辛党の本当の意味は?辛いもの好きとは違う?語源や甘党との違いも解説

辛党の本当の意味を解説します。辛党は辛いもの好きという意味で使われがちですが、本来は酒ととても関係の深い言葉なのです。そこで、辛党とは本当はどういう使われ方をするのかを詳しく説明します。同時に、辛党の語源や甘党との違いも解説していきます。

辛党の本当の意味は?辛いもの好きとは違う?語源や甘党との違いも解説のイメージ

目次

  1. 1辛党の本当の意味は「辛いもの好き」ではない?
  2. 2辛党の意味や語源
  3. 3甘党と辛党の違い
  4. 4辛党や甘党の例文
  5. 5「辛いもの好き」に辛党以外の表し方はある?
  6. 6辛党の意味や甘党との違いまとめ

辛党の本当の意味は「辛いもの好き」ではない?

現在では辛党と言うと激辛のものを好むという意味で使われることが多くなりました。実際、そのような意味で使う人もたくさんいるでしょう。しかし本来、辛党とは辛いものが好きという意味ではありませんでした。辛党という言葉には実はお酒が深く関わっています。

本記事では辛党の本来の意味や語源をわかりやすく解説していきます。また、辛党と一緒によく使われる甘党という言葉との違いや意味なども一緒に紹介します。これを読んで、辛党や甘党という言葉の意味を正しく使えるようにしてみましょう。

辛党の意味や語源

辛党とは甘いものよりも酒が好きな人のこと

辛党という言葉を辞書でひくと、そこには「甘いものよりも酒類を好む人」と出ています。ただ単に「酒好きな人」と載っている場合もあります。どちらにせよ、辛党とは辛いものが好きという意味ではなく、酒が好きな人という意味で使われています

ただ、昔の文献には「辛党=辛いもの好き」という意味で使われている例も多く載っており、昔から辛党とは辛いものや塩辛いもの(しょっぱいもの)が好きという意味で使われていたようです。酒が好きな人は塩辛いものを好む傾向になるので、やがて辛党には酒好きという意味も追加されていきました。

それがいつの頃からか、辛党は塩辛いもの好きという意味が抜け落ちてしまい、辛党は酒好きという意味だけが残ってしまいました。そのため、今でも名残で塩辛いものが好きな人のことを辛党と呼ぶ人もいます

「辛党=酒好き」は日本酒のアルコール度数が関係

日本最古の漢和辞典『新撰字鏡(しんせんじきょう)』には、アルコール度が高いお酒を「カラシ」と記述しているそうです。これは、アルコール度数が高く舌にピリピリとした刺激があったためではないかという見解があります。

昔の日本では辛いもの、塩辛いもの、アルコール度数の高い酒など、舌にぴりっとくる刺激はすべてひとくくりに「辛い」と表現されていました。日本酒にはアルコール度数が高いものも多くあり、舌に強い刺激を受けるため、辛いものとしてとらえられていました。そのため、辛党とはアルコール度数の高い日本酒を好むという意味で使われたという説もあります。

また、辛党というと辛口のお酒を好むという意味でとらえる人もいるようですが、辛口甘口はこの場合関係ありません。あくまで酒好きという意味で使われます。また、日本酒の辛口・甘口は日本酒の中に含まれている糖分が多いか少ないかの違いであり、アルコール度数には関係ありません。

辛党以外にも酒好きを表す言葉がある

酒好きを表す言葉には「左党(さとう)」という言葉もあります。これは昔の職人が右手に槌(つち)を持ち、左手にノミを持って仕事をしていたことに由来しています。ノミを持っている左手のことを「ノミ手」と呼んでおり、これが「飲み手」に変化し、最終的に酒飲みの人を「左党」とか「左きき」というようになりました。

他にも「上戸(じょうご)」という言葉もあります。これは昔の階級に由来していて、身分の高い上戸はお金があるため酒をたくさん飲めるということから、酒飲みの意味で使われるようになったようです。これと逆に、身分の低い下戸(げこ)の人はお金がないため酒をあまり飲めないというところから、酒に弱い人のことを下戸と呼ぶようになったそうです。

塩辛いものや辛いもの好きな人を辛党と呼ぶのは誤用という説も

単に辛党を辛いモノ好き、しょっぱいもの好きとしている用例は、『趣味 名物をたづねて』(1926年 松川二郎)「辛党、甘党それぞれ好みに従って調味せられる」や、『私は赤ちゃん』(1960年 松田雄)「固形食の味は、から党には気を多くし、甘党には甘味を多くしてやればよろしい」といったものが『日本国大辞典 第3版』に向けた用例の投稿募で寄せられている。

もともと辛党は塩辛いものを好む人という意味でも使われていました。昔の文献を見ると、逆に酒好きという意味で使われているほうが少なく、塩辛いものが好きという意味で使われている例のほうが多く見られます。

しかし、ある時期を境にその意味は辞書から消えてしまい、酒好きという意味だけが残るようになりました。なぜ塩辛いものが好きという意味が消えてしまったのか、その理由は定かではありませんが、現在では辛党は酒好きとして統一されています

そのため、辞書を元にして言葉の正誤判断をする人たちが、塩辛いものや辛いもの好きを辛党と呼ぶのは誤用だと言うようになったようです。

甘党と辛党の違い

甘党とは酒よりも甘いものが好きな人のこと

甘党とは甘いもの好きな人という意味で間違いはありませんが、正確には酒よりも甘いものが好きという意味で使われています。昔から酒好きと甘いもの好きは何かと対立させられていたようで、甘いものが好きな人は酒が好きではない、という風潮があったようです。

そのため、甘党は辛党と対比して使われており、こうして対義語のような使われ方をしてきました。そのため、酒とは関係なく単に甘いものが好きという場合は甘党とは言いません。

ただ、現代ではお酒も甘いものも両方好きだという人もたくさんおり、必ずしも酒よりも甘いものが好きという意味で使われなくなってきました。正しい意味ではありませんが、ただ単純に甘いものが好きな人を甘党と呼ぶことも多くなっているようです。

辛党と甘党には味覚感覚に違いが

世の中の甘いもの好きと辛いもの好きの人たちには、味覚感覚に違いがあることがわかっています。日本味覚協会が実施したアンケートと味覚診断によると、甘いもの好きの人は甘味の感度が良い傾向にあることがわかりました。逆に辛いもの好きの人は塩味に対する感度が良い傾向にありました。

つまり、甘いものをより敏感に感じる人は甘いものを好むようになり、塩辛いものをより敏感に感じる人は塩辛いものを好むようになるということがわかります。味覚感覚の違いによって、その人の味の好みも変わっていくようです

味覚感覚の違いは人種の違いという理由でも現れますが、小さい頃からの生活習慣によるところも多いようです。その家庭の味付けや地域の味付けなどで、その人それぞれの味覚が出来上がっていくのです。

辛党や甘党の例文

辛党や甘党の意味がわかったところで、これらの言葉を使った正しい例文や、誤った例文を見ていきましょう。

辛党や甘党の正しい例文

辛党という言葉は、お酒が好きという意味で使うことが現在では正しいとみなされます。つまり、「彼女は辛党なので、毎日晩酌を欠かさない」とか、「辛党だけで集まって飲み会をしよう」というように、酒が好きだという意味がわかるような使い方をします

一方甘党という言葉も、「彼は甘党なので、忘年会ではお酒よりもお菓子を用意してあげて」というように、酒と比較して甘いものが好き、という意味で使うのが正しい使い方です。酒の席で「私は甘党なので」と酒を断る使い方としても使用できます。

辛党や甘党の誤った例文

「私は辛党だから、このカレーは辛さが物足りない」というように、酒とは関係ない用法や辛いものが好きだという使い方は間違いになります。「この塩辛は辛党の私にぴったりだ」というように、ただ単に塩辛いものが好きだという使い方も、現在では誤用だと認識されてしまいます。

甘党のほうも、「私は甘党だからケーキバイキングに行くのが大好き」とか「うちの子は甘党だ」というように、酒とは関係なしに甘いものが好き、という意味で使うのは間違いになってしまいます

「辛いもの好き」に辛党以外の表し方はある?

辛いもの好きという意味を一言で表すような言葉は、特に存在しないようです。というのも、日本ではもともと唐辛子を大量に使ったようなぴりぴりした料理が作られてこなかったからです。そのため辛いという言葉も、しょっぱい、すっぱい、アルコール度数が高いというような、刺激の強いものの意味で使われてきました。

しかし1980年代に入り、激辛ブームが日本で巻き起こりました。その頃から唐辛子などを使った激辛の料理が増え、特に若者を中心に辛いもの好きな人も増えていきました。その辺を境に辛いもの好きの人たちが「辛党」という言葉を勘違いし、酒好きという意味から辛いもの好きという意味にだんだんと変化していったようです。

今では世代別に言葉のとらえ方が違うようで、年代が下がれば下がるほど辛党は辛いもの好きという意味で使われているようです。しかし本来の意味とは異なってしまうため、特に上の年代の人たちには誤解されてしまう場合もあります。

そのため、唐辛子などの辛いものを好む場合には、単純に「辛いものが好き」と言うか「激辛好き」と言うのが一番わかりやすいでしょう

辛党の意味や甘党との違いまとめ

辛党の本当の意味や甘党との違いをまとめました。普段からよく使うような言葉でも、それが正しいかどうか意識する機会は日常の中であまりありません。そのため、正しいと思って使っていた言葉が実は間違っていた、ということもよくあることです。

辛党や甘党も多くの人が用法を間違って使っている言葉ですが、正しい意味を知っていることでいざという時に役立つこともあります。正しい意味をしっかりと把握して、その言葉にあった場面で使ってみましょう。

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