2019年04月11日公開
2024年09月11日更新
ショートニングとは?体に悪い・危険な理由は?代用やトランス脂肪酸を解説
ショートニングが体に悪いと聞いたことはありますか?ショートニングやマーガリンに含まれるトランス脂肪酸が危険だと問題視され、アメリカをはじめとする諸外国で規制されています。ショートニングはパンやクッキーなど様々な食品に含まれています。ショートニングが危険だといわれる理由は何でしょうか?なぜ日本で規制されないのか?ショートニングの使い方は?バターなど他の食品で代用できるのかをみていきましょう。
目次
ショートニングは食べないほうがいい?
「食べるプラスチック」「ゴキブリも食べない」「狂った油」などその危険性が、センセーショナルに書かれることが多いショートニング。その危険性から、世界各国で規制の対象にもなっている食品です。
しかし日本では規制されることはなく、いまだにクッキーやパン、ケーキなどありとあらゆる食品に含まれています。ショートニングが含まれていない食品を探すほうが難しいくらい、日本の食品業界では当たり前のように使われている現実があります。
そもそも、ショートニングとは何からできているのでしょうか?私たちの口に入れるものでありながら、原材料を知る人は少ないかもしれません。
なぜ、ショートニングが体に悪いといわれるのか?ショートニングは本当に体に悪いのか?アメリカをはじめとする海外では規制されているのになぜ日本では使われ続けているのか?
ショートニングは本当に「食べるプラスチック」であるのか?その実態を詳しく探っていきましょう!
ショートニングとは?
体に悪いという噂ばかりが都市伝説のようにささやかれているショートニング。そもそもショートニングとは一体何なのでしょうか?その歴史や使い方を詳しくみていきましょう。
ラードの代用品としてアメリカで開発
ショートニングは主に植物性の油を原料に作られた加工油です。アメリカで19世紀末に、ラードの代用品として作られました。
クリーム状で無味無臭で、食品をサクッとさせたり揚げ油にすることでパリッとさせることができます。この食感を表す言葉、「short」(ショート)からショートニングという名前はつけられました。ショートケーキの名前の由来も、ショートニングを使ったケーキからきています。
パンやお菓子にサクサク感が出せる
ショートニングは様々な使い方をします。主な使い方はパンやクッキーの食感をよくするために使われます。パンは生地をこねることでグルテン(タンパク質の膜)ができます。その間にショートニングが入り込み、生地の伸びが良くなり水分の蒸発を防ぎます。
そのため、パンはふっくらと焼き上がり、次の日になっても堅くなりにくくふっくら美味しい状態を保てるのです。
一方、クッキーやお菓子作りではサクサクした食感を出すために使われます。クッキーのサクサクの秘密もグルテンと関係があります。やはり、水と小麦粉をねることでグルテンが生まれます。
グルテンが多いとカチカチのクッキーになってしまいます。グルテンの発生を抑えるためには油分が必要で、そのためにショートニングが使われるのです。
ショートニングの使い方はいろいろ
ショートニングはそのほかにも色々な使い方がされています。乳脂肪分の少ないアイスに使い、コクと滑らかさを出したい場合に使われます。
そのほかの使い方は、ファストフード店のフライドポテトやフライドチキンの揚げ油に使うこともあります。ショートニングで揚げた食品はカラッと揚がり、いつまでもカラリとした状態をキープします。
先ほど紹介したようにケーキに使われたり、ドーナツやスナック菓子、照りを出すために和菓子にも使われていることもあります。このようにショートニングには、たくさんの使い方があるのです。
コンビニやスーパーで売られている食品は、ショートニングが含まれていないものを探すほうが難しいくらい、ほとんどのもので使われています。サクサクしたもの、カラッと揚がっているものの多くはショートニングが入っていると言っても過言ではないほど使われているものなのです。
ショートニングの原料と成分
色々な使い方で日本の食生活に入り込んでいるショートニング。ショートニングの原材料、成分を詳しくみていきましょう。
原料は何からできてる?
様々な使い方で私たちの知らない間に、食品に含まれているショートニング。その原材料は、植物性や動物性の油です。大豆、菜種の他、クジラや魚の油が使われることもあります。
油は通常液体ですが、ショートニングはクリーム状です。クリーム状にするために、乳化剤や窒素ガス、炭酸ガスを混ぜクリーム状の半固形にするのです。
この時原料とする油は利用目的によって選択することができます。そのため、ショートニングは利用目的によって多くの種類があります。
ショートニングの成分
ショートニングの成分をみていきましょう。ショートニングは100gカロリー884Kcalです。成分は、脂肪酸に飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸(オレイン酸、リノール酸、αリノール酸)ビタミン(E・K・パントテン酸・コリン)ミネラル(ナトリウム・カルシウム・鉄)トランス脂肪酸が含まれています。
ショートニングが体に悪いと言われる理由
色々な使い方で食生活を支えているショートニング。なぜ、ショートニングは悪者扱いされるのか?その原因はトランス脂肪酸にあります。体に様々な悪影響を及ぼすと言われる、トランス脂肪酸の実態に迫ります。
危険視される原因はトランス脂肪酸
ショートニングが世界中で問題視されるのは、含まれる成分、トランス脂肪酸に原因があります。ショートニングのように人工的に作られる油は、製造過程でトランス脂肪酸を作り出します。
人工的にショートニングを作り出す過程で生まれるトランス脂肪酸の構造が、プラスチックに似ていることから「食べるプラスチック」と言われる原因になりました。
トランス脂肪酸の問題
トランス脂肪酸を食べると体に悪いと言われる理由は何でしょうか?トランス脂肪酸を摂ることで起こる体への悪影響で代表的なものは、悪玉コレステロールが増える、善玉コレステロールが減る、心筋梗塞の原因になる、不妊症になるなどです。このように体に起こる様々な影響が懸念されています。
ショートニングの「トランス脂肪酸」はどのくらい危険?
ショートニングやマーガリンに含まれていることで問題になっているトランス脂肪酸。食べることでどのような影響があり、どのくらい危険なのでしょうか?
体への悪影響
トランス脂肪酸は自然界には存在しない「トランス型」と言われる配置を持った脂肪酸のことです。トランス脂肪酸は悪玉コレステロールを増加させ、善玉コレステロールを減少させます。その結果、糖尿病、高血圧、心筋梗塞、脳梗塞など生活習慣病のリスクが高くなります。
体に脂質は必要ですがトランス脂肪酸が脳神経などに使われると、脳の伝達神経組織を変形させると言われています。ショートニングやマーガリンなど、トランス脂肪酸が入った食べ物を大量に摂取し続ければうつ病、情緒不安定など神経症状が現れるといわれています。
特に体が成長過程の小さな子供が、トランス脂肪酸たっぷりな食べ物を摂り続けるとどうなるかは簡単に想像がつきます。このことから、アメリカをはじめとした世界各国で規制されることとなったのです。
規制が各国で始まる
2003年、世界保健機関(WHO)と食糧農業期間(FAO)は「食事からトランス脂肪酸の摂取を極めて低く抑えるべき。最大でも1日あたりの総エネルギーの1%未満に抑えるべき」と発表しました。
この勧告でスイスやデンマークなどでトランス脂肪酸の規制が始まりました。また、アメリカのニューヨークで2006年にレストランでのトランス脂肪酸禁止を勧告しました。
アメリカの米食品医薬品局(FDA)は、「食用として一般的には安全とは認められない」として、「2018年6月以降は食品への添加を原則認めないこととした」と発表しました。
このようにヨーロッパやアメリカ、カナダではトランス脂肪酸は規制の対象となっているのです。WHOは2023年までに世界中の全ての食べ物から人口のトランス脂肪酸を取り除く予定、としています。しかし、日本ではいまだに規制されてはいません。将来的にトランス脂肪酸が取り除かれる日は来るのでしょうか?
日本ではなぜ規制がされていないのか?
アメリカやヨーロッパではすでに規制されているトランス脂肪酸。しかし、日本ではいまだに規制されていません。それはなぜでしょうか?
それは欧米の食生活と日本の食生活の違いです。日本人の一般的な食生活では、トランス脂肪酸の摂取は総カロリー中、0.3%から0.6%ほどとWHOが規制している1%を大きく下回っています。
ファストフードやピザ、パンやクッキー、ドーナッツなどトランス脂肪酸が多く含まれているものを毎日食べる欧米人と日本人では食生活が全く違うため、摂取量が低く規制しなくてもいいという考えなのです。
この考えは「総摂取量が1%未満なら過度に心配しなくても大丈夫」「いやいや1%以下でもトランス脂肪酸を規制するべき」と賛否両論あります。美味しいものがいつでもどこでも買える今、食べ過ぎれば簡単に規制量をオーバーすることは容易に想像できます。このまま規制しなくても食の安全が守れるのかは疑問が残るところです。
マーガリンは食べないほうがいい?
トランス脂肪酸がたっぷり入った食品といえばマーガリンです。マーガリンはトランス脂肪酸が多い食品として問題になりました。一昔前のマーガリンはなんと、トランス脂肪酸が15%〜20%ほども含まれていました。
しかし、アメリカなど海外でトランス脂肪酸が規制され始めると、各メーカーも独自の企業努力を始めます。今ではその含有量は、0.8%から1%ほどです。いまだにトランス脂肪酸が多いマーガリンもありますが、マーガリンのほとんどは問題ない数字になっています。
そのため、マーガリンが体に悪いかといえば昔ほどではないといえます。マーガリンの代わりにバターを使うという人もいますが、バターにもトランス脂肪酸は含まれています(牛の胃の酵素に含まれる自然なもので問題はない)
2015年には「アメリカでマーガリンの製造が禁止になった」というデマが流れました。このようにマーガリンは体に悪い、食べないほうがいいという風潮がありますが、過度に摂取しなければ問題ないほど今は含有量は抑えられているのです。
どのくらいの摂取なら問題ない?
さて、WHOはトランス脂肪酸の摂取は総カロリーの1%未満にするのが望ましい、としています。その量はどのくらいでしょうか?
総カロリーの1%ということは、食べるカロリーによって量が変わってきます。一日1500Kcalの場合は1.5g、2000Kcalの場合は2gまではOKということになります。
大きさにもよりますがパンなら0.7g、ケーキは1g、マーガリンひと塗り0.3g、ドーナッツ0.5g、スナック菓子一袋1gがトランス脂肪酸含有量のおおよその目安になります。
ショートニングの代用品
さて、体に悪いトランス脂肪酸が含まれているショートニング。ショートニングをなるべく使いたくないという場合は、違うもので代用可能なのでしょうか?もし代用できるのならなるべく体にいいもので代用したいものです。
ラード
ショートニングはもともと、アメリカで「ラード」の代用品として作られたものです。色も形状もラードとショートニングはそっくりです。
そのためラードはショートニングと同じように使うことができます。特に揚げ油に使うとカラッと揚がってサクサクと香ばしい、独特の風味と食感が楽しめます。
バター
どちらも主成分が脂質ということで「バター」はショートニングの代用に使えます。バターと一口に言っても、無塩バター、有塩バター、発酵バター、無発酵バターなど種類があります。
バターはお菓子作りに代用可能ですが、小麦粉や卵がメインのお菓子にはあまり向かず、バターの風味や香りが付いてしまいます。バターのコクや香りを活かしたお菓子に使うといいでしょう。
オリーブオイル
少し意外ですが「オリーブオイル」もショートニングの代用に使えます。市販のパンでもオリーブオイルを使ったものがあるように、パン作りの際にショートニングの代わりに使えるのです。もちろんお菓子作りにも代用可能です。
特に全粒パンやライ麦パンなど、素材の味を活かした素朴なパンはオリーブオイルが向いています。一方で、バターの風味を生かしたパンに、ショートニングの代わりにオリーブオイルを使うのはあまり向いていません。
ショートニングについての知識をしっかり持とう
トランス脂肪酸が含まれるショートニングは体に悪い物、というイメージがあります。確かにアメリカやヨーロッパでは規制の対象になっています。
便利で色々な使い方で私たちの食生活に密接に関わりがあるショートニング。確かにたくさん摂取すれば体に悪い影響があるでしょう。しかし、普通に生活している分には過度に恐れるものではないともいえます。
しかし、ショートニングやマーガリンに含まれるトランス脂肪酸の影響はゼロではないともいえます。少ないから安心か?少しでも危険なものなのか?結局の判断は自分自身がするしかありません。
今は体にいい食品は探せばたくさんあります。トランス脂肪酸の少ないショートニングもあります。正しい知識を得て、自分の食べるものは自分で判断するのがいいでしょう。