2019年06月19日公開
2024年09月19日更新
アサフェティダ(ヒング)は強烈なスパイス!別名「悪魔」で取扱い注意?
アサフェティダという世にも恐ろしいスパイスの存在を、恐らく知っている人は少ないでしょう。このジャイアントフェンネルとも呼ばれるスパイスは、その余りにも激しい臭気から「悪魔」という別称で知られています。しかしこれが料理に使うと実に素晴らしい効果を齎してくれるのです。今回はそんなアサフェティダ(ヒング)の基本的な使い方やおすすめ料理などについてまとめてみました。カレーを更に美味しく食べたい方は必見です!
アサフェティダ(ヒング)とはどんなスパイス?
恐らく聞いたことも無いという方が大半だと思われますが、今回紹介するアサフェティダはスパイスとして重宝されている一品です。滋養強壮効果もあり、抜群のアクセントにも成る万能スパイスであるアサフェティダ。そんなに有能なスパイスにも関わらず、殆ど知られていないというのも不思議な話だと思われるでしょう。
実はアサフェティダが知られていないのにはそれ相応の理由があり、使いたくても使えないという恐ろしい程のジレンマを抱えたスパイスなのです。という事で今回はそんな謎のスパイスであるアサフェティダについて紹介していきたいと思います。果たしてアサフェティダとは一体どの様なスパイスなのでしょうか?
アサフェティダについて
それでは早速アサフェティダについて紹介していこうと思いますが、先ずはアサフェティダとは何なのか?という基本情報について軽くおさらいをしておきたいと思います。日本では流通もしていないこのアサフェティダですが、インド辺りではかなりメジャーなスパイスとして知られているそうです。
ではそんなアサフェティダとは一体何由来のスパイスなのか?はたまたどの様な使い方をするものなのかを簡単におさらいしておきましょう。
阿魏(あぎ)の茎の樹脂
アサフェティダとはそもそも何なのか?を先ずは理解する必要があります。アサフェティダとは勿論洋名であり、和名を阿魏(アギ)、そしてサンスクリット名ではヒングと呼ばれています。インドではこのヒングはかなりなメジャーなスパイスらしいのですが、ヒング自体元々インド原産では無いらしく、ムガル人がインドへと持ち込んだそうです。
日本でいうこの阿魏というのはセリ科の多年草という事になっていて、その茎の樹脂に当たる部分がヒング即ちアサフェティダと成るものだそうです。グーグルで検索しても阿魏では大した情報がHITしないのは、殆ど日本には縁が無い植物だからかと思われます。我々日本人が知らないのも無理がないと言ったところでしょうか。
サンバルに欠かせないスパイス
そんなアサフェティダはサンバルに欠かせないスパイスだそうです。アジア圏を旅する機会が多い方やインド・東南アジアの料理が好きな方なら、このサンバルは知っているのでは無いかと思います。サンバルとはインドネシア料理やマレー料理で使われるソースの一種で、インドネシアやバリでは必ず食卓に出てくる定番の調味料です。
味は一言で言うと辛いです。そしてその辛さの中に旨味が潜んでいて、好きな人は一度食べたらやみつきになると言われています。ただし、独特な癖があるので我々日本人には苦手という方が多いかも知れません。そんなサンバルに欠かせないスパイスの一つがこのアサフェティダなのです。
別名ジャイアントフェンネル
またアサフェティダはヒングや阿魏等の名称とは違い、ジャイアントフェンネルという別名があります。フェンネルとはカレーや魚料理などの香り付けによく使われるスパイスで、普通のスーパーでも取り扱う様な一般的なスパイスです。このフェンネルを大きくしたようなモノであるという事からこの名称が付けられました。
因みにこのフェンネルは和名をウイキョウと言います。ウイキョウと言う名前を何処かで聞いたことが有ると思った方は正解です。このウイキョウは生薬として使用されており、有名なところでは太田胃散や安中散、そしておじいちゃんのフリスクとも呼ばれる仁丹等に含まれています。
アサフェティダの特徴や効果
では続いてアサフェティダの特徴と効果について説明していきましょう。アサフェティダが何で出来ているかや由来については分かりましたが、未だ特徴や効果についてはピンと来ない部分も多いです。そんなアサフェティダの本当の姿に迫ってみましょう。
加熱すると風味が変わる
アサフェティダは加熱することでガラリと風味が変わります。この加熱した後の風味というのがまた独特で、玉ねぎを油で炒めたような甘く香ばしい香りが広がります。この香りを書いだだけで食欲が湧くという人もいるのではないか?と思うくらい、風味豊かで素晴らしい香りを放ちます。
ただ、この香りはアサフェティダの魅力の一つでもありますが、逆にアサフェティダが最凶と呼ばれる所以でもあるのです。この話についてはこのまとめの最後でたっぷりと説明しますが、何れにせよアサフェティダを語る上では香りや匂いといったワードは外せないという事に違いはありません。
生薬として消化を助ける
アサフェティダもフェンネルと同じく生薬として広く使用されているそうで、主な効果として消化を助ける作用があると言われています。ウイキョウの生薬としての効果も同じく消化促進ですから、これらはセリ科の植物が持つ効果であると考えられます。
日本でも春の七草としてセリも入った七草粥を食しますが、これは非常に体に良いとされています。そうした自然の生薬が齎す治癒力は、今でも我々の生活に欠かせない物です。スパイス大国のインドや東南アジアでこのアサフェティダが広く普及しているのは、そういった効果効能があるからだとも言えるのでは無いでしょうか。
インフルエンザの特効薬?
実はこのアサフェティダが過去にインフルエンザの特効薬として使用された事がありました。それは第一次世界大戦の最中の事で、このインフルエンザによって感染者数6億人、死者4000万人という想像を絶する数の人々が病に倒れました。その特効薬にこのアサフェティダが使用されたのです。
実際このアサフェティダはH1N1型インフルエンザウィルスへの効果があるそうで、それは医学的研究によって明らかに成っています。滋養強壮の為にスパイスを取るのではなく、本当に薬として迄使用された事があるとは驚きです。
アサフェティダの使い方
ではいよいよアサフェティダの具体的な使い方についてレクチャーして行きたいと思います。このスパイスはフェンネル同様特に扱い難いスパイスではありませんが、正しい使い方を覚えておくことは大切なことです。今後もしこのスパイスを使う機会があったら、是非この記事で学んだ使い方を実践して下さい。
ほんの少量だけ使う
このスパイスを使う際の分量はほんの少量でOKです。ほんの少量だけで充分にスパイスとして効果を発揮しますので、間違っても大量にしてはいけません。耳かき一杯で驚きの美味さに変わるスパイスと呼ばれるだけあって、かなり強いスパイスなのです。
というよりも、恐らくこのスパイスと初めて対面した時にはきっとほんの少量ですら使いたくないと考えている筈です。それが何故なのか?は、この記事の最後のまとめで説明致しましょう。生薬やハーブは、少量だと薬に成るが大量に摂取すると却って毒にもなるなんて話もあるので、やはり適量がベターです。
豆やじゃがいも料理に使う
豆料理やジャガイモ料理にもこのスパイスはよく合います。インドでは豆やじゃがいもが頻繁に使われるのですが、それらの料理の際は絶対にこのアサフェティダが欠かせないと言われています。それは豆やじゃがいもが消化の悪い食べ物だからです。
そんな消化の悪い豆やじゃがいもを食べる際は、このスパイスを使って消化を促してあげるというのがインド流なのです。インド料理は薬膳料理と近い感覚であるとも言われますが、確かにこうした理由を知ると納得です。
ピクルス・グレイビーソースなどにも
またアサフェティダはピクルスやグレイビーソースにも使われています。ピクルスの瓶の中には多種多彩なスパイスが一緒に浸けられていますが、その中にこのスパイスが入っているとは驚きです。以外にも普段から口にしていた可能性も大いにありそうです。
我々日本人にグレイビーソースは余り馴染みがありませんが、食卓でも定番のウスターソースなら誰もが一度は使った事があるでしょう。あのウスターソースにも実はこのアサフェティダが使われているのだそうです。案外このスパイスは我々日本人にとっても身近な存在なのかも知れません。
炒めものやカレーにも
そして勿論炒め物やカレーにもバッチリです。使い方としてはこの辺りがメジャーな使い方と言えるでしょう。スパイスと言えばカレーですし、カレーといえばスパイスです。最近ではルーカレーではなく自らスパイスを調合してカレーを作る人も増えていますし、拘りのカレーを作るならアサフェティダは抑えておきたいスパイスです。
また炒め物にも、ほんの僅かな分量でしっかりと風味を加えてくれるので非常に重宝します。よくインドで出るようなカレー味の炒めもの等はまさにうってつけかも知れません。
アサフェティダの臭いに注意
これだけいい事づくしにも関わらずイマイチ普及していない理由、それはアサフェティダの臭いにあります。最後にこのスパイスが悪魔と言われるその理由を紹介致します。
容器ごとガラスや金属製の密閉容器に
このスパイスの臭いは驚く程に強烈です。そのレベルは鼻を近づけてから「クサっ!」と声が出るような甘いレベルではなく、近寄ることすら不快なレベルの激臭なのです。故にこのスパイスは容器ごと別の容器に入れて密封する必要があります。
強烈な臭いで鼻が効かない
その余りにも強烈な激臭は一撃で嗅覚を破壊します。まともに嗅いだら最後、暫くは何を嗅いでも全く臭いが分からなくなるでしょう。
悪魔の糞と呼ばれる臭い
この臭いの原因は硫化化合物で、つまり漂うのは硫黄系のあの臭いです。その悍ましい程の悪臭でこのスパイスには悪魔の糞という別名が浸けられている程です。あの有名なドリアンでもさすがにここまでの激臭ではないという位ですし、まさしく悪臭界のキングオブキングスと言ったところでしょうか。
アサフェティダを料理に使えば美味しさ倍増!
今回は悪魔の別称を持つアサフェティダというスパイスを紹介しました。強烈な臭いはさておき、スパイスとして確かな旨味を齎してくれるこのアサフェティダは、料理に使えば美味しさ倍増間違いなし!心の準備は必要ですが、貴方も一度試してみては如何でしょうか?