2020年10月13日公開
2024年11月02日更新
中世ヨーロッパ時代の食事では何を食べていた?貴族の食事はイメージと違う?
中世ヨーロッパ時代の食事について徹底解説します!当時食べられていた食事メニューをはじめ、貴族と庶民の食生活の違いや食事作法などを詳しくまとめました。中世ヨーロッパの食事を再現したレシピもあわせて紹介します。
中世ヨーロッパの食事をチェック!
中世ヨーロッパの料理に添えられていた「生花」は、個体がとても小さいものが多かったと思います。記載されている食材の記録を見る限りでは、ボリジ・ジリーフラワー・スミレなど。ルネサンス以降になると砂糖漬けやドライ状の花を使う機会が多くなります。いつの時代でも花は彩りを添えてくれますね。 pic.twitter.com/Sz0QDMezrx
— 繻 鳳花 (@shuhohka) September 7, 2020
映画やゲームの舞台背景にたびたび登場する中世ヨーロッパですが、実際の食生活や暮らしぶりを知っているでしょうか?本記事では中世ヨーロッパの食事を中心に、当時の人々の生活についてまとめました。テーブルマナーや食事メニュー、料理の再現レシピなどもあわせて紹介しています。イメージとは異なる驚きの事実が満載です。
中世ヨーロッパの食事って?どんな食生活?
中世ヨーロッパの食事というと、今とさほど変わらないと思っている方も多いのではないでしょうか?国同士が陸続きであるヨーロッパでは、さまざまな文化が混ざり合うことで食生活も変化していったようです。まずは、中世ヨーロッパ時代の暮らしや食事のとり方、食べ方などをチェックしてみましょう。
中世ヨーロッパ時代はいつ?
☆世界遺産『ベルン旧市街』♪ヾ(*´∀`*)ノ
— RyuusunHT (@RyuusunH) September 29, 2020
中世ヨーロッパ時代の古い街並みが美しい『ベルン旧市街』٩(ˊᗜˋ*)و
自然と共存するように建てられた街並みが美しく、ツィットグロッゲ(時計塔)、ベルン大聖堂、多くの噴水など見どころ満載゚+.(o´∪`o)゚+.゚#ベルン旧市街#スイス pic.twitter.com/22x5QJzzwD
中世ヨーロッパ時代とは、およそ5世紀から16世紀までの1,000年ほどの期間をいいます。このころの西ヨーロッパでは、黒死病と恐れられたペストが流行し、カトリック教会が異端者を断罪する異端審問が行われました。これらを象徴して、一般的にこの時代を暗黒時代と呼んでいます。
しかし、12世紀には古典文化の復興から、美術や哲学、文学などの分野で新しい動きがありました。1,000年にも渡る中世ヨーロッパが一貫して闇の時代であったかというと、そうとは言い切れない部分もあるようです。
中世ヨーロッパの貴族と庶民の生活
中世ヨーロッパの農民や庶民の食事はシンプルな料理でした。肉🍖の少ないとき、プロテイン源だったのはレンズマメです。豆やパンのお粥の多い時代。貴族と違って、スパイスを使えない一般人の食事は不味かったです〜何度も再現し、分かったことです。 pic.twitter.com/ZeRY5aO1B9
— 🇯🇵🇩🇪 可児ナタリー📚@ベルリンジャパン (@Berlin_Japan) May 25, 2018
中世ヨーロッパでは、貴族と庶民(農民)の生活に大きな差があったようです。食生活を見ると、貴族は肉料理が中心で輸入品を多く使っていたのに対し、庶民は野菜中心の食生活を送っていたことがわかっています。
地面から採れる野菜は貧困層の食べ物と考えられていたため、貴族はほとんど口にしませんでした。貴族の食事は銀や金食器、庶民の食事は動物のツノや木製食器と、盛り付ける食器にも差があったようです。
中世ヨーロッパでの肉や魚の食べ方
コストマリー事務局刊「中世ヨーロッパの肉料理」より「ウサギのグレービーソース添え」
— ブッコ@佐鎮 (@bukkosimposha) August 11, 2020
クローブの香りがすごくヨーロッパ。 pic.twitter.com/M4oCUtel3v
中世ヨーロッパ時代は食材の保存技術が未発達だったため、すぐに食べない肉は加工して保存していました。一般的に普及していた保存方法は、塩漬けや燻製などです。豚肉はハムやソーセージ、ベーコンなどにも加工していたようです。これらは比較的長期保存が可能でした。魚は塩漬けや燻製にするほか、干物にする食べ方が一般的だったようです。
中世ヨーロッパの食事では生野菜は食べない
『中世ヨーロッパのレシピ』の料理づくりをエンジョイする、今日この頃(*´ω`*) pic.twitter.com/zsprZ7zUkZ
— ささむ (@oonuma31) May 3, 2020
中世ヨーロッパでは、生野菜を食べる習慣はありませんでした。基本的に野菜は煮込み料理にして食していたようです。庶民が食べていた野菜には、キャベツや玉ねぎ、人参、にんにくなどがあります。
ひよこ豆やえんどう、レンズ豆などの豆類もよく食べられていました。タンパク質が豊富な豆類は、肉を食べない庶民にとって貴重な栄養源だったといわれています。
中世ヨーロッパの食事作法・食事回数
中世ヨーロッパの宴会では、食事の前に「手洗いの儀式」という大事な行程があります。当時食べ物は手づかみが基本だったので、衛生的な意味合いもありましたが、バラやローズマリーなどの芳香性の高い植物を手洗い桶に入れることで、一種のアロマ効果ももたらしていたのかもしれません。 pic.twitter.com/zSPnoA4qVw
— 繻 鳳花 (@shuhohka) October 17, 2019
驚くことに貴族、庶民を問わず、食事は手づかみで食べていました。貴族間の食事では、汚れをぬぐうのにテーブルクロスやフィンガーボウルが使われていたようです。ちなみに親指、人差し指、中指の3本を使って食べるのが上流貴族のマナーだったといわれています。残りの指は、塩や香辛料をつけて舐めることに使っていました。
また料理は大皿や鍋で提供され、肉などの切り分けにはナイフを、取り分けにはスプーンや手を使用していたようです。各自の食事は固くなったパンや木皿などに乗せていましたが、下級層では食卓の上に直接料理を置くのも当たり前だったようです。
中世ヨーロッパの1日の食事回数には諸説あり、2回だったとも3回だったともいわれています。1日の食事の中で最も豪華だったのが貴族は昼食、庶民は夕食でした。
中世ヨーロッパの食事メニュー
続いて、中世ヨーロッパ時代の食事メニューについて詳しく解説します。当時の人々は、実際にどのような料理を食べていたのでしょうか?現代の食生活と比較しながらチェックしてみてください。
中世ヨーロッパの食事【主食】
中世ヨーロッパのレシピを見て白パンを作ってみたが凄い重量ともっちり感
— せかいひろし@狼のしっぽ (@gospel2005) January 19, 2019
日本人好みのふわふわ感はまったくないがヨーロッパに行くと食べた事あるなと思う仕上がり
食べると口内炎起こしそうな程の固めのパンが好きな人にはおすすめ pic.twitter.com/QrPAZYZYqq
今でこそヨーロッパの主食は肉料理ですが、中世ヨーロッパ時代は貴族、庶民(農民)ともに穀物を主食にしていました。加工食品であるパンやパスタ、ポリッジ(お粥)などがそれに当たります。当時、穀物の粉挽き施設とパン焼き釜は領主が独占していました。そのため、庶民は石臼などでライ麦や大麦、そばなどの雑穀を挽いていたようです。
手挽きした穀物は、ポリッジや口あたりの固いパンなどに調理していました。パンはぼそぼそとして食べにくかったため、スープに浸したり飲み物と合わせたりして食していたといわれています。
現在は栄養豊富な雑穀に注目が集まっていますが、当時は白い小麦粉こそが栄養価の高い食べ物と考えられていました。従って、中世ヨーロッパの貴族の食卓では小麦粉を使ったパンが振る舞われていたようです。
中世ヨーロッパの食事【肉と魚】
中世ヨーロッパでは、ブナやオークの木が黄金色になる秋になると、飼育している豚を連れてきて、落ちている木の実をたくさん食べさせ、まるまるっと太らせます。冬がやってくると凍てつく雪に覆われ、食料の確保もままならず。動ける秋のうちに、人々は食料の確保に奔走していたのだと思います。 pic.twitter.com/AhPF7ZjfuN
— 繻 鳳花 (@shuhohka) October 2, 2020
中世ヨーロッパ時代の人々は、狩猟で獲ったジビエや家畜を食用にしていました。特に牛肉と豚肉を好んで食べていたようです。肉を食用にするのはもちろんのこと、内臓や頭なども余すところなく食していたといわれています。
肉はパンの4倍もの値段がついたため、庶民にとっては非常に高価な食材でした。貧困層が肉を食べるようになるのは、ペストが蔓延したあとのことです。
一方、魚は肉ほど高価ではなく、海岸地帯に住む人々の貴重な食料源となっていました。魚と言ってもニシンやタラをはじめ、クジラやイルカ、ビーバーなども魚として食していたようです。
中世ヨーロッパの食事【野菜と果物】
中世ヨーロッパのお料理に使う果物で、レシピ集などにたびたび登場するのが「イチジク」と「洋梨」。タルトやソースなど多様性がありますが、日本の場合いささか出回る時期が限られているので、年柄年中作るのはちょっと難儀アリ。今の時期はイチジクがゲットしやすいので集中して試作研究しています。 pic.twitter.com/sfl6JLOLn1
— 繻 鳳花 (@shuhohka) June 4, 2019
主食である穀物のほか、庶民は野菜も毎日のように食べていました。おもな料理はスープやシチューなどです。16世紀のドイツでは、庶民の多くが1日3回~4回もザワークラウトを食べていたという記録が残っています。
中世ヨーロッパ時代の庶民は豆類も多く食していました。しかし、貴族はえんどう以外の豆をほとんど口にしなかったようです。これは豆類が体調不良を起こしやすいということと、庶民の粗末な食べ物であるという認識があったからといわれています。
中世ヨーロッパでは、果実も人気のある食べ物でした。南部ではレモンやシトロン、北部ではプラムやいちご、りんごなどが出回っていたようです。そのまま食べる以外にドライフルーツやジャム、砂糖漬けに加工されることもありました。
中世ヨーロッパの食事【お菓子】
夏になると「中世ヨーロッパの冷たいスイーツとかありますか?」と質問を毎年頂くんですが、メディチ家のズコット(中に冷たいクリームかアイスクリームが入ったケーキ)以前はこれ!といったものを見かけることがないかと。中世に関していえば、焼き菓子や保存に長けたお菓子が多かった気がします。 pic.twitter.com/nbAnECGWDA
— 繻 鳳花 (@shuhohka) July 2, 2019
中世ヨーロッパ時代、砂糖をたっぷり使ったお菓子が各地で食べられるようになりました。甘いクレープ、パイ生地にカスタードを詰めたダリオール、卵を入れて焼いたペイストリーなどが好まれていたようです。
フランスではワッフルやウエファー(ウエハース)、ドイツ語圏ではパン生地に詰め物をして油で揚げたクラップフェンと呼ばれるお菓子を好んで食べていました。
中世ヨーロッパの食事再現レシピ
最後に、中世ヨーロッパの料理を再現したレシピを紹介します。ぜひ当時の料理を再現して、中世ヨーロッパの食生活に思いを馳せてみてください。
中世イタリアのリモニア
【材料】
- 鶏もも肉:300g
- 玉ねぎ:中1個
- レモン(ライム):1個
- ベーコン(ハーフ):1パック
- アーモンド(ロースト):適量
- A黒こしょう:適量
- Aナツメグ(パウダー):適量
- Aクローブ(パウダー):適量
- B水:適量
- Bアーモンドミルク(無糖):適量
- B鶏がらスープの素:適量
- バター:適量
- オリーブオイル:適量
【作り方】
- 玉ねぎは粗みじん切り、ベーコンは小さく切ります。
- 鍋にバターを熱し、玉ねぎを飴色になるまで炒めます。
- ベーコンを入れて軽く炒め、取り出します。
- オリーブオイルを入れ、鶏もも肉を皮目から入れて焼き目がついたら裏返します。
- Aの材料を振り、3を戻し入れます。
- Bの材料を加え、蓋をして弱火で30分煮込みます。
- アーモンドを加えてさらに煮込みます。
- レモンの皮、しぼり汁を加えたら完成です。
中世ヨーロッパ時代、イタリアで食べられていた料理を再現しています。メインの食材に鶏肉とレモンを使い、スパイスを加えて仕上げました。鶏ガラスープの素の代わりに、ビーフコンソメを使ってもよいでしょう。
中世のビスコッティ
こちらは、中世ヨーロッパ時代のイタリアで作られたクッキーを再現したレシピです。小麦粉をベースにしたクッキー生地に、赤ワインやドライフルーツ、木の実を練り込みました。砂糖の分量を少な目にしているので、素朴な味わいが楽しめるでしょう。ワインの風味やナッツの香ばしさも味わってみてください。
中世ヨーロッパの食事はイメージと違う
先日、日本ヴァイキング協会のヴァイキングおかみさん @viking_okami にお会いして、歴史料理について色々と情報交換をしました。中世ヨーロッパは、貴族や修道院の書物から食生活がある程度まで紐解けますが、ヴァイキングの場合は古エッダやサガなどから僅かに文面が残っている程度、とのこと。 pic.twitter.com/oREI1V5qvy
— 繻 鳳花 (@shuhohka) October 22, 2018
中世ヨーロッパ時代、貴族と庶民の食生活には大きな違いがありました。当時の食事作法や庶民の質素な食生活に驚いた方も多いでしょう。中世ヨーロッパ後期には経済成長も加わり、より貧富の差が大きくなっていったといわれています。
実際に食べられていた料理を再現してみると、さらに当時の人々の食生活がリアルに感じられるかもしれません。機会があれば、紹介したレシピにもぜひ挑戦してみてください。