2019年04月16日公開
2024年09月12日更新
外国産WAGYUとは?日本産和牛の特徴とWAGYUが広まった理由&対策
外国産WAGYUが今世界的にブームになっているのを知っていますか?じつはこの外国産WAGYUは、私たちが日本で食べている国産の和牛とは全く異なるものになります。今回は外国産WAGYUがどんなものなのか、牛肉の霜降りや赤身の特徴、味の違いを交えつつ、外国産WAGYUが広まっていった理由に迫ります。また品種改良により日本の和牛と変わりないほど成長したと言われるオーストラリア産WAGYUに対する日本の対策も紹介します。
外国産WAGYUは日本の和牛ではない?
日本食が世界中でブームになっていることを受け、外国産「WAGYU」の人気が高まっています。でも外国産なのに和牛?と疑問に思う方も多いのではないでしょうか?実は和牛は国産に限ったものではありません。今回は外国産WAGYUとはどんなものなのか、日本産和牛の違いも交えながら、その特徴や問題の対策まで詳しく解説していきます。
WAGYUとは?
美しい霜降り(サシ)の入った和牛は、焼いてステーキにしても、煮てすき焼きにしても、とろけるようなおいしさがたまりません。和牛というと国産のもの、つまり日本で育った牛肉というイメージを持っていませんか?でも、最近日本産の和牛に加え、世界的に外国産WAGYUのシェアが増え、ニュースで取り上げられることも多くなってきました。
そもそも和牛とは日本で育った牛肉ではなく、明治時代以降に日本の在来種の牛に外国産の牛を交配し、品種改良された肉専用の牛のことを言います。つまり和牛は国産の牛肉のことではなく、品種のことを指します。だから、外国産WAGYUというのもありえる話なのです。ここからは今ブームになりつつある外国産WAGYUについて取り上げます。
WAGYUは外国産の和牛
WAGYUは外国で育てられた和牛品種の牛肉です。もともとアメリカやヨーロッパなどの海外では牛肉といえば赤身肉が好まれ、日本で食べているような霜降りのお肉は一般的ではありませんでした。東南アジアでさえも赤身肉が多く、霜降り肉はあまり食べられていませんでした。
日本食ブームの波が世界的に広まるに従い、赤身肉よりも霜降り肉が抜群に美味しいWAGYUが知られるようになりました。赤身肉ではなく、霜降り肉がWAGYUとして世界のグルメ人をトリコにしはじめ、WAGYUとして存在感を発揮しているのです。
オーストラリア産がほとんど
外国産WAGYUで大きなシェアを占めているのがオーストラリア産のWAGYUです。日本で品種改良され生まれた和牛の生産技術は本来日本だけのものだったのですが、オーストラリアの熱意ある人々の手によりオーストラリアで質の良い和牛の生産に成功、世界市場では日本産の和牛ではなくオーストラリア産のWAGYUのシェアが増えています。
霜降りが少なく赤身の風味が強い
外国産WAGYUは日本のものと遜色ないという人もいますが、特徴としては日本のものより霜降りが少ないことが挙げられます。そのため、霜降りによる柔らかさはやや劣るとも言われています。また、霜降りよりも赤身の風味が強いため、口の中に入れた途端に感じるとろけるようなおいしさは国産でしか味わえません。
オーストラリア産以外のWAGYU
世界シェアで見ると今現在オーストラリア産WAGYUがトップですが、他地域でもWAGYUの生産が進んでいます。オーストラリア以外でWAGYUを生産している地域はアメリカやカナダ、中国などがあります。世界的に見るとオーストラリア以外の外国産WAGYUは着々とそのシェアを伸ばしてきているのです。
WAGYUとは違う?日本産和牛の特徴
WAGYUがどんなものなのかわかったところで、日本産和牛についてもおさらいしておきます。和牛というと、日本三大ブランド和牛と言われる神戸ビーフ、松阪牛、近江牛のイメージが強いですが、本来原産地とは全く関係ないもので、品種のことを言います。和牛=国産牛というのは大きな間違いで、和牛=品種名という風に覚えてください。
国産牛がどんなものなのかというと品種に関係なく、日本で3ヶ月以上飼育された牛のことを指します。輸入牛であっても3ヶ月以上日本で飼育されさえすれば国産牛を名乗れるのです。
日本独自に品種改良した牛
スーパーに行くと牛肉にいろんな種類がありますが、和牛は日本でもともと育てられていた在来種をもとに交配をくり返し品種改良された牛の品種名で、原産地などは関係なく4品種のみのことを指します。もともと和牛と言われる品種は、農耕用に飼われていた在来種でした。
日本ではあまり牛肉を食べる文化がありませんでしたが、明治時代に海外の文化が一気に伝わり、牛肉を食べる習慣が神戸で広まったとされています。それ以来、外国産のさまざまな品種と、日本で飼育されていた在来種を日本が独自に交配させ、品種改良の結果和牛が誕生したのです。
日本産和牛の種類
日本産和牛の種類は4品種だけとなっています。日本全国で飼育されている黒毛和種、主に熊本県や高知県で飼育されている褐毛和種、岩手県や北海道で飼育されている日本単角種、山口県で主に飼育されている無角和種です。
有名なのはなんといっても黒毛和種で、肉質に優れ、日本の和牛の90%を占めている牛肉です。松阪牛、神戸ビーフ、近江牛などの有名なブランド牛はほぼ黒毛和種です。黒毛和種の特徴は、霜降りも赤身もどちらも甲乙つけがだいほどすばらしいおいしさだということです。
松阪牛や神戸ビーフ、近江牛などは黒毛和種でも品種改良された牛ですが、黒毛和牛のルーツを言われる但馬牛だけは頑なに血統を守り続け品種改良は行われていません。
一般的には赤身肉といえば安物、霜降り肉というと高級ということで、日本では霜降り肉が好まれる傾向にあります。霜降り肉は肉がとても柔らかく、脂のおいしさが口の中いっぱいに広がり、牛肉のおいしさをさらにおいしく演出してくれます。
赤身肉は霜降り肉ほど脂肪分が含まれていませんが、余計な脂肪分が入っていないことで肉そのもののおいしさを味わえます。霜降り肉は脂肪分が多いためやわらかな食感ですが、赤身肉はしっかりとした肉質で食べごたえがあることが特徴です。黒毛和牛は霜降りも赤身もそれぞれのおいしさがあるので赤身と霜降りの食べ比べもおすすめです。
褐色和種は黒毛和種に近く、育ちが良い品種です。熊本や高知で飼育されていた朝鮮牛を基礎に品種改良した品種になります。日本短角和種は、東北地方で物資運送に使われていた南部牛をルーツに品種改良された品種です。最後の無角和種は、在来和種にアンガス種を交配させ、品種改良の末生まれた品種になります。
WAGYUが広まった理由
世界的に和食がブームだからとはいえ、どうして外国産WAGYUが急に広がっていったのでしょうか?ここでは、外国産WAGYUが急激に存在感をました気になる理由について調査しました。
口蹄疫の流行と牛肉の輸入停止
外国産WAGYUが広まった理由のひとつに2010年に起きた口蹄疫の発生が挙げられます。口蹄疫ウィルスが原因で家畜類がかかる病気で、下痢や水泡、皮膚病などさまざまな病気を引き起こします。口蹄疫は非常に高い感染力があることから、早急に対策が行われ口蹄疫の疑いのある牛や豚など29万頭あまりを殺処分しました。
口蹄疫が流行するまでは、日本の和牛がおいしい牛肉として世界的に輸出されていましたが、口蹄疫の流行により、各国で日本からの牛肉の輸入をストップするようになりました。和牛が輸出ができないので、世界中で和牛が食べたいけれど食べられない、という事態に陥ってしまったのです。
和牛遺伝子が輸出される
もともと日本で品種改良が行われ作られた和牛の生産方法は門外不出の存在でした。肉は輸出しても種を外国に渡すことはなかったのですが、和牛遺伝子の輸出規制のなかった当時、世界の人においしい和牛を食べてもらいたいと考えた北海道の畜産業者が輸出に踏み切りました。
オーストラリアで1990年代に和牛の受精卵と精子が輸入されたことでこれにより本来日本でしか生産される事のなかった和牛が、生産が本格的に開始され研究が進められることになりました。
ちなみに、和牛遺伝子の海外輸出を規制する法律はありませんでしたが、和牛生産団体では遺伝子を海外に出さないよう働きかけていたため、オーストラリアに輸出を行った畜産業者はそのご和牛生産団体から除名処分を受けてしまいました。
品質の良いWAGYUの誕生
出典: http://kiui.jp
和牛遺伝子の輸出により、海外で生産可能になってしまった和牛に一番熱心に取り組んだのはオーストラリアでは、「オーストラリアWAGYU協会」なる協会も設立され、WAGYUの育成と改良の研究が進み、肉質も味わいも非常に品質の良いWAGYUが生産されるようになりました。
オーストラリアWAGYU協会では日本と同レベルの厳格な基準を設け、品質管理を徹底するなど見事なマーケティング戦略で、世界的に一気にシェアを伸ばしました。オーストラリア産WAGYUの価格は日本産に比べ、なんといっても価格も半額程度です。
海外の人にとって品種改良が進み、国産のものと比べても変わりないレベルの肉質の牛肉が安く手に入るとなれば、日本産にこだわる必要もありません。品質の良いオーストラリア産WAGYUは今や日本の和牛の存在を脅かすほどの存在に成長しているのです。
WAGYUから日本産和牛を守る対策
世界的に日本の和牛よりもシェアをとっている外国産WAGYU。日本では外国産WAGYUから国産和牛を守るため、あらゆる対策がとられています。ここからは日本政府が行っている日本産和牛を守るための対策について紹介します。
和牛統一マークの作成
オーストラリア産WAGYUが存在感を増しているとは言え、日本和牛の肉質の良さ、霜降り具合、旨みは世界的に見てもトップレベルの一級品です。世界の富裕層や食通の間では、本物の日本産和牛が食べたいという声も聞かれます。そんな人々に日本産和牛を届けるため、また日本産和牛ブランドを守るための対策とはどのようなものなのでしょうか?
日本産和牛ブランドを守るための対策の一つが、日本農林水産省が作成した日本の和牛だけにつけることができる「JAPANESE BEEF WAGYU」マークです。このマークは日本国内で生まれ育ち、血統が証明された正真正銘の日本産和牛にしかつけることができないので、このマークがついている和牛は本物の和牛を証明していることになります。
「JAPANESE BEEF WAGYU」マークを付けるためには厳格な基準が設けられ、日本4大和牛品種である黒毛和種、赤毛褐種、日本短角種、無角和種、またはこれら4品種間の交配による交雑種でそのことが家畜改良増殖法に基づく登録制度などによって、正式に証明された品種にしか付けることができません。
これから日本産和牛を買い求めるときは、「JAPANESE BEEF WAGYU」マークがついているかどうかをチェックしてください。高品質でおいしい本物の和牛肉を選ぶ際の目印としてぜひ覚えておくとよいでしょう。
トレーサビリティの導入
日本和牛ブランドを守るための二つめの対策が、牛の出生から食卓に届けられるまでの生産流通履歴を把握することができる「トレーザビリティ」の導入です。詳しくは「牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法」といい、牛に耳表を装着し生産履歴をデータベース化することで個体識別情報を識別することができるようにしています。
トレーザビリティを簡単に言うと、牛の戸籍のようなもので、一般人でもインターネットで検索するとその牛が、いつ、どこで生まれ、育てられ食肉処理されたのか、どの品種の牛なのかをすぐに調べることができるようになっています。
日本政府はトレーザビリティ制度を導入することで流通と安全の管理対策を徹底して行うことで、日本産の和牛を守る取り組みを行っているのです。
外国産和牛の国内流通をストップ
日本和牛ブランドを守るための対策三つ目が、日本国内における外国産和牛の流通の停止措置です。まずは国内で外国産WAGYUの流通をストップさせ一般化させないという対策を行い、世界的にも日本和牛ブランドシェアを伸ばすための取り組みを行っています。
口蹄疫で一時は離れてしまった日本和牛ブランドへのイメージダウンを巻き返すため、世界の国々で日本産和牛ブランドのイベントを行ったり、「JAPANESE BEEF WAGYU」マークの告知やトレーザビリティ制度の認知拡大に向け動きを進めています。
日本産和牛の口に入れるとすっととろけるようなやわらかな肉質と、ほんのり甘味さえ感じるジューシーなおいしさは外国産WAGYUには決して真似することができません。日本政府が行う「JAPANESE BEEF WAGYU」マーク、トレーザビリティ制度の取り組み、外国産和牛の国内流通をストップで和牛ブランドを守っています。
WAGYUと日本産和牛とは違う
今回はWAGYUがどんなものなのか、その特徴や広まった理由について調査してきました。和牛とWAGYU、同じに見えてその中身は全く異なるものでした。消費者がこの違いを知ることは、WAGYUの脅威から日本産和牛を守ることにつながります。今回の記事を参考に、ぜひ周囲にもWAGYUと和牛の違いを広めていただければと思います。