シイラの刺身の捌き方と味は?食中毒や寄生虫についても調査!
シイラという、光沢のある美しい緑色をした巨大魚を知っていますか?釣り人の間ではとても人気のある魚なので、知っている人も多いことでしょう。ですがこのシイラという魚は、産地以外ではあまり出回っていないため、知らないという人も多い魚です。産地では刺身でも食べられているこのシイラを、刺身向けに綺麗に仕上げる捌き方を始め、刺身で食べるときには特に注意したい、食中毒や寄生虫の予防方法も紹介します。
シイラってどんな魚?
シイラ(Coryphaena hippurus)は、スズキ目シイラ科に分類される魚の一種です。分類上は同属のエビスシイラ(Coryphaena equiselis)と合わせて、1属2種のみでシイラ科に分類されています。シイラは成長すると、最大で体長2m・体重40kg近くにまでなる大型の魚です。オスの額は成長するに従って隆起して角ばってきます。
体色は「背中が青で、体は背中側が緑色でお腹は金色、小さい黒い斑点がある」と思われていますが、それはあくまで水揚げされた直後のみで、死んだ後は色彩がなくなって黒ずんだ色に変わっていきます。海で泳いでいるときは、全体的に青みがかった銀色をしていますが、水温や警戒時などの状況次第で色を変化させるため、別名「虹の魚」と呼ばれている魚でもあります。
ハワイではマヒマヒと呼ばれるシイラ
シイラはハワイではマヒマヒ(Mahi-mahi)と呼ばれる高級魚で、マヒマヒのフライやソテーなどは、ハワイを代表する名物料理の1つです。シイラとは知らずに「それなら食べたことがある!」という人も多いでしょう。他にもシイラは台湾で「鬼頭刀(クイタウトー)」と呼ばれ、つみれやスープ、鉄板焼きなどでよく食べられている人気の魚です。
シイラの旬の時期は?
シイラの旬は、産卵期に入る7月~10月くらいと言われています。シイラが良く捕れるようになるということもありますが、地域によってはお腹の中の卵の人気も高いのが理由の1つです。ですが抱卵しているということは、身の栄養は卵に横取りされていることを意味するため、身の美味しさを求めるのであれば、再度産卵に向けて栄養を蓄える、秋から春先までとも言えます。
シイラってどんな味?
シイラは赤身の魚に分類されますが身はそこまで赤くなく、白身魚のように食べられています。シイラの刺身は最もシイラの味を感じられる食べ方です。シイラは先にも説明したように卵の旬は夏~秋にかけてですが、身の旬は冬~春にかけてが一番です。夏のシイラの刺身は脂身が少なく淡白な味ですが、旨味・甘味が豊かな優しい味わいをしています。人によってビンナガマグロやブリやハマチなど、さまざまな感じ方があります。
シイラは皮の厚さや丈夫さに対して、骨は柔らかく血合いも弱い肉質をしています。そのため身は柔らかくほぐれやすいものの、刺身の食感は以外ともっちりしています。ここに塩を振って一晩置くと、水分が抜けて身が締まり、コリコリした食感に変わります。冬の脂ののった時期のシイラの刺身は、脂がトロッとした上品な味わいに変化します。
シイラの刺身の捌き方
魚全体に言えることですが、魚の表面のうろこやぬめりには汚れや雑菌など、健康に良くないものが付着していることが良くあります。そのため流水でよく洗い流すのはもちろんですが、包丁などを使ってシイラの表面を綺麗にしていきます。まな板の上のシイラが滑らないように、まな板に新聞紙を敷いて、頭も新聞紙などで抑えてから作業するとより安心です。尻尾から頭に向かって全身のうろこを剥きながらぬめりも取り除きます。
シイラのうろことぬめりを取り終わったら、一度流水で丁寧に洗い流します。使用したまな板と包丁も丁寧に洗い、除菌したりまな板と包丁を交換するなどして、せっかく綺麗にしたシイラに雑菌などの汚れが移ったりしないように気をつけましょう。特に刺身などの生食用にする場合には、汚れを残さない捌き方をしないと食中毒になる危険もあるので、衛生面に特にこだわった捌き方をすることをおすすめします。
シイラもまな板や包丁も綺麗になったら、次はシイラの頭を落とします。シイラの頭の付け根から胸びれの裏を通し、腹びれのほうに向かって斜めに包丁を入れていきます。切込みを入れたらシイラを裏返して、同じように斜めに包丁を入れていきます。頭をつなぐ背骨は硬いので、無理に切り落とそうとすると怪我をする恐れがあります。頭を落とすときの捌き方のコツは、関節の間に刃先を入れて切ると少ない力で楽に切り落とせます。
頭を落としたら、今度は内臓を取り除いていきます。シイラの腹を開くときは、頭を落とした場所から尻尾に向けて半分くらいまでのところまで、包丁を入れて開いていきます。シイラの内臓は比較的内側にありますが、あまり包丁を深く差し込みすぎると内臓を切ってしまうため、内臓がグチャグチャにならないように包丁は浅く入れる捌き方をしましょう。卵や白子も全部取り出して、血合いも全て丁寧に取り除きます。
内臓を全て取り出したら、流水で綺麗に洗い流します。包丁やまな板に付いた汚れも綺麗に洗い流しましょう。除菌効果のある食器用洗剤で、まな板や包丁に付いたさまざまな汚れを全て洗い流すと、より効果的でおすすめです。洗い流したシイラは、キッチンペーパーなどで水分をふき取っておきましょう。
シイラを3枚におろす捌き方は、腹から開いていく捌き方と、背から捌いていく捌き方と両方があります。どちらからおろすときも、シイラの背骨を意識して、骨に身が残らないように背骨の上を滑らせるように包丁を入れていき、ゆっくり焦らず骨から身を剥がしていきます。尻尾の付け根に切込みを入れれば、半身を切り離すことができます。シイラを裏返したら、同じようにおろしていけば、3枚におろすことができます。
シイラを3枚におろしたら、腹の部分に残っている骨を削ぎ取ります。元々内蔵のあった部分に指を当てて、骨と血合いの部分を確認します。骨の位置を確認したら、包丁を使って腹骨を削ぎ取ったら3枚おろしの完成です。この後フライや焼き物などの加熱調理に使う場合はともかく、刺身などの生食にする場合はもうひと手間かけた捌き方をします。
シイラを刺身にするときは、この後皮を剥ぎます。その前にまな板と包丁を除菌効果のある家庭用洗剤で綺麗に洗い流したり、新しいものと交換することをおすすめします。理由はこのあと説明しますが、刺身用のシイラの捌き方の重要ポイントでもあるため、必ずまな板と包丁を清潔なものと交換してから、皮剥ぎの作業を行いましょう。
シイラの皮剥ぎは、尻尾側の身と皮の間に包丁を入れて、皮を引っ張りながら削いでいきます。時々包丁を傾けて皮から削ぎ取るように剥いでいくと良いでしょう。シイラは実が薄いので、皮を引っ張りながら削ぐように剥いていくのが捌き方のコツです。
皮を剥き終わったシイラは、腹と背で切り分けてそれぞれ柵取りします。柵取りした後に好みの厚さに切って盛り付ければ、シイラの刺身の完成です。刺身を切り分けるときは、なるべく刃の長い包丁を使って、刃全体を使って引くように切ると細胞が壊れず、酸化して味が落ちたり劣化するのを防ぐことができます。上記で紹介した方法とは若干違いはありますが、YouTubeでも捌き方が公開されているので、参考にしてみてください。
シイラを食べるときに注意したい食中毒と寄生虫は?
十分に加熱調理して食べるのと違い、刺身のような生食の場合に気になるのは食中毒と寄生虫です。特にシイラが旬とされる時期は夏にあたるため、食中毒の話題が上りやすい季節でもあります。シイラにありがちな食中毒の種類と、寄生虫について紹介します。
シイラは鮮度が落ちるのが早い
シイラの身は筋肉質で脂肪分が少ないだけでなく、漁獲時の状況によって乳酸がたまり、身質がもろくなりやすい魚です。その結果そのため全国に流通することはまずない魚です。まれに旬の時期にスーパーに並ぶこともありますが、味の評価が高くないのもこの傷みやすさが原因と言えるでしょう。そのためシイラを刺身で食べるのも、自分で釣った場合か、水揚げ量の多い高知県などの一部の地域に限定されることが多い魚です。
シイラの表面に潜む「腸炎ビブリオ菌」
暖かい海の海面近くを回遊するシイラの体表面には、腸炎ビブリオ菌が付いている可能性があります。腸炎ビブリオ菌は、最低気温15℃以上・海水温20℃以上で増殖するようになる上、他の菌に比べて増殖速度が速い特徴があります。感染すると10時間~24時間で症状が出て、激しい腹痛が起きて下痢を引き起こしたり、嘔吐や発熱することもあります。免疫力の低い高齢者や子供は重症化しやすいので、特に注意が必要です。
シイラの表皮には毒がある!
シイラの体表面は粘膜で覆われていますが、この粘膜にも表皮粘液毒という毒性のある物質が含まれています。魚の粘液には体温を調節するなど、体を保護する基本的役割がありますが、中にはこの粘液に毒を含ませて身を守っている魚もいます。シイラもそのうちの一種のため注意が必要です。症状として出るのは下痢や嘔吐ですが、目に入ると結膜炎になったり、傷口に入ると炎症を起こしたりするので要注意です。
食中毒を予防する方法
腸炎ビブリオ菌には、いくつか弱点があります。1つは加熱処理ですが、刺身の場合は使えません。他の方法としては、真水でよく洗い流すことと4℃以下で保存することです。よくお手製のイカの塩辛で食中毒になるのは、多くの場合塩に漬けるから大丈夫、とイカを真水で洗わずに漬け込んでしまうことが多いのが原因です。腸炎ビブリオ菌は海水で生活しているため、塩分では死ぬことはないのです。
ですが腸炎ビブリオ菌は、真水の中では生きられません。そのためとにかく真水でよく洗うこと、これが一番の予防策になります。4℃以下で保存する方法はあくまで繁殖を防ぐだけなので、夏に海産物を食べるときにはまずは真水でよく洗うこと。これが一番大切な、腸炎ビブリオ菌が原因の食中毒から身を守るための予防方法になります。
シイラの粘膜に含まれる表皮粘液毒から身を守る方法も、ぬめりを丁寧に洗い流すことになります。その際に飛び散った水に毒素が含まれていた場合、目に入ると結膜炎になったり、手を怪我していたりすると炎症を起こす危険性もあります。洗うときには周囲に水が飛び散らないように気をつけたり、症状が出た経験がある場合はゴーグルやゴム手袋で、目や傷口を保護するようにしましょう。
腸炎ビブリオ菌も表皮粘液毒も、シイラの体を覆う粘液の中に存在しています。シイラを捌いている途中、特に皮剥ぎや柵取りの前でまな板や包丁を洗ったり交換したりすれば、容易に予防することができます。フライや煮物などの加熱料理に使う場合は、特に気にする必要はありません。腸炎ビブリオ菌は他の海産物でも言えることなので、真水で洗うことを徹底すれば、食中毒にかかる可能性をぐっと下げることができます。
シイラに見られる寄生虫にも注意!
魚の寄生虫の代表格のアニサキスもシイラに付く寄生虫のひとつです。通常は内臓に寄生しているアニサキスですが、宿主の魚が死ぬと筋肉内にもぐりこんでいることもあるため、内臓を処理してあっても刺身を食べて感染することがあります。アニサキス自体は人体内で生存できないこともあり、最終的には体外に排泄されることもありますが、まれに人の胃壁や腸壁に食いついてアニサキス症と呼ばれる病気を引き起こします。
アニサキス症は他にも似た病気があるため、誤診を受けやすい病気でもあります。必ずシイラの刺身を食べたと報告して、正しい診察を受けられるよう、患者側も問診時に情報を出すようにしましょう。通常は胃カメラなどで取り除きますが、ひどい場合には外科手術にまで発展した例もあり、刺身を食べる前に身に変な赤い部分がないか、白い細長い虫が付いていないかなど確認して、感染しないよう注意しましょう。
アニサキスは冷凍することで殺すこともできます。刺身にして食べる前に、ー20℃以下で24時間以上冷凍すれば、アニサキスを死滅させることもできます。不安な場合は先に冷凍処理するのが無難です。よく噛めば殺せるとか、身を薄く切る、しょうがやわさびににんにくなどの薬味や、酢で殺虫するといった話もありますが、どれも効果としては不十分か効果なしであることが確認されているので、冷凍による殺虫が推奨されています。
シイラの刺身のアレンジレシピ
シイラの刺身そのものでも美味しいですが、ちょっとアレンジしてみるのも楽しいものです。いつもとちょっと違った味付けで、シイラの魅力をもっと味わってみませんか?シイラの刺身を使った、簡単なアレンジ料理を紹介します。
シイラのカルパッチョ
シイラの刺身はできるだけ薄めに切ります。盛り付けるお皿ににんにくの切り口をこすりつけて香りを付け、オリーブオイルをかけ回します。ここにシイラの薄作りを並べたら、スプーンで軽く叩いてなじませます。後はお好みでトマトのピューレとアボガドを添えてレモン汁を絞ったり、市販のジェノベーゼやサルサソースを使っても美味しいカルパッチョが簡単に作れます。
シイラの焼霜造り
普段は剥いてしまうシイラの皮を、あえて残して炙ってみませんか?シイラの皮が薄い腹の部分を使います。強火でシイラの皮を軽く焦げ目がつくくらいに炙って、後は刺身と同じにスライスして盛りつけるだけです。炙ることで皮が原因の食中毒の危険性を消せるだけでなく、皮を炙った香ばしさを足すこともできます。いつもと変化をつけたいときに試してみてはいかがでしょうか?
シイラを刺身に捌いて美味しく食べてみよう
シイラはいろいろと注文の多い魚かもしれません。ですがその刺身は苦労に見合う味として、シイラの漁獲量が多い地域では当たり前に楽しまれている味です。海釣りでシイラを釣ったときなどは、ぜひ一度捌いて刺身にして、その味を楽しんでみてください。