パン酵母の種類と働きとは?安全性は?自家製パン酵母の作り方も

パン酵母はパンを作る上で欠かせない材料の一つです。パン酵母と一言で言ってもいろいろな種類があり、その種類によって出来上がるパンが変わってきます。では、どのようなパン酵母の種類を使えば、自分が思い描いたパンが作れるのでしょうか?それはパン酵母の種類と働きを知っておくことが鍵となります。また、パン酵母はアレルギー性疾患に影響は出るのでしょうか?パン酵母の安全性についてもまとめています。

パン酵母の種類と働きとは?安全性は?自家製パン酵母の作り方ものイメージ

目次

  1. 1パン酵母とは?
  2. 2パン酵母の種類と特徴
  3. 3パン酵母の安全性
  4. 4自家製パン酵母の作り方
  5. 5自家製パン酵母を使ったパンのレシピ
  6. 6パン酵母の特徴を知ってパン作りに活かそう

パン酵母とは?

パン酵母とは、パンを膨らませるのに必要な材料になります。パン酵母がしっかりと働くことで、パン独自のふんわりとした食感や、もちっとした食感がでます。

パンが焼かれた時に香る少しアルコールが混じったようなパンのにおいは、パン酵母が発酵してことで出される独特の香りなのです。そんなパン酵母とはどのようなものなのか、性質と働きについて詳しくみていきましょう。

一定の温度で活動する菌の一種

パン酵母は一定の温度で活躍する菌の一種で、微生物です。つまり生き物になります。パン酵母が活躍できる環境には温度が密接に関わっており、パン作りに適している温度は25度から35度と言われています。

温度が低すぎるとパン酵母が働かないので、パン生地が発酵しずらくなります。また逆に温度が高すぎると今度はパン酵母が死滅してしまい、パン生地が発酵することはありません。

つまり、パン酵母は温度に大変敏感なので、パン酵母をしっかりと働かせてふんわりとしたパンにする為には温度管理が重要となり、パン酵母を使い熟せれば思った通りのパンを作ることが可能となるのです。

自然界にある多くの酵母から選別

パン酵母とは、自然界に存在している多くの酵母菌の中から、パンの発酵に適している菌種を選別したものになります。

このパン酵母のことを英語で訳すとイーストです、よって、パン酵母イーストは同じものを指しています。ネット上でイーストは「合成添加物」や「人口加工物」といった間違った解釈が掲載されていることがありますが、イーストはイースト菌であり人の手で培養されてはいるものの歴とした天然の微生物です。

ヨーグルトや納豆、チーズにビールといった発酵食品も、パンと同様に微生物の力を借りて発酵しています。このように人類は、どの菌種の種類が適しているかを食品に合わせて選んできたのです。

パン酵母の働き

パン酵母はパン生地を膨らませることができる菌の種類ですが、どのような働きでパンを膨らませているのでしょうか?パン酵母はパン生地内にある糖分を栄養源としています。糖分を吸収したパン酵母は細胞の中で糖分を分解して、炭酸ガスとアルコールを生産します。これが発酵です。

一定の温度の中で発酵を続けることにより、パン生地の中に炭酸ガスの気泡が増えて膨らんでいきます。この炭酸ガスがパンがふっくらとなる原動力となるのです。炭酸ガスと同様に生み出されたアルコールはパンの旨味となり、焼き上がりにあの香りが立つのです。

パン酵母の種類と特徴

パン酵母はパンに適している酵母菌ですが、販売されている種類によって向いているパンが変わってきます。また、天然酵母と言われる野生酵母にも材料がいろいろとあります。ここからはパン酵母の種類と特徴について説明していきます。

イースト

イーストとは自然界に存在している言わば天然のパン酵母菌を純粋培養したものです。イーストの形状には生イースト、ドライイースト、インスタントドライイーストの3種類があります。

イーストは適切な温度管理と種類を正しく使用すれば、とても使い易いパン酵母です。自分のパン作りに合ったを選んで買いましょう。

生イースト

生イーストは培養した後に水切りをし練り固めたもので、ぼろぼろした粘土状のパン酵母です。賞味期限が短く2週間程度です。乾燥が敵のため、しっかりと包んで冷蔵庫保管を必ずしましょう。

生イーストは癖のない香りと膨らみやすいのが特徴で、すべてのパン作りに使用できますが食パンやふんわりとさせたいパンに特におすすめのパン酵母です。また、生イーストは糖質分解の速度が速いので、甘い加糖タイプのパンを作る時に重宝します。

すべてのタイプのパン作りに使える生イーストですが、賞味期限が短いのでなるべく少量で買うか、ピザ生地に使う、友人同士で分けるなどの工夫をしたほうが良いでしょう。少量買いの場合、富澤商店では100gから手に入れることができるのでおすすめです。

ドライイースト

フランスパンなどの砂糖をあまり使用しないパンを作るならば、ドライイーストがおすすめです。ドライイーストはパン酵母が発酵した際にでる香りが良く、パン本来の香りが楽しめます。

ドライイーストはパン酵母を乾燥させたもので、水分が抜かれているぶん長期保存が可能です。とは言っても一度開封したら賞味期限に関わらず、早目に使いきるようにしましょう。

ドライイーストは生イーストと違いパン酵母が活動しないように処理してありますので、予備発酵という工程が必要となります。予備発酵の方法はパン酵母が活動を始める温度のぬるま湯に溶かしいれ、かき混ぜます。ブクブクと気泡が出てきたら完成です。

インスタントドライイースト

インスタントドライイーストとは、生イーストを乾燥させて粉末状にしてあるパン酵母のことを言います。元は生イーストなので、膨らむ力である発酵能力が高いです。生イーストやドライイーストよりも扱いやすく、初めてパン作りにチャレンジする人はインスタントドライイーストを使うのが失敗を避ける方法の一つと言えます。

インスタントドライイーストは生イーストと同様、予備発酵は必要ありません。賞味期限はドライイーストよりも短く設定されています。数多く作る予定でなければ、小分けになっているものや少量で売られているものを探しましょう。

インスタントドライイーストには甘いパンを作る加糖生地用と、おかずパンなどを作る無糖生地用が販売されています。用途に合わせておくことでパンの香りや膨らむ度合いを調節できます。

天然酵母

パン酵母の種類には天然酵母と言われているパン酵母があります。イースト菌も天然酵母ですがここで言う天然酵母とは、果物や穀物、ヨーグルトなどを発酵させることで作れるパン酵母のことを言います。

イースト菌を使ったパン酵母は一種類の酵母菌であるのに対して、天然酵母の場合はパン酵母の他の酵母菌も入ります。それにより天然酵母はそれぞれの素材の味が出ますので、パン作りに使用するとオリジナルのパンを作ることができます。

天然酵母はオリジナリティを出せるのが利点ですが、イーストよりも発酵力が低いのが難点です。よって、パン酵母の特性を理解してイーストを扱うことができるようになってからチャレンジすると良いでしょう。

ドライタイプ

ドライタイプは天然酵母を乾燥させたもので、果物などのいろいろな種類があります。果物や穀物のアレルギーがある場合には、使用時に注意が必要です。

ドライタイプは事前の予備発酵が必要となります。ぬるま湯とドライタイプの天然酵母を混ぜて、約一日発酵を促すのが基本的な予備発酵過程です。「今からを作ろう!」と思い立って直ぐに始める時には不向きなパン酵母ですが、手間が掛かる分パンの美味しさもひとしおです。

自家製タイプ

自家製のパン作りを追及していくと、パン酵母も手作りしたくなりませんか?自家製の天然酵母ならば防腐剤などの化学物質の心配がなく、アレルギーがある人でも安心して食べることができるパンを作れます。

自家製タイプはレーズン・リンゴ・ヨーグルトなどがパンと相性が良くておすすめです。作る時には温度、湿度、配合など注意点が多く、自家製の天然酵母は簡単ではありません。ですが究極のオリジナルパンを作ることができますので、自家製パン酵母作りにもチャレンジしてみてください!

Thumb天然酵母とドライイーストは違う?手作りパンの上手な菌の使い方 | お食事ウェブマガジン「グルメノート」

パン酵母の安全性

最近では健康に関心がある人が増え、テレビや雑誌、インターネットなどあらゆる媒体に情報が出ている中で、「パンは体に良くない」と言った情報が見受けられます。本当にそうなのでしょうか?パン酵母の安全性や、イーストフードについて、またパン酵母がアレルギー疾患にどのように影響を及ぼすのかを説明します。

イーストフードは危険?

市販のパンを買う際に、袋に記載されている材料を確認したことはありますか?そこにはパン酵母やイースト、と書かれた表示の他にイーストフードと表示されていることがあります。このイーストフードは、イーストとは全く別のものです。

人間が生きていく上で必要なのは、糖質・タンパク質・脂質、そしてビタミン・ミネラルです。どれかが掛けただけで、身体は正しく機能しません。パン酵母も同様に糖質だけでは発酵という生命維持を行うことはできません。そこで、発酵を促すために添加する食品添加物を一括した呼び名がイーストフードです。

イーストフードは16品目ありますが、主にミネラル成分です。マグネシウムやカリウム、アンモニウム、ナトリウム類を補助する為に食品添加物として、パン製作の工程で入れています。

つまり、イーストフード自体は安全性の高い添加物です。ですから、イーストフードはアレルギーを引き起こす物質ではなく、もしもパンを食べたことによりアレルギーが出たならば、小麦や卵、乳製品が原因であることが大半なのです。

アレルギー性疾患への関与

アレルギー性疾患を持っている人にとっての食べ物は、命に関わる恐れがありますので注意が必要です。パン酵母にアレルギー物質は含まれているのでしょうか?

まずは、アレルギーを起こす可能性がある食品を確認しておきましょう。アレルギーの特定原材料は、卵・乳・小麦・エビ・そば・かに・落花生です。パン酵母自体にはアレルギーを起こす物質は使用されていませんが、パンになると使用されるのは小麦・卵・乳になります。

アレルギーを持っている場合には、小麦・卵・乳を使って作ったパンを食すのは避けた方が良いでしょう。今では小麦の代用品が手に入りやすくなりました。米粉雑穀類でパンを作ると安心です。

臭素酸カリウムの問題点

臭素酸カリウムとは食品添加物の一種で、パンに入れるとふわふわになり品質が向上すると言われている物質です。2004年にヤマザキ製パンが食パンに使ったことで世間に知られるようになりました。

臭素酸カリウムがなぜ問題なのか?それは発がん性が確認されているからです。ところが、研究が進み残留しにくいことが判明したとして、より消費者の嗜好に合わせようとヤマザキが試験的にパンに入れたのです。

この行為が、国際機関であるJECFAで「小麦処理剤としての使用は容認できない」と言っていることに反しているため、問題となりました。消費者に臭素酸カリウムは危険と知れ渡った現在は、使用している企業はないと報告されています。

Thumbイーストフードの危険性は?パンに用いられる添加物の秘密とは? | お食事ウェブマガジン「グルメノート」

自家製パン酵母の作り方

市販のイーストでパンを作れるようになったならば、今度はパン酵母から手作りしてみるのはいかがでしょうか?自家製パン酵母は発酵する食材を使えば、いろいろな種類を作り出すことが可能です。いつでも手ごろに手に入れやすいリンゴのパン酵母を紹介します。

材料と作り方

  • 綺麗に消毒した瓶
  • 浄水
  • リンゴ
  • 砂糖
 
  1. 瓶に材料をすべて入れて蓋をし、25度程度の温度状態が保てる場所に置きます。
  2. 3日目当たりからリンゴの周りに気泡が出てきます、これが発酵です。1日2、3回瓶を振り混ぜたのち、蓋を開けて空気に触れさせます。
  3. 4日目からは、冷蔵庫で保管をします。冷蔵庫に入れたら、蓋を開ける必要はありません。
  4. 5日頃には、瓶の底にオリが溜まるようになってきます。軽く振ってリンゴがシュワシュワすれば、リンゴのパン酵母完成です。

使う瓶は必ず熱湯消毒し、しっかりと乾燥させてから使用しましょう。リンゴは、丸ごとでも皮と種のみでも大丈夫です。分量の目安は、浄水:リンゴ:砂糖が7:4:1です。パン酵母が豊富に含まれているのは、下に沈んでいるオリになりますので、使用する時には良く振ってからろ過するようにしてください。

ポイント

しっかりと発酵されていれば、発酵時に出る泡の勢いで中のリンゴが瓶から浮きあがってきます。始めは、浄水が茶色く色つきだし、次第に発酵が進むと白っぽいオリが出て、浄水の色が透き通っできます。

気泡が増えていかなければ、発酵が上手く進んでいない証拠です。残念ですが、パン酵母として使用できませんので、潔く作り直しましょう。

自家製パン酵母を使ったパンのレシピ

自家製パン酵母を使って作ったパンは、他とは違った感動を与えてくれます。自家製パン酵母を作って、食パンだけではなく、いろいろな種類のパンを作ってみましょう。

天然酵母から酵母元種を作る

パン作りを始める前に、やっておくことがあります!自家製パン酵母が完成したら、パン作りの1日前に酵母元種を作っておきましょう。これは、酵母の予備発酵にあたる工程です。強力粉1:酵母液1を混ぜてパン酵母が発酵力を出せる準備をします。一日置いて気泡が出て膨らんできたら完成です。

後は、普段のパン作りで使うイーストと同じように使用していきます。酵母元種を作ればふっくらとしたパンになりますし、酵母液をそのまま入れると膨らみを押させたパン作れます。パンの種類に合わせて使い分けしてください。

リンゴ酵母を使った米粉食パン

  • 強力粉150g
  • パン用米粉100g
  • 全粒粉30g
  • 砂糖20g
  • 塩5g
  • 元種140g
  • ぬるま湯(35度)140g
 
  1. 粉類、砂糖、塩をボールにいれ、空気を含みながら混ぜ合わせる。
  2. 元種を入れ混ぜわせ、まとまったら台に取り出して滑らかになるまで捏ねる。
  3. 丸めてボールに移し入れ、一時発酵をする。2倍に生地が膨らんだら真ん中に指を指して発酵確認をする。穴が塞がなければ丸め直してベンチタイム20分おく。
  4. 台の上に取り出し綿棒で伸ばしたら、左右を折りたたみ三つ折りにする。その生地を巻いて食パンの型に入れてから、オーブンで2次発酵を行う。
  5. 9分目くらいまで膨らんだら、220℃のオーブンで25分、上下を返して5分焼くと完成。

パン酵母の特徴を知ってパン作りに活かそう

パン酵母は、バケットに合うパン酵母、菓子パンに合うパン酵母、素材の味を引き出すパン酵母など、実は奥が深い世界なのです。パン酵母の特徴がわかれば、好みのパンを作り出すことが可能になります。いろいろな種類のパン酵母を使い、パンの世界にハマるのも一興です。是非、チャレンジしてみてください。

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