精進料理とはどんな料理?歴史や使ってはいけない食材など紹介!

肉や魚を使わずに季節の旬のものを使って調理される精進料理。精進料理を食べることは修行僧にとって命に感謝をするための修行のひとつでした。心とからだを整える精進料理は仏教とのつながりも深く、お盆には精進料理をお供えすることにもなっています。修行やお盆のお供え物でもある精進料理は現在健康食として注目を集めています。野菜を中心に作られるという精進料理とはどんな料理なのでしょうか?そこで今回はそんな精進料理の歴史や料理内容、また精進料理が楽しめるお店、家でも作れる精進料理レシピなど紹介していきます。

精進料理とはどんな料理?歴史や使ってはいけない食材など紹介!のイメージ

目次

  1. 1精進料理について学ぼう!
  2. 2精進料理とはどんな料理?
  3. 3精進料理の荘厳な歴史
  4. 4東京の老舗精進料理の店を紹介
  5. 5京都でおすすめの精進料理のお店
  6. 6高野山でおすすめの精進料理のお店
  7. 7精進料理のおすすめ献立レシピ
  8. 8精進料理はそのこころと教えが込められた料理

精進料理について学ぼう!

精進料理の精進という言葉は、雑念を去り一心に仏道修行することを意味します。つまり精進料理とは修行僧が悟りを極めるための修行の一環という存在でした。またお盆の行事の一つとして、先祖供養のために精進料理をお供えする習わしもあります。

そして現代では肉や魚を使わず、旬の野菜を豊富に使った精進料理は健康食として新たな注目を集めています。そんな精進料理とはどんな料理なのでしょうか?またどんな食材を使ってはいけないのでしょうか?そこで今回は精進料理のさまざまなな疑問について解き明かしていきたいと思います。

精進料理とはどんな料理?

悟りの修行やお盆で食べる精進料理は肉や魚は使わず、野菜中心の献立で構成されています。精進料理とはどんな食材を使って作られるのでしょうか?ここでは精進料理の基本的なことについて触れていきます。

精進料理とは野菜中心の料理

最近、世界中のベジタリアンやヴィーガン(絶対菜食主義者)の人たちから、ヘルシーな日本食はとても注目を集めています。そのような健康意識の高い人たちから精進料理も人気です。その理由の一つは野菜中心の献立にあるようです。ではなぜ精進料理とは野菜中心の料理なのでしょうか?

精進料理とは仏道修行に励むことを意味しますが、その修行の戒律では「不殺生戒」、つまり生き物を殺してしまうことを禁じています。そこで修行している僧侶に施す精進料理では、動物性の食材である肉や魚を使った料理を避けるようになり、菜食中心の料理になっていきました。

肉や魚などの動物性の食材を使わない野菜を中心とした精進料理は、野菜、きのこ、また豆腐、油揚げなどの大豆を使った食材、さらにごまや麩など植物性の食材を用いて作ります。このような栄養バランスの良い精進料理を食べた人たちからは、体の調子がよくなった、肌つやがでてきた、食生活の乱れを整えるきっかけになったなど喜びの声もとても多いです。精進料理とは先人たちから受け継がれた日本が誇る伝統料理と言ってもいいでしょう。

精進料理に使ってはいけない食材

精進料理では肉や魚など動物性の食材を避けている理由として、仏教の戒律で殺生を禁じているからという理由の他に、煩悩を刺激しないようにするということも目的としてあるようです。そのため、肉類や魚類以外にも煩悩を刺激すると考えられているが故に禁じられている食材があります。それは禁葷食(きんくんしょく)と呼ばれている食材です。

禁葷食の「葷」とはねぎやにんにく、ニラのようなにおいの強いネギ類、しょうがのような辛みを持った野菜のことを指しています。特ににんにく、ニラ、ねぎ、らっきょう、玉ねぎの5つは「五葷(ごくん)」と呼ばれ、精進料理では避けられるべき食材として扱われています。

では僧侶が絶対的に肉を食べないのでしょうか?実際は必ずしもそうではないようです。初期の仏教では「不殺生の戒を犯さない布施の場合は肉食してよい」という考えがありました。不殺生の戒とは生き物の命を断つことを禁じる戒律、布施とはほどこし、つまり与えるということです。

僧侶が托鉢を行う際、つまり鉢を持って家の前に立ち経文を唱えて施しを受けて回る際、仮に肉を施されることがあればその肉を食べることも、大切な修行として考えられていたのです。とはいえ施されてからといって僧侶が気にせず肉を食べていいというのもいかがなものです。そこで「三種の浄肉」という条件があり、それをクリアすれば戒律を破ったことにはならないことになっています。

三種の浄肉の三つの条件とは、その動物が自分のために殺されるところを見ていないこと、その動物が自分のために殺されたと聞いていないこと、その動物が自分のために殺された疑いがないこととなっています。これらの条件をクリアした肉は浄肉と言われ食べてもよいとされていました。このように精進料理は材料においてさまざまな意味合いを含んでおり、調べてみるとなかなか興味深い食文化ということが分かります。

精進料理の基本

精進料理には使ってはいけない食材の他に、どのような基本事項があるのでしょうか?平安時代ではすでにお寺の食事のことを精進料理と呼んでいたという記録あるようですが、実際に精進料理が確立されたのは鎌倉時代の禅宗と言われています。中国で学んだ道元が著した「典座教訓(てんぞきょうくん)」には五味、五色、五法を組み合わせながら、旬の食材を余すことなく使って調理するよう記され、そのルールが精進料理にも活かされています。

この五味、五色、五法という言葉、聞いたことはありますか?これらは和食の基本ルールとしても有名な言葉で、中国の陰陽五行説がもとになっていると言われています。五味とは甘、酸、辛、苦、鹹(かん)の五つの味覚を表します。ちなみに鹹とは塩辛い味のことを意味します。五色とは白、黄、赤、青、黒の五つの色、五法とは生、煮る、焼く、揚げる、蒸すの五つの調理法を表します。

精進料理とはこれらの五味、五色、五法に則って調理されています。また和食の基本といえばやはり出汁ではないでしょうか?精進料理では出汁にも動物性のものは避け、昆布やしいたけで出汁をとります。どこかで精進料理を食べる機会があるときは、視覚、味覚などの五感を研ぎ澄ませながら、心を静かに五味、五色、五法をじっくりと味わってみてください。

お盆に精進料理をお供えする理由は?

毎年夏に訪れるお盆行事。お盆とは7月13日、または8月13日から4日間にわたって行われる日本の伝統行事です。お盆は先祖の霊を迎え、故人を供養するための習わしです。そのためお盆が始まる13日の夕方から先祖を迎え、お盆が終わる16日の朝には送り火を炊いたり、精霊流しで先祖をお見送りします。そして仏様が帰ってくるお盆の間は、肉や魚を使用しない精進料理をいただくことになっています。

ではなぜお盆では精進料理をお供えするのでしょうか?ひとつは祖先と一緒に生きてきた動物たちに感謝するという意味合いがあります。またもう一つの理由は仏教の五戒という決まりごとが関係しています。五戒は破ってはいけない仏教の戒律です。お盆で精進料理を食べるようになったのは五戒の不殺生戒がその理由です。

不殺生戒とは生き物を殺すことを禁じる教えですが、この教えからお盆の期間は肉や魚を使用せず、野菜中心の精進料理をお供えすることになっています。そしてお盆にお供えする精進料理のことを正式には霊供膳(りょぐぜん)といいます。

お盆に関しては地方によっていろいろな習わしやしきたりがあるかもしれませんが、お盆期間中は一日三回仏様に精進料理をお供えします。そして家族も同じものをいただきます。このように昔から日本では祖先の供養と生き物への感謝の気持ちを込めて、お盆には精進料理を食べるという慣習があります。毎年何気なくお盆に里帰りしていたという人も多いかもしれませんが、実はお盆にはそんな深い意味があるのです。

海外からも注目を集める精進料理

近年海外でも増えているベジタリアンやヴィーガンのような人たちの影響もあり、動物性の食材を使用しない精進料理は世界中から多くの注目を集めています。旬の野菜を使った精進料理は味だけでなく色も鮮やかで見た目にも美しく、そしてヘルシーで体によいと欧米からも賞賛の声が上がっています。

さらに驚くべきことに近頃は日本だけでなくニューヨークにも精進料理を食べることができるレストランがあるようです。2013年にユネスコの無形文化遺産に登録された和食は、今後ますます世界から注目を集めていくことでしょう。単なる食事という意味合いだけでなく、こころと体の奥の深いところに響かせる精進料理とは、世界の人たちをも魅了する日本の素晴らしい食文化なのです。

精進料理の荘厳な歴史

仏教の教えとともに発展してきた精進料理はどんな歴史から生まれたのでしょうか?仏教と深いつながりのある精進料理は中国やインドの影響を受けているようです。昔の人たちだけでなく現代人にも大きな関心や興味を引く精進料理とはどんな歴史を持つのか、ここでは精進料理の歴史を紐解いていきたいと思います。

お釈迦様は肉も魚も食べていた

仏教の開祖であったブッタは紀元前の5世紀から6世紀頃、インドの北部の釈迦族の王子として誕生しました。日本でもブッタはお釈迦様という呼ばれ方で馴染みがあります。そして仏教の開祖であるお釈迦様は実はベジタリアンではなく、魚も肉も食べていたという意外な事実があるようです。

この意外な事実に対して、仏教では肉や魚のような動物性の食材は食べてはいけないのではないかと疑問をもつ人もいるのではないのでしょうか?ところがもともと仏教では肉や魚を食べることを禁じてはなく、施しをうけた食事なら肉でも魚でもありがたくその施しを受けていました。そのせいか現在でも釈迦の仏教を受け継ぐスリランカ、ミャンマー、カンボジアなどの南方仏教国のお坊さんは肉を食しています。

そして僧侶が肉を食べなくなったのはブッタが亡くなってずっと後の大乗仏教になってからのようです。大乗仏教とは救済を目的とした仏教のことで、現在日本にある宗派の禅宗、浄土宗、浄土真宗、真言宗などもすべて大乗仏教に含まれます。

精進料理は仏教とともに中国から伝わる

仏教と密接な関わりがある精進料理は、仏教が中国から伝来した飛鳥時代に日本に伝わったとされています。そして仏教の五戒である不殺生戒に則って、精進料理では肉の使わない食事を作るようになりました。肉や野菜を使わない精進料理に対する当時の日本人の反応はどうだったのでしょうか?

中国から仏教が伝来する以前の日本には神道の教えがありました。そして神道ではこころを清らかにするという意味を持つ潔斎(けっさい)として肉や魚を食べない慣習がもともとありました。そのような背景から仏教と一緒に伝わったとされる精進料理は、当時の人々にとってさほど抵抗があるものではなかったようです。

精進料理の確立は鎌倉時代

飛鳥時代の6世紀ごろに中国から仏教とともに日本に伝わった精進料理は、鎌倉時代の禅宗によって確立されたと言われています。当時、宋に留学していた禅僧の道元は宋で学んだ禅宗を日本に伝えたと同時に、宋の寺院の精進食を再現したと言われています。

そして野菜が主体だったため精進料理は栄養に偏りがあるとされ、大豆を加工した豆腐や湯葉も用いるようになりました。僧侶の食事として始まった精進料理は、その後武士たちにも受け入れられていき、室町時代のころには町人にまで広がっていったと言われています。

特に道元が開祖である曹洞宗では食事の調理も仏道修行として考えられていたため、調理の研究や工夫が盛んに行われてきました。さらに道元が作り上げた食に対する哲学は茶道にも多大な影響を与えました。そして精進料理の影響を受けた千利休は懐石料理をつくったとされています。

現代は健康食としてさらに発展した精進料理

そもそも悟りを極めるために始まった精進料理ですが、現代では世界的な健康ブームということもあり、健康食としての発展も見せています。最近ではお寺で写経と精進料理を体験できるような機会や、精進料理を専門とするレストランも登場し、ますます精進料理は身近な料理になっています。

このように精進料理は修行をしているお坊さんだけでなく、一般の人たちでも食べることができる料理として発展してきました。精進料理とは日本の歴史上重要な食文化と言っても過言ではありません。忙しい生活と少し離れ 、命と向き合うことを重んじる精進料理をいただきながら、忘れがちな食に対する感謝の気持ち、思い出してみてはいかがでしょうか?

東京の老舗精進料理の店を紹介

静かな日本庭園を眺めながら精進料理をいただき、からだも心もリフレッシュしたくありませんか?ここでは都内で美味しい精進料理が食べられる老舗料理店「精進料理醍醐」などおすすめのお店を紹介していきます。週末にぜひ出かけてみてはいかがでしょうか?

静けさと大地の恵みがもてなす「精進料理醍醐」

「精進料理醍醐」は東京港区にある精進料理のお店です。精進料理醍醐は神谷町駅から徒歩5分ほどのところにあります。数寄屋造りの醍醐はとても落ち着いた空間で、訪れた人たちを非日常の世界へと引き込みます。1950年創業の醍醐では美しい日本庭園を眺めながらゆっくりと食事を楽しむことができます。そのため醍醐はお祝いの席や法事など大切な食事の会で利用されることも多いようです。

醍醐の料理は厳選されたこだわりの食材を使っているのが特徴です。築地市場や直接生産者から仕入れた食材を使った精進料理を懐石料理形式で楽しめます。料理の一部に鰹節と卵を使用しているようですが、もし動物性の食材を一切しようしないことを希望したい場合は、醍醐に直接連絡をすれば可能となっています。

精進料理醍醐は、初代店主が曹洞宗の青松寺で開業したのが始まりです。現在、醍醐では四代目の店主が醍醐のその伝統の味を守り続けています。そんな精進料理醍醐に訪れたらぜひ食べて欲しいおすすめの品は、季節の八寸です。三週間に一度は献立を変える醍醐の季節の八寸は見た目も美しく、五感で季節の変化を感じることができる風情溢れるの逸品です。

また精進料理醍醐の手打ちそばもとても人気です。醍醐の手打ちそばは夏は食べることはできません。春、秋、冬のみとなっています。細めの手打ちそばに甘みのあるお出汁と辛子でいただく醍醐のおそばは香りがとても豊かだと評判です。

精進料理醍醐のとなりは青松寺があり食後には散策も楽しめます。正統派のベジタリアン料理が楽しめる醍醐はハリウッドセレブの御用達でもあるようです。世界のベジタリアンからも支持される精進料理料理醍醐、ぜひ一度は利用してみたいおすすめのお店です。

地元でも人気の精進料理「高尾山薬王院」

高尾山薬王院は高尾山駅から徒歩20分ほどのところにあります。こちらは真言宗智山派の大本山で、登山客にも言わずと知れた観光地です。古くから山伏の修行を行なっていた高尾山薬王院は、山伏ならではの精進料理に対する考えがあったそうです。そんな山伏ならではの精進料理とはどんなものなのでしょうか?

山伏ならではの精進料理とは、山も自然現象も生きるものすべてを仏様とする考えのもと、いただくものは全て仏様の恵として捉えることを意味します。高尾山薬王院では特別な厳しい食事作法があるというわけではありませんが、命に対する敬意やすべての人に感謝をして食事をいただくということをとても大事にしています。

高尾山薬王院では二種類のお膳から選ぶことができます。またそのほかにも季節限定のそばご膳やもみじご膳を楽しむことができます。季節によっていろいろな精進料理がいただけるので、新緑や紅葉に合わせながら違う時期に訪れてみるのもまた面白いのではないのでしょうか?

こちらは料理長もレシピ本を出すほどの腕前で、かなり工夫を凝らした精進料理が楽しめます。肉を使っていないのに満足感があって地元の人たちからもとても人気です。秋の行楽シーズン、高尾山に訪れた時はぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか?

精進料理カフェ「こまきしょくどう鎌倉不識庵」

「こまきしょくどう鎌倉不識庵」は東京秋葉原にある精進料理がいただけるカフェです。こちらのお店は健康意識の高い女性たちにとても人気です。こちらの女将は日本の食文化をとても大切に考えていて、その女将さんの想いを美味しい定食として表現し、訪れる人を幸せにしています。

こちらの定食は肉は一切使わないのはもちろん、そのほかの動物性食材、白砂糖、乳製品、ねぎ、にら、にんにくなどの香りの強いものも使っていません。出汁も植物性を使うという料理法はまさに精進料理の真髄を守り抜いていると言えます。

こまきしょくどうの定食は、昔からずっと日本のお母さんたちが作ってきた普段着のおかずばかりですが、どこか懐かしくからだに染みていく優しい味わいの料理です。こまきしょくどうは手軽に精進料理を楽しみたいという人にとてもおすすめのお店です。

京都でおすすめの精進料理のお店

花の都である京都では寺院とともに精進料理とは脈々と受け継がれてきた伝統とも言えます。つまり精進料理とは伝統ある京文化のひとつなのです。京都の寺院や料亭ではいつでも美味しい精進料理がいただけます。桜や紅葉、神社仏閣など見どころがたくさんある京都は観光で訪れる人も多いのはないのでしょうか?ここでは観光名所でもある京都おすすめの精進料理を紹介します。

天龍寺直営の高級感あふれる店「天龍寺篩月」

「天龍寺篩月」は京都の天龍寺直営の精進料理店です。こちらのお店は京都でも屈指の観光地である嵯峨嵐山にあり、京都の四季折々の風景を楽しみながら精進料理がいただけます。篩月は天龍寺の南側に位置する龍門亭の中にあります。

お寺の敷地内にある篩月の店内は、静かでお寺特有の厳かな雰囲気が漂います。そしてお寺らしく食事は畳のお部屋に座っていただきます。料理のコースは三種類あり、月コースが一汁六菜で5000円、雪コースが一汁五菜で3000円、花コースが一汁七菜で7000円となります。また雪コース以外は予約が必要となります。

本格精進料理で野菜中心ですがボリューム感もそれなりにあります。京都の旅の思い出に世界遺産のお寺で精進料理を堪能してみませんか?営業時間は11時から14時と短めで、別途拝観料500円がかかりますのでご注意ください。

妙心寺の御用達の由緒ある精進料理店「阿じろ」

京都花園の妙心寺門前にある「阿じろ」は、京都で唯一ミシュランの星を獲得した老舗精進料理店です。あの秋篠宮ご一家も訪れたことがあるそうです。阿じろの始まりは創業者が京都妙心寺で料理修業し、料理の心得と儀礼、調理法を学んでいたのがきっかけとなっています。当初は店を構えず、京都妙心寺の料理方として勤めていましたが、気軽に精進料理を楽しみたいというお客様の要望を叶えるべく阿じろの開店に至りました。

料理メニューはお昼限定の月替わりのお弁当が3000円、精進会席の禅味が6000円、花園が8000円、妙法が10000円となっています。阿じろのお料理は五味、五色、五法の精進料理の世界観を見事に体現していると言っても過言ではあります。

また食事をするお部屋では、妙心寺のお坊さんが描かれた襖絵や墨蹟(ぼくせき)も楽しめます。京都花園にある阿じろの滋味あふれる精進料理、ぜひご堪能ください。

大徳寺境内にある精進鉄鉢料理がいただける店「泉仙」

1963年から続く「泉仙」は京都北区大徳寺の境内で営む精進鉄鉢料理店です。鉄鉢とは僧侶が托鉢の際に施された食べ物を入れるのに使う丸い鉢のことです。京都大徳寺の泉仙ではこの托鉢を形どった器を使って料理を提供するのが特徴です。

料理のコースは、あやめ3240円、ゆり4320円、ぼたん5400円の三種類から選ぶことができます。また京都大徳寺境内ではありませんが、お寺のすぐそばにある系列の紫野店では、鉄鉢料理に加えて、少しカジュアルなお弁当も味わうことができます。煮物、胡麻豆腐、生麩田楽、白和え、湯葉入りのお吸い物など、いろいろなものが少しずつ楽しめる二段のお重の雲水は2200円と少しリーズナブルな価格となっています。

泉仙は京都嵯峨野にも系列店を持っているので、京都観光めぐりをしたあとにも立ち寄りやすお店です。他では食べることができない泉仙の精進鉄鉢料理、京都旅行のみやげ話にぜひ味わってみてはいかがでしょうか?

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高野山でおすすめの精進料理のお店

ここまで東京と京都のおすすめの精進料理のお店を紹介してきました。最後に日本仏教の聖地の一つといっても過言ではない高野山エリアで精進料理を楽しめるところをチェックしてみましょう。高野山では東京や京都では味わえない宿坊で精進料理をいただけるところもあります。日常から離れて日頃では味わえない空気感をぜひ味わってみてはいかがでしょうか?

高野山の老舗精進料理店「花菱」

明治初期創業の「花菱」は高野山ケーブルの高野山駅からさらにバスで10分ほどのところにある精進料理店です。高野山では精進料理のことを振舞料理と言い、平安時代から皇族や大名の参詣、また全国から参拝に来られた檀家さんや信徒の人たちにに対して伝統的な精進料理を提供してきました。花菱は振舞料理を中心に伝統的な精進料理の味を守り続けています。

花菱の精進料理メニューは、料理長おまかせ精進会席が7560円〜、12品の摩仁膳が6480円、10品の揚柳膳が5400円、少しリーズナブルな7品の三鈷膳は2160円となっています。こちらのお店の一押し料理は自家製のごま豆腐です。あんかけ仕立てのごま豆腐はごまの味がしっかりしています。季節によっては季節の豆腐になる場合があるでの、気になる人は予約の際にお店に確認することをおすすめします。

花菱は季節の食材の旨味を大切にしながら五法、五味、五色の基本を忠実に守っています。丹精を込めて作られた花菱の精進料理、高野山に訪れたときはぜひ立ち寄ってみてはいかがでしょうか?

高野山の宿坊でいただく精進料理「福智院」

高野山には数多くの宿坊がありますが、「福智院」は唯一高野山で天然温泉と露天風呂がある宿坊としてとても有名です。そんな旅疲れも癒すことができる高野山福智院では、日帰りでも精進料理を楽しむことができます。福智院の精進料理は季節の野菜はもちろん、高野豆腐、金山寺わさびなど高野山ならではの食材が味わえます。

高野山福智院の精進料理メニューは、基本の膳が4000円、次の膳が5000円、参の膳が8000円、振れ舞い料理が10000円となっています。どのコースも2名から利用の場合の値段のようなので、詳しくは福智院に問い合わせた方がいいかもしれません。

高野山の宿坊に泊まるのはハードルが少し高いけど、ちょっぴり宿坊の雰囲気を体験してみたい人にとてもおすすめです。1000年以上続く福智院で、高野山の長い歴史を感じながら精進料理をいただいてみてはいかがでしょうか?

手ごろな価格で精進料理が楽しめる「中央食堂さんぼう」

「中央食堂さんぼう」は高野山金剛峯寺をはじめ、その他の高野山の数々の寺院へ精進料理を仕出ししている実力店です。中央食堂さんぼうは高野山の中でも、手ごろな値段で精進料理がいただけるお店となっています。こちらのお店では旬の食材にこだわったかわいらしい精進料理定食が楽しめます。

精進花篭弁当は、様々な精進料理を盛った定食でイカの刺身のようなコンニャクや、大豆や麦が入ったごはんが付いています。こちらのお弁当の値段は2100円ですが、他にも胡麻豆腐湯葉巻揚げは1260円ととてもリーズナブルです。こちらの定食は湯葉で巻いて揚げた胡麻豆腐や麩でつくったさつま揚げもどきがついていて、意外とボリュームがあります。

胃にやさしいさんぼうの精進料理はとても優しい味わいで、美味しいと評判です。店内も清潔感があって落ち着いた雰囲気となってます。リーズナブルな精進料理である高野山のさんぼうは初めて精進料理をいただく人にも気軽に立ち寄りやすいお店です。高野山観光の帰りにぜひ訪れてみてはいかがでしょうか?

精進料理のおすすめ献立レシピ

からだにもこころにも染み入る精進料理とは、自宅でも簡単に作ることができます。今回はこの夏の酷暑を癒すおすすめの精進料理レシピを紹介します。夏の疲れの養生料理として、家族の人や大切な人に感謝を込めてこしらえてみてはいかがでしょうか?
 

みずみずしい夏野菜で食欲回復「冬瓜白みそ煮」

夏野菜である冬瓜を使った精進料理を紹介します。まず、四分の一の冬瓜の種の部分を取り除き、5センチ角程に切って緑色の部分が少し残るように薄く皮をむきます。残した緑色の部分には深さ1~2ミリ程の包丁を入れながら鹿の子切りにします。大きめの鍋に水をたっぷり入れ、沸騰したら中火にし冬瓜を5分程茹でたら、氷水につけて急速に冬瓜を冷やします。

昆布出汁500ccと酒50ccを鍋に入れ、沸き上がってきたら弱火にし、白みそ200gを加えてよく溶かします。そして鍋に小さじ1の薄口しょうゆとさきほどの冬瓜をいれ、弱火で10分ほど炊き、冬瓜と煮汁を別々に冷まし、冷めたところで再び合わせて冷蔵庫で冷やします。一時間から二時間冷やしたらできあがりです。お好みでおろし生姜を添えるのもおすすめです。夏バテで食欲がないときにオススメの精進料理です。

暑い夏の疲れを癒す「長芋のグラタン」

こちらは厳密には精進料理ではありませんが、お子さんでも食べやすいチーズを加えたレシピを紹介します。まずはかぼちゃ100gを用意します。たねを取り皮を皮むきで軽く剥いたら、一口の大きさに切ります。次にほうれん草半束をお湯で軽くゆがき、水で冷ましたら、しっかり水気を切って2センチ幅に切ります。そして100gの厚揚げを用意し、お湯で油抜きをしたら一口大の大きさに切りましょう。

次にすりおろした長芋280gに昆布としいたけでとった出汁60cc、塩4g、薄口醤油3gとをよく混ぜ合わせます。耐熱食器に厚揚げ、かぼちゃ、ほうれん草の順で入れ、上からだしと混ぜ合わせた長芋を入れます。チーズをのせて180℃のオーブンで8分ほど焼き、チーズに焼き色が付いたら出来上がりです。

牛乳はお釈迦様も食していたそうです。しかしながら厳密な精進料理にしたいという人はチーズの代わりに豆乳のホワイトソースを使うなどアレンジしてみてましょう。

夏の冷えた体を整えるやさしい煮物「かぼちゃのいとこ煮」

夏の冷えを整えるかぼちゃを使ったレシピを紹介します。かぼちゃ400gを皮つきのまま大きめの一口大に切ります。切ったかぼちゃを蒸し器で蒸し、蒸し終わったら冷ましておきます。次に前の晩から水さらしたあずき30gを下茹でして、指で押して軽くつぶれるくらいになったらザルに一度あげます。

冷めたかぼちゃを鍋に並べ、さきほどのあずきを入れたら、昆布でとっただし汁250ccを加えます。鍋に砂糖20g、薄口醤油大スプーンに二杯分を加えたら、落としぶたをしてしばらく炊きます。鍋のだし汁が全体的に少なくなったら出来上がりです。

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精進料理はそのこころと教えが込められた料理

今回は精進料理の基本知識、歴史、また東京、京都、高野山で美味しい精進料理が食べられるお店を紹介してきました。精進料理とは単なる食べ物としての存在ではなく、あらゆる生き物への感謝や故人への想いなど様々は深い意味を持った料理であると分かりました。

また長い歴史を持つ精進料理は僧侶の修行としての意味合いから、現在はからだにいい健康食としても世界中から注目を集めています。旬の野菜を使った精進料理は、食べた人の体だけでなく心も整えてくれるようです。最近なかなか疲れがとれず、リフレッシュしたいと感じていませんか?ぜひ精進料理を食べて、日頃の疲れを癒しましょう。

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