2019年04月23日公開
2024年09月12日更新
カペリンはししゃもに似た魚!ししゃものとの味の違いや簡単な見分け方
カペリンという魚を知っていますか?きっと多くの人が「知らない」と答えることでしょう。ですがこのカペリンという魚はとても身近な魚なのです。実はこのカペリンという魚は「ししゃも」として普段食べている魚のことなのです。ではなぜカペリンがししゃもとして売られているのでしょうか?カペリンとししゃもの違いとは何なのでしょうか?カペリンとししゃもの見分け方や味などの違いの他、おすすめのレシピやカペリンのキャビアまで、いろいろなカペリンを紹介します。
カペリンとは?
カペリンという名前の魚は知らなくても、ししゃもという名前の魚であれば知らない人のほうが少ないことでしょう。普段ししゃもとして親しまれている大衆魚こそ、実はカペリンという本物のししゃもとは違いの多い別の魚なのです。ではなぜししゃもではないカペリンが、「ししゃも」として親しまれているのでしょうか?
まずはカペリンがどんな魚なのかや、カペリンがししゃもとして流通している割合とその理由など、カペリンについての情報を整理していってみましょう。
ししゃもに外見が似た魚
カペリンは和名を「カラフトシシャモ」と呼ばれるキュウリウオ科の魚です。ししゃももキュウリウオ科の魚なので、カペリンとは遠い親戚筋の魚といえます。
ししゃもはアイヌ語の柳(susu・スス)と葉(ham・ハム)が合わさったsusam(スサム)に由来します。ししゃもに関するアイヌの伝承は複数ありますが、柳の葉が魚になったのがししゃもといわれているだけあって、ししゃもは柳の葉に似た姿をしています。
そんなカペリンはししゃもと良く似た姿をしています。ぱっと見では、カペリンのほうが大柄で、ししゃもよりも細身の身体をしているくらいの違いしかない外見をしているのです。
市場の90%以上がカペリン?
カペリンがししゃもの代用として出回っているのはわかりましたが、実際カペリンはししゃもと呼ばれて売られている魚の何%を締めているのでしょうか?その答えは何と90%以上がこのカペリンなのです。スーパーの鮮魚コーナーを思い出してみてください。並んでいるししゃもには「カラフトシシャモ」と書かれて売られているはずです。
先ほどカラフトシシャモがカペリンの和名であることは紹介した通りです。つまり普段スーパーで見かけるししゃもはほとんどがカペリンなのです。ししゃもの場合は「本ししゃも」と表記されていることが多いので、見分けられるようになっていますが、本ししゃもはまず滅多に見かけることがありません。
このため現実はカペリン以外は見たことがないという人も多いのです。ですがなぜこんなにししゃもが少なくて、カペリンばかりが並んでいるのでしょうか?その理由はししゃもの漁獲量にあるのです。
本物のししゃもが捕れない理由
ししゃもがカペリンに取って代わられた一番の理由は、カペリンは生息域も広く漁獲量が多いのに対して、ししゃもは生息域が狭く漁獲量が極めて少ないことにあります。カペリンは北東大西洋のノルウェー海、北緯74度までのグリーンランド沿岸などと、北西大西洋のハドソン湾などにも生息しています。
さらに北太平洋でも韓国近海だけでなく、日本でも北海道のオホーツク海沿岸にも回遊しています。これだけ広い生息域をもっているため、その漁獲量もとても多いのです。
では本物のししゃもはどうかというと、北海道の太平洋沿岸沿いのむかわ町から釧路市付近までと、少し離れた八雲町が西の限界域にして南限という、北海道の太平洋沖にしか回遊しない非常に生息域の狭い魚なのです。
さらに産卵場所の減少や乱獲による漁獲量の減少も加わって、現在では漁獲量にも大きな制限がかかっていて、年間の漁獲量は1,300tほどと言われています。一方のカペリンは世界第4位といわれる年間何百万tもの量が漁獲されているため、流通量が大きく違うのです。
ただしこのカペリンも乱獲からの絶滅が危惧されていて、漁獲量に制限がかかり始めているといいます。カペリンもそのうち高級魚にならないよう祈るばかりです。
本物のししゃもを食べたいときは?
本物のししゃもも、干物であれば1年中出回っています。そのため百貨店や高級スーパー、通販などでも買うことができます。ただし生のししゃもとなると、旬の時期でもないと手に入りません。より確実に鮮魚としてのししゃもを味わうのであれば、旬の時期を狙って北海道の太平洋岸に行くことです。
鮮魚のししゃもは干物とはまた違った味わいなので、ぜひ現地に行って楽しみたい味でもあります。干物であれば通販での購入が一番確実な方法です。カペリンと食べ比べてみれば、カペリンと本物との違いを実感することができるでしょう。
カペリンとししゃもとの違い
カペリンとししゃもの違いについて、ここまでにもいくつか紹介してきましたが、カペリンとししゃもにはいくつもの違いがありました。この他にもカペリンとししゃもにはどのくらいの違いがあるのでしょうか?カペリンとししゃもの違いについて、整理してまとめてみました。
原産地の違いは?
カペリンの原産地は、先にも触れたように極北極域と呼ばれる海域になります。より詳細に説明すると、北東大西洋ではロシア領の湾である白海・ノルウェー海・バレンツ海・北緯74度までのグリーンランド沿岸が生息域に挙げられます。さらに北西大西洋にも生息域があり、こちらはカナダ北東のハドソン湾からメイン湾にかけてになります。
一方でカペリンは北太平洋にも生息域があり、韓国からカナダ西海岸のファンデフカ海峡にかけて生息していて、日本でも北海道のオホーツク海沿岸も生息域に含まれているのです。そのためカペリンは生息域が広いという違いがあり、基本海外からの輸入であり原産地は日本ではありません。
では本物のししゃもはどうかというと、生息域は北海道の太平洋沿岸地域でもむかわ町から釧路市付近までと、少し離れた八雲町でしか獲れないという違いがあります。その理由のひとつが、カペリンは産卵のために砂浜に大群で押し寄せたところを獲るのに対し、ししゃもは産卵のため川に遡上してきたところを獲るためです。
ししゃもの遡上が確認されている川は、北海道太平洋側の襟裳岬西側で9河川、東側で7河川だけです。つまりカペリンは広い海域に生息する魚であるのに対して、ししゃもは日本固有の魚であるだけでなく、北海道でも太平洋沿いの限られた地域にしかいない魚という違いがあるのです。
見た目の違いは?
カペリンとししゃもの見た目には、いくつか見分け方があります。カペリンとししゃもの見分け方のひとつは、目や口、ウロコの大きさです。ししゃもは目や口が大きくうろこは粗くて大きいのに対して、カペリンも目や口は大きいもののウロコはずっと細かく、はっきりとした違いがあります。
カペリンとししゃもの見分け方には、大きさや体型も含まれます。ししゃもの大きさが12cmほどでふっくらと丸みがある体型なのに対して、カペリンは通常で15cm、大きいものではオスで20cm、メスで25cmにもなるほっそりとした魚で、大きさや体型にも違いがあるのです。
さらにカペリンとししゃもでは色も見分け方の対象になります。ししゃもが少し赤みがかっているのに対して、カペリンは背面が薄緑色で体は銀色をしています。カペリンはその容姿が小さいさんまのように見えるという人が多いのも、ししゃもとの違いといえます。
味の違いは?
ししゃもの味はというと、川を遡上するだけあって全体的に身の締まったほっくりとした食感です。味も濃くて濃厚で、特にオスは身が締まっています。一方でメスは旬の前半はまだ卵に栄養をとられていないため、身に脂がのって濃厚です。旬の半ばになると脂が抜けてあっさりしてきて、旬の最後は卵に栄養が貯まって甘味や旨味が強くなっています。
カペリンをししゃもと食べ比べてみると、その味の差はよりはっきりします。カペリンはいつ食べても同じ味で変化はありません。普段美味しくいただいているあの味を、通年にわたって楽しめます。ですがししゃもと比べて脂ののりは少なく、全体的にあっさりとした食感であることがわかります。やはり味は本家のほうが上といえます。
値段の違いは?
カペリンとししゃもの一番の違いは、この値段といえます。カペリンは通常10匹入って数100円と、お手ごろ価格で売られています。サイズが小さくて特売ともなれば、100円ちょっとで買えてしまうくらいお財布に優しい魚です。
ではししゃもはいくら位かというと、同じ数で1,000円単位にまで跳ね上がることも珍しくありません。さらにオスかメスかでも値段差がつくのです。オスが10匹で1,000円~2,000円くらいとすると、メスは3,000円~4,000円くらいかかります。地域差や取扱店でも値段は変わりますが、気軽に手を出せない値段であることは変わらないのです。
カペリンとししゃもの簡単な見分け方
カペリンとししゃもの違いはわかりましたが、簡単な見分け方はあるのでしょうか?カペリンではなくししゃものレシピも試してみたい、と思う人もいることでしょう。カペリンとししゃもの簡単な見分け方をまとめてみました。
ラベルを確認する
カペリンとししゃもの簡単な見分け方のひとつは、ラベルを確認してみることです。値段ももちろん基準になりますが、カラフトシシャモとラベルに書かれていたらそれはカペリンです。ラベルには和名で記述すれば法律的にも問題ないため、カペリンではなく和名のカラフトシシャモと書かれているのです。
代わりに本ししゃもと書かれていたら、それはカペリンではなくししゃもです。値段もカラフトシシャモことカペリンとは比べ物になりませんが、ししゃもを味わってみたい人はぜひラベルの見分け方を参考に、本ししゃもを試してみてください。
原産地で見分ける
カペリンはそのほとんどが輸入されているため、原産地がししゃもとは異なります。カペリンの多くは、ノルウェー・アイスランド・カナダから輸入されているため、ラベルには名前と一緒に原産地である輸入先の国名が書かれています。
一方のししゃもは日本の固有種のため国産しかありません。つまり国産でないししゃもは全てカペリンということになり、これも最も確実で簡単な見分け方のひとつです。
旬の時期で見分ける
カペリンもししゃもも通常は干物で出回っているため、通年を通して買うことができます。そのため干物での見分け方としては旬はあまり関係ないように感じます。ですが鮮魚となると話は別です。ししゃもの旬の時期は10月~11月半ばの秋ごろなので、鮮魚でししゃもを食べられるのはこの時期だけになります。
旬のししゃもを確実に食べるのであれば、この旬の時期に北海道まで行くのが一番です。北海道でもししゃもが獲れる地元では、秋メニューとしてさまざまなレシピのししゃも料理があるといいます。北海道まで行くのが大変ならば、北海道関連のイベントに行くと物産展で売られていることがあります。
カペリンを使ったアレンジレシピ
カペリンはお手ごろ価格のため、さまざまなレシピに取り入れることができます。おかずからおつまみまで、多彩なレシピがあるのもカペリンの魅力なのです。そんなカペリンのレシピの中でもおすすめのレシピをいくつか紹介します。
ししゃものアヒージョ
- ししゃも1パック
- A・オリーブオイル大さじ3~
- A・にんにく(みじん切り)1片
- A・鷹の爪(輪切り)1/2本
- Aをフライパンに入れて弱火にかけます。焦げないように弱火のまま匂いが立ち始めるまで熱します。
- 1にししゃもを入れて、ひたひたになるくらいまでオリーブオイルを足します。
- 弱火のまま5分~10分くらい、オリーブオイルで煮るような感じで熱し続け、ししゃもに火が通ったら完成です。
子持ちししゃものフリッター カレー風味
- ししゃも12尾
- A・薄力粉大さじ6
- A・片栗粉大さじ2
- A・ベーキングパウダー小さじ1
- カレールウ1/2皿分(ブロック半分)
- お湯大さじ3
- 水大さじ3
- サラダ油適量(フライパンに2cmの深さ分)
- カレールウを包丁でみじん切りにしたら、お湯で溶かしておきます。
- ボウルにAを全て入れたら泡だて器でよく混ぜて、1のカレー液と水を入れて混ぜ合わせます。
- フライパンに油を入れて加熱し、ししゃもを衣にくぐらせてから、中火で揚げ焼きしていきます。片面2分、裏面2分が目安です。油を切ったら器に盛り付けて完成です。
ししゃもの南蛮漬け
- ししゃも6尾
- 玉ねぎ1/2個
- ニンジン1/2本
- ごま油小さじ2
- A・酢1カップ
- A・砂糖大さじ3
- A・醤油大さじ2
- A・塩小さじ1.5
- A・みりん大さじ2
- A・水1/4カップ
- 玉ねぎは繊維に沿って薄切りにし、ニンジンは4cm~5cmの長さの千切りにします。
- ししゃもを魚焼きグリルなどで焼き上げます。Aの調味料は器で合わせておきます。
- フライパンで油を熱し、1に塩ひとつまみ(分量外)を加えてしんなりするまで炒めたら、容器に取り出しておきます。
- 3のフライパンに調味料を入れて火にかけます。砂糖が溶けて酢の酸味がまろやかになったら、3を入れた容器に入れます。
- 4にししゃもを加え、味を馴染ませたら完成です。
子持ちししゃものガーリックチーズ焼き
- 子持ちししゃも2尾
- ピザ用チーズ30g
- オリーブオイル大さじ1
- ガーリックパウダー数振り
- グリルにくっつかないアルミホイルを敷いてししゃもを並べます。尾の部分が焦げないようにアルミホイルを折っておきます。
- グリルで4分焼いたら頭の部分のアルミホイルを折って、さらに2分間焼きます。
- 耐熱皿に取り出して、ピザ用チーズとオリーブオイル、ガーリックパウダーを振りかけて、ふんわりラップをかけたら、レンジで1分ほど加熱してチーズが溶けたら完成です。
ししゃものガラムマサラチーズ焼き
- ししゃも3尾
- 粗挽きコショウ少々
- ガラムマサラ少々
- とろけるチーズ適量
- クッキングペーパーにししゃもを並べて粗挽きコショウを振り、トースターで3分ほど焼きます。表面が軽く焼けたら一度取り出します。
- ガラムマサラを軽く振り、チーズを乗せて、表面がかりっとなるまで焼き上げて完成です。
カペリンのキャビアを知ってる?
カペリンのキャビアというのを聞いたことがありますか?キャビアというと普通はチョウザメの卵のあの高級食材ですが、カペリンのキャビアというものもあるというのです。キャビアというからにはお値段も高いのでは?とついつい思ってしまうカペリンのキャビアについて、いろいろと調べてまとめてみました。
見た目はまるで黒い宝石
キャビアといえば別名「黒いダイヤ」と呼ばれる食材ですが、カペリンのキャビアも見た目は黒い粒がたっぷりと入っていて、その粒の大きさはトビウオの卵であるとびっこと同じくらいといいます。原産国はスウェーデンとなっていて、カペリンの卵を塩漬けにした後キャビア風に着色したものが、カペリンのキャビアの正体なのです。
値段が驚くほど安い
カペリンのキャビアは材料のカペリンが安いだけあって、キャビアとはいっても値段は驚くほど安いのです。カペリンのキャビアは1瓶100g入りで200円ちょっとで買えるのです。カペリンの卵で原材料代が安いとはいえ、輸入品でこの値段は驚きです。
気になる味ですが、塩漬けにした後着色しただけなので、単に塩味しか付けられていないとのことです。そのため見た目はキャビアですが、食べれば普通にししゃもの卵の味だといいます。ですので当然のことながら、本物のキャビアとは全く違う味になります。
カペリンキャビアの食べ方
カペリンキャビアは値段も安く、見た目のインパクトも十分なので、さまざまな場面でいろいろなレシピに応用が利きます。ちょっとしたホームパーティでカナッペなどの洋風おつまみレシピに用いたり、お茶漬けや丼といったレシピにも良く合うといいます。
いつもと違う雰囲気の食事を楽しみたいときに、そのインパクトのある見た目を活かして気分を変えてみるのもおすすめです。半分ネタと思って買っても後悔しないだけの、十分に使いきれる美味しさを持った商品と評判です。
カペリンは庶民的で魅力あるお魚
カペリンは値段も安くさまざまなレシピで楽しめる、庶民的でありながら魅力たっぷりの魚です。本物のししゃもには味は及びませんが、とても身近な魚であることは疑いようもありません。お酒のおつまみやおかずとして、これからもカペリンを楽しんでください。