みょうがを食べると物忘れがひどくなるのは本当?由来や科学的根拠を調査
「みょうがをたくさん食べると物忘れがひどくなる」という言い伝えを知っていますか?なぜそう言われるようになったのか、言い伝えの基になった話しや、みょうがの語源などを調べてみました。科学的根拠があるのか、なぜみょうがと物忘れがセットになって語られることが多くなったのかの由来にあたる説をまとめています。みょうがにまつわる豆知識や体への好い影響をもたらしてくれる成分なども紹介します。
目次
「みょうがを食べると忘れやすくなる」って聞いたことある?
みょうがは好きだけれど、たくさん食べると物忘れをするから食べすぎないように、という話しを聞いたことはありませんか?食べ物の言い伝えはいくつかありますが、食べ合わせが悪いとか、食べすぎると体調を崩すからとかといった、科学的根拠のあるものもあります。では、なぜみょうがを食べると物忘れがひどくなるというように言われるようになったのでしょうか?
みょうがにまつわる逸話や言い伝え、科学的根拠、みょうがの語源などを調査してまとめてみました。なぜ、みょうがと物忘れがセットになったのか、その由来なども探っていきます。
食べるぎると物忘れをするといわれる「みょうが」の歴史
みょうがは、中国や日本、アジア東部が原産地といわれています。3世紀ころには中国では食されていましたが、日本では当時はあまり食べていなかったようです。時代が流れ、平安のころになると、日本人もみょうがを食べるようになり、反対に中国ではあまり食べなくなったようで、現在では食用として栽培しているのは、日本が主で他は台湾と韓国の一部のみとなっています。
出典: https://horti.jp
物忘れが語源ではない「みょうが」の由来
みょうがの語源を探ると、奈良時代には「売我」「女我」と表記され「めが」という言葉が使われていたことにあたります。その語源はというと、香りのする芽という表現から「芽香(めが)」とする説と、しょうがを「兄香(せが)」といったことから、男の称の「せ」に対して、女の称「め」を使って「妹香(めが)」とする説があります。
この「めが(妹香)」を語源とするものと、中国名の漢字表記の「売我」「女我」を発音すると、「ジャウガ」「ニャウガ」で、それを使っているうちに「ミョウガ」に変化しと、現在の「みょうが」になったという語源説もあります。語源からみると、「みょうが」の由来は原産の中国での漢字表記が関係していることになります。
みょうがと物忘れの話し「インドのお坊さん」
みょうがを食べると物忘れをするという言い伝えの、基をたどると多くの場合が、インドのお坊さんの話しに由来していることが分かります。その内容を紹介します。
インドの北部で誕生した周利槃特(しゅりはんどく)という少年がいました。この人は、兄の摩訶槃特(まかはんどく)と共に、お釈迦様に弟子入りして学びはじめます。兄は賢く、お釈迦様の教えをよく理解して仏教に帰依しましたが、弟の周利槃特はなぜか物忘れをしやすく、自分の名前すら忘れてしまうこともあったそうです。それでも、熱心に修業に取り組んでいたので、お釈迦様が名前を書いたのぼりを持たせてくださいました。
周利槃特がお釈迦様が書いてくださったのぼりを持ち、托鉢にまわると、人々はその手書きの文字を見ることをありがたがり、お布施もたくさんいただくようになりました。お釈迦様の教えの通りに、毎日掃除や托鉢に励みつつも、自分の愚かさに涙を流すこともあったそうです。それを見たお釈迦様が「自分の愚かさに気づいている人は、知恵のある人です。愚かさに気づかないのが、本当に愚か者です。」と言われたこともあるそうです。
何十年も毎日、毎日、お釈迦様からの教えの通りに、ほうきを持って掃除をつづけた周利槃特は、自分の心のごみまで除き、阿羅漢と呼ばれる聖者の位にまで到達し、お釈迦様は大衆の前で「わずかなことでも徹底して行うことが大切」とお話しをされ、周利槃特がは、徹底して掃除をしたことで悟りを開いたと皆に伝えました。
その後亡くなり、埋葬されたところから見慣れぬ植物が芽をだし、花が咲きました。これをみつけた人が、自分の名を荷い(にない)努力を続けたことから、「茗荷(みょうが)」と名付け、ここで眠る周利槃特とみょうがを結びつけて、みょうがを食べると物忘れをするという由来になったという話しです。
みょうがと物忘れの話し「落語の茗荷宿」
インドの周利槃特の言い伝えに由来して作られた落語に「茗荷宿(みょうがやど)」があります。京都と江戸の間を往復する飛脚が、石につまづいて走れなくなり、あいにく雨も降ってきてしまい、一晩体を休めるために泊まった「茗荷屋」という旅籠に泊まった時の話しです。
茗荷屋はお客が減って、料理も満足に出せないようなつぶれかけていた宿です。飛脚が入ってきたので食事をどうしようか迷っていた宿の夫婦は、飛脚から足に薬を塗って食事をしたらすぐ寝るから、荷物を預かってくれと言われました。中身をきくと、50両が二つというので驚いた旅籠の夫婦は、飛脚が翌朝うっかり物忘れして100両預けたことを忘れてくれればと考え、宿の周りに自生するみょうがをたらふく食べさせることにしました。
飛脚は、みょうがの漬物、みょうがのみそ汁、みょうがのご飯などたらふく食べて眠って朝を迎えました。夫婦も残りもののみょうが料理を食べていると、飛脚は出発してしまい、100両のことは忘れたろうと喜んだ夫婦です。ところが、飛脚が戻り、預けた荷物を忘れたといって100両を持って、走って行ってしまいまいした。夫婦は「何か忘れていったものはないか」と話すと「あ、宿賃もらうの忘れた」というオチになります。
みょうが谷の地名の由来は物忘れではない!
この落語にでてくる旅籠のあったあたりが「茗荷谷」で、古くからみょうがを栽培していたことが語源となって、今でもみょうがが作られています。地名になぜみょうがを使ったのかというと、「みょうがだに」には、物忘れをした人が住んでいたとか、落語が語源となって地名をつけたのではなく、江戸の頃からみょうががたくさんとれたことに由来して、みょうがの漢字を使い「茗荷谷」と呼ばれるようにったそうです。
みょうがは物忘れではないことに由来する家紋
みょうがを物忘れとつなげて考えるのではなく、縁起のよいものとしてみょうがを捉え、日本の家紋の多くにみょうががデザインされているという事実があります。なぜ家紋に用いられるようになったのかというと、「みょうが」の発音が、神仏のご加護を意味する「冥加(ミョーガ)」に通じ、念仏の守護神である「摩多羅神」のシンボルがみょうがであることにも由来し、縁起がよいということで茗荷紋が誕生したといわれます。
日本十大家紋の一つでもあり、何種類もの家紋の基礎デザインとして使われています。二つのみょうがを向かいあわせにした「抱き茗荷」を基本として、周りを丸や四角などで囲ったものや、一つ茗荷、違い茗荷など、多くの家紋にみょうがをみることができます。なぜみょうがと物忘れが関係するのか、といったこととは反対に、縁起物として古来から日本では大切に守られてきたという由来もある「みょうが」であることが分かります。
みょうがと物忘れの科学的根拠は?含まれる成分
みょうがと物忘れの関係は科学的根拠があるのか調べると、みょうがにはアルファピネンと呼ばれる、独特の香り成分が含まれていることが分かります。この成分が実は、物忘れをさせるどころか、反対に眠気を覚まして頭をすっきりとさせてくれる効果が期待できるのです。他にも、胃腸の働きを活性化させたり、血液循環をよくして、貧血の改善や新陳代謝をよくする働きをしてくれる成分です。
他にも、抗菌や抗炎症作用、解毒作用のあるカンフェン、鎮痛作用のグラニオール、むくみ解消に役立つカリウム、妊娠期にとりたい葉酸、といった他の野菜ではなかなかとれない、貴重な成分が含まれています。他にも、ビタミンC、ビタミンK、カルシウム、リン、鉄分、亜鉛といったミネラルも含まれているので、積極的にとりたい食材です。
出典: https://horti.jp
こうしてみると、物忘れとみょうがの関係には、科学的根拠はありません。なぜ、みょうがを食べすぎると物忘れをする、と言われるようになったのかといえば、語源に由来していたり、言い伝えにすぎないことが分かりました。日本では縁起の良いものとしても家紋にするほど身近であったからこそ、なぜか物忘れとは反対に脳を覚醒させてくれるみょうがにまつわる話しとして、伝わっているものです。
みょうがに含まれるアルファピネンは物忘れの予防に役立つ?
みょうがに含まれるアルファピネンが、みょうが独特の香り成分であることは、物忘れの科学的根拠の部分で説明しました。このアルファピネンの香りをかぐことで、大脳皮質が刺激され、覚醒を促す作用があることから、脳をすっきりとさせてくれるといわれています。
ただ気をつけたいのは、みょうがを高温で調理すると、香り成分が揮発してしまうので、薬効が薄れてしまいます。脳をすっきりとさせて、覚醒したい時には、みょうがを生のまま刻んだものや、細かく切って、より香りが広がるようにしたものを、口にすると良いです。苦みや辛みをぬくために、水にさらすこともありますが、長時間水にさらすとビタミンも損失され、独特の辛味と香りが弱くなってしまうので、気をつけてください。
みょうがを食べると物忘れをする、ということは科学的根拠はありません。反対に、食べることで、前頭前野という記憶や集中力に関する領域が普段よりも活発になるという話しもあるくらいですから、物忘れを予防するために、みょうがを食べたほうが良いかもしれません。
みょうがを食べすぎると物忘れでなくお腹を壊す?
みょうがを食べすぎると物忘れをするという科学的根拠はありませんが、人によっては、一度に多くのみょうがを食べることで、お腹を壊すことがあり得ます。なぜかというと、みょうがのもつ辛み、苦味といったアクの成分を、大量にとることで胃腸に刺激が加わり、お腹をくだしてしますことにつながってしまいます。
また胃が弱い人の場合、みょうがを食べることで栄養の吸収を弱めることがあるともいわれます。胃の弱い人や、夏バテ気味の人は、みょうがを刻んだら水にしばらくさらして、アクを取り除いてから食べるようにしてください。
みょうがは物忘れではなくダイエットにも効果的?
みょうがは英名で「ジャパニーズジンジャー」と言われるように、日本独特の辛み成分をもつ香味野菜です。しょうがを食べると、体を温めてくれて新陳代謝を促し、ダイエットや美肌のために役立ちます。みょうがはというと、100gで12キロカロリーと、とても低カロリーな食材です。ふっくらとしたみょうが3個で50~60g程度なので、たっぷりの薬味として食べても6~8キロカロリー程です。
みょうがはほとんどカロリーを気にしなくてよく、直接脂肪を燃焼させる科学的根拠はありませんが、含まれるカリウムが、体内の水分を排出しやすくしてくれ、むくみの解消などに役立ちます。またほとんどが水分なので、血液をサラサラにしてくれる効能もあり、3個のみょうがには、1日に必要なマンガン、ビタミンKを15%とることができるサプリメントのような食材でもあります。
物忘れではないみょうがの効能
物忘れのことを気にせずに、みょうがを食べて、体への好い効能を紹介します。薬味としてあれば食べるだけでなく、積極的にみょうがを使った料理を食べてください。
夏バテ予防
夏の暑いシーズンになると、エアコンの効いた室内に一日いると体が冷えて不調をおこします。また暑さとひんやりとした部屋を出たり入ったりすることで、体の調整機能は低下していしまいます。そうした時にみょうがに含まれるアルファピネンが、免疫力向上の作用をしてくれ、食欲も落ち気味なときにみょうがのさわやかな風味があると、食欲が少しでもわいてきます。みょうがの旬でもある夏には、ぜひ意識して取りたい食材です。
リラックスと集中力アップ
アルファピネンに大脳皮質を刺激してくれる効果があることとあわせて、みょうがの香りには神経の興奮を鎮めてくれる効果もあります。アルファピネンは、森林浴と同じような効果があるともいわれていて、ストレスを緩和して、リラックスにつながります。香りでリラックスしながら、頭をすっきりと覚醒させる働きもあるので、朝食や昼食にとりいれると、その後のパフォーマンスが上がることも考えられます。
眼精疲労の緩和
みょうがの紫色には、ブルーベリーなどと同じように、アントシアニンという色素が含まれています。このアントシアニンは、目の疲れを癒してくれ、加齢とともに低下する視覚機能の改善にも役立ってくれます。抗酸化作用もあるので、アンチエイジングを心がける人なら積極的にとりたい食材になります。
物忘れを心配しないで食べたいみょうが
みょうがを食べると物忘れをする、というのは科学的根拠がないことがわかりました。みょうがの語源を調べると、なぜか仏教の教えにつながり、物忘れするといわれる逸話に由来しているというだけのことです。反対にみょうがには健康な体作りにも役立つ成分が含まれていますので、物忘れのことは気にせずに、美味しく食べてください。