アイスバインとは?ドイツの美味しい肉料理の作り方・食べ方を紹介
ドイツの名物料理、アイスバインを作りましょう。日本ではドイツ料理店以外ではあまり見かけませんが、じっくりと調味料をしみ込ませた豚肉をコトコト煮込んだアイスバインは奥の深い料理です。色々なコツやポイントを押さえた作り方と、美味しい食べ方を併せて紹介します。
目次
アイスバインってどんな料理?
ドイツの北東部、最大の都市ベルリンの名物料理がアイスバイン(Eisbein)です。北ドイツ特有の食文化、豚肉をくまなく食べつくす生活の中から生まれた「すね肉の煮込み」ですが、肉の中でも特に固くて食べにくいすねの部分を美味しく食べるための、さまざまな工夫が凝らされています。
日本の家庭ではまずお目にかからないアイスバインですが、そのインパクトのある見た目はパーティー料理にピッタリ。肉好きをうならせるしっかりした肉感とコラーゲンたっぷりの旨味は、他の肉料理にはない独特の味わいでビールやパンとの相性も抜群です。取り分けて食べる楽しさもまた、ご馳走の名にふさわしい一品と言えるでしょう。
アイスバインの材料と調理方法
塊肉を煮込む料理は世界中にありますが、骨付きのすね肉がそのままご馳走になるものは多くありません。アイスバインはまさに質実剛健なドイツ人気質が生み出した、智恵と工夫の賜物です。いったいどんな材料を、どんな工夫で美味しくしているのでしょうか?
アイスバインの材料:主役はドカンと迫力の「豚すね肉」
Bein(脚)という名の通り、本場ドイツのアイスバインの材料は、豚のふくらはぎの部分の骨付き肉です。俗に「耳からつま先まで捨てるところなし」と言われる豚ですが、日本ではすね肉を使った料理はほとんど見かけません。すね肉は筋っぽくて固く、太い骨が入っていて料理しにくため、スープの素くらいしか使い道がないのです。
扱いにくい豚のすねですが、実は旨味とコラーゲンの宝庫です。よく動く部位なので脂肪がほとんどなく、肉は固く締まって太い繊維がミッチリ詰まっています。骨の髄から溶け出すコラーゲンは旨味とコクがあり、独特な深みのある出汁になります。邪魔な骨がついているからこその料理、とも言えるかもしれません。
アイスバインの材料:旨味を最大限に引き出す調味料「ソミュール液」
「ソミュール液」とは食材を塩漬けするための調味液のことです。燻製やピクルスを自家製する人にはおなじみの単語かもしれません。ソミュールという言葉の語源は諸説ありますが、共通するのはいずれもかなり濃度の濃い塩水であるということです。保存食を作るために作られているので、食材によって配合や漬け込み時間を加減します。
アイスバイン用のソミュール液は、肉の重さの5~10%の塩をベースに砂糖やスパイスを加えて作ります。かなり塩分が多めですが、このソミュール液に固いすね肉を漬け込むことで肉の奥まで味と香りをしみ込ませるのが、アイスバインの美味しさの秘密です。
材料の豚すね肉はどこで買える?
実際にアイスバインを作ろうと思ったときに、まず突き当たる壁が材料の入手方法かもしれません。日本では豚のすね肉を食肉として扱うことが少ないので、一般のスーパーや精肉店の店頭にはほとんど並ばないからです。豚のすね肉を手に入れるためには、どこを探せばよいのでしょうか?
豚すね肉を買うには:デパートや肉屋で聞いてみる
店頭に並んでいなくても、お店によってはストックしているところがあります。実際にデパ地下の精肉店でアイスバイン用のすね肉を購入している、という声も聞きますし、街の精肉店でもたまに見かけることがあります。もし店頭になくても、一度聞いてみるのがおすすめです。肉屋さんなら、お願いすれば取り寄せしてくれるかもしれません。
豚すね肉を買うには:楽に買うならネット通販
もう一つの方法が、便利なネット通販を使うことです。楽天、Amazon、価格comなどのサイトで検索すると、色々な産地のアイスバイン用すね肉を見つけることができます。500g~1kgくらいまでサイズも様々なので、食べる量や鍋の大きさに合わせて選んでください。海外産なら1kgで1000円以下という値段で手に入ることもあります。
すね肉が手に入らなくても大丈夫!豚肉の部位別にアイスバインの向き不向きを解説
本来はすね肉を使うアイスバインですが、手に入りにくいものを取り寄せてまでは、と思ってしまう方もいるかも知れません。もっと簡単に普通に手に入る豚肉を使ったアイスバイン風煮込み料理を作るために、どの部位が向いているのか、作り方もあわせてチェックしてみましょう。
アイスバイン向きの肉:繊維質でしっかりした肩肉や肩ロース肉
一番すね肉に近く、しっかりした肉質が楽しめるのが肩肉や肩ロース肉です。ほとんど脂肪がない赤身の肩肉は噛みごたえのあるガッツリした食感に、それよりやや脂肪が多い肩ロース肉なら適度に柔らかく弾力のある仕上がりが期待できます。どちらも煮込んでも崩れにくいので、すね肉と同じように扱うことができます。
アイスバイン向きの肉:バラブロックは脂が抜けてプリプリに
豚の角煮などでよく使われるバラ肉の塊も、アイスバインに応用ができる部位です。脂肪が多いので煮込むうちにどんどん脂が浮いてきますが、その分肉の脂が落ちついてプリプリに仕上がります。こってり目の肉料理が好きな人なら、たまらない美味しさでしょう。塩やハーブが効いてアッサリ目の味付けなので、おかずにもつまみにもピッタリです。
アイスバイン向きの肉:モモやヒレは煮込み時間を調整して柔らかく仕上げる
スーパーでも塊で手に入りやすいモモ肉、脂肪がなく繊細な赤身のヒレ肉もアイスバイン風に調理することができます。ただしこれらの部位を使う場合は、調理方法に工夫が必要です。筋肉が細く筋が少ないので、アイスバインと同じように長時間煮込むと、形が崩れて肉もパサパサになってしまうのです。短めの煮込み時間で柔らかく仕上げましょう。
アイスバインの作り方:まずは下ごしらえをしっかりと
それではいよいよ、アイスバイン作りに取り掛かりましょう。アイスバインはとてもシンプルな料理ですが、意外と時間がかかる料理でもあります。元々は保存用の塩漬け肉を使っていたため、豚肉を塩に漬け込むところからスタートしなければなりません。最初に漬け込み用の塩液「ソミュール液」の準備から始めましょう。
ソミュール液の作り方:どんな材料が必要なの?
ソミュール液に使う材料は3つ、塩・砂糖・スパイスです。それぞれ「塩:肉の重さの5~10%」、「砂糖:肉の重さの1%」「お好みのハーブとスパイス」と覚えておけば間違いありません。塩の量は季節や好みで調整します。夏は多めに、冬は少なめで良いでしょう。面倒なら中間の7%前後に統一してしまってもかまいません。
スパイスと言ってもたくさんの種類がありますが、特にアイスバインにおすすめなのが「ローリエ」「胡椒」「ナツメグ」「クローブ」です。肉の臭みを取り爽やかな香りが付くものなら何でも使えますので、家にあるものを工夫して合わせてみましょう。市販のスパイスミックスも使えますが、塩が入っている場合は加える塩の量で調整してください。
ソミュール液の作り方:肉の漬け込み方とワンポイント
材料が揃ったらソミュール液を作ります。肉の重さと同じかやや少ないくらいの水に、材料をすべて入れます。塩が溶けるまでよく混ぜておきましょう。豚肉はあらかじめ水洗いをして血や汚れを取り除き、ビニール袋に入れてソミュール液を注ぎます。そのまましっかり口を閉じて、冷蔵庫で5日~1週間寝かせば下ごしらえは完成です。
寝かしている間、時々状態を見て、肉の上下をひっくり返してあげるとむらなく味が染み込みます。2・3日で肉の色が変わってきますが、これは中の水分が抜けているためなので心配ありません。もし液が濁って汚くなるようなら、途中でソミュール液を作ってそっくり取り換えてしまいましょう。雑味が抜けて、さらに美味しく仕上がります。
アイスバインの作り方:家庭で上手に煮込む方法
肉の塩漬けが出来たら、いよいよ煮込みに移ります。何日も塩漬けされた肉はすっかり固く締まって、いかにもしょっぱそうですね。煮込みの下準備から、順を追って説明します。
アイスバインの煮込み方:塩漬け肉の下準備
そのまま直接塩水で煮込みながら肉の塩抜きもしてしまうという方法もありますが、その方法だと煮汁はしょっぱすぎて使いまわしができません。せっかくの美味しいスープを捨てずに使うために、煮込む前に塩抜きをおすすめします。肉はサッと流水で洗い、大きめのボウルに入れて水にさらします。流水なら1時間、貯め水なら2時間以上が目安です。
アイスバインの煮込み方:香味野菜やハーブでさらに旨味を引き出して
塩抜きが済んだらいよいよ煮込みに入ります。肉よりも一回り大きめの鍋を用意し、肉がしっかり隠れるくらいの水を注ぎます。青ネギやニンジンのヘタ、セロリの葉などの野菜くずがあれば、ぜひ風味付けに入れましょう。ニンジンやセロリなら煮込んでも崩れずスープと一緒に食べられるので、そのつもりで最初から可食部を入れてもかまいません。
さらにローリエや粒胡椒などの香辛料も、煮込みで風味を増すための優れたパートナーです。ソミュール液を作った時の残りがあれば、一緒に加えてください。ローリエなら2枚、粒胡椒は5粒程度で充分です。
アイスバインの煮込み方:沸騰禁止!弱火でコトコトが美味しさの秘訣
煮込みのコツで一番大切なのが、絶対に沸騰させないことです。沸騰させてしまうと一気に肉が固くなって旨味が抜けてしまうので、注意して沸騰直前で火を弱めます。そのまま2~3時間、じっくりと煮込んでいきます。ずっと煮込むのが難しければ、火が通ったあとは炊飯器の保温モードを利用するという方法もあります。こちらも目安は3時間です。
豚肉は生のままでは食べられないので、中心までしっかりと火を通すことが必要です。すね肉を使っている場合は特に、骨のまわりに火が通りにくいので充分に煮込む必要があります。普通の塊肉の時は煮込みすぎると崩れてしまうので、逆に時間を短めに調整するのも良いでしょう。竹串を刺してスッと通れば火が通っています。
しっかり火が通り肉が柔らかくなったら、火を止めてそのまま冷めるまで待ちます。一度スープに溶けだした肉のうまみが戻り、しっとりと柔らかく弾力のある仕上がりになります。冷ます工程を省きたいときは、煮あがったら時を置かずにすぐに食卓に運びましょう。アツアツでほろりとした肉の柔らかさを堪能できます。
アイスバインの美味しい食べ方を知りたい!
時間をかけて作り上げたアイスバインを存分に楽しむための、食べ方のアイデアを紹介します。煮出したスープまで余すところなく美味しくいただきましょう。
アイスバインの美味しい食べ方:まずはそのままドイツ気分で!
アイスバインの味わいを堪能するには、やはり本場ドイツの食べ方に習うのが一番でしょう。大きな皿にドンと盛り付け、ナイフとフォークで取り分けながらワイルドに食べるのがおすすめです。付け合わせはキャベツの漬物「ザワークラウト」や、茹でたジャガイモ、茹でジャガを潰して、塩・バター・牛乳で練ったマッシュポテトなどが有名です。
アイスバインの美味しい食べ方:野菜と合わせて彩り豊かなポトフにも
柔らかく煮込まれた豚肉は、温野菜との相性もバッチリです。カブやニンジン、インゲン、ブロッコリーなど、お好みの野菜を加えてひと煮たちさせれば、カラフルで栄養もたっぷりなポトフに早変わりです。煮込みの時に加えた野菜もそのまま一緒に食べられるので、簡単で豪華なおかずになりそうです。
アイスバインの美味しい食べ方:煮込んだスープも余さず食べよう!
肉を取り出した後の煮汁にも、豚肉やとんこつから出た美味しい出汁が溶けだしています。塩・胡椒やコンソメなどで味を調えて、そのままスープとしていただきましょう。煮汁を取っておいて根菜の煮物のスープに使ったり、カレー粉やトマトの水煮を足して味を変えたりと工夫すれば、さらにバリエーションが増えて大満足です。
まとめ:時間はかかるけど難しくはない!アイスバインを作って食べよう!
料理はスピード・簡単が主流になりつつありますが、手間をかけたものはやはり特別で味わい深いものです。伝統的なアイスバインの作り方は時間がかかって面倒に見えますが、そのほとんどは漬け込みや煮込みの待ち時間で、手順はいたってシンプルです。晴れの日のご馳走に、仲間とのパーティーに、ぜひ本場の美味しい肉料理を楽しんでください。