煎り酒とは江戸時代から使われる万能調味料!その作り方と使い方を紹介
煎り酒と聞いても今の私たちの時代では馴染みのないものなので、お酒の一種か何かだと思われがちですが、この煎り酒は調味料の一つで室町時代から江戸時代まで使われていたものなのです。今の時代でいうところのしょう油に近いこの煎り酒は塩分も控えめで、最近健康志向が強くなってきているおかげでまた、注目されてきているので今回はこの煎り酒の作り方や、使い方などを紹介していきます。
目次
煎り酒ってどんなもの?
煎り酒とは、室町時代から江戸時代中期にかけて調味料として使われていたものでその当時は「垂れ味噌」と呼ばれて親しまれていました。今でいう、しょう油の役割を果たしてきたこの煎り酒は白身の刺身につけると非常によく合いますし、他のどの料理に使っても相性が抜群です。この万能調味料とも言える煎り酒は、江戸時代の中期以降にしょう油の存在が出てきて自然とすたれてきたようです。
しかし、時を経て今の時代にまた幻ともいえるこの煎り酒が注目を集めてきています。今はまさに健康ブームです。カロリーオフや糖質カットや塩分カットという言葉を最近、よく耳にします。そんな時こそ、この煎り酒が実はとてもヘルシーなんじゃないかということで再ブレイクしつつあるのです。
実際に、この煎り酒の原材料は主に純米酒、梅干、鰹ぶし、昆布などで構成されており塩分と言ったら主に梅干の塩分くらいであとは出汁の旨味で成り立っているので本当にヘルシーな調味料と言えます。そしてまた、素朴な味わいの調味料なのでどんな料理にも合わないということがなく、真の意味での万能な調味料と言えます。
この煎り酒は、作り方も非常に簡単で誰でも手軽に作ることができることと、どんなものにでも合う万能な調味料なことから、使い方が実に多彩ですので本当におすすめの調味料です。それでいてヘルシーなのですからもうこれは使うしかありません。もともと、塩分が少ないので他の料理の味を決して邪魔しないのが良い特徴の一つなのです。
煎り酒の材料
今、この昔使われていた万能調味料である煎り酒を買おうと思っても、なかなか手に入れることはできないのが現状であり非常に残念ですが、もうこれは自分で作ってしまうほかありません。作るなんてできるのだろうかと思ってしまう人も多いかと思いますが、意外と手軽に作れてしまうことがわかりましたので次にこの万能調味料である煎り酒の作り方を紹介していきます。
まず、材料ですが煎り酒というからには日本酒が必要です。ここで注意したいのは日本酒の種類ですが、米と麹のみで作られた純米酒を使用するということです。純米酒を使うことでうまみ成分であるアミノ酸がたくさん入っているために出来上がりの煎り酒のうまみに大きく関わることになるからです。
次の材料として、梅干を使います。梅干はたくさん種類がありどんな梅干を使っていいのか迷うところですが、ここでも注意が必要になります。昔ながらの塩とシソだけで作られたしょっぱめの梅干を使用するということです。今の時代、梅干もはちみつ入りや砂糖入りの甘めの梅干も売っていますが、この煎り酒を作るときは昔ながらの梅干を使った方が昔の味を再現できます。
今は、パッケージに塩分の%表示があるのでわかりやすいですがだいたい塩分10%あたりのものを使うのがいいです。正直、煎り酒を作ってみるとわかるかと思いますが甘めの梅干を使用すると調味料として、物足りなさを感じることになります。
出典: https://tkjm.jp
次の材料は、鰹節です。この鰹節はどんなものでも構いません。厚削りのものを使ってもよいですし一般的な鰹節でも味にそんな変化はありません。基本の煎り酒の材料は、たったこの3つだけです。これに昆布を加えてもまた、出汁がよく出て更なる旨味を引き出してくるのでおすすめです。しかし、この昆布は+αと考えても問題はありません。
煎り酒の作り方
作り方は至ってシンプルで簡単です。日本酒300ccに対し、梅干が一つ、塩が小さじ1/3程度の分量でこの3つの材料を鍋に入れて中火で熱していきます。沸騰したら、鰹節を10g程度を鍋に投入してそのまま煮詰めていきます。半量くらいになるまで煮詰めたら、あとは常温で冷ましておいてその後キッチンペーパーや布などで濾したら出来上がりです。
見た目は、濃いめの出し汁のような色になっていたらOKですが何度か作っていくうちに自分好みに調整できるような作り方ができるのもまた魅力の一つです。濃いめにしたい人は煮詰める時間を長くしたらいいですし、ほんとに薄めにしたい場合は煮詰める時間を短めにするとよいです。
出典: http://tvksj.com
煎り酒はどんな味?
実際に作った煎り酒はどんな味になるのか気になるところですが、日本酒を煮詰めているので旨味がしっかり出ていて、鰹だしの風味もしっかり効いているところに爽やかな梅の酸味も広がり、塩分も控えめながらもしっかり調味料としての役割を果たしており決して寝ぼけた味にはなっていません。これはまさに他の食材をしっかり引き出してくれる万能調味料そのものです。
この、煎り酒という調味料は自分で作ることによって、好みの濃さに調整できることもさることながら使う料理によって使い分けもできてしまうのは本当に万能と言えると思います。使い方は様々でいろんなシーンで活躍できる煎り酒はおすすめな調味料です。実際にどんな料理にどのような使い方をしたらよいのか紹介していきます。
煎り酒のおすすめな使い方
煎り酒のおすすめな使い方と、見出しに書きましたが特別この料理にぜひ!というわけではなく、はっきり言ってどんな料理にも合わないということはありません。強いて言うなら、やはり日本酒が主な材料なのでやはり、日本料理に使うのが一番無難ですが、味の好みは人それぞれですからいろいろ自分で使い方を探せる楽しみもあります。ここでは鉄板の煎り酒を使ったレシピを紹介していきます。
煎り酒レシピ:卵かけごはん
この卵かけごはんは、現代では幻と言われている煎り酒を作っている数少ないメーカーさんが紹介しているものですが、やはりシンプルがベストだと思わせてくれる一品です。レシピと言っても、作り方は単純に溶いた卵をごはんに混ぜてその後に煎り酒をご飯にかけて食べるだけというものです。お好みで刻みのりや、ワサビをのせても美味しく食べられます。煎り酒はしょう油のような使い方をします。
煎り酒は鰹だしが効いているので、この卵かけごはんの他にも納豆にかけても非常に美味しく食べることができますし、出汁巻き卵を作る時にもこの煎り酒は最高の調味料になると思います。梅の爽やかな風味が広がりさっぱりとした仕上がりになるのでおすすめです。
煎り酒レシピ:煎り酒大豆
これもレシピというよりは、茹でた大豆を煎り酒に漬け込むだけのシンプルな作り方のものです。これがまた煎り酒の旨味と大豆の相性がびっくりするほどよく合います。このまま食べても十分に美味しいですが、ただのグリーンサラダにトッピングとして、煎り酒大豆を加えてもおしゃれになるのでとてもおすすめです。
煎り酒レシピ:煎り酒のたれでチヂミ
煎り酒は、日本料理が無難だと言いましたがここではなんと韓国料理のチヂミのつけだれとしての使い方もよく合うことがわかりました。たれの作り方ですが、煎り酒にラー油と白ゴマと酢を加えるだけでチヂミのたれに早変わりします。ここでも梅干の程よい酸味が何とも言えずさっぱりとチヂミを食べることができます。さっぱりとチヂミを食べたいならば断然、万能な煎り酒たれはおすすめです。
煎り酒レシピ:鶏ささみの酒蒸し煎り酒かけ
作り方は鶏ささみに酒をかけて、ふっくら蒸したものに叩いた梅や、青じそなどの薬味をのせたうえに煎り酒をかけたら出来上がりのこの一品ですが、これも煎り酒との相性は抜群で非常におすすめです。鶏ささみをほぐしてレタスなどと和えたものに煎り酒をドレッシング代わりに使ってサラダ風にするという使い方もできます。
煎り酒レシピ:煎り酒白滝
材料は、白滝と豚小間肉、ニラだけで作り方はとても簡単です。これらの材料を煎り酒で炒っていくだけの簡単調理で、ちょっとおかずが足りなかったときの付け足し一品に役立ちます。これも万能な煎り酒の登場で他の調味料は一切なしでも風味豊かで美味しく食べることができるのでおすすめです。
煎り酒レシピ:切り干し大根サラダ
作り方は水で戻した切り干し大根の水分をしっかりとった後に、千切りにしたキュウリとニンジンを混ぜ合わせます。その後、万能調味料の煎り酒を適量かけて更に混ぜ合わせます。これだけでも十分に美味しく食べることができますが、お好みでごま油に酢などを合わせたドレッシングを更にかけても美味しくなります。
このレシピは最後にかけるドレッシングを好みで変えることができて食べ方が自由に選ぶことができ、バリエーション豊かに広げることができるのが魅力です。胡麻ドレッシングも非常によく合い、おすすめです。
煎り酒レシピ:ぶりの照り焼き
作り方はぶりに塩を適量振って2分ほど置いた後、流水で洗い流して水気をしっかりキッチンペーパーでふき取ります。その後、ぶりを煎り酒に漬けて10分ほど置きます。この時煎り酒の量は、ぶりがつかるくらいまでしっかりと漬け込んでいきます。その後、フライパンでぶりと食べやすい大きさに切った長ネギを焼いていきます。この時、油は引く必要はありません。
ぶりに火が通ったら、煎り酒をゆっくりと回しかけて出来上がりです。皿にぶりを盛ったあとに残った汁をかけてお好みで柚子の皮などを添えて完成となります。煎り酒にぶりを漬け込むことによって、ぶりの肉質がふわっとした仕上がりになるのと、しっかりと照りもついてくれて焼き色もいい具合になります。煎り酒があればみりんや砂糖を使うこともなくなり本当にヘルシーな照り焼きになるのでおすすめです。
煎り酒レシピ:鰹の煎り酒浸し
作り方は、刺身用の鰹に軽く塩を振っておき10分ほど置きます。その後、鰹から出た水気を軽くふき取り薄くスライスしたものをタッパーに入れます。そしてそこに煎り酒をしっかり浸して半日ほど冷蔵庫に置いておけば完成です。この鰹の煎り酒浸しは、日本酒に合うことはもちろんのこと白ワインにもぴったりの一品で酒の肴に最適で非常におすすめです。
これを元に、アレンジも可能です。鰹の代わりに炙ったメカジキを漬け込んでも非常に美味しいです。煎り酒はもともと刺身につけるしょう油の代用品として使用されてきたので、白身魚の刺身全般にも合いますし昆布〆にもいいです。和食だけではなく、例えばカルパッチョなどにする使い方もあり、煎り酒に少しオリーブオイルを混ぜ合わせるといつものカルパッチョよりもさっぱりと食べられます。
煎り酒レシピ:お吸い物
材料は、椎茸と麩と煎り酒と水だけで作り方はとても簡単です。薄くスライスした椎茸と水であらかじめふやかしておいた麩を最初に用意しておきます。次に鍋に水と煎り酒を入れて沸騰させたあとに椎茸と麩を加えてひと煮たちさせて完成です。因みに水と煎り酒の分量は1対1です。煎り酒の旨味が十分なのでお吸い物なのに出汁をわざわざとる必要がないので手間が省けて作り方も簡単になります。時間がない時におすすめです。
ここでは椎茸と麩を具材に入れましたが、お吸い物の具材はお好みでとろろ昆布でもいいですし、いろいろお好みですきなものを入れて楽しむことができます。出汁いらずでその代わりをしっかり果たしてくれるこの煎り酒はやはり万能です。
煎り酒のおまけレシピ
煎り酒を作る際にかつお節や梅干を使いますが、最終過程で濾してその液体が煎り酒という調味料になりますが、残ったかつお節や梅干をそのまま捨ててしまうのはもったいないということで、濾して残ったかつお節や梅干も有効活用してしまおうという使い方があったので紹介します。
材料は煎り酒の出し殻に、青ネギ一本と麹味噌大さじ3程度と、白ゴマで作り方はとても簡単なのでおすすめです。まず最初に煎り酒の出し殻と青ネギをみじん切りにして、フライパンで水分を飛ばすように炒っていきます。この時、煎り酒の出し殻の梅干の種は事前に取り除いておきます。水分をしっかり飛ばしたら麹味噌と白ごまを混ぜ合わせて完成です。
これは、ご飯のお供に非常に最適で、白米の上にのせて食べたり冷ややっこなどの豆腐の上にのせたり、お酒のお供にちょこちょこそのままつまんで食べたり、おひたしにの上にのせても美味しく食べることができます。出し殻もこのような使い方をすることができるので非常におすすめです。
煎り酒の使い方は無限大!
いくつか、煎り酒の使い方を知ってもらうためにレシピを紹介しましたが、最終的に言えることは煎り酒は旨味はしっかりあるのに他の食材の邪魔をせずに引き立ててくれるということです。と、いうことは極論を言えば何に加えても問題はないということになります。例えば既存の調味料に煎り酒をちょっと足すだけで、風味が豊かになったり旨味が増すのでそういう使い方もできます。
例えば、ポテトサラダに使うマヨネーズに煎り酒を足すと、ポテトサラダに味の深みが増します。煎り酒には梅干が入っていますから、ほのかにさっぱりとした風味も楽しむことができて、今までのポテトサラダよりもくどさが軽減されるという利点もあります。この他にも、ごま油を使ってチャーハンや中華系の炒め物をする時も同様に、煎り酒を入れても結果は今までのチャーハンや炒め物よりも旨味アップになります。
パスタやリゾットにも同じことが言えます。オリーブオイルを使う場面で煎り酒を足して作ってみても本当に美味しくなります。このように和食だけに留まらず中華やイタリアンでも、煎り酒は大活躍するというわけです。こんな万能な調味料が今はもう、売ってるところが限られているというのは非常に残念でなりませんが、幸いなことに作り方が非常に簡単で、材料も簡単に手に入るものばかりなので家庭では備蓄しておきたいものです。
調味料全般に言えることは、どの調味料も比較的自己主張がはっきりしていて野菜や魚、肉などの味を時には上回ることもあります。なんとなく食べていて美味しいと思うものでも、実は調味料の味で美味しいと感じてしまっている場合も多々あります。ソースやマヨネーズなどはその代表のような気がします。比較的素材の味をしっかり引き出してくれるのは塩くらいなものです。
しかし、塩は調味料としてシンプルですが塩分の摂りすぎは健康被害につながります。食材の味を活かしてくれてカロリーも低いものですがしょっぱいものに慣れると、どんどん舌がそれ以上を求めるようになり、最終的には塩分の摂りすぎになっていってしまうのです。そんな時こそこの煎り酒の登場です。
煎り酒は、塩分と言っても梅干しや鰹ぶしに含まれる微量の塩分ほどで、しょう油を使うよりは遥かに塩分をカットすることができます。それでいて、旨味成分がしっかりしているので決して味が薄くて寝ぼけた味というわけでもありません。普段から濃い味付けに慣れている人は最初だけ薄いと感じるかもしれませんが、3日も使っていると慣れてきて、その後にしょう油を使うとしょっぱいと感じるほどになります。
それは、ちゃんと舌がリセットされたということの証明にもなることで味覚そのものが敏感になり、食材そのものの味をしっかりと味わえるようになるという利点まであります。まさに、人の体にいい効果をもたらしてくれるこの煎り酒は「古き良き時代」ならぬ「古き良き調味料」といえる万能な調味料です。
煎り酒を活用して健康生活!
煎り酒は、本当にヘルシーな調味料であるということがわかりました。室町時代中期から、しょう油が開発されるまでの短い期間しか出回らなかったのは、それだけしょう油の登場にインパクトが大きかったことだと言えます。一般的に今も昔も、味の濃いものが美味しいものだと感じている人がそれだけ多いということに他なりません。今の時代、味の濃いものが溢れています。子供の味覚の問題が取りざたされているほどです。
味の濃いものは、味覚の問題だけではなく成人病といわれるものにも直結しています。成人病のほとんどは大体元を辿っていくと、高血圧が原因です。この高血圧になる一番の原因は塩分の摂りすぎで、食生活に密接に関わってくるものです。塩分は人間が生きていくうえで必要不可欠なものですが、摂りすぎると逆に人間の命を脅かすものへと変わってしまいます。
そんな中で、今になって健康ブームが訪れて糖質制限ダイエットが話題になったり、カロリーオフのものがたくさん売られていたりしています。そんな時代だからこそしょう油が開発される前に使われていた、ヘルシーな煎り酒が脚光を浴びるときが来たのだと言えます。人間が美味しいと感じることができるようになるには旨味成分がどれだけあるかです。
旨味成分は主にアミノ酸ですから、この煎り酒はまさにうってつけです。純米酒が使われているので旨味成分はしっかりとありますし、かつお節や昆布でもしっかり出汁をとれることで濃い味付けは必要なくなるわけです。煮物でもなんでも、出汁が命ですから出し汁がしっかりしていれば必要以上の塩分など本来であれば必要ないわけです。
煎り酒は、全ての条件を満たしている調味料です。旨味成分がしっかりあるので塩分は梅干の塩分程度でも問題なく美味しいと感じることができるのです。しょう油に比べて相当な塩分カットにつながる煎り酒を日々の食生活に摂り入れることで、より一層成人病のリスクから遠ざかることができるのです。こんな万能で健康的な調味料があること自体、まだ知らない人の方が多いのが現状で残念でなりません。
いいことだらけな万能調味料の煎り酒を知った以上ぜひ使ってほしい一品であることは間違いありません。売っているところが少ないのが残念ですが、自分で作ってもほとんど手間もかからずに特別な材料も必要がないことがわかりましたので、家庭で手軽に作っていろいろな料理に活用していくことこそ今よりも健康的な生活を目指していけると言えますので、一度は試す価値がありますのでチャレンジしてみてください。