂肪酸の量は、農林水産省の調査によると、1人1日あたり1gにも満たない量で、通常の食生活では影響は少ないとしています。しかし、前述のように、様々な加工食品に含まれているため、外食やコンビニ弁当が多く自炊をすることが少ない人は、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングに限らず、脂質全般の摂り過ぎに注意が必要です。
各メーカーが取り組む対策
マーガリンやファットスプレッドに含まれるトランス脂肪酸を摂取することの危険性や悪影響の内容が、消費者の間でも知られるようになり、生産している各メーカーがトランス脂肪酸低減への取り組みをしています。トランス脂肪酸だけに限らず、脂質や食塩の摂り過ぎに注意するよう、農林水産省が呼びかけています。
バターとマーガリンの違いを上手に使い分けよう
ここまで、バターとマーガリンの違いについてまとめました。バターにもマーガリンにも、それぞれ特徴があり、それに適した利用をすることでどちらもおいしく食べられます。もちろん、摂り過ぎは体によくありませんから、ほどほどの量に注意して、それぞれの良さを活かした上手な使い分けをして楽しみましょう。