オリーブオイルのエクストラバージンとピュアの違いは?本物の正しい選び方
健康や美容にもいいと言われているオリーブオイル。今ではほとんどのスーパーで販売されていますし、家庭に常備している方も多いでしょう。売り場には数多くの種類がありますが、皆さんはどのようにして選んでいますか?エクストラバージンオリーブオイルやピュアオイルという言葉を見かけることがありますが、その違いは何なのでしょうか?今回はその違いや、本物の美味しいオリーブオイルの選び方を詳しく紹介します。
目次
本物のオリーブオイルを選びたい!
近年オリーブオイルは世界的に消費量が増えていて、日本でも例外ではありません。イタリア料理・スペイン料理が一般的になってかなりの年月が経ちます。自分が子どものころは家にオリーブオイルはなかったけれど、今では家庭に常備しているという人も多いのではないでしょうか?健康にいいオイルですので、テレビの料理番組などで取り上げられることもよくあります。
その一方で、イタリアでは偽装オリーブオイルがあり摘発されるという事件がありました。しかも日本でも販売された形跡があるということでしたので、私たちに無関係な事件ではありません。また、スペインでは消費者団体が市場に出回っているオリーブオイルを調査したところ、全体の1/3が虚偽表示を行っていたというのですから驚きです。
最近ではスーパーの売り場でも多くの種類のオリーブオイルが売られています。輸入食料品店に行くと、もっと多くの選択肢があります。エクストラバージンオイルが上質だということはなんとなく知っていても、その定義を知っていますか?味見して購入できるお店はごくわずかです。本物の美味しいエクストラバージンオイルを選ぶにはどうしたらいいのでしょうか?今回はオリーブオイルの違い、そして本物の選び方をみていきましょう。
オリーブの歴史
オリーブの歴史が始まったのは今から約8000年前と言われています。野生のオリーブは現在のヨーロッパや北アフリカなど地中海沿岸地域に自生していました。栽培については、約6000年前に現在のトルコ・シリアあたりで始まったと考えられています。この地域に住んでいたフェニキア人がオリーブの栽培を近隣の国々に伝えられたと言われています。
上の地図に示されているように、地中海沿岸の東部で始まったオリーブ栽培ですが、約3200年前にはギリシャの島に伝わり、その後ギリシャ本土でも栽培が始まりました。そして2500年前にはイタリア南部に伝えられました。一方スペインには北アフリカ経由で伝えられました。その後は近隣各国へ次々に広がっていき、今ではオリーブオイルは地中海沿岸の国々にとって、なくてはならないものとなっています。
日本のオリーブオイルの歴史
日本に初めてオリーブの木がやって来たのは、1862年。医師である林洞海という人がフランスから輸入した苗木を横須賀に植えたのが始まりとされています。明治になってからはフランスから苗木が輸入され神戸で栽培されました。明治15年には果実が収穫され、我が国で初めてオリーブオイルを作ることができましたが、長続きはしませんでした。
日本ではオリーブオイルと言えば、香川県小豆島が有名です。小豆島へオリーブがやってきたのは1908年のことです。当時の農商務省がオリーブの試験栽培地のひとつとして、小豆島を選びました。そして香川県は「西村」に試験園を設置し、1917年に県から初めて試験用のオリーブが配布され、その後は官民一体の努力により収穫するまでになりました。このようにして、小豆島は日本で初めて産業用のオリーブ発祥の地となったのです。
小豆島のオリーブ栽培が順調に軌道にのったのは、瀬戸内海の気候がオリーブ栽培に適していたこともあります。栽培するオリーブの樹の種類も増え、果実の収穫高も増えていきました。今ではオリーブ、オリーブオイルだけでなく、オリーブラーメン、オリーブうどん、オリーブグミ、オリーブ石鹸などいろいろな特産品が販売されています。
世界のオリーブオイル事情
上のグラフは2012/2013年のオリーブオイル生産量ランキングで、スペインがトップになっています。私たちにとって、オリーブオイルと言えば、スペイン・イタリアをイメージします。確かに日本のオリーブオイルの輸入相手国は、2017年も前年に引き続きスペインが1位です。
上のグラフは2014/2015年度における世界のオリーブオイルの生産量を示しています。スペイン・イタリアをイメージしがちですが、実はチュニジアがスペインに次いで世界2位になっています。また、右のグラフは2011/2012年度における世界のオリーブオイル輸出量を示しています。輸出についてもEUに次いで2位となっています。 チュニジアからの輸出先はイタリア、フランス、スペインなどEU諸国がほとんどをしめます。
IOCによるオリーブオイルの国際基準
IOCは、スペイン・マドリードに本部をおく、オリーブオイルとテーブルオリーブの国際協定に基づく政府間機関です。1959年にオリーブ栽培と生産の保護と開発のため、国際連合によって国際オリーブオイル協会(International Olive Oil Council/IOOC)として設立されました。その後、2006年にインターナショナル・オリーブ・カウンシル(IOC)に改名されました。
IOCはオリーブ業界における唯一の世界的な機関であり、加盟国としては、世界のオリーブ生産量の97%を占める生産国を含んでいます。このIOCがオリーブオイルの基準を明確に定めています。つまり、本物を選ぶ基準はIOCできちんと定められているのです!一方、日本のオリーブオイルは現在のところ、日本農林規格(JAS)により定められています。この違いが日本でのオリーブオイルの選び方をとてもわかりづらくしています。
現在、日本には日本オリーブ協会という団体があります。2010年9月に発足して、IOCには日本で唯一となる団体組織として2010年11月に加盟しました。日本オリーブ協会はJOA認定マークというものを定めています。日本オリーブ教会の品質検査をクリアし国際規格と認められたオリーブオイルにつけるマークですので、消費者にとっては本物の選び方のひとつの目安になります。
このことは、国際規格に定められた品質検査を受けられるという選択肢ができたということです。このマークがついていないからと言って、そのオリーブオイルが本物ではないということではありません。日本オリーブ協会がIOCに加盟したのは意味のあることですが、日本が国として加盟したのとは違い、団体として加盟したので実際の影響力は大きくはないと言われています。
次に、IOC(国際オリーブオイル教会)によるオリーブオイルの国際的な基準を紹介します。まずはバージンオリーブオイルの定義を紹介します。下の表で見ると、上から4つまでがバージンオリーブオイルに該当しますが、食用のバージンオリーブオイルは上から3つまでとなっています。
バージンオリーブオイルとは、オリーブの樹の果実から機械的または物理的な手段のみにより、オイルを変性させない条件下(特に温度条件)で得られたオイルであり、洗浄、デカンテーション、遠心分離、濾過以外の処理を経ていないものを指します。食用のバージンオリーブオイルはさらに「エクストラバージンオリーブオイル」「バージンオリーブオイル」「オーディナリーバージンオリーブオイル」の3つに分けられます。
「エクストラバージンオリーブオイル」とは遊離酸度がオレイン酸換算で100グラム中0.8グラム以下のオイルで、その他の特性が、IOC規格における当該カテゴリーに定められた特性と一致するオイルと定義されています。その他の特性の試験としては、風味に酸敗臭、発酵臭などがまったくないことといったテイスティングによるものも含んでいます。
続いて、「バージンオリーブオイル」とは遊離酸度がオレイン酸換算で100グラム中2グラム以下で、その他の特性が、IOC規格における当該カテゴリーに定められた特性と一致するオイルと定義されています。「オーディナリーバージンオリーブオイル」とは遊離酸度がオレイン酸換算で100グラム中3.3グラム以下で、その他の特性が、IOC規格における当該カテゴリーの特性と一致するオイルと定義されています。
日本でのオリーブオイルの基準
一方、日本のオリーブオイルは日本農林規格(JAS)により定められていて、「エクストラバージンオリーブオイル」と「ピュアオイル」の2種類のみに分類されています。日本では、酸度2%以下であれば「エクストラバージンオリーブオイル」と認められ、それ以外はすべて「ピュアオイル」と判定されます。この評価基準の違いが、日本での本物のオリーブオイルの選び方をますます難しくしています。
ピュアオイルとして売られているものは、オリーブから絞ったオイルを精製して香りや味のない油の状態にしたものに、エクストラバージンオリーブオイルやバージンオリーブオイルを混ぜて作っています。ピュアオイルのブレンドの比率などに基準は定められていませんので、ほぼ無味無臭のものもありますしオリーブオイルらしい香りを感じるものもあるなど、商品による違いが大きいです。
ピュアという言葉からは「純粋な」というイメージが浮かびますが、オイルの質についてはエクストラバージンオリーブオイルの方が上だということがわかりました。次に、エクストラバージンオイルとピュアオイルの味の違いを比べ、実際にどのような料理に合うのかを見ていきましょう。
エクストラバージンオイル・ピュアオイル:それぞれの特徴
オリーブオイルを食べ慣れてない人に味を比べてもらうと、ピュアオイルを食べた感想として「この味の方が好きだ」という声も少なくありません。エクストラバージンオイルはオリーブを絞ったジュースのようなものですので、フルーティーな味わい、苦味、濃厚な香りなどそれぞれの個性があります。それに対してピュアオイルはマイルドでクセがありません。
エクストラバージンオイル・ピュアオイル:それぞれの用途
エキストラバージンオイルはその豊かな香りを生かして、サラダやカルパッチョなど調理の仕上げにかけるのに向いています。一般的にエキストラバージンオイルは生食用、ピュアオイルは加熱用にと言われていますが、エクストラバージンオリーブオイルを加熱してはいけないのでしょうか?そんなことはありません。香りや味わいが加熱によって弱まりますので、最大限に生かすためにはそのまま生で味わって欲しいということです。
エクストラバージンオリーブオイルを加熱すると、炒めものや揚げものに香りや風味といったアクセントを加えてくれます。ただ、高価なオイルを大量に使って炒め物や揚げ物をするのは、現実にはもったいないというのもあるでしょう。カポナータなどを作る際には、調理中はピュアオイルを使い、仕上げに上質のエクストラバージンオリーブオイルを少しかけると、お料理に違いが出ますのでおすすめです。
ピュアオイルは、香りや風味が少ないので、料理の最後に香りづけにかけるというような使い方よりは、サラダオイルのように普通に炒め物や揚げ物に使うとよいでしょう。オムレツのような卵料理を作る際に、オリーブオイルの味や香りを強く出さずにあっさりと仕上げたい時にも向いています。
オリーブオイルの選び方:ボトルの色
売り場での選び方で基本的なことです。オリーブオイルの酸化を防ぐために、光を通しにくい濃い色のボトル、酸素を通さないガラス瓶に入っている商品を選ぶようようにしましょう。特に無濾過のオリーブオイルはとても傷みやすくデリケートなタイプですので、透明なボトルで販売されていることがありますが避けた方がよいでしょう。
オリーブオイルの選び方:ラベル
ラベルにはいろいろな情報が書かれていますが、偽装表記の話題を耳にすると何を信じていいのかわからなくなります。それでも、生産者情報が記載されていたり単一農園で自社生産されている場合は、本物の良質なオイルである可能性が高いと言われています。また手摘み(イタリア語の場合はmano)、コールドプレスといった情報も記載されていることがあります。
下の写真の右のラベル、下から4行目に(PG)と記載があります。イタリア産のオリーブオイルのラベルでは、住所の最後のアルファベット2文字は県名の略称になっていて、PGはペルージャを表しています。記載された住所を元に、グーグルマップで生産された場所を確認することもできます。こうした作業を繰り返していくと、自分のオリーブオイルの好みがだんだんわかってきます。
略称の他の例としては、(FI)はトスカーナのフィレンツェ、(CT)はシチリア島のカターニアなどがあります。美味しいオリーブオイルに出会ったら、ラベルで県を確認しておくと、今後の選び方の参考になります。イタリアは州や県によって料理が違い、オリーブオイルも違いますが、その土地の郷土料理とオリーブオイルは合っていると言われています。
ラベルが外国語で書かれていると読む気がしない場合もあります。それでも賞味期限は確認しましょう。オリーブオイルは瓶詰した時からすでに劣化が始まると言われています。品質を保つポリフェノールなどの抗酸化物質が時間経過とともに減少していくからです。つまり残りの賞味期限が短いほど抗酸化物質が少ないと考えられますので、賞味期限が半年から1年は残っている商品を選びます。
オリーブオイルの選び方:オーガニック認証
お買い物をする時にはなるべくオーガニックの商品を選ぶという方もいるでしょう。オリーブオイルもオーガニック認証を受けた物が販売されています。日本では最初にできたオーガニック認証団体のJONAが知られています。団体によりマークが違いますので、オリーブオイルで見かけるマークを紹介します。
左は日本の有機JAS認証のマークです。真ん中の「USDA ORGANIC」と書かれたマークは米国農務省(USDA:United States Department of Agriculture)「National Organic Program」のオーガニック認証「NOP認証」です。右はEUの有機認証「Organic Farming」のマークです。
オーガニック認証マークがあれば、栽培や製法においてはオーガニックの基準に準拠していることを意味します。ただし注意しなければならないのは、オーガニックの認証マークは、あくまで栽培法や製法について認証していますので、ボトルの中身が良質のエクストラバージンオリーブオイルであると保証しているのではありません。いずれにしても、オーガニック認証マークがあれが、本物の選び方と言う観点でひとつの目安とはなります。
オリーブオイルの選び方:コールドプレス製法
30度以上の熱をかけていない時、「コールドプレス」と表示できます。遠心分離機を使って抽出するときに、熱を加えた方が搾油しやすいので、温度をかなり上げてしまうメーカーもあります。高温にするとオリーブオイルが劣化し、香りや鮮度の面で違いが出て来てしまいます。ですから、オリーブオイルの選び方としては、「コールドプレス」という表示はひとつの重要な基準と言えます。
オリーブオイルの選び方:自社農園での製造
オリーブオイルを作る時に、オリーブの栽培から実の収穫、搾油、ボトル詰めに至るまでのすべての作業が自社農園で行われているのはとても望ましいことです。このことはオリーブオイルを選ぶ際には、好ましい情報と言えます。
もし農園の中に工場があって搾油所があれば、オリーブの実の収穫から搾油までをその日のうちに手早く済ませることができます。オリーブオイルは酸化しやすいので、この過程に何日もかけているものは避けたいところです。自社農園の場合は管理が行き届きやすいので、品質も安定します。こういった情報は商品のホームページでも確認できます。
オリーブオイルの選び方:受賞歴のある商品
世界中には様々なコンテストがありますが、数々の受賞歴がある商品を選べば本物に出会えることになるはずです。今回は日本で開催されているコンテストを中心に紹介します。
数々の受賞歴のある国産オリーブオイルも!
日本のオリーブオイルは他国に比べると歴史は浅いですが、そのレベルはけして低くはありません。小豆島で作られている商品の中には、海外でのコンテストで大変高い評価を受けているものもあります。丁寧に手間をかけて作っているので安い輸入商品と価格で競り合うのは難しいのですが、作り手の顔が見える国産商品に目を向けるというのは本物の選び方のひとつと言えるでしょう。
日本で開催される国際オリーブオイルコンテスト
OLIVE JAPAN 国際エキストラバージンオリーブオイルコンテストは、2012年に日本で初めて開催されたインターナショナルなオリーブオイルコンテストです。コンテストの審査員は日本オリーブオイルソムリエ協会によって選定・推薦され、日本国内だけでなく海外の主な生産国の認定テイスターが招かれます。
オリーブオイルを楽しむ!2018国際オリーブショー
2018年のOLIVE JAPAN SHOW国際オリーブショーは、6月8日(金)から10日(日)まで二子玉川ライズで開催される予定です。OLIVE JAPANコンテストで受賞したオイルが展示販売されて、世界各国のオリーブオイルに触れられる機会ですので、より深く学びたい方はぜひお出かけください。
オリーブオイルの選び方:テイスティング
好みのオリーブオイルに出会うためには、味をみて覚えることも大切です。購入前にテイスティングできるお店をいくつか紹介します。オリオテーカ伊勢丹新宿店、銀座のOLIVIERS&CO、国立や表参道にあるVOM FASSなどがあります。
【まとめ】美味しい本物のオリーブオイルを選ぼう!
オリーブオイルの分類基準は世界と日本では違いがあり、複雑でした。エクストラバージンオリーブオイルとピュアオイルの違い、本物のオイルの選び方も紹介しました。オリーブオイルはオイルとしての役目だけではなく、お料理の最後に上質のものを振りかけるだけで何倍も美味しくしてくれます。数千円の本物のオリーブオイルが1本あれば、お料理の腕が上がったかのような錯覚に陥ります。ぜひ本物の1本を見つけてください。