天然酵母の作り方は?レーズンやリンゴで簡単にできる自家製の元種を紹介

近頃、天然酵母を使った人気のパン屋が増えています。海沿いの町や山間など自然豊かな場所で天然酵母のパン屋を目にすると、周りの風景と相まって、何やらとても健康的でいつも食べているパンとは違う「何か」をもたらしてくれそうな気分になります。そんなイメージを持つ天然酵母ですが、実はそんなに特別なものではなく、自宅で作ることができるのです。今回は自家製の天然酵母の作り方を中心にお伝えします。作り方は簡単ですので、参考にしてみて下さい。

天然酵母の作り方は?レーズンやリンゴで簡単にできる自家製の元種を紹介のイメージ

目次

  1. 1天然酵母について
  2. 2レーズンで天然酵母を作ってみよう!
  3. 3天然酵母の作り方:レーズン酵母液
  4. 4その他の酵母液の作り方
  5. 5天然酵母液の色々な使い方
  6. 6天然酵母液作りの失敗例
  7. 7天然酵母の作り方:元種
  8. 8天然酵母元種作りの失敗例
  9. 9天然酵母作りに向かない食材
  10. 10天然酵母のすすめ

天然酵母について

天然酵母とイーストとの関係

「イースト菌」「ドライイースト」という単語は、パン作りに関わる言葉としてよく耳にするでしょう。「天然酵母」が持つ、いかにもナチュラルで体に良さそうな響きに相反する存在のように思われがちですが、そんなことはありません。自然界に存在する多種多様な菌の中から、パン作りに特化した性質を持つ酵母として大規模に培養されたのがイーストであって、体に影響のあるケミカルなものでは決してないのです。

そして、自然界の食物に乳酸菌や酢酸菌などと共に付着した酵母菌を、あるがままの状態で利用するのが天然酵母です。結果的に、複数の菌がパンの味に深みを与え、天然酵母のパン=美味しいという図式を作り出すのです。

イーストが誤解される理由

イーストがマイナスのイメージに誤解されている理由は、イーストフードの存在のせいでしょう。この2つは全くの別物です。イーストフードはパン類に使われる食品添加物で、身体への害が懸念されています。市販のパンや菓子を購入する際は、パッケージ裏面の原材料表示欄をチェックしてみて下さい。

天然酵母と自家製酵母との関係

では、天然酵母と自家製酵母の違いは何でしょうか?この2つは別物なのでしょうか?自家製酵母という言葉の印象から、人の手が加わるとそれは最早天然の物ではなくなるというイメージがあります。しかし、自家製酵母は、自然界にそのままの状態である天然の酵母を自宅で培養するわけですから、自家製酵母も天然酵母の一部であるということができるのです。今回はそんな自家製天然酵母の簡単な作り方を紹介します。

Thumbドライイーストが危険?手作りパンで知っておきたい保存法や代用品を紹介 | お食事ウェブマガジン「グルメノート」

レーズンで天然酵母を作ってみよう!

天然酵母作りにレーズンを使う理由

天然酵母作りを始めるに当たって、その入り口としておすすめしたいのが、レーズン(干しぶどう)を使ったレーズン酵母作りです。酵母菌は様々な食材に付着していますので、色々な材料を使って天然酵母を作ることができますが、その中でも特にレーズン酵母の作り方が簡単なのです。

その理由のひとつに、レーズンは高い発酵力を持ち、失敗する確率が低いことが挙げられます。また、レーズン酵母を使ったパンは、風味に強い個性を持たないので、割と誰しもが美味しいと感じる味に焼き上がります。常時スーパーで販売されており、年間を通じて簡単に手に入るというのもレーズンの利点です。

天然酵母作りに使うレーズンの選び方

自家製の天然酵母作りに使うレーズンは、ノンワックスの物を選びましょう。酵母液を作る過程で、酵母たちに呼吸をさせてやることは大切な作業のひとつです。その際にレーズンの表面がワックスでコーティングされていると、液の表面をワックスが覆い、酵母が呼吸できなくなってしまうのです。オーガニックのレーズンならば、より良いでしょう。

天然酵母の作り方:レーズン酵母液

レーズン酵母液の作り方【下準備】

まずは、レーズン酵母液を作る為に清潔な用具を用意しましょう。洗った手を拭くためのタオルも新しい物に換え、瓶や蓋は煮沸消毒して下さい。鍋で湯を沸かして瓶を煮沸消毒する際は、水の段階から煮て下さい。ガラスは急な温度変化に弱いので、沸騰したお湯に投入すると割れる可能性があるのです。また、瓶を洗う時は、スポンジではなく手で洗いましょう。これにより、細かい傷が入るのを防ぐ事ができます。

レーズン酵母液の作り方【初日】

材料はレーズン100g、水300gです。この1:3の割合で好きな量に変えても大丈夫です。瓶にレーズンを入れ、水を注ぎましょう。キツく蓋を閉めたら、10回ほど振り混ぜます。最初の状態では、淡い色の水の底にレーズンが沈殿している筈です。このまま常温で置いておきましょう。これで1日目の作業は終了です。

レーズン酵母液の作り方【2日目~】

翌日からは毎日1、2回、瓶を軽く振って上下を返しましょう。そして瓶の蓋を開けます。これは酵母に息継ぎをさせるための大事な工程になります。気温にもよるのですが、大体3日から5日程度この作業を繰り返します。やはり冬の気温が低い時期の方が時間が掛かりますが、飽きずに酵母のお世話をして下さい。瓶の中のレーズンは、毎日少しずつ浮かび上がって来ます。水の色もセピア色に近くなって来るでしょう。

レーズン酵母液の作り方【最終日】

かなりの量のレーズンが膨張してこんもりと浮き上がり、蓋を開けた瞬間にプシューと炭酸が抜けるような音がして泡立つと、酵母液作りも終わりを迎えます。この時に瓶の中から発酵したブドウの良い香りが立ち昇って来たら完璧です。冷蔵庫で1日休ませたらレーズン酵母液の完成です。

使用済みレーズンの利用法

レーズン酵母液に使ったレーズンは、食べられますが全ての甘みや旨みが出てしまっているので、美味しくありません。もし家庭菜園をしている人は、その肥料として簡単に再利用できますので、試してみて下さい。

その他の酵母液の作り方

リンゴ酵母液の作り方

ここでちょっと、その他の酵母液の作り方を見ていきましょう。作り方の基本はレーズンの場合と一緒で簡単です。リンゴなどの果物を使う場合は、果肉だけではなく、皮やヘタも使います。自然の酵母菌は食材の表面に付着しているからです。もちろん、普段は捨てる芯の部分も使えます。

この時に注意して欲しいのが、事前にリンゴを洗い過ぎない事です。丸ごと使うからといって、あまりに丁寧に洗浄すると、せっかくの酵母菌が流れ落ちてしまうのです。リンゴの表面がテカテカベタベタしている場合でも、国産のリンゴにワックスを使用する事はありませんから、安心して皮ごと使って下さい。ちなみにこのテカテカベタベタは、「油あがり」というリンゴが熟したサインです。

柑橘系酵母液の作り方

柑橘系の果物で自家製酵母液を作る際も、レーズンやリンゴなどと同様でかまいません。ただ、グレープフルーツや甘夏など、皮に渋みがあるものは、2日ほど漬けた後に煮沸消毒した菜箸で取り出した方が良いでしょう。細かく刻んでピールとしても使えますし、野菜の浅漬けやピクルスの香りづけに利用する事もできます。

天然酵母液の色々な使い方

飲み物として使う

自家製酵母はパン作り以外にもいろいろな使い道があります。まずは単純にドリンクとして楽しむ事ができます。例えばリンゴ酵母液でしたら、リンゴ特有の甘酸っぱい味と香りが日常の飲み物にピッタリでしょう。炭酸水で割っても美味です。リンゴ酵母液を仕込む際に水ではなく100%果汁のリンゴジュースを使うと、微炭酸のリンゴジュースとして大変美味しく仕上がります。

飲んだ後は減った分の水分と砂糖を少し足しておけばOK。ただ、継ぎ足しの回数を重ねるごとにリンゴの風味は弱くなっていきます。これは1ヵ月を目処に使いきってしまいましょう。おすすめは、柑橘系や梅の酵母液です。簡単で体に優しい飲み物ですので、是非試してみて下さい。

料理に使う

酵母液で肉や魚を漬けるのもおすすめです。作り方は、冷蔵用保存袋に食材と酵母液を入れて漬け込むだけです。肉質が柔らかくなって特有の臭みが抜けますので、かなり便利です。ニンニクや生姜など香菜で作った酵母液はパン作りに使うには個性が強すぎますが、肉と魚の下ごしらえには抜群の威力を発揮しますので、おすすめです。

掃除に使う

柑橘系の酵母液は、キッチン回りや窓などの掃除や消臭に最適です。濾した酵母液をスプレーに入れてシュッシュッと吹き付けて拭いて下さい。ペットや子供のためにケミカルな掃除用洗剤を使いたくない場合におすすめです。ただ、変色が心配なフローリングや家具には控えた方が良いでしょう。

天然酵母液作りの失敗例

瓶の蓋を開けた時に変な刺激臭や悪臭がしたら、雑菌が繁殖した可能性が高いです。煮沸がうまくできていなかったのかもしれません。その場合は、惜しまずに捨てましょう。また、酵母液の表面が白くなったり、綿状の物体が付着している場合はカビですから、こちらも廃棄して下さい。

それから、酵母液がすっぱ過ぎる場合は、乳酸菌や酢酸菌が元気過ぎて酵母菌が負けた時です。酢酸菌が強過ぎるとお酢になるのです。パン作りには不適ですが、料理やピクルス作りに、もしくは掃除に使えますので、うまく活用しましょう。

天然酵母の作り方:元種

元種の作り方【下準備】

保存用に大き目の瓶やポリプロピレンのタッパー、そして撹拌用のスプーンを用意します。瓶を使う場合は、スプーンと一緒に煮沸消毒して下さい。タッパーの場合は、綺麗に洗剤で洗って清潔な場所で自然乾燥させます。天然酵母元種の材料は強力粉120g、酵母液120gです。これを3回に分けて、それぞれ40gずつ使います。

これは1:1の割合がベストなだけですので、分量は変えてかまいません。また、最初に50gずつ使い、2回目と3回目には40ずつ使うという風に、1:1の割合でなら容器に合わせて分量を変えても大丈夫です。基本は強力粉ですが、慣れて来たら全粒粉やライ麦に変えて風味の変化を楽しんでみるのも楽しいでしょう。

元種の作り方【1回目】

容器に強力粉40gと自家製酵母液40gを入れ、スプーンで混ぜます。酵母液をよく見ると、底に白っぽい澱が沈殿しているでしょう。ここは酵母菌の巣窟ですので、しっかり全体に混ぜて使って下さい。そして元種のカサが判るように、輪ゴムやマスキングテープで容器に印をつけておきましょう。

季節によりますが5~8時間経過すると、最初につけた印の位置から2倍の量に増えている筈です。こちらも酵母液と同様に寒い時期の方が時間が掛かります。容器の底を見て気泡の発生が確認できたら、冷蔵庫に入れて一晩寝かせます。

元種の作り方【2回目】

冷蔵庫で寝かせた容器を取り出して、強力粉と自家製酵母液を40gずつ追加します。そしてスプーンで撹拌し、輪ゴムやマスキングテープの目印をずらしたら、1回目と同じように2倍に発酵させます。完成したら冷蔵庫で一晩寝かせましょう。

元種の作り方【3回目】

いよいよ最終工程です。冷蔵庫から取り出した元種に、また強力粉と自家製酵母液を40gずつ加えてスプーンで混ぜます。そして輪ゴムやマスキングテープの目印をずらして2倍の量に発酵させ、冷蔵庫で一晩寝かしたら完成です。翌日から自家製の元種をパン作りに使えます。

最初に元種を作る時は時間が掛かりますが、作業自体は簡単ですし、今後使う度に材料を継ぎ足して行けば、長く使うことができます。例えば、40gをパン作りに使ったとしたら、強力粉と酵母液を各20gの合計40gを足して2倍に発酵させ、冷蔵庫で一晩寝かせるという工程を繰り返せば良いのです。これを掛け継ぎといいます。

元種を保存する際の注意点

自家製天然酵母の元種は、冷蔵庫で保存しましょう。週に3回はパンを焼く人は、そのまま材料の掛け継ぎで使い続ける事ができます。スプーンで簡単に混ぜてから使って下さい。自家製酵母液が無くなってしまったら水でも代用できますが、その際は蜂蜜などを足してやると元種に元気が復活します。掛け継ぎをしない場合は、4日以内に使い切る方が良いでしょう。

天然酵母元種作りの失敗例

量が増えない

時間をおいても発酵が進まずに元種の量が増えない時は、酵母液がきちんと完成してなかった可能性があります。元種作りに必要なだけの酵母が酵母液に存在していなければ、うまくできないのです。また、元種の状態がゆる過ぎる時は、後述するタンパク質分解酵素の仕業かもしれません。残念ですがあきらめて、再び酵母液作りからやり直しましょう。酵母液自体に問題が無い場合は、パン以外の使い方をして下さい。

量の減少

せっかく発酵して2倍の量に増えた天然酵母元種の量が減ってしまう事があります。これは「種落ち」と言われる現象で、元種が最高の状態から徐々に元気を失くしていっている状況の事です。元種も老化するのです。種落ちの開始を確認したら、できるだけ早くパン作りに使いましょう。種落ちが進んでしまうと、パンの膨らみが悪くなってしまいます。傷んでないようであれば、ピザやフォカッチャなど、大きな膨らみを必要としないパン種に使うのがおすすめです。

また、老化した種元に同量の強力粉と酵母液を掛け継ぎして寝かせることで、元気を取り戻す事もあります。こうなれば普通通りに使えます。後は最終手段として、パンを作る際に、ドライイーストをほんの少しプラスするという手もあります。天然酵母のみでパンを焼く!と強いこだわりがある場合を除けば、有効かつ簡単な方法です。

天然酵母作りに向かない食材

消化酵素のひとつであるタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)が入った食材は、天然酵母作りには適しません。その名の通り、タンパク質を分解するので、元種はドロドロのまま全く発酵せずに終わってしまいます。この食材をパン生地に練り込んで焼こうとした時にも同じく、パンは膨らまずに失敗してしまいます。タンパク質分解酵素を持つ代表的な食材は、パイナップルやキウイ、大根やパプリカ、また味噌などの発酵食品もNGです。

天然酵母のすすめ

自宅で簡単にできる天然酵母の作り方を紹介しました。酵母を増やし育てていくうちに、きっと酵母が愛おしくなって来るでしょう。美容と健康に役立つ善玉菌をもっと食事に取り入れようと、「菌活」なる言葉も作られて話題を集めました。是非、自家製天然酵母をパン作りだけではなく、日常に生かしてみて下さい。

関連するまとめ

新着一覧

最近公開されたまとめ