カンパチは出世魚!ブリやヒラマサとの味の違い・見分け方を紹介!
出世魚と言えばブリですが、カンパチも出世魚と呼ばれる魚であることは、あまり知られていません。カンパチはブリやヒラマサと3兄弟と呼ばれるほど良く似ています。今回はそんなカンパチについて解説します。合わせてブリやヒラマサがどんな魚なのか、ブリやヒラマサとの見分け方や食べた時の味の違いや食感の違いから、値段の違いまで徹底解説します。それぞれの魚に合った料理方法も紹介します。
目次
カンパチはスズキ目アジ科ブリ属の出世魚!
稚魚のときにはショッコと呼ばれるカンパチ
カンパチは、成長していくにつれて名前が変化する出世魚として知られています。スズキ目ーアジ科ーブリ属に分類される魚で、学名は「Seriola dumerili」、和名は「カンパチ/間八」、英名は「Greater amberjack」です。ブリ属の最大種であり、体長は全長1mといわれ、大きくなると2mを越えるものもあるそうです。
カンパチは、関東以南の太平洋、ハワイ沖からオーストラリア、台湾、東シナ海、インド洋、地中海、南アフリカなどの世界中の熱帯や温帯域に生息しています。カンパチの生息数が特に多い地域は、関東以南の太平洋側や東シナ海などです。水深20~70cm程度の比較的浅いところに生息している場合や、水深60~350mの深いところに生息している場合もあるようです。
カンパチの稚魚を「シオッコ」「シオ」「ショコ」「ショゴ」などと呼んでいます。この語源は、「潮の子」、あるいは「初子」であると言われています。カンパチの名前の由来は、上から見ると、両目の間に「八」の字があるように見えるというところから名づけられたようです。
関東地方では、カンパチの成長段階に合わせて、ショッコ(~40cm)→シオゴ(~60cm)→アカハナ(~80cm)→カンパチ(80cm以上)と呼び方が変化します。関西地方では、シオ(~60cm)→カンパチ(60cm以上)と呼びます。
カンパチの成魚も、日本各地に数多くの地方名があります。北陸では「アカイオ、ハタケ」、和歌山では「チギリキ」、三重では「ヘイチョウ」、関西や四国では「アカハナ」、宮崎では「ニリ」、鹿児島では「ニノコ」と呼ばれています。
出世魚って何?
出世魚とは、稚魚から成体になるまでに、違う名前が順番に名づけられる魚のことです。出世魚という考え方は、日本独特のものであるとされ、江戸時代の頃の子どもの成長(出世)に合わせて次々と名前を変える習慣にちなんで、稚魚のことから体の成長に合わせて名前が変わる魚を「出世魚」と呼び、出世魚は縁起のよい魚とされています。
全ての魚が出世魚として扱われるのではなく、出世魚として扱われる魚のほとんどは、成長段階に応じて食べた時に味の違いがあります。サイズによる味の違いによって、商品取引が複雑にならないよう、成長魚として呼び名を変えることで流通をスムーズにする目的もあるようです。
出世魚の呼び方は、日本国内で統一されておらず、出世魚の成長段階で名づけられる名前も地方ごとに様々なようです。
カンパチの美味しい旬の時期は?
カンパチの産卵期は、日本付近では3月~9月であるといわれています。水温22~25℃で産卵し、水温21℃ので孵化するようです。稚魚は藻などの浮遊物につき、動物性ブランクトンを食べて大きくなります。
カンパチは、産卵期と産卵期後1ヶ月ほどは身の味が落ちるといわれており、脂の乗りがよいのは、産卵期直前までの2ヶ月ほどが最高であるようです。つまり、日本近海のカンパチの旬は秋から冬になります。しかし、カンパチは夏場でも身の味がそれほど落ちないことで知られていて、そのため高級魚として重宝されているのです。
カンパチの食べごろのサイズは、2kg~3kgのとされています。ただし、近年では養殖物がほとんどなので、旬を気にせず一年中食べることができます。
カンパチそっくり!ブリとヒラマサ
カンパチはブリとヒラマサの3兄弟!
カンパチ・ブリ・ヒラマサは、「ブリ御三家」や「青魚ご三家」と呼ばれ、三兄弟と言われるほど習性や見た目もよく似ています。この三種類は、スズキ目アジ科ブリ属に分類される同じ仲間です。
ブリってどんな魚?
ブリの学名は「Seriola quinqueradiata」、和名は「ブリ/鰤」、英名は「Japanese amberjack」です。カンパチと同じ成長段階に合わせて、いくつも呼び名を変える代表的な出世魚です。出世魚としては、ブリやカンパチの他にボラやスズキが有名です。
ブリの成魚は全長1m、体重8kg程になるといわれます。最大で40kgになるものあるようです。食べておいしいブリは7~11kgくらいとされています。主な生息域は、日本海南部と北海道南部から九州までの太平洋沿岸です。さらに、東シナ海からカムチャッカ半島、ハワイまでの北西大西洋に広く分布しています。
古くから年取り魚として伝統行事に使われ、日本人の生活に深く浸透している魚です。西日本の「ブリ」と東日本の「サケ」は、大晦日の夜に年越に吉例として用いられる「年取り魚」として珍重され、祝い事に欠かせない食材の1つです。
脂が多いことから、「あぶら」→「ぶら」→「ぶり」となったという説があります。さらに、身がぶりぶりしていることに由来する、雪の「降り」積もる季節に旬を迎えることに由来するなど諸説あります。
関東地方では、モジャコ(稚魚)→ワカシ・ワカナ・ワカナゴ(10~30cm)→イナダ(30~60cm)→ワラサ(60~80cm)→ブリ(80cm以上)と成長段階で名前が変わります。
関西地方では、モジャコ(稚魚)→ツバス(10~15cm)→ハマチ(20~40cm)→メジロ(50~70cm)→ブリ(80cm~)と呼ばれます。三陸地方、北陸地方や九州地方などでも呼び名が様々あります。
ブリは、産卵期前で脂が乗る冬に旬を迎えます。この時期のブリは特に「寒ブリ」と呼ばれ、カンパチやヒラマサよりも脂肪が多く、独特の味わいを楽しむことができます。
新鮮なブリは、全体に青く輝きがあるものが新鮮であるとされています。良質のたんぱく質や脂質を含んでいます。この脂質には、血栓性疾患を防ぐEPA、脳細胞を活性化するDHAが多く含まれています。さらに、ビタミンD、ビタミンEやビタミンB1、B2などのビタミンB群が豊富に含まれています。天然物と養殖物では、栄養価にほとんど差がないといわれています。
ヒラマサってどんな魚?
ヒラマサは、カンパチと同じく、スズキ目ーアジ科ーブリ属に分類される魚です。学名は「Seriola lalandi Valenciennes」、和名は「ひらまさ/平政」、英名は「Yellowtail」です。別名「ヒラソ、ヒラサ」と呼ばれることもありようです。世界の亜熱帯、温帯海域に広く分布している暖海性の回遊魚です。単独、または小さな群れを作って回遊しています。
ヒラマサは、アジ科の中で最も大きくなる魚で、成魚は1m前後になるといわれ、大きいものでは2mを超すものもいるようです。体は前後に細長い、ブリの仲間の中では平たい形をしています。最も平たい体をしています。体重は最大のもので96kgにもなり、市場に出回るものは約15kgで、2~3kgと比較的小さいものでも美味しく食べれるようです。
ヒラマサはブリ御三家の中でも最高峰
日本の近海では、北海道を北限とした日本海、太平洋、瀬戸内海、東シナ海など広い範囲で漁獲されています。しかし、漁獲量はブリやカンパチに比べるとかなり少なく、養殖もされていますがカンパチやブリよりも少ないことから、市場では高値で取引されることが多いようです。
ヒラマサは、ブリに比べると季節的な味の変化が少なく、一年を通してほぼ美味しく食べることができるようです。水温が上がる初夏から秋口にかけて漁獲量が多くなり、出盛りの旬とされています。一方、産卵期でみると4月から8月の春から夏にかけてなので、脂がのる時期という旬の意味ではブリと同じように冬だという説もあります。
ヒラマサは高速で泳ぎまわる魚なので、筋肉がしっかりしていて、たんぱく質が豊富であるといわれています。さらに、血圧を下げる作用があるカリウムをはじめ、ビタミンDやビタミンE、DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸も多く含んでいます。
カンパチとブリやヒラマサの違いについて
カンパチとブリやヒラマサの見た目の違い
カンパチ・ブリ・ヒラマサは見た目がとても良く似ていますが、違いを見極めるポイントは体の形や色、口元の特徴です。それぞれの体や口の特徴を比較して解説します。
カンパチとブリの違い
カンパチの特徴は、口元から目を通って、第一背ビレあたりまで斜めに黒っぽい線があることです。カンパチは、漢字で「間八」と書きますが、カンパチの名前の由来でもあり上から見ると、両目の間に「八」の字があるように見える線は、ブリやヒラマサにはありません。ただし、この線は、個体によって明瞭なものと不明瞭なものがあり、さらに成長とともに薄れていくといわれています。
カンパチは、全体的に赤茶系の色です。ブリよりも平たい体系をしています。背は色が濃く、腹は銀白色で、ブリなどと同じように体側には目から尾の付け根にかけて黄色い帯状の縦線があります。
ブリの見た目の特徴
ブリは前後に細長い紡錘形をしています。体の色は、背が少し緑がかった暗青色で腹は白色をしていて、その境界となる体側には口元から目を通り、尾の付け根まで直線に黄色い縦帯が通っていて、尾ひれ、腹ひれ、尻ひれが黄色をしていることが特徴です。
カンパチやヒラマサとの違いは、上アゴの上後端が角ばっていることと、胸ひれの長さが腹ひれと同じくらいであることです。さらに、尾ひれはカンパチより鋭角な三角形をしています。
また、カンパチとの違いは、目を通る黄色い斜線がないことで区別できるようです。ヒラマサに比べると、胸びれが腹ひれより長く、黄色の縦帯が不明瞭であることで区別できるといわれています。
ブリとヒラマサの違い
ヒラマサはブリによく似ていますが、いくつかの違いがあります。違いを見分ける一番の方法は魚体の厚さです。ブリとヒラマサの同等サイズの魚体を比べると、ブリの方が分厚く、ヒラマサは平たいので違いは一目瞭然です。頭の大きさにも違いがあります。魚体に対して頭が大きいのがブリで、頭が小さいのがヒラマサになります。
また、ヒラマサには「胸ビレが腹ビレより短い」「体の中央を走る黄色の帯がはっきりしている」「上アゴの骨の形が丸みを帯びている」という特徴があります。さらに、腹ビレの位置にも違いがあります。ブリは体の黄色い線よりも下についていますが、ヒラマサは線の上にかかっています。
ヒラマサは、稚魚の頃の模様が成魚とは違い、側面に10本程度の横縞が入っていることも特徴の1つです。
カンパチとブリやヒラマサは値段も違う!
具体的な値段の相場は、その年の漁獲量や市場価格や場所に左右されますので一概には言えませんが、一般的には夏のカンパチと冬のブリが値段が高いといわれています。
また、カンパチ、ブリ、ヒラマサなどの青物と呼ばれる魚は大きくなればなるほど脂のりが良くなるので、値段もそれに応じて若干高くなる傾向があります。
カンパチの値段
カンパチの値段は、季節や場所によっても変わりますが、天然のカンパチであれば1キロ1,600円前後であるといわれています。養殖カンパチの値段は、1キロ1,200円前後になるようです。
ブリの値段
ブリは、天然もの、養殖ものともに年間を通じて入荷があり、安定した値段を維持している魚です。養殖のものは、1キロ2,000円前後で取引されているようです。
ブランド化された天然のブリは、高値で取引されています。ブリのブランドの1つである「ひみ寒ぶり」の値段は、1キロあたり5,000~6,000円です。解禁日には1キロあたり10,000円の値段がつくことも珍しくないようです。他にも「佐渡ブリ」「能登ブリ」「天上ブリ」「かぼすブリ」「桜ブリ」などの天然ブリのブランドがあります。
ブランドのブリの中でも三重県や和歌山県で3月~4月にかけて漁獲される「桜ブリ」は、値段が安いことで知られています。天然ものですが、1キロあたり500~600円の値段でで取引されているようです。ちなみに鹿児島県で養殖されているブリも「桜ブリ」と呼ばれています。
ヒラマサの値段
ヒラマサの値段の相場は、季節や場所によっても変わりますが、3キロあたり10,000円前後、5キロあたり20,000円前後といわれています。ヒラマサは、ブリやカンパチに比べて水揚げ量が少ない高級魚の部類に該当するので、ブリの値段の約2倍に相当するといわれています。
カンパチとブリやヒラマサ味の違いは?
カンパチとブリやヒラマサの刺身は見た目も違う
カンパチ・ブリ・ヒラマサは、外見はそっくりですが、三枚に下ろすと身の色が全く違います。刺身に切ると色の違いがはっきりと分かれます。
カンパチの刺身
刺身にしたカンパチは、刺身料理の王道であるマグロを越える旨みを持つ絶品と評されています。カンパチは、脂の乗りが浅い分、刺身にした時に24時間たっても血合いの色変わりがほとんどないことが特徴です。持ち帰りの寿司などにはカンパチが使いやすいといわれています。カンパチの薄皮は金に近い銀色で、肉に残りにくいです。
ブリの刺身
ブリは、カンパチに比べて色素が多いので、身が赤っぽく血合いの色も濃くなっていきます。ブリはカンパチよりずんぐりしているので、同じように切った時、ブリの方が大きい切り身になります。脂の乗りはブリの方がいいので、血合いの色が3~4時間で黒く変色してしまいます。皮をはいだ時の薄皮は、ブリは白くきれいに残ります。
ヒラマサの刺身
ヒラマサを三枚に下ろすと、ブリと同じように腹の部分の皮をはがした際、同じような銀白色をしています。しかし、銀色の下の赤っぽい部分が、ブリと比べヒラマサの方が明るくオレンジ色に近い色です。
ヒラマサとブリを同じ切り方で刺身にすると、ヒラマサの方が体が平たいので身が薄いので、ブリよりも鋭角な三角形になります。刺身にすると、色の違いがはっきり分かります。身の色は、個体差がありますが、ブリに比べヒラマサのほうが明るく淡い肌色に近い色です。ヒラマサもカンパチと同じく、24時間たっても血合いの色が変わりません。
カンパチ、ブリ、ヒラマサの味や食感の違い
「ブリ御三家」といわれるほどカンパチ・ブリ・ヒラマサは形は似ていますが、味や食感には違いがあります。
カンパチの味や食感
カンパチの味わいは、ブリやヒラマサと比較すると脂が少なくあっさりしており、魚臭くなく、クセもなく、さらりとした食感で食べることができます。脂身が少ない割りにしっとりと舌に吸いついてくる旨みの舌触りがやみつきになる絶品です。小ぶりでも味がよいことが特徴です。大型は身が固くなるので、体重25~6kgの中型のものが特に良いといわれています。
カンパチの食感は、コリコリとした歯ごたえを楽しむことができます。養殖のカンパチでもこの食感は変わらないようです。特に腹の脇(トロ)の方はとてもコリコリしています。刺身は血抜きや神経締めなどを施した上で冷蔵庫で2~3日で保存するとさらに美味しく食べることができます。
カンパチの料理は、生食の刺身、寿司ネタが人気があります。刺身は、同じサイズならブリよりも身が締まり、旨みがあります。「カルパッチョ」などの生食での料理や「しゃぶしゃぶ」などの鍋料理に合います。他にも、カンパチは「アラ煮」「塩焼き」「照り焼き」「西京焼き」なども焼き料理におすすめです。
残ったカンパチの刺身を、すりゴマ、しょうゆ、みりんのタレに漬けこんだものをご飯にのせて食べる「りゅうきゅう」「あつ飯」などの郷土料理もあります。
ブリの味と食感
ブリは、刺身やお寿司のネタとして生で食されることが多いようです。ブリの旬は12月~1月とされ、この産卵期前の一番脂がのったブリを「寒ブリ」と呼んでいます。富山や新潟で採れるブリは旬が11月中旬から下旬と少し早めで、旬を一番遅く迎える九州で獲れるブリは12月下旬から3月中旬までのようです。養殖ブリの旬は夏だといわれています。
天然のブリは、ハリのある身とさっぱりした脂が特徴です。旬の冬の時期の寒ブリは、カンパチヤヒラマサよりも脂がのり柔らかく絶品とされていますが、そのため痛みが早いという難点もあります。養殖ブリは、一年を通して旬と言える安定した味わいを楽しめることが魅力で、程よい身質と脂のりが味わえます。
ちなみに、ブリの子どもであるハマチ、イナダ、ワラサの旬は7月~11月といわれています。さらに、ハマチもほどよく脂がのっていて刺身として根強い人気があります。
ブリの定番料理は、「ぶりの照り焼き」などの焼き料理や「ぶり大根」のような煮物料理ですが、鮮度がよく脂がのっているものは刺身などの生食での料理がおすすめです。オイルやスパイスを使って、カルパッチョなどの料理にもよく合い、美味しく食べることができます。
西日本には、ぶりの切り身を吸い物の具にしたり、根菜と合わせて粕汁にする料理があります。石川県では「ブリ」を開いて干して揚げた「いなだ」を酒に浸して食べる郷土料理があります。
ヒラサマの味と食感
ヒラマサは「ブリ御三家」の中でも、最も脂肪が少なく見締まりがよく、さっぱりとした独特の風味があり、「青背の貴公子」といわれるほどの高級魚です。刺身として食べるのが最高とされています。
ヒラマサの食感は、締めてから時間が経っていないものは、コリコリとしっかりした歯ごたえで、数時間から1日寝かせたものは、ねっとりとした旨みが出てきます。そのため、夏場の寿司ネタとして、高級料亭などで珍重されています。酢の物などの料理にもおすすめです。
ヒラマサは一年を通して美味しいといわれていますが、特に5月~6月の頃は脂が少なくあっさりしています。ヒラマサは、アラの塩焼きや照り焼きなどの焼き料理にすると美味しく食べることができます。脂肪が少ないので、フライやムニエルなどの料理にも合います。
カンパチ・ブリ・ヒラマサ違いを見極めて目利きになろう!
カンパチ・ブリ・ヒラマサの違いを区別することができるようになると、一目でカンパチ・ブリ・ヒラマサを見分けることができ、さらにそれぞれの旬の時期や魚に合った料理方法を知ることで、より美味しく3種類の本来の旨みを味わうことができます。
是非、市場や魚屋にでかけたり、釣りに行った際にブリ三兄弟の違いを見極め、目利きとして楽しんでみてはいかがでしょうか?