いちじくの品種と特徴を解説!風味の違いや選び方について
いちじくの品種は200種類以上あり、旧約聖書にも数多く登場する歴史ある果物です。はるか昔にアラビア半島で誕生したいちじくは、少なくとも6000年前には栽培が始まっていたと言われています。他の果物と異なる特徴は、いちじくの味は旬や品種によって違うところです。糖度が22度のものや、ジャムのような甘さがある糖度30度のものなど、糖度も品種によって違います。どれを選んだらいいのか分からない方のために、美味しいいちじくの選び方を紹介します。いちじくを深く知り、自分にあった味を見つけてみませんか?
いちじくの品種や特徴の違いを見ていこう
出典: https://amaru.me
いちじくには、大きく分けて夏果専用品種と秋果専用品種、夏秋果兼用品種の3種類があり、それぞれの種類によって味や見た目に違いがあります。その違いや選び方を紹介していきます。
いちじくの旬や主な産地
いちじくには初夏から夏にかけて実がなるものと、秋に実がなるもの、そして初夏と秋、両方に実がなるものがあります。一般的な旬は、夏の8月頃から10月頃までで、夏果の物は6月から7月です。
日本のいちじくの主な産地は、愛知、和歌山、福岡、兵庫ですが、茨木、富山、大阪、兵庫、広島、神奈川などでも作られています。海外ではアメリカのカリフォルニア州や地中海沿岸諸国です。平成21年の全国の生産量総数は14,957トンで、そのうち約18%を愛知県が生産しています。
いちじくの夏果・秋果の品種
夏果は「キング」といい、大玉系品種で果実は最大で180gあります。その特徴は熟しても果皮が色付かず黄緑色のままで、裂果しにくいのです。熟すと中は一般的ないちじくと同じように赤くなります。
秋果は「セレスト」といい、小玉系品種で果重は15から20g程度です。その特徴は、糖度が18度と高く、ねっとりと濃厚な甘味があります。皮が薄いので、そのまま食べることもできます。
江戸時代に中国から長崎に伝わったとされる「蓬莱柿(ほうらいし)」も秋果専用品種です。平均サイズは60~100gとやや小さめで、甘味の中にほどよい酸味があり、ぷちぷちとした食感とねっとりとしたいちじく特有の口当たりが特徴です。「蓬莱柿」の選び方は、果皮にハリがあり、全体的に赤褐色に染まっている物がおすすめです。
いちじくの夏果・秋果の両方取れる品種
一般的にスーパーに出回っている品種は夏秋兼用品種で、代表的な種類が「ドーフィン」です。栽培のしやすさと日持ちのよさから全国に広がりました。ほどよい甘味とさっぱりとした風味があり、生食のほかジャムなどにもおすすめです。果重は80~200gと幅広く、8月~10月ごろに収穫されます。
他にも、「カドタ」という品種はとても甘く、蜜が浮き上がるほどジューシーで美味しいのが特徴です。天然のジャムのように、そのまま生で食べることもできますし、パンと一緒にたべるのもおすすめです。大きさは30~60gで、8月~10月下旬に収穫できます。
いちじくの斑入り品種
いちじくの斑入りは果実が斑入りになるものと、葉っぱが斑入りになる種類があります。果実が斑入りになっているいちじくは「ゼブラスイート」といいます。大きさは40~60gです。
いちじくのその他品種
2006年に福岡県で交配育成された品種「とよみつひめ」は、福岡県のブランドいちじくです。栽培は特許契約を結んだ福岡県内の生産者及び、生産団体に限られます。果形は卵型で、果実はそこそこ大きくなります。秋果は育成地では8月中旬から収穫できる夏秋果兼用の中生種です。
フランス原産の「ビオレ・ソリエス」は古くからフランスでは有名な品種で、国内では限られた生産者しか栽培していません。果実の大きさは、50~80gと小ぶりで、扁平な形をしています。この幻の黒いいちじくと言われる「ビオレ・ソリエス」は9月中旬から10月いっぱいまで収穫できる秋果専用種です。
いちじくの種類ごとの風味の違い
いちじくはそれぞれの種類によって風味が異なります。「ドーフィン」は甘味の中にさっぱりとした風味があります。「蓬莱柿」は適度な甘味とほのかな酸味があり、上品な味わいです。「とよみつひめ」は16~17度と甘味の強いいちじくです。「ビオレ・ソリエス」は果肉が柔らかく糖度が20度以上にもなります。
いちじくの選び方や食べ方
古代エジプトの壁画にも描かれ、ギリシャ神話や聖書にも出てくる果実「いちじく」。日本にはポルトガル人によって江戸時代に渡来したと言われています。その特徴は、生で良し、干して良し、古くから薬効があるとされてきたことです。美味しいいちじくの選び方や食べ方を学んでみましょう。
いちじくの名前の由来
いちじくの名は、中国での名前「映日果(えいじつか)」がなまっていちじくとなったという説と、一日一個ずつ熟すから、また一か月で熟すから、「一熟」と名がついたという説があります。また、「無花果」と書きますが、実際には実の中に無数の花を咲かせるのですが、外からは見えず、花が咲かないように見えるのです。
美味しいいちじくの選び方
いちじくの選び方は、外見の特徴をよく見てから見分けましょう。ふっくらとして傷がなく、果皮にハリがあり、手で触ると軽くへこむくらいの弾力があるものが、甘くて美味しいのです。ヘタの切り口に付いている白い液は新鮮さの証です。また、ハトメ部分が開いているのは完熟しているサインです。
いちじくは日持ちしないのですぐ食べる
日持ちはあまりしないので、入手後は直ちに食べましょう。乾燥が大敵なので、ポリ袋に入れたり、ラップで一つずつ包んでから冷蔵庫で保存します。一度に食べきれない場合は、シロップやワインで煮てコンポートにしたり、ジャムにするのもおすすめです。生でそのまま食べる場合は、バナナのようにヘタの部分から皮を剥いていきます。
いちじくはコンポートやジャムにアレンジして楽しむ
そのまま食べても美味しいですが、クリームなどとの相性もいいのでタルトに仕上げたり、ワインに入れてコンポートにしたり、シャーベットや甘露煮にもできます。ペクチンが多いのでジャムにむいていますが、その際、クエン酸を加えると味が引き締まり、色も鮮やかになります。
いちじくはサラダや肉料理にもおすすめ
生ハムと合わせた前菜はポピュラーですが、他にも、天ぷらや肉料理のソースに仕上げたりもします。いちじくで作ったジャムを肉料理に使うと、コクのある甘味がプラスされて、より一層美味しくなります。
いちじくの栽培の方法
いちじくの栽培:鉢植え
まず、8号以上の鉢を用意し植え付けをします。9月~3月までに行いましょう。木を鉢に植え地際から20~30cmで切ります。残す芽の上の節で切るようにします。1年目の初夏、5月上旬に3枝残して剪定します。1年目の冬、各枝を20~30cmのところで剪定します。冬芽もしくは横眼のところで切るようにします。
2年目以降は、4月下旬~5月中旬頃に込み合った枝を切っていきます。2年目の冬、秋果種は長い枝は1~2芽残して剪定し、込み合った枝は間引きます。夏果種は込み合った枝は元から間引き、長く伸びすぎた枝は切り詰めます。いちじくは植え付けから2~3年で収穫できます。
いちじくの栽培:露地植え
支柱を立てて植え付け、地際から40cmのところで剪定します。一年目の冬、主枝を3~4本残し先端を切り詰めます。各主枝をやや斜めにヒモで誘引します。2年目の冬、枝の先端と結実後の結果枝をすべて切り戻し、さらに、主枝の先端を切り戻し文枝を促します。3年目の冬、結果枝を毎年30本程度にし、込み合った部分は間引きます。
いちじくは品種ごとに剪定方法が違う
いちじくは種類によって剪定方法が違います。秋果だけを収穫したい場合は、2~3芽が出るくらいまで全て剪定します。適切に切り戻し剪定をすれば、株の大きさを維持しつつ、果実を収穫することができます。適期は落葉期の2~3月で、長く伸びた前年枝を2~3芽残して切り戻します。
5月頃には新しく枝が伸びるので、勢いのいい枝を選んで残し、垂直に誘引します。以降、毎年同様です。夏果だけを収穫したい場合は、前年枝の先端を切り戻すと、夏果になるはずの花芽を切除することになります。内側に向いた枝や、元気のない枝を付け根から切り、日当りをよくするように間引きましょう。適期は6月上旬です。
いちじくの肥料や水やりについて
肥料は根や茎を丈夫にし、実を大きくする根肥、ぼかし肥料(玉肥)がおすすめです。ほかの肥料よりも微量要素が補えられます。春、夏、秋の3回施肥します。
春、苗の植え付け時や果樹の休眠期や活動を始める前に「元肥」を与えます。夏、収穫前の果実の成長を促す目的で「実肥」を与えます。(弱った樹には与えないこと。梅雨時期は控えめにします。)秋、収穫後に行い、収穫で体力を消耗した樹の回復が目的です。春に枝が伸び、秋果が2~3個取れた時に元気がないようであれば、もう一度あげます。
いちじくは同じ樹でも日光の当たり方、養分のいきわたり方で大きさ、色など違いがでます。いちじくは水分を必要とします。特に鉢栽培の場合は、朝、晩たっぷりと水をやりましょう。また、果実を美味しくするため、日光は十分に当ててやりましょう。真夏の置き場所は、乾燥しにくい半日陰が理想的です。
いちじくの品種を知って自分好みを見つけよう
いちじくに含まれるたんぱく質分解酵素フィシンは、肉と食べ合わせた場合、速やかな消化を助けてくれます。バテ気味になる夏、食べすぎが気になる秋、旬を迎えるいちじくは積極的に摂りたい果物のひとつです。そのまま食べるだけでなく、いちじくの味や特徴を生かして料理にも取り入れてもらいたいです。