スターゲイザーパイの味は？ジブリにも登場するイギリスの不思議料理とは？

スターゲイザーパイという食べ物を知っていますか?名前だけを聞くと、星を連想するような言葉が使われていて、可愛らしい姿を想像する人もいるのではないでしょうか?スターゲイザーパイはニシンやイワシ等の魚とジャガイモ等の野菜が使われている、食事系のパイのようです。日本ではあまり馴染みのないパイですが、イギリスでも一部の地域を除き、あまり名を知られてはいないようです。

日本語に訳すと"星空を見上げるパイ"というスターゲイザーパイは、イギリスの南部コーンウォール地方、マウゼルという村に伝わる伝統料理です。年に一度のトム･バーコックス･イヴ祭というお祭りになると、町民によって作られ、食べられているようです。今回はこの謎が多い不思議な料理、スターゲイザーパイについて詳しくまとめていきます。一体どんなパイなのでしょうか?
 

イギリス料理と言えば、あまり美味しくないという噂が囁かれていますが、実際のところはどうなのでしょうか?イギリス料理で有名な、フィッシュ&チップスや、ジャガイモとミートソースが使われているシェパードパイ、ティータイムに欠かせないスコーン等は、イギリスへ旅行に行った人の証言でも美味しい!と評価されています。また、イギリス料理ではないですが、インド料理や中華料理も美味しいと言われています。

しかしながら、やっぱり不味いという意見も聞こえてきます。中でも｢味がしない｣とか、｢食感や味が分からなくなるまで加熱されていて硬い｣などの意見もあります。これはイギリスの食文化として、保存状態を考え、消毒殺菌を重視し、食材をよく過熱する作り方に問題があるようです。また、料理の段階では味をほとんど付けず、食べる人が自分好みに味付けするという事があり、不味いという意見に繋がるのではないかと考えられます。

イギリスの不味そうなメニューとしてよく名が挙がるのが、実はこのスターゲイザーパイと、ウナギのゼリー寄せです。ウナギのゼリー寄せは名前からして美味しいイメージはありません。どうしてウナギをゼリーで固めてしまったのかと想像し難いのですが、スターゲイザーパイは一見美味しそうな名前の為、何故不味そうな料理として語られているのでしょうか?その真実の姿を探っていきましょう。

スターゲイザーパイは、イギリスの南部、コンウォール地方マウゼル村の英雄、トム･バーコックを讃える為に作られた料理と言われています。トム･バーコックはとても勇敢な漁師でした。クリスマス前に嵐が続き、漁に出れず、魚が主食であった村民達は食糧難となり餓えに苦しんでいました。そこでトム･バーコックは、村民の為に危険を顧みず自ら名乗り出て漁に出ました。

嵐で荒れ狂う海の中から大量の魚を捕り、無事帰還したトム･バーコックは、その魚を村民達全員に配ったと言われています。この勇気ある出来事がきっかけで、マウゼル村では毎年12月23日になるとトム･バーコックス･イヴ祭という祭が開催されるようになりました。この祭で作られるのがスターゲイザーパイです。

スターゲイザーパイは、パイの中に魚が入っているのが分かるように魚の顔を上に向かせ、その姿がまるで星を見上げるように作られていたので、この名前が付けられたと言われています。そして魚の盛り付けは、頭や尻尾が立つように見せることでよりリアルに表現でき、良いとされています。

スターゲイザーパイを知っているという人は、そのほとんどが、ジブリ映画｢魔女の宅急便｣で知ったのではないでしょうか?ジブリ映画｢魔女の宅急便｣の劇中に出てくるニシンとかぼちゃのパイは有名ですが、実はこのニシンとかぼちゃのパイはスターゲイザーパイがモデルになっていたようです。

お婆さんが可愛い孫娘の誕生日パーティーの為にと、心を込めて作ったニシンとかぼちゃのパイ。主人公がパイを届けると、孫娘が｢このパイ嫌いなのよね。｣と言って捨ててしまいます。お婆さんの気持ちを想うと可哀想と、印象に残っている人も多いのではないでしょうか？しかし、まだ若い孫娘にしてみれば、自分の誕生日パーティーに魚の頭が突き出たパイが送られて来たら、正直困ってしまうかもしれません。

ジブリ映画｢魔女の宅急便｣に出てきたニシンとかぼちゃのパイは、魚の頭が突き出たスターゲイザーパイの見た目とは全く違い、パイ生地で魚の形を作り飾られたとても可愛らしいものです。取り分けるのが勿体無くなるような見た目で、パーティーで出てきたら話題になりそうな料理です。子供達には人気が出そうな、ジブリ映画らしい料理です。

可愛らしい見た目からか、このニシンとかぼちゃのパイは、実際に作ってみた人のレシピがネット上で公開されています。しかし、魚の香りが濃厚なニシンと甘いかぼちゃの組み合わせは一体どんな味がするのでしょうか?気になる作り方は、後ほど紹介していきます。

ジブリ映画｢魔女の宅急便｣では、あんなに可愛らしく描かれていた、スターゲイザーパイですが、実物の姿はかなり衝撃的です。こんがりと焼かれたパイ生地の所々から、ニシンの頭がニョキっと生えている様に見えます。これが正式なスターゲイザーパイの姿のようです。頭と尻尾が上を向いて出ているのは、魚が活き活きとしている姿を表しているようです。

スターゲイザーパイをジブリの映画で知ったと言う人には、あの魚の頭が突き出た見た目は、かなりインパクトがあります。少なからずショックを受けた人もいるのではないでしょうか?そしてあの時、パイを拒否した孫娘の気持ちが分かるという意見も聞こえてきます。

実際に目の前に、魚の頭が多数突き出たあのスターゲイザーパイが運ばれて来たら、普通の人なら言葉を失ってしまうのではないでしょうか?これが実在する料理というのですから驚きが隠せません。魚を丸ごと一匹使う料理は日本にもありますが、それをパイに入れるだけでは無く、突き刺して焼くという作り方は、世界中を探しても珍しいのではないでしょうか？

スターゲイザーパイという可愛らしい名前と実物の見た目のギャップで理解に苦しむ人も多いようです。確かに名前だけを聞けば可愛い星型のパイだとか、デザート系のパイを想像してしまいます。やはりSNS等でもスターゲイザーパイの真実の姿は衝撃を与えているようです。

それではここからは、スターゲイザーパイのレシピを紹介します。今回は冷凍パイシートを使った簡単な作り方で作っていきます。生のニシンが手に入らないという場合は、イワシやエビ、アジ等で代用しても良いでしょう。あとは家にあるお好みの野菜等を使って作っていきましょう。

材料は、ニシン、冷凍パイシート(型に敷く分と上に被せる分)、ジャガイモ、玉ねぎ、ゆで卵、ベーコン、マッシュルームかしめじ(お好みで)、塩コショウ少々、ホワイトソース適量、溶き卵少々、バター少々です。ジャガイモを茹で、粗く潰します。玉ねぎ、ベーコン、ゆで卵を小さめに切っておきます。マッシュルームも薄くスライスしておきます。ニシンは頭を落とさないように、内蔵を取り除き、うろこを落としておきます。

次は作り方です。まずパイ型に冷凍パイシートを敷き、下の部分になるところを焼いておきます。下処理をしたニシンに塩コショウを振ります。フライパンを熱し、バターを入れ、ジャガイモ、玉ねぎ、ベーコン、マッシュルームを入れて炒めます。全体的に火が通ったら、ホワイトソースを入れ、軽く混ぜ合わせます。先ほどの焼いたパイ生地の上に、ホワイトソースとゆでたまごを乗せ、ニシンを丸ごと並べます。

残りのパイシートを上に乗せ、ニシンの頭が出せるように切り込みをいれます。切り込みから頭や尻尾を出し、空を見上げるようにニシンを配置します。頭が立たない場合は、残ったパイ生地を支えにしたり調節して下さい。溶き卵を塗って、220度に余熱したオーブンで30分前後焼き、火が通って無さそうでしたら更に時間を調節して焼いて下さい。魚とパイ生地がこんがり焼き上がったら出来上がりです。
 

生のニシンを使ったレシピは敷居が高いという人には、このミニ･スターゲイザーパイがオススメです。作り方は、まずパイの実と食べる煮干などの乾燥小魚を買ってきます。小魚が長すぎる場合は途中で折って長さを調節します。あとは小魚が空を見上げるように、パイの実に何匹か挿しこんでいけば出来上がりです。星を見上げるようにしっかり上を向かせましょう。この作り方なら子供でも簡単に楽しんで作れます。

今度はジブリ風のスターゲイザーパイの作り方を紹介します。ジブリ風のスターゲイザーパイは、本物と違い、魚の頭が突き出ていません。見た目も華やかなこのパイは、パーティー等で盛り上がりそうなメニューです。良かったら作ってみて下さい。

材料は、かぼちゃ、ニシン、白ワイン、塩コショウ、ホワイトソース、しめじ、玉ねぎ、バター、冷凍パイシート、ブラックオリーブ、卵黄です。にしんは頭と内臓とうろこを取り、3枚に卸します。玉ねぎはみじん切り、しめじは食べやすい大きさにしておきます。ブラックオリーブは輪切りにします。

かぼちゃを柔らかくなるまで茹で、潰して塩コショウをします。ニシンは塩コショウ、白ワインを少々振り、フライパンで軽く焼き、皿にあけておきます。フライパンにバターを溶かし、玉ねぎとしめじを炒め、ホワイトソースを入れ火を通します。耐熱皿に、カボチャ、ニシン、ホワイトソースの順に乗せパイ生地で蓋をします。蓋の上に魚の形に切り取ったパイ生地を飾ります。

淵に、ブラックオリーブを飾りつけ、最後に艶出し用に卵黄を刷毛で全体に塗り、余熱したオーブンで焼き上げます。200度で20分前後、パイ生地が焦げるようなら途中でアルミホイルを被せ、時間を調節して下さい。こんがりと焼き上がれば出来上がりです。

見た目はとても強烈な印象を持たれるスターゲイザーパイですが、実際に食べてみた味はどうなのでしょうか?材料だけを見ると、ニシンやイワシとジャガイモやベーコン、ホワイトソースの相性は良さそうに感じますが、SNSでの評判を調べてみました。

実際に食べた事があるという人の証言では、見た目によらず美味しい!という意見が聞こえてきます。とても美味しいらしく、何度でも食べたくなる味という人もいるようです。なかなか食べる機会には恵まれませんが、これは是非食べてみたくなります。

美味しい派の意見を紹介しましたが、美味しくないという意見も少し目立ちます。確かにパイをお菓子の感覚で考えると、魚の風味がたっぷりのスターゲイザーパイは受け入れられないのかもしれません。こうして見ると食の好みで、美味しいという意見と美味しくないという意見に真っ二つに分かれているようです。

やはり食べた事が無い人から見れば、ニシンが丸ごと乗ったスターゲイザーパイは"美味しくなさそう"という意見が大多数です。見た目のインパクトのせいもあり、食べたくない!という声が聞こえて来ます。

日本ではあまり馴染みの無いパイなので、周りに作った事があるという人はなかなか居ません。しかしSNSでは実際に作った人の調理例がいくつかありました。これから作りたいという人は是非参考にしてみて下さい。

上に被せるパイ生地を可愛らしくデコレーションしたアレンジです。余ったパイ生地をクッキー型で抜いたり、魚を放射状に並べる事で見た目がより美味しそうになっています。ハロウィンパーティーに、かぼちゃのパイでは無くスターゲイザーパイでお祝いしても楽しいかもしれません。パーティーの参加者達の注目の的になりそうです。

これはかなりワイルドな作り方です。しかしスターゲイザーパイは、魚を丸ごと一匹使うという作り方です。小さめの型で作る時は、大きなイワシやニシンを使うとこの様に1~2匹ほどで丁度良いのかもしれません。あまり沢山作らなくて良い場合は、魚を小あじや海老等に変えると良さそうです。

今回は、謎が多いイギリスの料理、スターゲイザーパイについてまとめてみました。見た目の印象とは裏腹に、意外と美味しい食べ物なのかもしれません。スターゲイザーパイを作ってみたいという方は、是非参考にしてもらえると嬉しいです。