ワインに酸化防止剤が入っている理由は?無添加との違いや影響を調査
ワインを選ぶ時に「酸化防止剤」の表示を気にしたことはありますか?添加物は体に悪そうという何となくのイメージがありますが、酸化防止剤を含むワインはたくさんあります。添加している理由や無添加との違い、体や味わいへの影響を調べました。
目次
ワインと酸化防止剤の関係
日本では酸化防止剤が入っている食品や飲料は、敬遠されてしまうこともありますが、多くのワインには酸化防止剤が含まれています。何となく体に悪そうというイメージもあるかもしれませんが、販売されているということは、安全性があるということ。この酸化防止剤とはどんなものか、添加される理由や役割などを調べていきます。
ワインが作られてから口に入るまで
ワインはブドウが原料になっています。原料になるブドウを樹から摘み取り、軽く潰します。赤ワインは、果皮と種を一緒に発酵させます。白ワインとの違いはこの果皮や種にあり、これらを除いてから果汁を搾りだし、酵母を加えてゆっくりと発酵さることで透明な白ワインになります。赤ワインは数日発酵させてから、果皮と種を除いて再び発酵させています。
発酵が終わると、底にたまった酵母やオリなどの不純物を取り除いて、樽やタンクで熟成させます。樽に詰めると、木材の香りやわずかな酸素と原酒が結びついて、独特な香りになります。その後ビン詰めをして、低温な場所でさらに熟成させるものもあり、こうした工程を経たものがワインとして口に入ります。ボジョレー・ヌーボーのように収穫から一か月ほどで口にできるものから、何十年と熟成しているものもあります。
ワインに酸化防止剤をいれる理由
ワインボトルに貼られている表示ラベルには「酸化防止剤(亜硫酸塩)」と記載されていうものが多くあります。ワインはブドウから作られるので、酸素と触れることでの酸化を防ぐために、醸造する過程で何回かに分けて亜硫酸塩が加えられます。
亜硫酸塩は、ブドウが発酵していく過程で生成されるアルデヒドという嫌な臭いの成分と結びついて、無害無臭の物質に変化させます。単純に、ブドウを潰してビンなどに入れておくだけでは、酸っぱい臭いがして、雑菌も発生して腐るだけになってしまいます。そうならないためにも、酸化防止剤としてブドウからも発生する亜硫酸塩を加えているのです。
ワインに酸化防止剤を添加するのは古代からの知恵
ワイン醸造で使われる酸化防止剤、亜硫酸塩という文字からも科学的で近代になって使われるようになったと思うかもしれません。実は、古代ローマ時代の人々もワイン造りをしていて、ワインを壺にいれる前に、硫黄のかたまりを燃やして亜硫酸を作り出して、雑菌の繁殖を防いでいたという記録があります。
ワインに亜硫酸塩を加えるのは酸化防止と殺菌のため。古代ローマ時代に硫黄を燃やしたものを加えたのが始まりとされる。ワインの製造過程には殺菌工程がないので、何も加えないと、酢酸菌によって酢になってしまうが、亜硫酸塩を加えることで長期保存が可能になった。
— 食べ物と健康雑学bot (@dietbot2015) March 7, 2018
古代ローマで考えられた技術と製法が、現在までに伝わるまでに亜硫酸塩という名前になりました。日本では、食品衛生法でもワインへの使用が認められていて、日常的にワインを毎日飲んでいても、体への健康被害を及ぼすものではないという判断があるからです。
ワインに使われる酸化防止剤の役割
ワインの醸造工程で酸化防止剤を使うのには、大きく2つ役割があります。1つは、発酵する前の状態のブドウ果汁の雑菌が増えることを防ぐためです。自然に実るブドウには雑菌がついていることもあり、殺菌が必要になります。雑菌がついたままだと、うまく発酵が進まなかったり、不快な臭いが発生して、ワインの味や香りに悪い影響をあたえてしまいます。また色も濁ってしまいます。
もう1つの役割は、酸化による劣化を防ぐためです。ワインは、樽で熟成させている間に、わずかな酸素があることで、複雑な香りになりまろやかさもひきだされます。ただ酸素が多すぎたり、ワインに含まれるアルコール分が酸素と触れると酢酸が発生し、酢酸が多くなりすぎると酸味ばかりが強いワインになってしまいます。酸素とのバランスを調整するためにも酸化防止剤が含まれています。
ちなみに酸化防止剤を使っているワインでも、賞味期限や飲みごろには影響しません。もともと熟成させるものなので腐るという概念がないのです。その代りに、ラベルに何年に収穫したブドウを使っているのかを明示しています。それでも、熟成向きのものとそうでないものがあるので、価格の安いようなテーブルワインは買ったらすぐに飲むのがよいでしょう。熟成するタイプのものでも保存状態に気を配る必要があります。
酸化防止剤を添加しないとどうなるのか
通常のワイン醸造方法で酸化防止剤を添加しないと、ブドウの雑菌が発生して発酵せずにワインにならないこともあります。また発酵が進んでも、きつい臭いのするワインや酸味の強い酸っぱいようなワインになってしまいます。こうしたワインでは商品としては売りものになりません。
日本では、イメージ先行で無添加ワインというコピーをつけたワインが売られていますが、世界的な「ワイン」とは違いがあります。フレッシュなブドウを原料として、醸造されるものがワインであって、日本のように発酵が進まないように加熱殺菌などの工程をふんだものはワインとは言えないという見方もあります。
ワインに使われる酸化防止剤のからだへの影響
「赤ワインを飲むと頭が痛くなる」ということを耳にしたことはありませんか?酸化防止剤が原因ではないかという説もありましたが、実際は、赤ワインに含まれる、血管を拡張させるヒスタミン、反対に血管を収縮させるチラミンが頭の血管に作用するという理由から片頭痛などをおこす人もいるということです。
ワインを飲んで頭痛がする人は、酸化防止剤が直接的な理由ではありませんが、頭痛を感じるなら飲みすぎのサインです。ワインは控えて、水などを飲んで異常な状態になった血管をもとに戻すようにしましょう。また喘息の症状がある方の中には、亜硫酸塩が体に影響する場合もあるので、気をつけた方がよいようです。
酸化防止剤が入っていないワイン
酸化防止剤を使っていないワインも販売されています。メーカーは、酸化防止剤を使わなくても雑菌が発生しないように洗浄を丁寧にする、良い香りを作り出すために酵母を選んでいる、醸造工程でできる限りワインの原酒と酸素が触れないようにする、といった工夫をしています。
日本では無添加と表示したワインが増えています。国産ぶどうを使って、酸化防止剤を添加せずに造っているものもありますが、それとは違い、海外から濃縮されたブドウ果汁を使っているものもあります。この果汁には腐らないために亜硫酸塩が使われている場合があります。ただ原料として使い、仕上がるワインへの影響はないために、無添加と表示されたり表示にない場合もあります。
無添加という表示をしていないけれども、酸化防止剤を使っていないワインもあります。違いは、醸造工程はほぼ同じにしながらも、酵母が発酵していくなかで、自ら亜硫酸が生成されるので、ワインとして飲む時にも亜硫酸が微量でも検出されることもあるという理由から、無添加と大きく表示しないようです。
ワイン以外でも使われている酸化防止剤
ワインの他にも、ドライフルーツや甘納豆などにも酸化防止剤は含まれていて、食材を漂白するという理由で使われることもあります。カット野菜のレンコンやお菓子のむき栗などにも、見た目の色を保つために食品そのものがもっている色素の働きを止めて、きれいな色を保つ役割を酸化防止剤の亜硫酸塩が担っています。
酸化防止剤として、ビタミンCが添加されているソフトドリンクもたくさんあります。「酸化防止剤」と表示するよりも、「ビタミンC」と表示したほうがイメージ的に好いように感じます。働きは、変色や風味の劣化の防止。ペットボトルのお茶はいつまでたっても、きれいなグリーンですが、茶葉から淹れた家庭で飲む緑茶は、時間が経つと茶色くなります。そこに、ビタミンCを添加するものとの色に違いがあります。
無添加やオーガニックワインの違い
酸化防止剤を使わない無添加のワインの多くは、ワインを熟成させている期間に酸素とワインが触れ合うことを避けるために、発酵が進まない若い状態で販売していることが多いです。また、酸化防止剤を使わない分と醸造期間が短いということから、単価的には安くなります。
「オーガニックワイン」とラベルに表示があると、安全安心なイメージがあるかと思いますが、オーガニックなワインでも酸化防止剤を使っているものもあります。通常、オーガニックワインというのは、EUでのオーガニックワインの規定を守って造られたワインのことで、ブドウそのものがオーガニック農法で作られ、規定量以下であれば酸化防止剤、亜硫酸塩を点火することも認められています。
酸化防止剤を知ってワインをより美味しく味わう
酸化防止剤はワインにとっても、体にとっても決して悪いものではありません。醸造工程で使われても、飲む時にはごく微量が検出される程度で、味が美味しくなるという好影響をもたらしてくれます。いい香り、いい味をひきだすために使われている亜硫酸塩であるので、表示ラベルに酸化防止剤の文字があっても、気にとめずに購入してください。