2019年06月13日公開
2024年09月19日更新
ひな祭りの定番ひしもちにはどんな由来と意味がある?正しい食べ方と作り方
ひしもちといえばひな祭りの定番のお供え物のひとつであり、女の子の健やかな成長を願って食べるものでもあります。最近ではひしもちを模したケーキなどを代わりに食べることも増えましたが、もともとはどんな由来があってその色にはどんな意味があるのでしょうか?ひな祭りの定番でありながら意外と知らないひしもちについて、その由来や色の意味を始め作り方や正しい食べ方まで紹介します。
ひな祭りのひしもちにはたくさんの意味が込められている
ひしもちはひな祭りには欠かせないお供え物のひとつであり、女の子の健やかな成長を願って食べる縁起物でもあります。そんな縁起物だけあってひしもちにはその色や素材、形にもたくさんの意味が込められているのです。
ですが今ではその由来や色、素材に込められた意味も忘れ去られてきています。ひしもちの本来の意味やその役割とは一体どのようなものなのでしょうか?ひとつひとつ紹介していきます。
ひしもちの由来と意味
ひしもちをひな祭りで飾ったり食べたりするようになった由来と意味はもともとどこにあるのでしょうか?多くの人が忘れてしまっているその由来や色・形には大切な意味があります。ひしもちに込められた願いと想いを紹介します。
中国の餅が由来
もともとひな祭りもひしもちも中国の上巳節が由来です。上巳節とは3月の最初の巳の日に行われる厄払いの行事です。中国の魏の時代に3月3日に固定化され、禊(みそぎ)を行って身を清めたりお払いを行って厄払いをする風習がありました。このときに食べられていたのが春の七草のひとつの御形(ごぎょう)を入れたもちです。
日本の年中行事は中国の影響を強く受けたものが多く、この上巳節が伝わったころの宮中行事の多くも例外ではありませんでした。大宝元年(701年)より正式に採用されて、室町時代には「3月3日の儀式」として定着したのです。上巳節とともに伝わったのが御形入りのもちでひしもちの原型となったものです。
御形入りのもちが日本に伝わったときひとつの変化がありました。御形は日本では母子草(ははこぐさ)とも呼ばれていたため、母親と子供をついて餅に入れるのは縁起が悪いとされ嫌われたのです。そのため日本では香りに邪気を祓う力があるとされていた蓬(よもぎ)に取って代わり、草もちが使われるようになったのです。
形の由来
ひしもちが今の形になったのは江戸時代の初期といわれています。このころに1月7日の人日(じんじつ)・3月3日の上巳・5月5日の端午・7月7日の七夕(しちせき)・9月9日の重陽(ちょうよう)の五節句が制定されてから、端午の節句が男の子の節句として、上巳の節句が女の子の節句として定着していきました。
当時のひしもちは蓬の緑色の草もちに菱の実を入れた白いもちを組み合わせた緑と白の2色のもちでした。この2色のもちを交互に積んで緑・白・緑の3段か5段にして飾っていたといいます。ではなぜひしもちはひし形になったのでしょうか?これには諸説あります。
ひし形で大地を表しているとする説や菱の繁殖力の高さから子孫繁栄を願ったという説、菱の実を食べて千年長生きした仙人にちなんで長寿を願ったとする説もあります。このほかにも心臓をかたどったとする解釈や四角を伸ばして長寿を願ったなどいまだ定まった説はありません。
ひな祭りに飾る意味は?
もともと上巳の日は季節の変わり目の日でもあったことから邪気が入りやすい日とされ、水辺に集って身体の穢れを水で洗い流す水浴の儀式が行われていました。先に紹介したように魏の時代に3月3日に固定された後、やがて水浴だけでなく杯を水に流して宴を行う曲水の宴へと変化しました。
日本での曲水の宴は中国とは異なり、流れの縁に出席者が座って流れてくる杯が目の前を通り過ぎる前に詩歌を読む行事でした。奈良時代後半には盛んに行われるようになり、宮中行事だけでなく私的な遊びとしても行われるようになったのです。
さらにこれらの行事に日本古来の神事や風習が結びついてひな祭りへと発展し、邪気を祓うためにひしもちが飾られるようになったのです。ひしもちは大切な娘から邪気を祓い健やかに育ってほしいという願いが込められて飾られているのです。
ひしもちの色の意味
ひしもちの色にはさまざまな意味があります。ひしもちに使われているもちにはそれぞれ薬草が加えられているのです。緑のもちには咳止めの効果がある母子草や厄除け効果があるとされる蓬が、白のもちには胃腸の働きを整え血圧を下げる効果のある菱の実が、桃色には解毒作用のあるくちなしの実が使われています。
このことからひしもちは、薬がまだきちんと出来上がっていなかった時代に薬草の知識を子供たちに伝えるという大切な意味もあったといわれています。もちろんひしもちの色そのものにも意味があります。白は子孫繁栄と長寿を、緑は厄除けと健康を、桃色は魔除けと先祖への尊敬や健康への願いが込められています。
さらにひしもちの色は重ねる順番でも意味合いが変わってきます。下から緑・白・桃色の順で重ねると「雪(白いもち)の下には新芽(緑のもち)が芽吹いて、上では桃の花(桃色のもち)が咲いている」という意味になります。それに対して下から白・緑・桃色の順で「雪の中から新芽が芽吹いていて、上に桃の花が咲いている」という意味になるのです。
このようにひしもちの色をどう重ねるかで春の情景も表しているのです。そしてこの春らしい色の組み合わせがひな祭りを表す色として定着していき、ひなあられなどでもこの3色を使うのが定番となっているのです。一方でひしもちにはさらに華やかさを求めて、黄色などの他の色を入れた5段や7段など豪華なものも多く見られます。
ひしもちの作り方と正しい食べ方
昔ながらの伝統的なひしもちは大変ですが、食紅や上新粉、薄力粉といった手軽に手に入る材料でひしもちを作ることはできます。ですがせっかくひしもちを作るのであれば、色が違うだけではなくそれぞれの色で味も違うひしもちを作ってみませんか?手軽で美味しいひしもちの作り方を紹介します。
作り方
最近ではひしもちそのものではなく、ゼリーや寒天で作ったデザートやケーキのようなスイーツが人気になっています。ですがせっかくひな祭りをやるならばやはり「もち」を用意したいものです。もち粉を使った美味しいひしもちの作り方です。
材料
- A・もち粉60g
- A・砂糖30g
- A・抹茶パウダー小さじ1
- A・ぬるま湯80ml
- B・もち粉60g
- B・砂糖30g
- B・牛乳80ml
- C・もち粉60g
- C・砂糖20g
- C・いちごジャム小さじ2
- C・食紅(色の調整用)適量
- C・ぬるま湯80ml
- 片栗粉適量
手順
- Aで緑の抹茶層を作ります。耐熱ボウルにもち粉に砂糖と抹茶パウダーを入れてよく混ぜ合わせます。
- 1のボウルにぬるま湯を少しずつ加えて滑らかにしていきます。
- ボウルにふんわりとラップをしたらレンジで30秒ずつ温めます。一気に温めるのではなく様子を見ながらもち状になるまで根気良く温めていきます。もち状になったら片栗粉を敷いたバットに移します。
- バットの上で10cm×13cmくらいの長方形にして、乾燥しないようにラップをかけておきます。
- Bで白のミルク層を作ります。作り方は基本的に抹茶層と同じですが、ぬるま湯を牛乳に変えて作ります。できた生地は抹茶層に重ねておきます。
- Cで桃色のいちご層を作ります。作り方は基本的に他の層と同じですが、もち粉にいちごジャムを入れて色を見てから、好みの濃さになるまで少しずつ食紅で濃さを調整します。できた生地はミルク層に重ねます。
- 3層になった生地を片栗粉をまぶした包丁で4等分してから、1つ1つをひし形に切っていきます。最後に余分な片栗粉を払って完成です。
正しい食べ方
ひしもちには正しい食べ方というものがあります。そのまま食べられるものはともかく、焼かないと食べられない場合には切り分けてから焼くことになります。ひしもちの正しい切り分け方と食べ方を紹介します。
切り分ける
先にも紹介したように焼かないと食べられないひしもちは先に切り分けてから焼きます。縁起物に包丁を入れることはためらわれるかもしれませんが問題はありません。ただし切り分けるときには層ごとに1枚ずつ切り分けましょう。もともと分かれているものを合わせてあるだけなので、間に包丁の刃先を入れるだけで簡単に分けられます。
焼く
層ごとに切り分けたらオーブントースターで通常のもちと同様に焼いてから食べます。ひしもちの角には魔除けとしての意味もあります。そのため角をちぎりながら食べることで良いことが起こるといわれているだけでなく、円満を願う意味もあります。女の子の健やかな成長を願うひな祭りにぴったりのおやつです。
ひしもちを飾ってひな祭りをお祝いしよう!
ひしもちにはその由来や色だけでなく形にも意味があり、ひな祭りの彩としてだけでなく女の子の無病息災を祈る大切なものです。ひな壇の飾りとしてだけではなくその本来の意味にも思いをはせて、節句の締めの厄除けとして味わってみてください。きっと良いことがあることでしょう!