イシナギの食べ方は?おすすめ調理方法と食べる時の注意点を解説
イシナギという巨大魚を知っていますか?あまり聞き慣れない名前ですが、鮮度の良い物は刺身にすると透明感があって大変美味です。ただ、イシナギは肝臓に毒を持っているので、調理の仕方に気を付けなければなりません。全長2mにも達するイシナギの成魚をさばくことはまず無いでしょうが、若魚が手に入った時のために、イシナギを美味しく調理する方法と、その際の注意点をお伝えします。
巨大魚イシナギについて
スズキ目スズキ科の海水魚で、小さな口を持つコクチイシナギと、大きな口を持つオオクチイシナギに分類されます。日本近海で獲れるのはほぼオオクチイシナギですので、一般にイシナギというとオオクチイシナギを指します。体長は2mほどにもなり、その重量は100kgを超えることもあります。2018年3月に鳥取県の鳥取港で水揚げされたイシナギは、体長171cm、重量110kgでした。
これは鍋200人分に相当するそうで、5万円の値段で仲買人に競り落とされたそうです。日本での分布は北海道から九州まで幅広く、獲物として仕留め甲斐のあるサイズから、専門に狙うの釣り人もいる程です。神奈川県小田原市の羽根尾遺跡から発掘されたイシナギの骨は縄文時代のものでした。そのことからも、イシナギが古来から食用にされて来た魚だということがわかるでしょう。今回は、そんなイシナギの魅力を紹介します。
イシナギの毒
イシナギの食べ方を紹介する前に、まずは注意点をお伝えします。イシナギの肝臓には毒があります。正確には、毒というよりもイシナギの肝臓にはビタミンAが大量に含まれており、それを食べると一度でのビタミンA摂取量が限度を超えて、急性のビタミンA過剰症になる可能性が高いからです。
症状は食中毒に等しく、嘔吐や下痢、発熱、頭痛などで、人により食後30分から12時間で発症します。回復に掛かる期間は1ヵ月弱です。死ぬことは無いだろうとリスク覚悟でイシナギの肝臓を口にするチャレンジャーもいますが、食品衛生法で食用禁止 となっていますので、やめておきましょう。
イシナギのさばき方
重量、数10kgに及ぶイシナギの成魚をさばく機会は、余程の釣り師でない限り無いでしょう。イシナギは稀に鮮魚店で切り身を売られていますので、見付けたらそちらを購入すれば良いのですが、もしも若魚・幼魚が手に入って自分でさばく場合は、肝臓を傷付けないように注意して内臓を取り除きましょう。さばき方は普通に、鱗を取り、内臓を除いた腹の中を綺麗に洗い、頭を落として3枚におろすだけです。
イシナギの幼魚
イシナギは成長によって異なる味わいを楽しむことができます。幼魚は別名「スネヤ」と呼ばれることもあり、水深80~200mの浅場に生息します。体長10cm超~20cm超の幼魚といえども、肝臓を食べると成魚と同じように食中毒を起こすので注意しましょう。味の特徴は、ゼラチン質が豊富で、から揚げにすると鶏肉に似た食感を味わうことができます。
イシナギの若魚
サイズ的に、重さ2~5kg程度のものが最も調理しやすいでしょう。さばく段階での鱗の取りやすさも若魚が一番で、皮も硬い方です。イシナギの若魚の身は水分を含んで柔らかいので、醤油で煮て身を引き締めると良いでしょう。また、若魚は鮮度を保つのが難しいので、刺身にする場合は早目に食べて下さい。
イシナギの成魚
深さ400~500mに生息しています。何の料理に使っても、オールマイティに美味しいのがイシナギの成魚です。煮て良し、焼いて良し、刺身で良しと、調理法を選びません。肝臓の毒にさえ気を付ければ、使い勝手の良い魚といえるでしょう。
食べる時の注意点
イシナギの成魚を食べる時の注意点があります。毒ではないのですが、肝臓だけではなく老成魚の脂身の部分を食べても、人によっては食中毒同様の症状を起こすことがあるのです。確かに脂の乗った身は美味しいのですが、あまり巨大なイシナギの脂身は食べない方が良さそうです。
イシナギの値段
イシナギが高価な理由
魚市場に並ぶイシナギは100kgレベルが主流です。漁獲量が減り、現在水揚げの量がそこまで多くありませんので、値段も高く高級魚として扱われています。生息数は減っていないのですが、イシナギ捕りの技術がうまく継承できなかったのが、その理由といわれています。値段はほぼ時価といって良いでしょう。通常市場では100kgのイシナギを4等分して販売するのですが、それでもかなりの量と値段になります。
イシナギの切り身の値段
ですから鮮魚店でも仕入れる店は限られており、既に予約で買い手が決まっている時に限り入荷するようです。たまに切り身として店頭に並ぶ場合は、刺身用が100gで600円弱くらいの値段です。イシナギの切り身を置いているとすれば、都会のスーパーではなく、漁港の市場や海産物に特化した道の駅などでしょう。
タイミングが合うと、小さなイシナギの幼魚が安い値段でまとめ売りされていることもあります。また、お惣菜としてイシナギの幼魚の塩焼きが3匹パック500円ほどの値段で売られていることもあります。幼魚は浅い海域で網に掛かることが多いのです。
イシナギの食べ方
刺身
イシナギの若魚の刺身は、癖の無い上品な味です。時間の経過と共に食感が落ちて来ますので、新鮮なうちに食べてしまいましょう。成魚の刺身は、若魚に比べると白身魚の旨みが濃く、程良く乗った脂と相まって優しい甘味を感じます。醤油にわさびを合わせるだけではなく、酢味噌や柚子胡椒や七味唐辛子など、色々薬味を変えた食べ方でイシナギの刺身を楽しんでみて下さい。
カルパッチョ
若魚を刺身用にさばいたものの、少し鮮度が落ちてしまったかなと思ったら、カルパッチョにしてみましょう。刺身よりも鮮度を気にすることなくイシナギを味わうことができます。塩胡椒したイシナギに胡麻油を回し掛けてカイワレ大根を添えても美味しいでしょう。
また、オリーブオイルを掛けた後に、カボスや柚子などの柑橘類を絞って食べるのもおすすめです。オリーブの実やラディッシュのスライス、食用花などをトッピングすると、簡単なのに写真映えするお洒落なオードブルができあがります。サッパリ系のドレッシングに漬けてマリネにするのもイシナギの白身に合う食べ方です。
から揚げ
幼魚をそのまま姿揚げにしても良いですし、若魚や成魚をブツ切りにしてから揚げにしても良いでしょう。醤油、酒、みりんとニンニクや生姜、またはハーブソルトなどで下味をつけます。揚げる直前にキッチンペーパーで水分を拭き取り、片栗粉をまぶして揚げると、カラリとした食感のから揚げになるでしょう。出来上がりにレモンを絞る食べ方も、白身魚の風味に良く合います。カレー粉で下味をつけるのもおすすめです。
煮もの
イシナギは、頭や骨、ヒレの部分からも良い出汁が出ます。ぶつ切りにしたイシナギは、下準備として湯通しをしておいて下さい。ぬめりも取れますし、魚臭も消えます。そして、下茹でした大根、ニンジン、ゴボウなどの根菜類と一緒に、醤油、酒、みりん、砂糖で煮込むと、美味しい煮ものができます。
昆布を入れても、味に深みが出るでしょう。ご飯にピッタリのおかずとして、箸が止まらなくなる食べ方です。イシナギの成魚が煮ものに合うのは勿論ですが、少し水分が多いかなと感じる若魚も身が引き締まりますので、より満足して食べることができます。
燻製
ちょっと気合を入れて、イシナギの燻製を作るのはいかがでしょうか?燻製器(スモーカー)を持っていない人でも、身近にある中華鍋や一斗缶、ダンボールなどを利用してスモーカーを作ることができます。スモーカーの作り方は長くなるので割愛します。まずはイシナギに塩胡椒やハーブで下味を付け、さらしやキッチンペーパーで包んで冷蔵庫のチルドルームで一晩寝かせて水気を抜きます。
そして次の日に取り出して表面のハーブを軽く拭き取り、スモーカーに入れて温燻で5分いぶして下さい。これで出来上がりです。サクラやブナなど、色々な種類の燻煙材がありますが、ふんわりとした甘い香りのリンゴや、癖の無い素直な香りが持ち味のクルミなどが白身のイシナギに合うでしょう。
酒粕漬け
味噌、砂糖、みりん、酒粕を混ぜ、バットに並べたイシナギの裏表にまんべんなく塗って、ラップで包みます。そして、冷蔵庫で一晩寝かせましょう。翌日、イシナギを取り出して両面についた酒粕味噌をよく落とすのですが、この時に水道水で洗ったりせず、キッチンペーパーで拭い取って下さい。
酒粕味噌は綺麗に落としておかないと、焦げの原因になります。グリルやフライパンで焼いたら完成です。酒粕以外にも、塩麹や西京味噌など、好みの素材に漬け込んでみましょう。焼けた身をほぐしておにぎりの具材にするのもおすすめです。
イシナギについてのまとめ
巨大魚イシナギの食べ方などについてまとめてみました。イシナギはゴツイ体つきにもかかわらず、繊細な味わいの美味しい白身魚です。タイミング良く切り身が見つかったり、イシナギが丸ごと手に入ったりした時は、是非色々な調理方法でイシナギを堪能してみて下さい。