2018年08月18日公開
2024年07月29日更新
脂質の1日の適切な摂取量は何グラム?最低必要量と摂り方を紹介!
脂質を一日に何グラムくらい摂取していますか?多くとりすぎると肥満や生活習慣病の原因になります。だからといって摂取量が少なすぎると、疲れやすくなったり、肌荒れしたりすることも。多すぎず少なすぎず、適切な量の脂質を摂取するようにしましょう。ここでは脂質の役割や種類、一日に最低何グラム必要なのかを計算する方法を紹介します。からだに悪い油を減らし、良い油を上手に摂り入れる方法も参考にしてみてください。
脂質とは?
「脂質はからだに悪いからできるだけ避けたほうがいい」と思っている人は多いのではないでしょうか?たしかに脂質を多く摂り過ぎると、肥満やメタボリックシンドロームの原因となります。しかし、脂質にはわたしたちの健康を守るための重要な役割があるので、摂取量が少なすぎてもからだに悪い影響があるのです。ここでは脂質の役割や種類、不足するとどうなるのか、一日に必要な摂取量はどのくらいなのかを紹介します。
脂質の種類と働きを解説
脂質の種類
脂質は人間が生きていくうえで欠かせない、重要な役割をしています。肝臓で作られた脂質や食事から摂取した脂質は、わたしたちの体内で、コレステロールと中性脂肪(トリグリセリド)とに分けられます。コレステロールは細胞膜の成分を作ったり、胆汁酸やホルモンの原料になります。中性脂肪はからだを動かすエネルギー源になります。
脂質の主な成分は脂肪酸です。脂肪酸は構成の違いによって、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分類されます。飽和脂肪酸は肉や乳製品などの動物性脂肪に多く含まれています。不飽和脂肪酸はさらに「一価不飽和脂肪酸」「多価不飽和脂肪酸」に分けられます。一価不飽和脂肪酸は植物性油脂のオリーブオイルやべに花油など、多価不飽和脂肪酸はえごまや青魚などに多く含まれています。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
肉の脂身やバター、ラードなどに多く含まれている飽和脂肪酸は、エネルギー代謝に重要な役割を果たします。しかし体内で固まりやすいため、血液を流れにくくし、中性脂肪やコレステロールを増加させることもあるのです。摂りすぎると、動脈硬化の原因となったり、心筋梗塞や脳梗塞などの生活習慣病を招く恐れがあります。
不飽和脂肪酸はコレステロールや中性脂肪の排出を促し、血中のコレステロールを下げる働きがあります。また、脳の活性化や皮下脂肪の代謝促進などの作用も。からだに良い油と言われていますが、やはり摂りすぎは肥満や高脂血症などを招く可能性があります。
不飽和脂肪酸はさらに一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分類されます。一価不飽和脂肪酸は「オメガ9(オレイン酸)」と呼ばれています。オリーブオイル、キャノーラ油などです。悪玉コレステロール濃度を下げる働きがあります。
多価不飽和脂肪酸は「オメガ6(リノール酸)」と「オメガ3(アルファリノレン酸)」に分けられます。オメガ6はコーン油やごま油など。オメガ3はアマニ油や青魚に含まれる油などです。オメガ6とオメガ3は体内で合成ができません。食事からとる必要があるため「必須脂肪酸」と呼ばれています。不足すると発育不全、脱毛、肝障害などを起こす可能性があります。
脂質の働き
出典: https://aji3.com
脂質には私たちが生きていくうえで欠かせない、重要な働きがあります。おもな働きは大きく分けて3つです。まずひとつは、からだを動かすエネルギー源としての働きです。また、細胞を覆っている生体膜を作る材料になったり、脂溶性ビタミンの吸収を助けたりする役割があります。
脂質は、人間がからだを動かすための大切なエネルギー源になる栄養素です。糖質やたんぱく質などと合わせて3大栄養素と呼ばれています。糖質やたんぱく質が身体の中で1グラムあたり4キロカロリーのエネルギーになるのに対し、脂質は1グラムあたり9キロカロリーのエネルギーになります。最も効率の良いエネルギー源なのです。
わたしたちの体はたくさんの細胞が集まって構成されています。ひとつひとつの細胞は細胞膜によって覆われていて、脂質はその細胞膜を構成する成分でもあります。細胞膜は、細胞の中に不要な物質が入り込んでしまわないように、細胞の中と外を仕切る役割をしています。
脂質は脂溶性ビタミンの吸収を助ける働きがあります。脂溶性ビタミンとは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどの、油に溶けやすいビタミンのことです。ビタミンAは目の健康を守り、ビタミンDは歯や骨を丈夫にする働きがあります。ビタミンEは抗酸化効果があり、ビタミンKは血液を凝固させ止血する働きがあります。これらの脂溶性ビタミンは油と一緒に調理すると効果的に摂取することができます。
脂質が足りないとどうなる?
脂質を摂取するとからだの中に吸収され、エネルギーとして使いきれなかった分は中性脂肪となって蓄えられます。過剰に摂取すると肥満の原因になるため「ダイエット中は脂質を控える」というのが常識です。しかし、脂質にはからだを動かすエネルギー源になったり、細胞膜やホルモンを作ったりする大切な役割があります。脂質の一日の摂取量が足りなくなると、これらのからだの働きに悪い影響が出てきます。
脂質が不足するとどうなる?
エネルギー源が不足すると疲れやすくなります。また、集中力や思考力、抵抗力が低下したりします。肌のうるおいやハリ、ツヤがなくなり、髪もパサパサに。女性の場合は生理不順になる恐れもあります。ダイエット中の人は脂質をすべてカットするのではなく、余分に摂りすぎないような努力をしましょう。加齢により食欲が落ち、食事から脂質を摂るのが難しくなった人も、一日の最低摂取量をなるべく守れるような工夫をしましょう。
1日に必要な脂質の摂取量は何グラム?
年齢別の1日に必要な脂質の摂取量
脂質の一日の基準となる摂取量は何グラムか知っていますか?厚生労働省の2015年の発表によると、一日の総摂取カロリーのうちの20~30%が望ましいとされています。一日の総摂取カロリーは年齢や性別、ライフスタイルなどによって異なります。脂質を何グラム摂ったらいいのか計算するにはまず、一日の総摂取カロリーの目安を知る必要があります。下の表は一日に摂取するカロリーの目安です。
身体活動レベルはレベル1~3に分類されています。レベル1は生活の大部分が座った姿勢で、軽い運動もしていない人。レベル2は座った姿勢中心の生活だけれど、通勤、家事、軽いスポーツなどで、軽くからだを動かしている人。レベル3は移動や立ちっぱなしが多い仕事の人や、活発なスポーツ習慣を持っている人です。
20代男性で、歩き仕事が多い人や、定期的にスポーツジムに通っているという人はレベル3です。一日の推定エネルギー数は3000キロカロリーです。30代女性で、通勤や職場内での移動はあるけれどデスクワークが多く、運動もしていないという人はレベル2になります。一日の推定エネルギー数は2000カロリーです。自分の一日の摂取カロリー目安をチェックしたら、必要な脂質の摂取量を計算してみましょう。
1日に必要な脂質量の計算方法
ライフスタイルによって、脂質を何グラム摂ったらいいかが変わってきます。例えば20代身体活動レベル3の男性の場合、一日の摂取カロリーの目安は3000キロカロリーです。脂質はそのうち20~30%にあたる600~900キロカロリー摂取するのが理想です。脂質は1グラムあたり9キロカロリーなので、最低必要量は67グラム。100グラムを超えないように摂取するのが理想です。
30代身体活動レベル2の女性の場合、一日に何グラムの脂質が必要でしょうか?一日の摂取カロリーの目安は2000キロカロリーなので、脂質から摂れるのは400~600キロカロリー。一日に必要な脂質の摂取量は最低でも44グラム。66グラムを超えないようにしましょう。
脂質の最低必要量は何グラム?
ダイエット中は脂質を控えようとする人が多いと思います。また体調や年齢によって、食欲がない、たくさん食べられないという人もいるのではないでしょうか?しかし、最低でも一日の総摂取カロリーの20%の脂質を摂るようにしなければ、健康に影響を及ぼす可能性があります。
例えば70歳以上の女性で、一日の長時間座っていてあまり運動もしないという人の場合、一日の総摂取カロリーの目安は1450キロカロリーです。そのうちの20%は290キロカロリーなので、脂質は最低でも32グラム以上摂るようにするのが理想です。
ダイエット中は脂質は摂るべき?
「脂質を摂取すると太る」というイメージがあるので、ダイエット中は脂質を避けているという人も多いのではないでしょうか?しかし、脂質にはお肌をみずみずしく保ってくれる働きがあります。ダイエットに成功しても、肌にハリがなく、髪の毛もパサパサでは美しくありません。最低でも総摂取カロリーの20%以上の脂質を食事から摂取するようにしましょう。何グラムが20%にあたるか計算してみましょう。
効率的な脂質の摂取方法
脂質は摂りすぎないようにする必要がありますが、体に良い油は適量摂取するようにしましょう。飽和脂肪酸は中性脂肪やコレステロールを増やすので控えめに。不飽和脂肪酸は血中コレステロールを下げる働きがあるので積極的に摂取しましょう。ただし、良い油だとしても摂りすぎは健康によくないので注意が必要です。
食習慣を見直す
洋食中心の食生活では、どうしても脂質を摂りすぎてしまいます。栄養バランスが良くカロリーも控えめな、和食中心の食生活にすると、脂質の摂取を抑えることができます。肉はなるべく脂身の少ないものを選んで下さい。牛肉や豚肉は、バラ肉よりもロース肉やもも肉を選びましょう。鶏肉はもも肉なら皮をはずしたり、胸肉やささみを選ぶと脂質をカットできます。
朝ごはんがパン派の人も多いのではないでしょうか?クロワッサンやデニッシュ系のパンにはバターやマーガリンが多く含まれています。比較的油脂の少ない、フランスパンやベーグルを選ぶのがおすすめです。トーストに塗るバターも飽和脂肪酸でできるだけ避けたいので、不飽和脂肪酸のオリーブオイルなどにチェンジするのはいかがでしょうか?牛乳やヨーグルトなども低脂肪のものを選びましょう。
間食のおやつも脂質の多いものばかりです。ポテトチップスやチョコレート、アイスクリームなどには、健康に良くない脂質が多く含まれています。煎餅や脂質少なめのビスケットなどが安心です。何グラムの脂質が入っているかは成分表示でチェックすることができます。おやつも洋菓子より和菓子のほうが脂質の少ないものが多いです。甘いものが食べたい時は生クリームの乗った洋菓子より、ようかんや大福をセレクトしましょう。
調理方法を見直す
調理方法によって、食事の脂質はカットすることができます。揚げ物や炒め料理よりも蒸し料理や、煮物のほうが脂質を抑えることができます。肉は調理前に脂身をカットしたり、フライパンで焼く前に下茹でしたりするとかなり脂質を減らすことができます。
フライパンはテフロン加工のものを利用することで調理時の油を少なくすることができます。もし油を使う場合は、値段が高くてもオリーブオイルやキャノーラ油がおすすめです。油をスプレータイプのオイルボトルに入れると、薄く均一に油をしくことができるので、摂取量が抑えられます。
青魚や野菜を中心に献立を考える
さんまやいわし、さばなどの魚の油にはDHAやEPAが豊富に含まれています。DHAには脳の機能を向上させる作用、EPAには血栓を防いだり、抗炎症作用があります。必須脂肪酸のひとつで、体内では作ることができません。一日のうち最低1食は魚メインの食事にすると理想的です。
食物繊維は血糖値の急激な上昇を抑え、コレステロールの吸収を抑える働きがあります。キャベツ、玉ねぎ、しめじ、大根、もやしなどが食物繊維の多い野菜です。青魚と野菜をバランスよく食べられるような献立を考えましょう。
プロテインを活用してみる
体づくりのために筋トレを行っている人にとってはたんぱく質の摂取が重要です。トレーニングの後にたんぱく質を摂ることで、筋肉がスムーズに作られやすくなります。しかし食事から摂取するたんぱく質には脂質が含まれているものも多いです。脂質の摂取量をカットしつつ、たんぱく質をしっかり摂りたい場合には、プロテインを活用するのもおすすめです。
油が苦手な人の摂取方法
油が苦手、食欲がないなどの理由で摂取するのが難しいという人には、料理へのちょい足しがおすすめです。例えばオリーブオイルやアマニ油などを常備しておいて、みそ汁やサラダ、豆腐や納豆などにひとかけします。少量ずつなら脂っこくならず、コクが出ておいしいので、無理なく最低摂取量をクリアすることができます。オメガ3のサプリメントなどを取り入れるのもひとつの方法です。
1日適切な脂質量を知って健康的な身体作りを!
悪者にされることの多い脂質ですが、私たちのからだで重要な役割をしています。多く摂りすぎてしまうと、体内に蓄積されて肥満やメタボリックシンドロームの原因になります。だからといって摂取量が少ないと、疲れやすくなったり、パフォーマンスが悪くなったり、美容にも良くありません。
一日の総摂取カロリーのうち、20~30%の脂質を食事から摂取する必要があります。自分の必要摂取量は何グラムなのか、だいたいの目安を頭に入れておきましょう。増えすぎないように食生活や調理法を見直したり、外食やお菓子を控えたりすることが大切です。油が苦手な人は、最低摂取量を意識し、料理へのちょい足しやサプリメントなどで工夫してみてはいかがでしょうか?