いわしの旬はいつ?千葉・北海道など有名産地の時期や各特徴について!
いわしは日本の各地でたくさん獲れて、焼き魚や煮魚などで昔から庶民に親しまれてきた魚と言えます。店頭ではほぼ1年中売られているようですが、旬はいつなのでしょうか?いわしの有名産地である千葉県、北海道などで獲れるいわしの種類や旬の時期などについて、今回は紹介します。鮮魚として売られるマイワシだけでなく、ウルメイワシ・カタクチイワシといった主に加工品になって流通するいわしもいます。身近なようでわからないことの多い回遊魚いわし、調べれば調べるほど奥が深いいわしの世界を見てみましょう。
いわしってどんな魚?
いわしという魚を知らないという方はいないのではないでしょうか?いわしは古くから日本でたくさん獲れて、安い大衆魚の代表として庶民に親しまれてきた魚です。漁獲量が多い時には、日本の総漁獲高の1/3を占めていたと言います。しかし漁獲量の変動がとても大きく数十年周期で増減があるので、それに伴い価格の変動が大きいことも知られています。
いわしは漢字で「鰯」と書きますが、その漢字の意味するところは2つあると言われています。水揚げされてから鮮度が落ちやすいということと、小さい弱い魚で大きな魚から身を守るために群れをなしているということです。実際にいわしは人間に食べられるだけでなく、カツオ、マグロ、クジラなどのエサにもなり、海の食物連鎖では最下部に位置する魚です。
日本で流通しているいわしにはマイワシ、ウルメイワシ、カタクチイワシの3種類があります。ちなみにしらすとは、マイワシやカタクチイワシなどの稚魚の総称です。上の図のように、マイワシとウルメイワシはニシン目ニシン科です。それに対してカタクチイワシは、ニシン目カタクチイワシ科になります。
マイワシの特徴
マイワシは代表的ないわしで、加工されて流通することの多いカタクチイワシなどと比べ鮮魚として店頭に並ぶ機会が多いいわしです。マイワシは回遊魚であり、春に北上して秋から冬にかけて南下します。この南下する「下りイワシ」の方が脂がのって美味しいとも言われています。
マイワシは背は黒に近い紺色で腹は銀色に光っています。いわしの中でも一番大きく成長する魚で、全長30cmにまでに大きくなるものもいます。見分け方としては、体の側面に黒色斑列があればマイワシです。黒色斑列は1から3列あります。
ウルメイワシの特徴
ウルメイワシはマイワシと比べると目が少し大きくて、目玉が潤んでいるように見えます。このことがウルメイワシの名前の由来です。マイワシのような黒色斑はありません。古くから目刺しにした干物、いわゆるメザシに加工され食べられてきました。
ウルメイワシは干物にされることが多いのには理由があります。ひとつは鮮度が落ちるのが極めて早いので、鮮魚での流通に適していなかったためです。もうひとつはマイワシに比べると脂質の量が半分しかなくて、淡白な身質であるためです。
カタクチイワシの特徴
いわしの中で一番小さく、成魚でも10cmほどの大きさです。下あごが後退していて、口を閉じていると片口に見えるのが名前の由来です。地方によってセグロイワシとも呼ばれています。カタクチイワシ科の魚を総称して英語でアンチョビと言います。
ほとんどがシラス、イリコ、ちりめんじゃこ、煮干しなどの加工にまわされ、鮮魚として店に並ぶのはほんのわずかです。傷みが早い魚なので、生の刺身で食べる機会はなかなかないかもしれません。
いわしが旬の時期は何月?
いわしは日本全国各地で水揚げされる魚で、2016年の水揚げ高は1位が茨城県、2位が長崎県、3位が三重県でした。他にも北海道と千葉県は有名な産地です。地域ごとの漁獲量はその年によってかなりの差があるので、都道府県別の漁獲高順位は毎年のように入れ替わりがあります。
では、いわしの旬はいつでしょうか?旬とは、その食べ物が美味しくてたくさん出回っている時期ですので、いわしの場合は脂がのってくる秋から冬にかけてと考えらえます。けれども実際には、いわしは種類によっても産地によっても旬が違ってきます。
いわしの旬は種類によって違う
いわしの旬は種類によって違います。だいたいの傾向としては下の表のようになりますが、いわしは回遊魚ですのでその年によっても獲れる時期がずれることも多く、一概には言えないのが実情です。
イワシの中で最も漁獲量が多いのがマイワシで、一般的に6月から10月ごろが旬とされています。また、カタクチイワシの旬は9月から1月ごろまで、ウルメイワシの旬は10月から2月ごろと言われています。
実はイワシの旬についてコメントするのはとても難しいことです。例えばカタクチイワシを例にとりますと、カタクチイワシの分布の中心は日本の漁業の手の届かないような沖合にあって、資源全体から見ると、沿岸にいる規模の小さな個体群を獲っていることになります。あるいは沖合の群のうち、回遊の過程で一部が日本の沿岸域にやって来て漁獲されているにすぎないので、わからないことも多いようです。
いわしの旬は産地でも変わる
いわしの旬は、いわしの種類だけでなく産地によっても異なります。例えば、千葉では梅雨頃の時期が美味しいと言われています。それに対して 日本海に面した石川県や富山県は、3月4月ごろが旬になります。そして北海道では7月8月ごろが旬と言えます。複雑な話ではありますが、このことを知っていると魚売り場でいわしを選ぶ時に役立ちます。魚であっても野菜であっても、旬のものが美味しくて栄養的にも優れています。
いわしの有名産地を紹介!
このようにいわしの旬は産地によって違いがありますので、ここからはいわしの有名産地の紹介をします。売場でいわしのパックを手に取ったら、産地も確認してみてください。
北海道のいわしの旬や特徴
北海道のいわしは主に6月から10月にかけて出荷されていて、その中でも旬は7月8月ごろと言えます。いわしは比較的通年出回っている魚ですが、それでも旬のものが一番です。北海道ではいわしは暑くなるにしたがい脂がのって美味になると言われています。
写真は北海道の厚岸町のいわしです。ここで脂ののった新鮮で美味しいいわしを選び方を紹介します。背の青みに光沢があって体にある黒い斑点が鮮やかなものが良く、腹が太っているものを選びましょう。目がにごらず、澄んでいるものが新鮮ないわしです。今は急速冷凍の技術が進んでいますので、北海道ではこの旬の最高の状態のいわしを冷凍したブランドいわしも売られています。
こちらは北海道広尾町のブランドいわし「大トロいわし」で、ふるさと納税でもお礼の品となっています。通常のいわしの1.5倍の大きさで、とろける脂は大トロの味わいということから名づけられています。9月10月の産卵前の時期のいわしを使っていて、0.1%しか獲れない希少なものを北海道十勝港で水揚げ直後に急速冷凍しています。
「大トロいわし」は、北海道広尾町がリリースしたプレミアム冷凍ブランドRevoFishの第一弾商品です。北海道のマイワシの旬は夏ですが、厳選したマイワシをとれたての新鮮な状態のまま、旬の時期以外にも食べてもらいたい!という思いで作られた商品とのことです。
千葉のいわしの旬や特徴
千葉県の銚子港は、いわしの主要な水揚港として有名です。銚子の沖合では、南からの黒潮と北からの親潮がぶつかり、さらにそこに利根川からの淡水も加わって、プランクトンが豊富に発生する好漁場となっています。千葉県銚子港で水揚げされたマイワシは、エサをたっぷり食べて丸みを帯びて太っているのが特徴です。
特に千葉県では入梅の時期に水揚げされるマイワシは「入梅いわし」と呼ばれ、1年の中で最も脂が乗って美味しいと評判です。その脂のりは少ないの時期の倍以上で、他の時期とは比べ物にならないほどの美味しさで人気です。千葉県銚子のいわし料理の代表的なものとしては、刺身、塩焼き、煮付け、佃煮以外になめろう、つみれ汁、さんが焼き、蒲焼き、卯の花漬けなど、さまざまな調理法があります。
千葉県の銚子では毎年この時期に鮮度抜群のいわしが食べられる「入梅いわし祭り」が行われます。2018年は6月15日から7月31日までとなっています。入梅いわしおまかせ御膳は税込で2500円となっています。その期間に千葉県銚子市方面にお出かけする機会のある方はぜひ思い出してください。
茨城のいわしの旬や特徴
茨城でもいわしは1年を通してかなり長い期間にわたって水揚げがありますが、カタクチイワシやウルメイワシのように加工品となって出荷されることの多いいわしもあります。ちなみに茨城の那珂湊おさかな市場でのカタクチイワシの旬は10月から12月となっています。
この写真は仙崎市場で、船曳き網で獲れた仙崎湾のカタクチイワシを選別しているところです。この時のものはニガと呼ばれている5cm程度のいわしで、「いりこ」に加工して出荷されています。このようにカタクチイワシは様々な加工品となって私たちのところに運ばれて来ます。
シラスはカタクチイワシやマイワシなどいわし類の稚魚のことで、茨城県の水産物を代表するもののひとつです。茨城県では、北茨城市、日立市、大洗町、鹿嶋市の漁獲量が多くなっています。
三重県のいわしの旬や特徴
マイワシは他の魚と比べて、1年を通して長い期間流通しています。三重県では、産卵ピークを迎える2,3月にかけては産卵群がまとまって来遊するようです。かつてマイワシの高水準期には、熊野灘には大きいサイズのいわしが産卵後に大挙して押し寄せてきたそうですが、群れで回遊するいわしの動きをつかむのは難しいようです。
一方カタクチイワシについては、稚魚はチリメンジャコの原料として、幼魚は煮干し、成魚は鮮魚や丸干しと、私たちが加工品として食べることが多い魚です。カタクチイワシはマイワシと比べると体も小さくて脂ののり方も控えめですが、特に熊野灘に面した三重県中部以南では好んで食べられていて、丸干しなどが人気です。
ウルメイワシは鮮度が落ちるのがとても早く、志摩などの産地であっても朝に獲れたウルメイワシが夕方まで生のまま売られていることはほとんどありません。鮮魚として店頭で見かけることは難しいですが、「塩ウルメ」と称した塩をした小ぶりのものや大型の生のものを発見したら、迷わず「買い」です!と県のおさかな図鑑でもおすすめしています。
いわしの美味しい食べ方
栄養満点でお手頃に買えるいわし。新鮮なものはまずはお刺身がおすすめですが、煮ても焼いてもおいしくて白いごはんにぴったり合います。旬のいわしを美味しく食べる、おすすめレシピを紹介します。
しっとり美味しいいわしの煮付け
短時間煮るだけで、しっとりやわらかで美味しいいわしの煮付けの作り方です。材料はいわし4尾、長ねぎ1/3本、しょうがの薄切り1/2かけ分、しょうがのせん切り1/2かけ分、合わせ調味料(水130ml、酒・しょうゆ・みりん・酢を各大さじ2)です。
いわしを水で流しながらうろこを取ります。胸びれのつけ根のところから頭を落と して、腹は斜めに切り落とします。刃先で内臓をかき出して、中を洗 って水けをふきます。ねぎは斜め薄切りにします。鍋に合わせ調味料を煮立てます。いわしとしょうがの薄切りを入れて煮立ったら落としぶたをして、弱めの中火で約10分煮ます。ねぎとしょうがのせん切りを水につけてパリッとさせ、器に盛ったいわしにのせたら出来上がりです。
さっぱり食べられるいわしの塩焼き
大根おろしをたっぷりのせてレモンをギュッとしぼった、さっぱりとした味わいのいわしの塩焼きです。材料は、いわし8尾、大根10cm、あさつき4~5本、レモンのくし形切り1個分、塩、しょうゆです。
いわしは水で洗って、うろこをこすり落とします。頭を左にして置いて、えらぶたの下に包丁を当てて頭を切り落とします。尾が手前になるように置き替えて、腹側を斜めに4から5cmほど切り落とします。腹の切り口を開いて、包丁の刃先で内臓をかき出します。流水の下で腹の中までていねいに洗って、ペーパータオルで全体の水けを拭き取り、腹の中もていねいに押さえるように拭きます。
大根はすりおろして、ざるなどに上げて自然に水けをきります。あさつきは小口切りにして、大根おろしと混ぜておろしソースを作ります。焼く寸前に塩小さじ1.5杯を均一に両面にふります。グリルか焼き網を熱したらいわしを並べ、4から5分中火で焼きます。こんがり焼き色がついたら裏返して2から3分焼きます。いわしを皿に盛って、おろしソースをたっぷりのせてレモンのくし形切りを添えます。好みでしょうゆをかけます。
種類が豊富ないわしを堪能しよう
今回は古くから日本人にとって身近ないわしを紹介しました。有名産地である千葉県・北海道などで獲れるいわしについて種類や旬の時期を見てきましたが、調べれば調べるほどに複雑ないわしの世界です。大きな群れとなって回遊するいわしの生態についてはわからないことも多いですし、気候などの影響も大きく受けます。そんな中、海に漁に出ていく人たちの苦労にも思いを寄せつつ、種類も栄養も豊富ないわしを美味しく食べましょう!