菱餅をひな祭りに作る意味や由来は?作り方・美味しい食べ方を紹介
菱餅と言えば、ひな祭りに飾られているピンク・白・緑のきれいな3色が使われた、ひし形をしているお菓子です。菱餅と言われているだけに、もともとはお餅だったものが、最近では同じ色と形ではあってもお餅ではなく、お砂糖をまぶしたゼリーやケーキ、チョコレートなども売られています。変化はしてきていても、ひな祭りには欠かせないものになっている菱餅の意味や由来はどのようなものか、簡単な作り方や食べ方も調べました。
目次
ひな祭りに飾る菱餅はどのようなものか?
菱餅と言うとどのようなイメージでしょうか?大半の人がまずひな祭りを連想するでしょうが、菱餅そのものはいろいろなタイプがあるようです。一番多いのは、ピンク、白、緑の三段になったひし形のものですが、中には五段だったり、黄色やオレンジが入ったものもあります。
お餅ではなく、おこしだったり、すあまだったり、和菓子ではなくゼリーだったり、ケーキやチョコレートなどの場合もあります。製菓会社もいろいろな商品を出していますが、材料を工夫して、各家庭でオリジナル菱餅を作っている人もいるようです。
いずれにしても、ひな祭りを楽しく過ごすためのアイテムとして、菱餅は欠かせないもののひとつになっています。では、その菱餅はいつごろからひな祭りのシーンに登場したのでしょうか?そして菱餅にはどのような意味がこめられているのでしょうか?
菱餅を食べるひな祭りについて
ひな祭りは3月3日、桃の節句と言われ、女の子の健やかな成長を願う行事です。ひな人形を飾り、桃の花や白酒、はまぐりのお吸い物、菱餅、ひなあられなどを用意しますが、ひな人形も様々なタイプがあり、用意するお料理やお菓子も様々です。各家庭で工夫をして楽しまれています。
始まりは古代中国から
「節句」というのは、一年の中の節目となる日ですが、ひな祭り・桃の節句は、正式には上巳(じょうし)の節句と言われる日です。古代中国ではこの上巳の節句には、水で手や体を清めてお祓いをし、厄除けをする習慣がありました。これが日本に伝わり、紙やわらで作った人形に自分の災いを移して川や海に流す習慣になりました。これが今も残っている流しびなです。
流しびなからひな人形・桃の節句ひな祭りへ
この流しびながその後発展し、現在のようなひな人形になりました。貴族階級の子供たちの間で遊ばれていた、おままごとのようなお人形遊びの「ひいな遊び」と合わさってできたのが「ひな人形」と言われています。そして、桃の花が咲く季節だったことと、桃には魔よけの力があるという意味もあって、上巳の節句を桃の節句と呼ぶようになりました。
菱餅が登場したのはいつごろ?
菱餅は、インドの仏典に、女の子が竜に襲われているところを、菱の実を使って竜を退治して助けたという話があり、その説話がもとになったと言われています。そして古代中国では、上巳の節句に母子草を使って作ったお餅を食べる習慣がありました。それが日本に伝わった時に、お餅にするとき母子草を使うのは、母と子をつくという少し縁起の悪いことと考えられ、ヨモギで作ったお餅に変わったようです。
ヨモギは古くから薬草にも使われ、草餅にもされている日本では馴染み深い植物です。このヨモギを使ったお餅が、菱餅の緑の部分です。そしてそこに菱の実を使って作った白いお餅が重ねられてひし形になりました。実は江戸時代までは、このヨモギの緑と菱の実の白の2色だけのお餅でした。
その後、明治時代になってピンクのお餅が重なり、今の菱餅のような3色の3段という形になりました。ピンクにはクチナシが使われています。クチナシも薬草に使われ、解毒作用があり、クチナシの赤い色は魔よけにもなり、お餅と混ぜると桃の花の色・ピンクになるということで使われたようです。
今でも、地域によってはヨモギではなく母子草を使っているところもありますし、ひし形ではなく三角の形のお餅を使う地域もあります。段数も、江戸時代から緑と白の2色を何組も重ねたりして段数の多いものも作っていたようです。そういった違いはあるにせよ、現在一般によく知られている、緑・白・ピンクの3段の菱餅が登場したのは明治時代に入ってからのことでした。
菱餅に使われている色の意味は?
菱餅に使われている、きれいな緑・白・ピンクの3色ですが、この3色にこめられた思いや意味はどのようなものなのでしょうか?ひな祭りに飾られ、女の子の健やかな成長を願う行事の一品としての意味が、それぞれの色に込められていました。
菱餅の緑色の意味
日本では、材料に草餅と同じくヨモギが使われることが多い菱餅の緑色ですが、母子草にしてもヨモギにしても昔から使われる解熱や解毒作用がある薬草です。また、草木が芽吹く緑も表していることから、健康と成長を願う意味が込められています。そしてヨモギの香りは邪気を払う香りともされていて、子供たちが災いに負けず、健康ですくすく育つようにという思いがわかります。
菱餅の白色の意味
菱の実が使われている、菱餅の白い部分は、白という色に清潔さや純粋、純潔、崇高などの意味があります。また、菱の実は子孫が繁栄し、長生きできる力がある実とされていることから、長寿と子孫繁栄の意味も込められています。
菱餅のピンク色の意味
菱餅のピンク色に使われているクチナシの実はもともと赤で、赤い色は魔よけや厄除けの意味があり、お餅に混ぜるとピンクになって桃の花の色を表します。また、クチナシもヨモギと同じく薬草で、これも健康を願う思いが込められています。
菱餅の3色が重ねられることで表現される春
重ねられる順番にも意味が
上記のような意味があった緑・白・ピンクの3色は、この順番で重ねられることで、春の訪れを待つ風景を表していました。緑は草木の芽吹く緑の色、白は雪、ピンクは桃の花で、「残っている雪の下では若芽が芽吹き、雪の上では桃が花開く」という、もうそこまできている春を表現しています。
菱餅の3色以外の色の意味
後から出てきた菱餅の新色・黄色は、月や菜の花の黄色を表すと言われ、オレンジ色は太陽を表すと言われています。3色の意味と合わせてイメージすると、さらに春らしい情景が浮かんでくる色です。美しい自然の風景が広がります。
菱餅の形がひし形である意味は?
ひし形ではなく三角の地域もある菱餅ですが、ひし形になった意味については様々な説があります。ひし形は、よく家紋にも使われる形で、日本では昔から馴染み深くて特別な形であることは間違いないようです。菱餅のひし形の由来に関する説の中にも、小笠原家の家紋からとった、というものがあります。様々ある説の中からいくつか簡単に紹介します。
ひし形は心臓?大地?
ひし形という形が何かを表しているという説の中からまずは「心臓」というものがあります。健康や長寿を願う意味のある菱餅ですから、心臓というのもそのつながりのようです。もうひとつは「大地」です。菱餅の色の組み合わせがきれいな春の風景を表していますから、それが大地になるというのもわかります。
菱の実を使っているからひし形?
そもそも菱の実をつかっているお餅だからひし形という説です。先に述べたように、菱の実には子孫繁栄や長寿の意味があり、それらを願って、材料だけではなく形にも「ひし」を用いたというわけです。菱の実には竜退治の説話だけでなく、菱の実を食べた仙人が千年生きたという言い伝えもある実ですから、その力を分けてもらおうと考えたのでしょう。
陰陽道におけるひし形の意味から?
安倍晴明で有名な陰陽道において、ひし形は女性を表す形です。男性は陰陽道では陽とされ、形は円形で、女性は陰とされ、形は方形、つまり四角形でありひし形というわけです。また、陰陽道では厄除けの意味もありました。ですから女の子の節句であり、災いを避けるという意味でひし形になったという説です。
菱餅の簡単な食べ方は?
では菱餅の食べ方を紹介します。菱餅の形をした洋菓子のケーキやチョコレート、ゼリーなどの食べ方は、ただ包装を取り外して食べるだけですから簡単です。しかし、スタンダードないわゆる「菱餅」の場合は、お餅ですから、お正月に食べるお餅のように焼くという食べ方が一般的です。
焼く道具は、オーブントースターでも、焼き網でも、魚グリルやフライパンでも、ご自身が使いやすくて簡単だと思われるもので大丈夫です。大きい場合は、一口大に切ってもかまいませんし、色ごとにはずして薄くしても大丈夫です。
味付けに関しても、普通のお餅の食べ方と同じです。きなこやあんこと一緒に食べてもいいですし、砂糖醤油で食べても美味しいです。また、お雑煮のような食べ方で、お料理に使うこともできます。アレンジされた菱餅風のお菓子とは違い、通常の菱餅は普通のお餅ですから、あんこの入った草餅や大福と同じイメージの食べ方でお召し上がりください。
菱餅ならではの食べ方のポイント
基本は普通のお餅としての食べ方と同じなのですが、菱餅は、周りの角になった部分をちぎるように食べるとよいとされています。「角がたたないように丸く生きる」ことができるという意味があります。ちなみに、鏡餅のように刃物で切ってはいけない、というようなことはないようです。そして、同じくひな祭りに食べられるひなあられは、もともと菱餅を小さく切って揚げたものだったそうです。揚げるという食べ方もおすすめです。
菱餅は家庭で簡単に作れる?
本来は、もち米を水に浸して炊いて、杵と臼で餅つきをして成型するもので、ヨモギは若葉をつんできて茹でて刻んでつぶして混ぜ込むという作業も必要です。菱の実やクチナシの実も必要になってきます。お餅そのものは家庭でも、ホームベーカリーや餅つき機があればいくらか簡単にできるでしょう。
ただ、現在和菓子として作られている菱餅の多くは、上新粉を練って蒸すという作り方が一般的のようです。とはいえ、もち米で作ったものであればお料理にも利用しやすく、前述のように揚げてひなあられにする方法もありますから、もち米を使う作り方や、市販されている切り餅を利用した簡単な作り方というのもあります。また、簡単な作り方で人気のものは、ういろうタイプやゼリータイプがほとんどです。
もち米を使った簡単な菱餅の作り方
簡単な作り方として、炊飯器でもち米を炊きます。基本的にはもち米を水に浸しておく時間が必要ですが、炊飯器にもち米モードがあるものであれば、説明書を参照してください。ホームベーカリーの場合は、水に浸さないものもありますので注意してください。炊きあがったら麺棒などで餅つきをします。ホームベーカリーなら、餅つきできている状態だと思いますので、取り出します。
この時、緑・白・ピンクにする分に分けておきます。ピンクは食紅を入れて麺棒でついていきます。ヨモギを使う場合は茹でて刻んでおきます。乾燥ヨモギや青きなこ、青のりを使っているレシピもあります。白はそのままです。ホームベーカリーの場合は、ヨモギなどを入れるタイミングが決まっていることがあるので、説明書に従ってください。そのあと、お餅がくっつかないように片栗粉で打ち粉をして伸ばします。
3色それぞれをラップでくるんで平らにして、まな板やバットなどの平らなもので重しをして冷まします。冷めたら、ひし形にカットして重ねて出来上がりです。カットした端の部分は、揚げてひなあられにしてもいいですし、お吸い物に入れても美味しいです。
市販の切り餅を使った簡単な菱餅の作り方
市販の切り餅を使う作り方なので簡単です。切り餅6個を用意し、2個ずつ熱湯で茹でます。やわらかくなったら打ち粉をした上に取り出して、濡らした麺棒などでひとつにまとめて平らにして冷まします。次の切り餅2個も茹で、食紅を少々混ぜてピンクにして同じようにまとめます。
最後の2個は緑なので、茹でて刻んだヨモギ、もしくは乾燥ヨモギ、青きな粉、青のりなどで色を付けて同じようにまとめます。ある程度固まったら3色それぞれひし形にカットして重ねて出来上がりです。切り餅に砂糖を少し加えておくと、ある程度柔らかさが保てます。
上新粉を使った菱餅の作り方
この作り方は蒸し器を使います。お湯を沸かして蒸し器を準備してください。まず上新粉100gに熱湯を少しずつ加えてこね、耳たぶくらいの柔らかさにします。次に白玉粉100gに40度くらいのぬるま湯を少しずつ加えてこね、先ほどの上新粉と同じくらいの柔らかさにします。この白玉粉と上新粉に砂糖60gを加えてひとつにまとめてこねます。
できた生地を緑・白・ピンク用に3つに分けて、それぞれ色付けします。ピンクは食紅少々、緑は茹でて刻んだヨモギ、もしくは乾燥ヨモギ、青のり、青きな粉などを利用します。色付けできたらそれぞれひとつにまとめて耐熱容器に入れ、蒸し器で20分蒸します。
蒸しあがったら片栗粉で打ち粉をした上に取り出して形を整え、ひし形にカットして重ねて出来上がりです。3色それぞれを同じひし形にきれいにカットするには、牛乳パックなどをひらいてひし形の型紙を準備しておいて、生地に乗せてカットすれば簡単です。
簡単!菱餅の作り方・ういろう
お餅ではなく、菱餅「風」ですが、簡単にできるういろうレシピの動画がアップされていましたので紹介します。このレシピでは、ピンクはいちごジャム、緑は抹茶で色付けしています。お子さんと一緒に作ってみるのも楽しそうです。
簡単!菱餅の作り方・ゼリー
こちらの動画で紹介されている作り方はゼリータイプの菱餅です。市販されている乳飲料を使っているのでかなり簡単です。飾りも手作りしていて、なかなかかわいい仕上がりになっています。参考にしてみてください。
まとめ:菱餅が持つ意味を大事に現代版で味わおう
ひな祭りの菱餅は、江戸時代から今まで受け継がれてきた、深い意味のある食べ物でした。女の子に限らず、子供たちの健やかな成長を願う行事の、すてきな一品です。昔のままの作り方はできないかもしれませんが、現代版にアレンジして簡単に楽しく作るもよし、買ってもよし、お好みの食べ方で味わってください。