2018年07月07日公開
2024年07月22日更新
ブイヤベースとは何か解説!実は簡単に作れるフランス料理?
ブイヤベースとは一体どんな料理なのでしょうか?名前は良く知られていますが、実際にブイヤベースとはどんな料理かと聞かれて、正確に答えられる人は少ないことでしょう。ブイヤベースとは実は家庭でも簡単に作れるフランス料理らしいのです。そんなブイヤベースとは一体何なのかから、料理としての歴史に家庭でも簡単に作れる方法など、さまざまな角度から画像も交えて紹介していきます。
目次
ブイヤベースとはどんな料理?
みなさんはブイヤベースという料理を知っていますか?ブイヤベースを食べたことがある、作ったこともあるという方もいるかもしれません。寒い冬の時期に体を温めたり、夏の冷房で冷えた体を温めたり、熱いからそこ汗をかきたいときなどにも、ブイヤベースはぴったりの料理です。
ですがこのブイヤベースとは一体どんな料理なのでしょうか?漠然と海鮮スープ的なイメージはあるものの、これがブイヤベースです!とはっきり説明しきれる人は少ないのではないでしょうか?そんなブイヤベースがどんな料理なのか、歴史や料理方法まで紹介します。
ブイヤベースとはこんな料理
まずはこのブイヤベースがどんな料理なのかから見ていきましょう。話題のブイヤベースという料理は、一体どこの国の料理なのでしょうか?ブイヤベース発祥の地がどこなのか、ブイヤベースという名前には何という意味があるのかなど、基本的なことから簡単に紹介します。
ブイヤベースとは南フランスを代表する郷土料理
ブイヤベースとは、フランスの南の地域に位置するプロヴァンス地方の中でも、地中海沿岸地域の代表的な海鮮の寄せ鍋料理のことを指します。地元の魚介類を香味野菜で煮込んだもので、元々は漁師町の家庭料理だったものです。そんな南フランスの中でも一地方沿岸部の家庭料理が、どうしてここまで世界的にもメジャーな料理になったのでしょうか?それにもちゃんとした理由があります。
ブイヤベースとは観光地マルセイユの名物料理
南フランスのプロヴァンス地方の中心都市であるマルセイユは、フランス第二の都市であるとともに古い歴史を持つ観光都市でもあります。紀元前7世紀にはギリシャの植民地の港湾都市として、東方やアフリカとの交易で栄えただけでなく、豊富な海産物に恵まれた漁業の町でもありました。そんなマルセイユが19世紀ごろから観光地化するにつれ、地元レストランが土地の名物料理であるブイヤベースを看板料理にするようになりました。
さまざまなレストランでブイヤベースが地元の名物料理として提供される中、その味や見た目にもさまざまな技巧が加えられ、その料理方法も発展を遂げつつ今のスタイルに変わったと言われています。とはいえ、元々は家庭料理というブイヤベースらしく、各レストランごとに特徴を持った自慢のブイヤベースを出していて、さまざまな形でアプローチをしている、マルセイユの大切な故郷の味なのです。
ブイヤベースの名前の由来には諸説ありますが、ブイヤベース(Bouillabaisse)の前半分の「ブイイ(bouilli)」は「沸騰した」を意味し、後ろ半分の「アベス」は「アベッセ(abaisser)」が「弱める」という意味であることから、「決して煮立たせずに、ゆっくりと弱火でコトコトと煮込む」というような意味になるとも言われています。
もう一方で、ブイヤベースの前半分は「煮込む」と意味する「bouill」で後ろ半分は「火を止める」という意味の「abaisse」の合成語であるとも言われていて、結果「短時間で強火で煮込む」スープ料理とも言われています。どちらが正しいかはわかっていませんが、ブイヤベースとは何という意味か?という説に、全く真逆の意味が唱えられているというのは非常に興味深い点と言えます。
ブイヤベースとは世界三大スープのひとつでもある
ブイヤベースとはどんなスープなのかを語る上で、世界三大スープに触れないわけにはいきません。タイのトムヤムクン、中国のフカヒレスープとともに、この南フランスのブイヤベースは世界三大スープに数えられる、世界的に認められたスープなのです。ただし、この世界三大スープの中でも中国のフカヒレスープの代わりに、ロシアのボルシチを入れる場合もあります。現状ではこのボルシチも入れて、世界四大スープと呼ばれています。
ブイヤベースとはこんな歴史を持った料理
ブイヤベースとは、南フランスの漁師町の家庭料理として生み出され、世界三大スープに数えられるほど発展を遂げたスープであることは紹介しました。一介の町の家庭料理がここまで発展を遂げるまでには、一体どんな歴史があったのでしょうか?今度はブイヤベースの歴史について紹介しましょう。
ブイヤベースとは漁師飯を起源とする料理
ブイヤベースとは、かつては港町マルセイユの市場に出せなかった、画像のような棘のある危険で扱いにくい魚や、商品にならないような見た目の悪い魚などを、魚の扱いに長けた自分たちで何か簡単に作れる料理にならないかと、大鍋に入れて塩だけで茹でた本当に簡単に作れる料理でした。漁師飯らしい豪快な料理から、ブイヤベースは誕生したことになります。
その後17世紀に入ってから、ブイヤベースは最初の転機を迎えます。南米からヨーロッパにさまざまな作物が入ってくるようになったのです。その中のひとつにトマトがありました。トマトが一般に普及してくると、その味の良さからさまざまな料理に取り入れられるようになりました。ブイヤベースにも当然のように使われるようになったのです。こうしてブイヤベースはトマトの入ったスープ料理へと変化しました。
ブイヤベースとトマトの相性が良かったこともあり、トマトはブイヤベースにとって、なくてはならない味になりました。そして19世紀になりマルセイユの観光地化に伴って、数多くのレストランで提供されるようになったのは、先にも紹介したとおりです。その後も各レストランごとに味や見た目に何かしらの改良を加えながら現在の形になったものの、簡単に作れて美味しい家庭の味も存在している地元の味がブイヤベースなのです。
ブイヤベースとは「ブイヤベース憲章」で規定されている?
マルセイユ市に行くと、レストランの店頭に画像のような「憲章登録店」という何やら良くわからない表示のあるレストランを見かけます。実はこの「憲章登録店」の称号は、マルセイユ市が定めたブイヤベース憲章に規定されている基準にのっとってブイヤベースを作っていると認められた、「優良店」の証の称号なのです。この憲章登録店に行けば、間違いないとマルセイユ市がお墨付きを与えたブイヤベースを食べることができるのです。
「ブイヤベース憲章」って何?
ではこのブイヤベース憲章というのは何なのでしょうか?ブイヤベース憲章とは、「La Charte de la bouillabaisse」と書き、その材料やレシピ、サービスなどブイヤベースに係ることを細かく規定するものです。1980年にブイヤベースの質と伝統の味を守ることを目的に、マルセイユのシェフたちによって作られたものです。観光客目当てのイマイチなお店を見分けるのにも、このブイヤベース憲章は一役買ってくれています。
「ブイヤベース憲章」とはマルセイユ市の公式憲章
ブイヤベース憲章は、今ではマルセイユ市の公式憲章です。その内容は実に細かく定められていて、憲章に定められたとおりにブイヤベースを作っているか立ち入り検査などの審査を経て、初めて登録店として認められる仕組みになっています。ではこのブイヤベース憲章で定められている内容は、具体的に何がどこまで定められているのでしょうか?
まず決められているのは使う魚に関してです。具体的に何かというと、まずは地中海の岩礁に住んでいる魚であることです。しかも決まった種類の中から4種類以上を入れなければいけません。何の魚を使わなければいけないかというと、画像のようなカサゴ・白カサゴ・アシナガガニ・ホウボウ・マトウダイ・アンコウ・アナゴ・オコゼと、オプションでイセエビとセミエビを使うことができます。
次に使っていい野菜や香料が何かが定められています。具体的には玉ねぎ・ジャガイモ・トマト・コショウ・サフラン・ガーリック・パセリ・フェンネル・塩・オリーブ油です。サフランや日本ではなじみの薄い画像のようなフェンネルなど、ハーブ類にも規定があるのがわかります。そしてお約束のトマトも、当然使わなければいけません。
一方で使ってはいけないと定められている海産物もあります。何かというと、オプションで認められているイセエビや画像のようなセミエビ以外のエビ類を始め、鯛・ヒラメ・タコ・イカが該当します。高級料理店では普通に入っていることの多い、ムール貝やオマール海老は邪道とされているのです。スープの出汁も決められた小魚を使うよう定められていますし、ブイヤベース作りは短時間で仕上げることまで定められています。
もうひとつ、ブイヤベース憲章で定められていることがあります。それは「客の前で魚をカットすること」です。実際マルセイユのレストランでは、通常先にスープが出てきます。そのスープにバゲットやクルトンの付け合わせとともに、ルイユ(唐辛子やオリーブオイルなどを混ぜ合わせたソース)やアイオリ(ニンニクで風味付けしたマヨネーズ)といった添付のソース類をバゲットに塗って、スープに入れてたっぷり吸わせて食べます。
その後、1人前の茹で上がった魚が運ばれてきて、食べやすいように切り分けた後、盛り付けなおした魚にスープをかけて出してくれるのです。1人前とはいえ先にバゲットも食べているのに画像のような相当なボリュームで魚が運ばれてきますが、魚であるおかげか不思議と完食できてしまうという話が多いです。
このように作り方だけでなく、素材の魚の種類から産地まで定めているのは、元々が地元の魚の消費を促すためという歴史的背景に基づいたものです。また遣う魚の種類を4種類以上としているのはより複雑な味を出すためであり、出汁とする小魚の種類を定めているのは味の変化を最小限に押さえるためとされています。とはいえ、各レストランや家庭にも独自のレシピが確立されているため、それぞれが「正統」を訴え議論が続いています。
ブイヤベースとはブイヤベース憲章通りに作るもの?
マルセイユでブイヤベース憲章は公式憲章ですが、このブイヤベース憲章の登録店でなくてもミシュランガイドに載るような有名店もあります。先にも紹介したように、登録店は始めてマルセイユを訪れた人にとっては、間違いないブイヤベースを楽しむための指標になるというだけです。憲章そのものにも罰則はなく、登録店でも独自性を打ち出したブイヤベース作りをしています。郷土料理に固定のレシピはない、ということなのです。
ブイヤベースとは2度美味しい料理?
ブイヤベース憲章のところでも紹介したように、マルセイユではブイヤベースとは2度に分けて楽しむ料理です。画像のように先に小魚でとったスープを、ルイユやアイオリといった専用のソースを塗ったバゲットにたっぷりと浸み込ませて、スープの旨味とソースとのスパイシーな味わいがとても良く調和して、次に魚が来ることがわかっていてもついつい食べ過ぎてしまうほどと言います。
そして画像のように本命の魚も大きな器に山盛りで登場します。店員さんが取り分けて盛り付けなおし、さらにスープをかけなおしてくれます。そのボリュームはさすが元々は漁師飯というだけあってかなりのものです。先にバケットを食べ過ぎて、食べきれるかと不安になる人も多いそうですが、気が付くとお腹に収まってしまう美味しさというのは、さすが世界三大スープに数えられる美味しさと言えます。
ブイヤベースとは元々自由な料理
ブイヤベースとは、元々市場に出せない魚を漁師が食べるために考案した、簡単に作れる料理です。その後さまざまな形で変化はしてきたものの、必ずブイヤベース憲章のとおりに作らなければいけない料理ではありません。ブイヤベース憲章も、目的はブイヤベース本来の味を守ることにあります。そのため地中海産の魚を使わなくても、マルセイユの食べ方をしなくても、何も問題はないのです。
ブイヤベースとは基本的にはこう作る
ブイヤベースとはどう作ったら良い料理なのでしょうか?まずは本場マルセイユ流を紹介します。ただしブイヤベース憲章にのっとった作り方ではないので、イメージ画像とともにあくまで参考として紹介しています。また日本では入手できない魚も使っているのも、海外料理ということでご承知ください。
ブイヤベースのスープ作り
スープ用には、ホウボウ・鯛の頭・画像の地物の魚メルラン(主に英仏海峡で獲れるタラ科の魚)・アナゴの切り身・玉ねぎ・にんにく・フェンネル・白ワイン・トマト・濃縮トマト・オリーブ油・塩・コショウを使います。鯛の頭は水でよく洗い、ホウボウ・メルランは丸ごとそのまま使います。玉ネギとフェンネルは千切りにしてにんにくは押しつぶします。
大きく深い鍋にたっぷりオリーブ油を引いて強火にかけます。まずは玉ネギとにんにくを軽く色づくまで炒めたら、次に鯛の頭・ホウボウ・メルランを入れて5分~6分炒めます。そこに白ワイン・フェンネル・トマト・濃縮トマトを加えて、もう6分ほど火を通します。画像のようにとにかく火は強火のまま調理し続けます。
塩・コショウ・水(魚で取った出し汁が一番望ましいです)を具材がひたひたより気持ち多めに入れて、蓋をしないで強火のままで少なくとも1時間半は煮ていきます。水かさが減るごとに足しながら煮つづけます。煮込んでいるうちにバラバラになった魚を押しつぶしてその旨味を徹底的に引き出したら、最後に全体を漉すと画像のような濃厚なスープの完成です。
ブイヤベースの具材作り
スープができたら具材を作っていきます。材料は鯛・アナゴの切り身・ホウボウ・ジャガイモ・サフラン、そして先ほど作ったスープも使います。鯛は2つに切り分けてジャガイモは皮をむいてから厚めに輪切りにします。漉したスープを鍋に戻してサフランを加え強火にかけます。そこに鯛・アナゴ・ジャガイモを入れます。
日は最後まで強火です。なぜなら勢い良く沸騰させないと、オリーブ油とブイヨンがうまく混ざり合わないからです。これがマルセイユ流ブイヤベースの秘訣と言います。先の具材を入れて沸騰して10分たったらホウボウを入れて再沸騰させます。再沸騰しなおして5分ほど火を通してから火から下ろして、網じゃくしなどを使って魚だけを慎重に取り出します。
ブイヤベースを楽しむ
取り出した魚は深めで大きいお皿に盛り付けて、冷めないようにスープを少々かけておきます。塩・コショウで残ったスープ(ブイヨン)の味を調えてから、まずはクルトンとルイユを塗ったバケットでスープを楽しんだら、取り出しておいた魚を戻して味わうのです。
ブイヤベースとは日本でも簡単に作れる美味しい料理
ブイヤベースは、マルセイユで伝統を守られながらも世界各国に広がり、それぞれの国でそれぞれの海産物を使って作られ楽しまれています。もちろん日本でも、日本の魚介類を使ってブイヤベースが作られて楽しまれています。画像のようにホウボウは日本でも獲れる魚ですし、魚の酒類にこだわらなくても美味しいのもブイヤベースの長所なのです。
ブイヤベースとはレシピも多い美味しい料理
日本でもブイヤベースはさまざまな形で楽しまれています。特に基本煮込み料理であるブイヤベースは、簡単にできる栄養満点な美味しい料理として、レシピも数多く出ています。具材も海鮮なら何でも応用が利く手軽さと、家庭用の具材を入れるだけで簡単にできるブイヤベースの素も販売されるなど、どんどん身近なスープ料理として定着しつつあります。そんなブイヤベースのお手軽レシピをいくつか紹介します。
野菜ジュースのブイヤベース風
野菜ジュースを使った簡単にできるブイヤベースです。トマトと緑黄色野菜の入ったジュースを使うと良いでしょう。魚介は真鯛の切り身・スルメイカ輪切り・エビ・殻付きアサリを使います。アサリは砂抜きをし、エビは殻をむいて背わたを取っておきます。真鯛は皮面に塩を振っておきます。次に彩りも兼ねたアスパラガスを3cmに切っておきます。
熱した鍋にアサリ・エビ・スルメイカを入れて、アサリの口が開き始めたら蓋をしてアサリの水分で3分ほど蒸し焼きにします。次に深めの熱したフライパンにオリーブオイルを引いたら、真鯛を皮目から焼いていきます。真鯛を裏返したら、そこに野菜ジュース・サフラン・ローリエ・塩を入れたら、沸騰し始めるのを待って5分ほど煮込みます。
5分たったら先に炒めておいたアサリ・エビ・スルメイカとアスパラガスを加え、蓋をしてさらに3分間煮込みます。最後に塩で味を調えたらできあがりです。野菜ジュースの旨味と魚介の旨味の両方を活かして、簡単に作れるブイヤベースです。
ホットプレートで簡単に作れるブイヤベース
アサリは砂抜きをし、イカは内臓を取って食べやすい大きさに切り、エビは背わたを取っておきます。にんにく・玉ねぎ・セロリをみじん切りにして、タラや魚介類は好みの大きさに切ります。サフランは水に浸しておきましょう。オリーブ油でにんにくを炒め、香りがたってきたところで玉ねぎ・セロリも入れて、しんなりするまで炒めます。
白ワイン・トマト缶・サフランとサフランを浸けておいた水・コンソメ・ローリエ・セロリの葉を加えて、タラ・イカ・エビも加えて15分程度煮込んでいきます。アクをすくい取ってアサリを入れたら蓋をして、口を開かせます。アサリの口が開いたら塩・コショウで味を調え、パセリを散らしたらできあがりです。画像のように深めのホットプレートだけで作れるので、みんなで楽しく作れるのもこの料理法のメリットです。
ブイヤベースとはアクアパッツァとは違う料理
ブイヤベースと良く似た料理に、アクアパッツァがあります。どちらもトマトを使い魚介を煮込んで作ることから、その違いを良くわかっていない人もいることでしょう。ブイヤベースが南フランスの郷土料理であるのに対して、アクアパッツァはイタリアの魚の煮込み料理です。アクアパッツァでは基本、画像のように1匹丸ごと白身魚を焼いてから魚介とともに煮込む、国も料理の種類もブイヤベースとは異なる料理なのです。
ブイヤベースとは簡単に家庭で楽しめるフランス料理だった!
フランス料理というと、おしゃれでレストランで楽しむ高級料理というイメージが強いことでしょう。ですが同じフランス料理でも、ブイヤベースは漁師飯から生まれた家庭料理らしく、日本でも愛される家庭で簡単に楽しめる気軽な料理です。体を温めたいときや滋養のあるものを食べたいときには、簡単に作れて美味しいブイヤベースをぜひ作ってみてください。ブイヤベースがきっと心も温かくしてくれるはずです。