2018年07月01日公開
2024年07月21日更新
パクチーの和名が「カメムシ草」は嘘?コエンドロやコリアンダーは何語?
パクチーの和名が「カメムシ草」だという話を聞いたことがありますか?日本で大ブームを起こしたパクチー。その強烈な臭いから好き嫌いがはっきりと分かれる食材ですが、「カメムシ草」という名前はインパクトがあって納得する人たちもいることでしょう。今回は噂の和名の真相に迫り、さらには、パクチーの様々な名称がいったい何語であるのかも紹介します。今さら人には聞けずふだん何となくモヤモヤとしていた疑問を、この機会にぜひ解決してすっきりしてください。
目次
- 1パクチーの和名はカメムシ草という噂を徹底調査
- 2和名はカメムシ草という噂のパクチーはどんな植物?
- 3パクチーの和名について調べる:パクチーは何語?
- 4パクチーの和名について調べる:コリアンダーは何語?
- 5パクチーの和名について調べる:シャンツァイは何語?
- 6パクチーの和名について調べる:ザウムイは何語?
- 7パクチーの和名について調べる:クラントロは何語?
- 8パクチーの和名について調べる:コエントロは何語?
- 9パクチーの和名について調べる:ダニヤーは何語?
- 10パクチーの和名はカメムシ草という噂は本当?
- 11パクチーの和名は「コエンドロ」
- 12そもそも和名とは?
- 13パクチーを食べる時にはいろいろな呼び名を思い出そう
パクチーの和名はカメムシ草という噂を徹底調査
この数年の間に大ブームとなったパクチー。独特の強い香りがありますので、好みの大きく分かれる食材です。あまりにも強烈な臭いなので和名は「カメムシ草」と言われていますが、その噂は本当でしょうか?ネット上で調べてみても、和名は「カメムシ草」です!とはっきりと書いてある文章もあれば、その噂を否定する文章もあります。いったいどちらが本当なのでしょうか?
また、パクチーはコエンドロやコリアンダーなど様々な呼ばれ方をしてますが、それらは何語なのでしょうか?今回は強烈な個性を持つパクチーの和名の真相、そしてその他のたくさんの名前が何語であるかについて、謎を解明します!パクチーが大好きの人はもちろんのこと、パクチーが嫌いな人も必見です。パクチーは世界各国料理で使われていますので、パクチー料理を避けたい人のためにも言葉は要チェックです。
和名はカメムシ草という噂のパクチーはどんな植物?
パクチーは地中海沿岸原産のセリ科コエンドロ属の一年草です。パクチーは葉や茎に強いにおいがあって、6月から7月ごろには淡紅色をおびた可憐な白い花を咲かせます。川岸や水気のある荒地に生え、高さは30~50cmになります。パクチーはこの数年で話題になっていますが、実は日本には平安時代までに中国から伝来したと言われています。
パクチーの原産地は、地中海沿岸地域つまりエジプトのあたりだと言われています。初めは地中海沿岸部で食べられていたものが、シルクロードの陸路と海路に沿って普及し、中国へ伝わっていきました。インド洋を渡ってタイやベトナムなどの東南アジアにも広がりました。さらに大航海時代には、スペインやポルトガルによって中南米にも伝わり、今でもメキシコやペルーでよく料理に使われています。
このようにして広い地域に伝えられたパクチーは、世界各国の料理を美味しくしてくれる香味野菜でありスパイスです。東南アジアでは香味野菜としての使い方であるのに対して、日本では生のパクチーを山盛りにトッピングするなど、パクチーそのものが主役になっています。
出典: https://tenki.jp
パクチーは国によって様々な使われ方をしていますが、呼ばれ方も「パクチー」、「コリアンダー」、「シャンツァイ」、「ザウムイ」、「クラントロ」、「コエントロ」、「ダニヤー」などと様々です。それらはいったい何語なのでしょうか?はたして、それらの中に和名はあるのでしょうか?他の国でのいろいろな呼ばれ方とお料理での使われ方を見ていって、最後に和名について紹介します。
パクチーの和名について調べる:パクチーは何語?
日本でもっとも一般的な呼び方である「パクチー」はタイ語です。タイではトムヤムクンなどのスープ、グリーンカレー、タイスキをはじめとしたさまざまな料理の香辛料として使われています。パクチーだけでなく、他の香辛料と合わせて使っているようです。例えばトムヤムスープでは、パクチーを薬味として利用されますが、その他にコブミカンの葉やタイ生姜、レモングラスなどたくさんのハーブを煮込んで作られています。
パクチーが大好きな日本人は、パクチーだけを山盛りに食べることがありますが、タイ人は多くの種類の香草を組み合わせて食べます。スパイスにはそれぞれ、体を冷やす・温めるなど効能があるので、タイ人は体調などで使い分けているという声もあります。
パクチーの和名について調べる:コリアンダーは何語?
「コリアンダー」は英語です。アメリカなど英語圏ではこのように呼ばれることもあります。日本では「コリアンダー」はスパイスのイメージで、果実や葉を乾燥させた香辛料を表すことが多いです。それに対してタイ語の「パクチー」は、生食する葉や茎の部分のイメージです。エスニック料理のブームにより、生食のメニューが注目されるようになりました。同じ食材なのに、食べる部分によって呼び方が変わる興味深い例です。
コリアンダーシードという言葉もありますが、その名のとおりパクチーの種のことをさしています。香りはパクチーとは全く異なり、種は甘くさわやかです。コリアンダーシードの粉末はオレンジのような柑橘系の香りがほんのりして、カレーのスパイスに用います。ガラムマサラなどのスパイスミックスにも使われます。コリアンダーシードは全体的にも穏やかな香味なので、大量に使用してもそれほど問題はないと言われています。
パクチーの和名について調べる:シャンツァイは何語?
「シャンツァイ」は中国語です。肉のくさみをとるためや食欲増進のため、あるいは付け合わせとしてよく使われます。四川料理では和食における小口ネギや白髪ネギのように、「シャンツァイ」が料理の引き立て役です。
中国の東北地方には、上の写真のようにラオフーツァイ(老虎菜)と言って「シャンツァイ」を生食する郷土料理もあります。「シャンツァイ」とキュウリと青唐辛子のサラダのような冷菜です。「シャンツァイ」という言葉は、パクチー・コリアンダーに次に、日本でもよく聞かれる言葉かもしれません。でも、パクチーの和名ではありません。
パクチーの和名について調べる:ザウムイは何語?
「ザウムイ」はベトナム語です。ベトナムでは、パクチーのことはハノイなど北部の地方では「ザウムイ」と呼ばれています。ホーチミンなど南部の地方では「ゴーリー」と呼ばれています。生春巻きやフォーにはが欠かせない食材です。日本でも生春巻きやフォーは人気がありますが、「ザウムイ」あるいは「ゴーリー」という言葉はほとんどの日本人は知らないでしょう。
パクチーには実はいろいろな種類があり、上の写真のノコギリパクチーという品種は、ベトナムのフォーによく使われます。ノコギリパクチーはその香りが普通のパクチーよりも強く、まだ日本ではあまり出回っていないのですがパクチニストにはたまらないハーブです。普通のパクチーと違って、ノコギリパクチーは乾燥させても香りが残るので保存がききます。
パクチーの和名について調べる:クラントロは何語?
「クラントロ」はスペイン語です。スペインでは「クラントロ」をスープやサルサなどに用います。アメリカ合衆国でもメキシコからの移民が多い地域では、英語のコリアンダーよりもスペイン語の「クラントロ」で呼ばれます。下の写真は「クラントロ」をたっぷり使った、ペルーの鶏の炊き込みご飯です。
スペイン語圏では、スペイン語の「クラントロ」に影響を受けた「シラントロ」(Cilantro)という呼び方もあります。この2つは厳密に言うと同じパクチーではないようです。「シラントロ」が地中海沿岸の原産であるのに対して、「クラントロ」は熱帯アメリカの原産でした。両者の香りは似ていますが、「クラントロ」の方が香りが強く、ギザギザした葉の形から「のこぎりパクチー」と呼ばれています。
パクチーの和名について調べる:コエントロは何語?
「コエントロ」はポルトガル語です。ポルトガル南部の伝統料理であるカタプラーナ鍋では、魚介類と野菜などの材料とともに「コエントロ」が欠かせません。「コエントロ」はポルトガル料理の味を特徴づける重要な食材となっています。
こちらは「コエントロ」とニンニク風味のエビのグリルです。ポルトガルではちょっとした魚介のグリル料理でも「コエントロ」を使うことがよくあります。魚介類が安くて美味しいポルトガルでは、なくてはならない香味野菜です。
パクチーの和名について調べる:ダニヤーは何語?
「ダニヤー」はヒンドゥー語です。「ダニヤー」はカレーにも使われるスパイスのひとつです。英語でコリアンダーとして販売されていることも多いです。上の写真はネパール料理屋さんで出される、魚の頭のカレーです。カレーが大好きな人の中には、この「ダニヤー」という言葉を知っている人もいるかもしれませんが、日本ではほとんど聞かれない言葉です。
パクチーの和名はカメムシ草という噂は本当?
これまで様々な国でのパクチーの呼称を紹介してきました。日本では現在はパクチーと呼ぶのが一般的ですが、いったい和名は何なのでしょうか?「カメムシ草」と呼ばれていたという噂がありますが、これが和名なのでしょうか?調べてみたところ、その強烈な臭いからカメムシ草という名前はインパクトがありますが、現在は和名ではないようです。
和名ではないと言え、パクチーとカメムシは無関係とは言い切れません。カメムシの臭い成分には、「デセナール」「ヘキセナール」などのアルデヒド類で構成されていることが研究でわかっています。そしてなんとパクチーの臭気成分にも「デセナール」「ヘキセナール」の臭い成分が含まれています!つまりパクチーの臭いがカメムシの臭いと似ているというのは、科学的にも証明されているということになります。
パクチーの和名は「コエンドロ」
実はパクチーの和名は「コエンドロ」です。NHK出版によるみんなの趣味の園芸にも、はっきりと「コエンドロ」と書かれていますが、「カメムシ草」という記載はありません。ウィキペディアでは、以前は和名はコエンドロやカメムシ草と紹介されていましたが、最近では「コエンドロ」のみに整理されたようです。しかし実際には、現在では和名「コエンドロ」を知っている人は多くはないでしょう。
この和名「コエンドロ」は、鎖国前に伝わって来たポルトガル語「コエントロ(coentro)」が語源になっている古い言葉だそうです。確かによく似ています。コエンドロが用いられる以前には、「コスイ」胡荽、「コニシ」と呼ばれていたという記録があります。これらはポルトガルからではなく、中国からの言葉と考えられています。
そもそも和名とは?
パクチーの和名は「カメムシ草」ではなく「コエンドロ」ということがわかりましたが、そもそも「和名」とは何なのでしょうか?和名は、学名とは違って、一般に使用されている習慣的な名称です。植物の名前というのは、大昔から人々がまわりにある植物に対して自然発生的につけたのが始まりです。古い時代には今のように人々の移動もありませんでしたので、ひとつの植物に対して地方によって数多くの呼び名が存在するのは当然です。
しかし、時代が進み人々の移動や物の交流が多くなってくると、日本国内での共通的な名前が必要になってきます。そこで、たくさんの呼び名の中から、適当と思われるものを共通の呼び名として選びだしたものが「和名」です。和名は原則ひとつですが、実際には二つ以上の名前が同じように普及している場合もあって、たとえば、「ジャガイモ」と「バレイショ」は両方とも普通に使われています。また和名は変更されることもあるのです。
ちなみにパクチーの学名は、Coriandrum sativum L.です。学名は生物学的な手続きに基づき、世界共通の生物の種および分類に付けられる名称です。日本独自の和名などと異なり、全世界で通用し、属以下の名を重複使用しない規約により、ひとつの種に対し有効な学名はひとつだけになります。学名は系統学などの研究においては大切なことですが、私たちの生活の中では、やはり学名ではなく和名と言えます。
パクチーを食べる時にはいろいろな呼び名を思い出そう
世界中あちらこちらの国で料理に使われているパクチー。今回はいろいろなパクチーの呼び名がそれぞれ何語であるのかを紹介しました。そして、パクチーの和名がカメムシ草という噂は、正しくはなかったことがわかりました。パクチーの和名は「コエンドロ」です!
「パクチー」、「コリアンダー」、「シャンツァイ」、「ザウムイ」、「クラントロ」、「コエントロ」、「ダニヤー」などといろいろな呼び名があるパクチー。それが同じ植物をさしていることに気づくことによって、各国の料理への理解が深まります。広い地域で育つ丈夫なパクチーが、それぞれの地域の郷土料理に取り入れられていったのは興味深いことです。次にパクチーを食べる時には、思い出してみてください。