ししゃもという魚は本ししゃもと違う?違いを画像で詳しく解説!
ししゃもという魚はスーパーや魚屋でよく見かけますが、実は売っているほとんどのししゃもが本物のししゃもとは違う魚です。では私たちが食べていたししゃもという魚は一体なんの魚なのでしょうか?本当のししゃもとは一体どんなものなのでしょうか?別の魚がししゃもと言われるようになった所以と、本ししゃもの特徴と生態、本ししゃもの見極め方などを画像を使って詳しく解説しています。ししゃもの秘密が気になる方はぜひ最後まで読み進めてみて下さい。
目次
ししゃもは、なじみの大衆魚
皆さん、この画像の魚がなにかわかるでしょうか?商品名「ししゃも」としてスーパーや小売店でよく見る一般大衆魚です。
焼いてよし、漬けてよし、揚げてよしと昔から日本人の食を支え続けてきたおなじみの大衆魚「ししゃも」ですが、隠された秘密がありました。
実は一般の家庭でよく食べている「ししゃも」は本来の「ししゃも」とは違う魚であることが多いようです。
ししゃも好きな方はもちろん、今まで食べていたししゃもがなんなのか気になる方も画像で詳しく解説しているので是非、以下の記事を読んでみて下さい。
スーパーのししゃもは本ししゃもと別の魚だった?
皆さんがよく知っている「ししゃも」はスーパーに売られているあの「ししゃも」だと思うのですが、実はその「ししゃも」、本当のししゃもではなくまったく別の魚だったようです。
現在は本来ししゃもと呼ばれていた魚は「本ししゃも」と呼ばれるようになってきています。スーパーでは「ししゃも」と「本ししゃも」で使い分けられている事が多いのですが。なぜそんな事になったのでしょうか?
本ししゃもの減少が原因?
「本ししゃも」は実は、北海道の太平洋沿岸の鵡川から釧路までの間でしか獲れないと言われています。本当のししゃもは世界的にもとても限られた場所でしか獲れない魚だったようです。
しかし、漁獲高の減少が起こり本ししゃもを獲る漁師が減ってしまいます。そうなると売られる「本ししゃも」もそれに伴い減少していきます。これがししゃもと本ししゃもを分ける発端となっていきます。
本ししゃもの代用品として輸入魚が人気に!
魚売り場では「本ししゃも」の減少により、売りたいのに売れないという状態になってしまい、仕方なく「本ししゃも」の代わりとして似た安価な輸入魚を売り出すようになっていきました。
それまで本ししゃもを食べていた一般家庭では本ししゃもの代わりになり、しかも安い魚という事から輸入魚は一般家庭に急速に広まりました。
更にカペリンという魚は日本市場ではカラフトシシャモと呼ばれていて、一般家庭でも「ししゃも」という名前で呼ぶようになり、スーパーなど売り場側もカラフトを省略し「ししゃも」として売り出すようになりました。
こうした、本来とは違うものなのに似たような名前で呼ぶという事は昔も今も変わらず見られるようです。
普段はししゃもと呼んでいる魚の名前は?
流通しているほとんどのししゃもは偽者
さて、昔ししゃもと言われていた魚は「本ししゃも」と言われ、現在「ししゃも」と呼ばれるものは本来とは違った偽物のししゃもだという事がわかりました。
それでは普段、一般的に売られていて我々が「ししゃも」と呼んでいるあの魚の本当の名前、そしてその魚の正体はなんなのでしょうか?
スーパーのししゃもはキュウリウオかカペリン
まず一般のスーパーで売っている「ししゃも」と表記されている魚については2通りあるようです。
出典: http://i.yimg.jp
まず1つ目は、北海道でキュウリの愛称で親しまれている「キュウリウオ」です。
キュウリのような特徴的な臭みがあることからキュウリウオと名付けられたこの魚は、北海道の市場では一般的な冷凍や生の状態から一夜干しまで幅広い状態で売られています。
2つ目は上の画像の「カペリン」という輸入魚です。季節によって回遊する回遊魚で、アイスランド、グリーンランド周辺に生息しています。
カペリンは日本でししゃもとしても人気ですが、アイスランドでも大衆魚として非常に人気なようで、貨幣のデザインにまで使われています。
「ししゃも」として販売して問題にならない?
日本のスーパーマーケットの多くが本当のししゃもとは違う魚をししゃもとして販売している現状ですが、これは問題とはならないのでしょうか?
漁師さんや市場では、魚を通称や愛称で呼んでいたり、その市場や共通の漁師間でしかわからない呼び方などが多く存在します。
しかしそんな事情があっても、こちらとしては本物がほしいのに違うものを売りつけられるのは困ります。法的に産地偽装ではないかという声も実際多くあるようです。
このことについて、日本の水産庁の公式ウェブサイトを調べてみると、H19年5月版「魚介類の名称のガイドラインの見直しについて」という資料から、輸入ししゃもについての記述を発見しました。
輸入魚については、現地で使用されている名前より日本で呼ばれている名前の方が良いとされているようです。
カペリンは1930年代に「カラフトシシャモ」と呼ばれている為、英語のカタカナ表記である「カペリン」にする必要はないと書いてあります。
「ししゃも」表記についてはどうなのでしょうか?これは平成19年7月の水産庁による「魚介類の名称のガイドラインについて」という資料からカペリンではなくカラフトシシャモの名前で見つける事ができました。
カラフトシシャモの「使用しない事とする名前」の欄に、シシャモという名前があり、カラフトシシャモの原材料名に「ししゃも」と表示すると優良誤認となるようです。
ただし、原材料名に「カラフトシシャモ」または「カペリン」と表記すれば、商品名として「ししゃも」や「子持ちししゃも」と表記する事はできるようです。
キュウリウオの特徴と生態
キュウリウオはキュウリウオ目キュウリウオ科キュウリウオ属の海水魚で日本では「キュウリ」または「キュウリウオ」と呼ばれています。
このキュウリウオという魚は体の色は銀色で、下の画像のように下顎に隠された円錐形の鋭い歯が特徴です。
見た目はとてもししゃもに似ているのですが、体はししゃもよりも大きく臭いがキュウリに似ている事から日本ではキュウリウオと名付けられました。
北海道では単純に「キュウリ」と呼ばれ、冷凍や生の状態から一夜干しなど様々な状態で売られています。
生態に関しては、北海道沿岸から日本海の北部、オホーツク海、北太平洋などの冷たい水域である場所に生息しています。
産卵期は晩春から初夏と言われ、干し物の「子持ちししゃも」として販売される事が多いようです。
カペリンの特徴と生態
カペリンとはキュウリウオ目キュウリウオ科の海水魚で英語での名前は「Capelin」と言います。このことからカペリンまたはキャペリンと表記される事もあるようです。
日本の市場では「カラフトシシャモ」または「輸入ししゃも」と呼ばれ区別されますが、スーパーでは「ししゃも」という名前で販売されています。
カラフトシシャモという名前の通り、下の画像のようにパッと見た時はししゃもに似ている為、樺太のししゃもという呼ばれかたが主流となり現在のカラフトシシャモが日本での名前として正式に登録されたようです。
ただし、本来のししゃもとは種類も違えば色合いや味も違うといった事から水産庁は現在、カペリンまたはカラフトシシャモをシシャモとして表記をしないようガイドラインに記載しています。
カペリンの特徴は鱗の数が多く、本来のししゃもは60枚程度なのに対し、カペリンは200枚前後もの鱗を持っています。
カペリンの生態については極北海域の深度725m以浅に生息し、ロシア北西部の白海や北海とグリーンランド間のノルウェー海からカナダ北東のハドソン湾、ファンデフカ海峡など広い地域を回遊しています。
カペリンも季節回遊を行う魚で、海流や氷塊に関連し回遊パターンが分かれるようです。寿命は7年ほどで、3歳~4歳で13cmほどの大きさとなり一度だけの産卵をするようです。
アイスランドでは1991年に豊魚の象徴とされ、アイスランド貨幣である10クローナ(下の画像右上のコイン)のデザインにもなりました。
日本ではししゃもの代わりとして1970年代以降、輸入が急増しました。そして親しまれていた本来のししゃもとの圧倒的な資源量から、こちらのカペリンがししゃもとして一般流通していったようです。
そして2003年に行政指導により原材料名には「カラフトシシャモ」と表記するようになったものの商品名は「ししゃも」のまま現在も世の中に流通しています。
そんな本来のししゃもとは圧倒的な資源量でししゃもの名称を奪う形となったカペリンですが、日本では子持ちししゃもが人気である為メスの乱獲が目立ちました。その事が原因で現在では資源枯渇を危惧し漁獲制限が行われました。
本物のししゃもである「本ししゃも」とは、どんな魚?
ここまでで現代のスーパーや小売店でよく売られている偽物のししゃもについては書いてきましたが、それでは本物のししゃもとは一体どんな魚なのでしょうか?以下では本物である「本ししゃも」について調べてみました。
本ししゃもは北海道の希少な固有種
実は本来のししゃもという魚は、北海道のそれも太平洋沿岸だけでしか獲れない日本固有のとても貴重な魚で、北海道では「北海道むかわ町の町魚」とも呼ばれています。
また本ししゃもは世界でも日本だけしか取れないので、外国名も「Shishamo smelt」と日本名がそのままつけられていて、日本固有魚である事がよくわかります。
本ししゃもの特徴と生態
ここからは本ししゃもの特徴と、その生態です。本ししゃもの生態を知ると、もっと本ししゃもの貴重さ、そしてその価値がわかります。
「本ししゃも」はサケ目キュウリウオ科シシャモ属となっており、体の長さは12~18cmとされていて、はっきりと見える大きな鱗と目より後ろまである大きな口が特徴です。
また、寿命は3年~4年と短く、雄は産卵に参加すると死んでしまうという性質を持っています。
10月の中旬から11月上旬にかけ、本ししゃも達は産卵の為に川を遡上していきます。遡上というのは本来の川の流れに逆らって泳いでいく事です。そして下流域で産卵します。
産卵後は海にくだっていき、徐々に成長してその次の秋、オスの多くは成熟しますが、産卵に参加する為そこで死んでしまいます。しかしその中で小型のオスはそのまま海に残り、次の年の2年目から産卵に加わるようです。
メスは1年で成熟し産卵する事ができ、翌年には2回目の出産をする事ができます。本ししゃもは以上のサイクルを繰り返している為、寿命は3~4年と言われています。
ししゃもと本ししゃもの違いは画像でも一目瞭然
キュウリウオやカペリンは代用魚といわれるだけあってパッと見似ているかもしれませんがそれぞれの特徴を画像で見比べるとちゃんと見分ける事ができます。
ではどうやって本ししゃもとキュウリウオとカペリンを見分ければよいのでしょうか?以下にそれぞれ比較して違いを上げてみました。
まずキュウリウオですが、下の画像のように鱗が大きく脂ビレという鰭(ヒレ)も持っています。そして口も大きく、ししゃもの特徴3つを完全に持っています。しかし大きな違いがあります。
それは体の大きさです。本ししゃもは13chから大きくても18cmほどなのに対し、キュウリウオは25cmもの大きさを持っています。また、キュウリウオは下の画像のように円錐形の鋭い歯もありますので、キュウリウオか本ししゃもかを見分けるときは体のサイズを見てみるのが良いようです。
続いてカペリン(カラフトシシャモ)です。カペリンは名前の通りカラフトのししゃもと呼ばれるだけあって姿も形も良く似ています。しかし違いはたくさんあります。下の画像から本ししゃもとの違いがわかるでしょうか?
本ししゃもとカペリン、似ているといっても隣に並べて見比べてみるとやはり違いがわかってきます。本ししゃもの方は大きな目と目の後ろまである大きな口が特徴ですが、一方カペリンの方は目玉も口も小さいです。
そして粗くてよく見える大きな鱗をもつ本ししゃもに比べてカペリンは一つ一つの鱗が見えづらく下の画像のように皮と一体となっています。以上の点から、本ししゃもとキュウリウオとカペリンは見分けていくことができます。
スーパーに行った際は今目の前のししゃもは、キュウリウオなのかカペリンなのか、それとも本ししゃもなのかをぜひご自身の目で見分けてみて下さい。
昔は北海道の川が本ししゃもで溢れるほどになり、サケの代用魚として広まった背景がありますが、北海道の一部でしか獲れない本ししゃもは北海道だけでなく日本中に広まってしまったため激減してしまいました。
更にメスの子持ちししゃもが流行ってしまった為に、現在ではカペリンなど偽ししゃもとの値段の差はどんどん開き、なかなか見る事のない秋限定の希少な高級魚となっています。
本ししゃもはアイヌの神様がくれた魚?
本ししゃもは一体いつから食べるようになったのでしょうか?それは北海道にアイヌの一族が暮らしていた頃まで遡ります。
ししゃもの元々の名前は「シュシュハム」と言うそうです。これはアイヌ語でシュシュが「楊」、ハムが「葉」を表しています。楊というのは下の画像のようなヤナギの落葉木です。
アイヌの伝説で食べ物に困っていたときに神様が楊の落葉を川にながし魚に変えたと言うお話がありました。
ここからシュシュハムという名前になり、それが時を経てシシャモという名前になったのではないかと言われています。
また、この話はあくまで仮説で、美しいという意味の「シサク」や、日本人という意味の「シサム」と呼ばれていたという説も存在します。
本ししゃもの漁
本ししゃもの漁は「けた網漁」と呼ばれる漁法を使ってたくさんのししゃもを捕まえているようです。けた網というのは袋のような網を船で引っ張っていき、その網にかかった魚を選別していく漁法です。
ししゃも等の魚をまもる知事許可漁業
本ししゃもが生息する沿岸では、知事許可漁業と言い、免許がないと漁を行う事はできなくなっています。水産資源の保護や漁業調整し厳格な管理の元で漁を行い、本ししゃもを獲りすぎないようにしているようです。
スーパーや魚屋で本ししゃもを購入する時の注意点
スーパーで売っているししゃものうち8割り~9割りはカペリンなど偽ししゃもと言われていますが、スーパーでも本ししゃもを見かける事があります。
しかし名前が「本ししゃも」ではなくただの「ししゃも」として売っているケースもあります。名称に本ししゃもと書いてあればわかりやすいのですが、そうでないものもあるのでスーパーで買う時の3つの簡単な見分け方を書いてみました。
スーパーではカペリン(カラフトシシャモ)はほとんどの場合、名称が「ししゃも」または「子持ちししゃも」となっているので、まずは原産地を見てみましょう。
本ししゃもは北海道でしか獲れません。しかし原産地が外国産になっているものがありますので、これは間違いなく別の魚です。
そして、多きさを見て下さい。体長18cm以上のサイズであれば、カペリンもしくはキュウリウオの可能性がとても高いです。そして最後は値段に注目して下さい。
本ししゃもは偽ししゃもと違って高級魚です。一本が150円以上するようであれば本ししゃもと思って良いと思います。スーパーで本ししゃもを探すときは以上の3つの点に気を付けて購入してみて下さい。
高級魚「本ししゃも」を食べよう!
本ししゃもは15cmほどでも一匹150円くらいする高級魚です。一番美味しい食べ方はなんなのでしょうか?どういう食べ方があるのかを調べてみました。
秋の高級魚「本ししゃも」の味
本ししゃももカペリンなどのししゃもも子持ちが人気であのプチプチとした食感と口に広がる風味は何とも言えない美味しさがあります。しかし本ししゃもを食べるならオスのほうがおすすめという方もいます。
本ししゃものオスはよく脂がのっていて、ししゃもの風味と脂の旨味が合わさって高級魚に相応しい美味な味と言われています。本ししゃもを食べる際はぜひオスとメスの味の違いも体験してみて下さい。
本ししゃもは栄養も豊富
本ししゃもは丸ごと食べられる事からもカルシウムをたくさん摂って骨を強くすることができます。さらにビタミンA効力(IU)も700と豊富です。
更に本ししゃもはガン予防の効果も期待されると言われ子供から高齢の方まで幅広い層の健康維持が期待できます。
本ししゃもの旬はいつ?
本ししゃもの旬は夏から秋にかけての短い期間です。さらに獲れた日のししゃもの成長具合によって味も変わるため、風味よく飽きにくいのも特徴です。
本ししゃもの焼き魚
焼き魚はオーソドックスですが一番本ししゃもの本来の風味を楽しむ事ができると思います。直火で焼く場合は少し焦げ目をつけて食べると独特の苦みがでて、それがまた旨さにつながるようです。
本ししゃもを刺身で食べる!
本ししゃもは生で食べる事もできます。しかし刺身は新鮮さが重要なので必ず刺身用のものを買いましょう。
また、北海道のむかわ町に行けば獲れたての最高の本ししゃもの刺身を食べられるお店もあるようなので、最高の本ししゃもの刺身を味わってみたいという方はむかわ町へ行ってみるのも良いかもしれません。
揚げてフライにする
焼き魚も美味しいのですが、フライが好きな方は揚げても本ししゃも独特の美味しさを楽しめます。できるだけ本来の風味を楽しむために、ソースは使わず、塩を軽く振り、好みですだちを絞って食べるのがおすすめです。
本ししゃもは秋限定の高級魚だった
ここまで読んでくださった方はししゃもと本ししゃもの違い、そしてその貴重性がわかって頂けたのではないかと思います。その貴重性から値段も当然高級な魚になりますが、土用の丑の日のうなぎなどと同じように秋限定の高級魚として秋は本ししゃもを食べてみてはいかがでしょうか?
本ししゃもはとても貴重でスーパーや小売店で見かける事も少ないと思いますが、それでも秋の季節は本ししゃもの季節でスーパーにカペリンなんかのししゃもと一緒に並べられている事もあります。
カペリンなど他のししゃもとは全然違う値段でスーパーで売られているししゃもを見かけたらそれは本ししゃもかもしれません。スーパーの魚コーナーで本ししゃもを見つけたらぜひ買って食べてみて下さい。