香辛料の王様「胡椒」の歴史とは?胡椒はとても高価なスパイスだった?

胡椒は私たちにとってとても身近な香辛料です。今では気軽に購入して使うことのできる胡椒ですが、かつては金と同じ価値のある、とても高価なスパイスだったというのです。胡椒はスパイスとしての使い方だけでなく、その効能からも欠かせない香辛料として、長い間高い価値のあるスパイスでした。そんな胡椒と人との歴史や胡椒の種類とその使い方のほか、胡椒の持つさまざまな効能まで紹介していきます。

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目次

  1. 1胡椒が金ほど高価なスパイスだった?
  2. 2胡椒が香辛料の王様だった歴史
  3. 3胡椒について
  4. 4胡椒の種類と使い方
  5. 5胡椒の形状
  6. 6胡椒の効果効能
  7. 7胡椒は香辛料の定番で美容と健康に役立つ!

胡椒が金ほど高価なスパイスだった?

胡椒は私たちが普段から良く使用するスパイスですが、かつてはその効能から重要な香辛料でありながら、入手がとても困難な香辛料でもあったため、非常に高価なスパイスとして金と同等の価値がありました。胡椒が高級品として扱われてきた歴史とその理由を、胡椒の効果効能も交えつつ紹介していきます。

胡椒が香辛料の王様だった歴史

胡椒はヨーロッパでも紀元前400年ごろには、すでに知られている香辛料でした。また中国でも1300年以上も前から、生薬や香辛料として使われてきました。そんな胡椒の歴史は、香辛料の王様としての歴史でもあったのです。胡椒の歴史について見ていってみましょう。

世界での歴史

胡椒の英語名であるペッパーは、胡椒の近縁種で胡椒と同じものと思われ扱われていたヒハツ(ロングペッパー)が、サンスクリット語で「ピッパリ」と呼ばれていたことに由来します。

実は胡椒は長いこと近縁種のヒハツと混同され黒胡椒や白胡椒はヒハツの実の熟したものと思われていたようです。16世紀にインドでの経験を活かした「インド香料薬草論」(1563年)で、独自の薬物学を論じたガルシア・デ・オルタが改めるまで、この間違いは続いていたといいます。

紀元前4世紀には古代ギリシアのテオフラストゥスという植物学者が、自身の著書である『植物誌』の中で胡椒とヒハツの考察を載せ、当時から胡椒が貴重品だったことがうかがえます。また1世紀ごろにはローマの歴史家・大プリニウスが、1ポンド(約500g)ヒハツが15デナリ(デナリ=小銀貨1枚)、白胡椒7デナリ黒胡椒4デナリと記録しています。

ローマ帝国が東西に分かれた後の408年に、西ゴート族のアラリック1世によってローマが包囲されたとき、ローマ市民は包囲を解く代償として、金と銀などのほかにも胡椒3,000ポンドを支払ったといいます。3,000ポンドは1トンを超える量なので、いかに胡椒に価値があったかがわかります。

中世になっても胡椒の価値が高いままだったのには、単なる香り付けに留まらず、肉などの食料の長期保存に役立ったため、食料の保存手段が限られていた時代には、胡椒の防腐効果はなくてはならないものだったのです。そのため「胡椒一粒は黄金一粒」とも言われ、お金の代わりとしても使われていました。

インドへの航路が確立するまで胡椒の価値は下がることなく、十字軍や大航海時代などの目的のひとつが胡椒とする見方もあるくらいなのです。胡椒はその輸入の難しさから「天国の種」とも呼ばれ、中世ヨーロッパではもっとも高価なスパイスだったのです。

中国でも胡椒は人気の香辛料で、「胡」は西方の民族を指し、「椒」はサンショウ族の香辛料を指し、両方を合わせて「西方から伝来した香辛料」を意味します。唐時代の書物である「新修本草(しんしゅうほんぞう)」には、生薬としても利用されていた記述が残っています

日本での歴史

胡椒は日本には中国経由で輸入されたため中国と同じく胡椒と呼びます。8世紀には胡椒の輸入が始まっていて、胡椒が日本の歴史に正式に登場するのは、聖武天皇の77日忌に東大寺正倉院に献納された献納品の目録「東大寺献物帳」の中に、胡椒が記載されているのが最初です。

最初のころは生薬として使われていた胡椒ですが、平安時代には香辛料としても胡椒が使われるようになりました。唐辛子が伝来するまでは、山椒と並んで現在よりも多くの料理で利用されていたのです。そのため江戸時代でも、中国やオランダから毎年大量の胡椒を輸入していた記録が残っています。

唐辛子は伝来当初、胡椒の亜種として「南蛮胡椒」「高麗胡椒」などと呼ばれていたため、現在でも九州地方を中心に唐辛子を「胡椒」と呼ぶ地域があり、そのため九州北部名産のゆず胡椒は、唐辛子を使いながらも胡椒と呼んでいるのです。

生薬としての歴史

胡椒は最初はスパイスなどの香辛料としてではなく、生薬としての使い方をするのが一般的でした。紀元前4世紀のギリシャの医師であるヒポクラテスが、調合薬の材料として胡椒を用いていた記録があります

中国でも唐の時代には書物にも記述があり、喉の痰をとったり、冷えた内臓を温めるなどの効果があるとされ、古くから生薬としても使われたほか、医食同源の観点からスパイスなどの香辛料としても人気があったといいます。

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胡椒について

胡椒は歴史を動かしたスパイスともいえる特別な香辛料ですが、そんな胡椒とはどんな香辛料なのでしょうか?原産国を始めとして、胡椒の基本的なことを紹介します。

原産国

インド

胡椒の原産国はインドで、南西部にあるマラバール地方が原産地と言われています。ただし資料によっては、東南アジアや南米を胡椒の原産地とするものもあります。

味や香り

胡椒はその製法によって見た目はもちろん味や香りにも違いが出ます。同じ種類の胡椒でも、製法でその風味が違うのです。細かい違いは後ほど説明しますが、胡椒に共通していえる風味は、木の香りを思わせる芳香と、ピリッと刺激のある辛味のある味が特徴です。

世界での栽培は?

胡椒の主な産地はインドスリランカを始め、インドネシアマレーシアベトナムカンボジアといった東南アジアや、ブラジルでも栽培が盛んです。

通常は挿し木で増やし、3年目になったころから実をつけ始めます。胡椒の実は房状で、ひと房に50粒~60粒の実をつけます。7年~8年で最盛期を迎えて以降、15年~20年間収穫できます。胡椒の木1本から年間約2kgの胡椒が収穫できます。

胡椒の種類と使い方

胡椒と一言で言っても、いくつか種類があります。スパイスコーナーでも何種類もの胡椒を見ることができます。それぞれの種類の胡椒には特長があり、その特長によって使い方も変わります。胡椒の種類とその使い方を、それぞれ紹介していきます。

黒胡椒

黒胡椒は通常「ブラックペッパー」と呼ばれている、ポピュラーな種類の胡椒です。完全に熟す前のまだ緑の実を収穫し長時間乾燥させて黒色に変色させたものです。乾燥させる過程で皮にしわができますが、皮を剥がさずにそのまま使用します。

強い独特の風味があり香りも辛みも強いため、牛肉に特に良く合うと言われますが、そのほかの肉料理を始め、風味の強い食材や料理での使い方が多いのが特徴です。

白胡椒

白胡椒は通常「ホワイトペッパー」と呼ばれている、黒胡椒と並ぶポピュラーな種類の胡椒です。完熟した胡椒の実の中でも形の悪いものを選別して、数日水に漬けることで外皮を柔らかくして皮をきれいに剥がし取る白色の実が出てきます

水に漬けておく工程で外皮を腐敗させたとき、強い不快臭が発生することがあります。そのため白胡椒が嫌いという人もいるようですが、この腐敗臭は流水で外皮を腐敗させた場合には、ほとんど発生しないことがわかっています。

黒胡椒よりも風味が弱く、よりマイルドで上品な香り付けをする使い方に向いています。そのため魚料理クリームシチューといった、繊細な風味付けで使われる種類の胡椒です。

青胡椒

青胡椒は他の種類の胡椒とは、作り方も使い方も独特な種類の胡椒です。胡椒の未熟な実を収穫するところまでは黒胡椒と同じですが、乾燥はフリーズドライで短期乾燥にします。また塩漬けや酢漬けにして加工するものもあり黒胡椒よりも早い時期のまだ実が柔らかい時期に収穫します。

黒胡椒よりもより未熟な実で作ることから、爽やかな香りと特徴のある辛味があります。肉料理や魚料理との相性も良く香辛料としての使い方もしますが、タイ料理やカンボジア料理ではスパイスとしてではなく、青胡椒自体を炒め物の「食材」として入れる使い方をすることがあります。

時として「グリーンペッパー」と呼ばれることもありますが、ピーマンや青唐辛子を指すこともあるため、間違えないように注意が必要です。

赤胡椒

赤胡椒は赤色に完熟してから収穫しますが、白胡椒と異なり外皮をはがないまま乾燥させます。そのため黒胡椒と同様に、皮にしわができるのが特徴です。

赤胡椒の風味はマイルドで、ペルーなどの南アメリカの料理で使われることが多く、その鮮やかな色で料理やデザートの彩りとしての使い方もします。

赤胡椒は別名ピンクペッパーとも言いますが、このピンクペッパーには3種類あります赤胡椒の別名としてのもの、ウルシ科の植物のコショウボクの実セイヨウナナカマドやサンショウモドキの実です。コショウボクの実はフランス料理では「ポアブル・ロゼ」とも呼ばれますが、胡椒ではありません。

またそのままレッドペッパーと表示されることもありますが、こちらは唐辛子のことを指すこともあるため、注意が必要です。

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胡椒の形状

胡椒には売っているものを見てもわかるように、粒状のものと粉末状のものがあります。それぞれの特徴と使い方を紹介します。

ホール

ホールとは粒状の乾燥させた実そのままのものです。ホールは魚や野菜のマリネのほか、ピクルスなどの漬け込み料理煮込み料理などの使い方があります。

粗挽き

粗挽きは胡椒の粒がはっきり残っている程度に挽いたものです。香りは飛びやすいですが、噛んだときに辛味と共に香りが口に広がる特徴があるため、肉料理を始めさまざまな料理の仕上げに振るのに適した挽き方です。通常は黒胡椒を使うのも特徴です。

細挽き

細挽きはかなり細かい粒からパウダーまでが混ざり合った挽き方です。一般に「テーブルコショー」と呼ばれるのはこのタイプで、細かく挽かれている分香りが飛びやすく、封を開けるとどんどん香りが飛んでいってしまいます。そのため下ごしらえの臭み消しなどに向く挽き方です。

細挽きでもわかるように、胡椒の香りは揮発性で飛びやすい特徴があります。そのためなるべくホールで買ってきて、使う直前にミルで挽くのが一番胡椒の香りを楽しむことができるのでおすすめです。

また黒胡椒と白胡椒をブレンドしたテーブル胡椒などのブレンド商品は日本独自のものであり、日本の料理に合うようにと1950年代に考案されたものなのです。

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胡椒の効果効能

胡椒には生薬としても重宝されたように、さまざまな効果効能があります。胡椒の健康効果をまとめて見ていってみましょう。

抗菌・防腐・防虫作用

胡椒に豊富に含まれる辛み成分であるピペリンには、中世ヨーロッパで珍重されてきた抗菌・防腐・防虫作用があります。食品に対してだけでなく、体内の有害菌にも効能があります

食欲増進や消化不良の改善

胡椒に含まれるピペリンは、脾臓の消化酵素の分泌を刺激する作用があります。また消化器官の働きを向上させる効能もあるため、食欲を増進し消化不良を改善する効果があるのです。

貧血予防や血行促進作用

胡椒に含まれるピペリンにはさまざまな効能がありますが、血管を拡張させて血流を良くする効果もあります。これにより冷え性の改善はもちろん、豊富に含んでいる鉄分との相乗効果で貧血も改善される効能があると言われています。

風邪の予防

胡椒のピペリンには発汗作用もあります。風邪をひいたかな?と思ったときに、胡椒を使った料理で汗をしっかり流すようにすると、代謝を高めるだけでなく体に溜まった毒素も出すことができるため、風邪をこじらせることを予防する効能を期待できます。

ただし、汗をたっぷりかくためには十分な水分補給が必要です。さらに汗をかいた後に体を冷やさないよう、すぐに着替えるようにしましょう。

高血圧の予防

胡椒にはカリウムも豊富に含まれています。カリウムといえば利尿効果で、余分な水分と一緒に塩分も排出してくれるミネラルです。そのためカリウムは血圧を下げる効能のあるミネラルとしても有名です。

通常塩分を減らすだけの食事は、味が薄くなったように感じて満足できません。ですが胡椒を加えることで味にアクセントが加わって物足らなさを減らす効果もあります。減塩メニューには胡椒を加えて、美味しく血圧を下げましょう。

ダイエット効果

胡椒に含まれるピペリンは血行促進効果だけでなく交感神経を刺激してエネルギーの代謝を向上させる効能もあります。エネルギーの代謝が活発になることで脂肪の燃焼が促され体温が上がって痩せやすくなり、ダイエット効果も期待できます。

アンチエイジング効果

胡椒のピペリンには抗酸化作用もあります。これにより活性酸素を除去し、ガンを始めとした成人病を予防してくれるだけでなく、肌の老化を防ぐ効能もあります。さらに鉄分を多く含んでいるため、コラーゲンの生成を助け、美肌へと導いてくれる効果もあるのです。

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胡椒は香辛料の定番で美容と健康に役立つ!

胡椒はその優れた効能ゆえに、昔から高い値段を払ってでも手に入れたい特別な香辛料でした。今では買いやすくなりましたが、その効能の高さは変わりません。普段何気なく使っている胡椒ですが、現代も私たちにとって欠かせないスパイスなのです。

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