2018年05月26日公開
2024年07月14日更新
アオブダイは毒がある?部位や毒の種類/一般的な食べ方とは?
アオブダイは、その名の通り見た目が綺麗な青色1色の大きな魚で体長は最大で90㎝ほどになります。主な生息域は東京湾、朝鮮半島以南からフィリピン付近までの西大西洋のサンゴ礁や岩礁帯です。日本では主に沖縄に多く生息しているこのアオブダイですが、実は毒をもっています。そんなアオブダイの毒はどんな毒なのか、また果たして食べられるのか、もし食べるとしたらどんな食べ方があるのかなどを紹介していきます。
アオブダイは食べられる魚なのか?
主に沖縄に多く生息しているアオブダイですが、見た目は青一色で食べるとなると抵抗を感じる人も少なくありません。ましてや、毒も持っているということを聞くとますます食べることに抵抗を感じざるを得ません。しかし、このアオブダイは食べることができます。刺身や加熱して、から揚げや汁物などにしたりと食べ方は様々あります。
アオブダイはどんな魚?どんな味?
アオブダイは、最大体長が90㎝にもなる大きな魚で、岩礁帯やサンゴ礁に好んで生息していることから岩などに付着している藻類やカニなどの甲殻類、貝類など何でも食べる雑食性です。またアオブダイには鋭い嘴がついており、サンゴなどについてる藻を嘴でかじって食べています。嘴がついてることでこのアオブダイはパロットフィッシュと呼ばれています。パロットとは英語でオウムを意味します。
ここで気になってくるのはアオブダイの味ですが、どうしても色が気になり美味しそうには見えないです。しかし、意外とアオブダイの味は美味しくて市場価値もそんなに高くなく安価なので、九州や沖縄では比較的食卓によく並ぶ魚で、アオブダイを食べたくて釣りをしてる人もいるようです。
沖縄では一般的に食卓に並ぶアオブダイですが、その身の味は淡白ながらに甘みもあるようで、実に様々な料理に使われています。刺身にされたり、マース煮というアオブダイの塩煮だったり、揚げたり、汁物などバリエーション豊かな料理になっているのです。ただ、基本的に癖もない淡白な味と言いましたが、皮をつけたままだと少々癖があるようなので、しっかりとした下処理は必要です。
アオブダイと沖縄の関係
アオブダイは、色もカラフルで食べるには抵抗ある魚ですが、沖縄の人たちの間では普通に売られていて食卓に並ぶ魚としては一般的なようです。アオブダイの味も淡白ながら、癖もないのでいろんな料理にも使われています。日本全国で見ると、そうそうお目にかかることもないアオブダイですが沖縄ではよく採れる魚の一つで非常に一般的に食されています。
沖縄にはアオブダイを使った料理を出すレストランも多数あり、食べログなどでは50店舗以上掲載されているほどです。それだけ、沖縄でこのアオブダイという魚は流通しているということになります。因みに沖縄ではこのアオブダイはイラブチャーという方言で呼ばれています。正確に言うとブダイ全般のことをイラブチャーと呼びます。
アオブダイには強い毒がある!
沖縄ではポピュラーに食されているこのアオブダイですが、非常に恐ろしい毒を持っています。その毒はアオブダイ自体が持つ毒ではなく、アオブダイが餌として食べるスナギンチャクが原因です。スナギンチャクは植物プランクトンと共生しているのですがその植物プランクトンに毒があるのです。それは、パリトキシンというもので恐ろしいことにフグの毒で有名なテトロドトキシンの70倍ともいわれるほどに強力です。
このスナギンチャクが持っているとされているパリトキシンは、天然毒素の中で最強とされている海産毒素の一種で、食物連鎖による生物濃縮でその毒性は更に強まっていくとされています。しかも更に恐ろしいことにこのパリトキシンは加熱してもその毒性は分解されず、挙句の果てに解毒方法も今現在見つかっていないのです。
アオブダイがこのスナギンチャクを捕食することによって、本来毒をもたないアオブダイが毒をもってしまうということになります。ただ、もともと毒を持たないのでアオブダイの身などに毒があるというわけではなく、主に肝臓などの内臓にそのパリトキシンが蓄積されているのです。と、いうことは食用になるのもわかります。アオブダイの内臓さえきちんと処理してしまえば、身そのものは食べられるということです。
ただし、あくまでもきちんと内臓を処理できたときに限るということです。そして、内臓をきちんと落としたからと言って決して100%安心とも言えないのがこのアオブダイの怖いところです。アオブダイの持つ毒は個体差が非常に激しくそれを見極めるのは不可能です。稀にですが、内臓以外の身や皮などに毒素が回っているケースも絶対ないわけではなく、内臓を食べてないのに食中毒になった人もいます。
アオブダイで食中毒になるとどうなる?
不運にも、アオブダイを食べて食中毒になってしまった人がいて、その中には亡くなってしまった人もいます。実際パリトキシンによる食中毒にかかると、潜伏期間は12時間から24時間と比較的長いので即効性があるわけではないです。まず、横紋筋融解症という症状から現れてきます。この横紋筋融解症は、いわば激しい筋肉痛です。
その後、ミオグロビン尿症という黒褐色の尿が出始める場合もあります。そして徐々に呼吸困難や歩行困難など起きてくると動けなくなってきます。しまいには胸部圧迫感、麻痺、痙攣などを引き起こし、初期症状の発症から数日で血清クレアチンホスホキナーゼ値の急激な上昇が見られると重篤化して、心筋梗塞や急性腎不全などを引き起こし命に直接かかわる事態へと発展します。
回復をたどる場合はだいたい数日から数週間かかると言われていますが、致死時間もまた十数時間から数日間と広範囲となります。回復するのか不運にも命を落とすかの分かれ道としては、運と体力次第といったところです。と、いうのもアオブダイ自身の毒ではなくアオブダイがどれだけ毒性を持つ餌を食べてきたかでその毒量は個体差が激しいからです。
アオブダイはどんな毒性を持っている?
結局、アオブダイが毒性を持つのは全てアオブダイが食べる餌であるということがわかりました。アオブダイそのものが毒を保有しているわけではないので、身などに毒があるわけでなくアオブダイの臓器にどんどん蓄積されていくものなのです。なので、その毒性の強さも一定ではなく個々それぞれのアオブダイが釣り上げられるまでにどれだけ毒性のあるものを捕食してきたかで持つ毒の量に違いが出るのです。
沖縄で、一般的に食されているのにはアオブダイについての知識をきちんと持っていて、しっかり毒性の強い内臓などを処理しているからこそなのです。ちゃんとした知識があれば、食中毒にならずに美味しくアオブダイを食べられるというわけです。実際、沖縄でアオブダイによる食中毒の報告はありません。沖縄では昔からアオブダイが常食として食卓に並んでいたので沖縄の人は知識をしっかり持っているからだと言えます。
アオブダイはどんな食べ方がある?
アオブダイの食べ方には実に様々な料理法がありますが、沖縄で一般的にアオブダイは刺身にされていることが多いようです。その他、から揚げにしたり、汁物に入っていたり、煮付けにされたりとそのメニューは豊富で、沖縄のレストランではアオブダイをメインに取り扱っているお店も多数あるほどです。それだけお店がメインに使っているのは、やはりアオブダイは身の味に癖がなく淡白でいろんな料理に使いやすい魚だからです。
アオブダイを使った料理には一体どんなメニューがあるのか、気になるところですのでいくつかアオブダイをメインに使った料理やその食べ方などを紹介していきます。
アオブダイを使った刺身料理
まず、アオブダイで一番人気な食べ方なのがこの刺身です。刺身で食べると深みのある味わいがあって、癖になりまた食べたいと思うくらいリピート率が高いものです。ほんのり甘くてコクもあり、程よく口の中でその深みのある味わいが広がり、身の柔らかい鯛を食べているような感覚になります。沖縄では人気の高いアオブダイ料理の一つと言えます。
このアオブダイの体色ですが、オスの方が青みが強くメスだと青に黄色みがかっているそうで新鮮なものであればあるほど、癖はないので食べやすい魚です。因みに沖縄でこのアオブダイの刺身を食べるときはシークヮーサーを絞って食べるのが主流で、アオブダイの程よい甘みと酸味がよくマッチして美味しいです。
アオブダイを使ったから揚げ
アオブダイを使ったから揚げでは、豪快にその半身をから揚げにして甘酢あんかけで食べるのがまた人気の一品です。アオブダイの姿がわかるほどインパクトも非常に強くて観光客からも、人気の高い料理の一つです。カラッと揚がった淡白な風味のアオブダイに、甘酢あんがとてもよく合います。
このアオブダイのから揚げの甘酢あんかけは、その店その店で甘酢あんを変えていて1種類ではないのでいろんなお店のから揚げをたべて味を比べてみるのも沖縄へ旅行に行ったときなど、楽しみの一つです。
あと、甘酢あんかけがなく鶏のから揚げのようにアオブダイを食べやすい大きさに切って下味をつけてから衣をまぶしそのまま揚げたタイプのから揚げもあります。これはこれでアオブダイ本来の甘みや風味を楽しむことができます。甘酢が苦手な人はこの、香ばしくサクッと食べられるタイプのから揚げがおすすめです。
このシンプルなから揚げから更に派生させてみて、下味をつけずに片栗粉のみをアオブダイにまぶして、そのまま揚げたものに、麺つゆと大根おろしをかけたみぞれ揚げも非常に美味しいです。刺身だとやはり生魚はちょっと苦手だという人にはこういった揚げ物がおすすめです。当然、まったく癖を感じることもありません。
アオブダイの煮付け
沖縄ではアオブダイの煮付けもポピュラーな料理の一つです。ただし、煮付けと言っても味付けは塩のみで煮付けるマース煮が主流です。マースとは沖縄の方言で塩のことなので、鍋に昆布を敷き、豪快にアオブダイを姿そのまま入れて塩で煮ていくだけのシンプルなものですが、これがまたアオブダイの魚の旨味をしっかり引き出してくれてシンプルながらに奥深い味が口に広がる一品です。
沖縄ではこのマース煮がアオブダイの煮付けとしては一般的ですが、マース煮だけではなくアオブダイを他の魚と同じように煮付けても美味しく食べることができます。
アオブダイの汁物
アオブダイの食べ方で、汁物に入れることもあります。シンプルにみそ汁に入れるという食べ方もありますし、いろいろな野菜とアオブダイを塩だけの味付けにしてあっさり目の汁物として食べる食べ方もあります。好みはいろいろ分かれるところだとは思いますが、汁物にすることでアオブダイ本来の癖がまったく気にならなくなるという利点があります。
魚独特の癖がどうしても苦手な人は、このように汁物にする食べ方だと何も気にすることなく美味しく食べることができます。淡白な白身魚なので、どんな汁物に入れても問題なく食べられるのでそのレパートリーはどんどん広がり、みそ汁だけではなくチゲ鍋などに入れるというような食べ方も美味しいです。
アオブダイは食べられるが危険な魚だった!
アオブダイは沖縄で刺身や揚げ物など幅広くいろんな料理に使われる、至って一般的な食材であることがわかりましたが、その反面このアオブダイという魚のことを知らないで食べるととんでもないことになるという危険な魚であるという事も同時にわかりました。
アオブダイが捕食するスナギンチャクがパリトキシンという猛毒を持っていて、それが主にアオブダイの肝臓を中心に内臓に蓄積されるということをまず絶対に頭に入れておく必要があります。よって、アオブダイを食べるときは、絶対に内臓を落とす作業が必須です。しかも、その落とし方も注意が必要でやってはいけないのがぶつ切りで肝臓の中身を傷つけて出す方法です。
ぶつ切りで出してしまうと内臓の中身が散ってしまい、それが骨や身に付着することとなり、結果として食中毒を引き起こす危険性が大いにあるので、完全に内臓を出すには丁寧に三枚に下ろして内臓を傷つけないようにして外に出すしかありません。ここまで徹底しなければならない理由は、このパリトキシン様毒は水溶性だからなのです。
アオブダイの食べ方としては刺身が一番ポピュラーですが、中には刺身を食べずに加熱したら大丈夫なんじゃないかと思っている人もいますが、それもまた大きな間違いです。このアオブダイが持つ毒、パリトキシンは加熱しても毒性が分解されることが決してないということを忘れないでください。この毒に関しては、加熱しようが生であろうがもはや関係ないのです。一番大事なのは、毒のある部分を完全に排除すること以外ありません。
また、フグなどは調理するにあたり専門の資格が必須なのに対しこのアオブダイはこんなに、強い毒性を持っているにも関わらず調理するのに免許も資格も皆無であるということは不思議であり恐ろしい事実でもあります。ただ、沖縄では一般的に昔から食されてきたということはアオブダイを安全に食べるための知識がしっかりと備わっているのだと思われます。実際に沖縄ではアオブダイでの食中毒の報告はありません。
危険な魚と言われていても、実際に沖縄ではこのアオブダイに舌鼓を打っている人も大勢います。まだアオブダイを食べたことがなく、一度アオブダイの刺身やその他の料理を食べてみたいと思っている人は沖縄に実際に行ってアオブダイをメインにやっているレストランで食べるのが一番安全でおすすめだと言えます。ただし100%とは言い切れない部分が残りますので、少しばかり覚悟を持って挑む必要があります。