2019年06月18日公開
2024年09月19日更新
隠し包丁の入れ方をマスターして料理上手に!飾り包丁との違いも解説
隠し包丁は大根やこんにゃく、人参などといった料理の食材を美味しくするための和食の技法です。隠し包丁をすることで料理が美味しく出来上がるだけでなく、見た目も良くなります。また盛り付けを鮮やかにする飾り包丁もマスターすれば、食卓がさらにグレードアップすること間違いありません。様々ある包丁の技法の中でも代表的な隠し包丁と飾り包丁の入れ方やこの2つの違いなどを解説します。
隠し包丁をするだけで和食の仕上がりが変わる
隠し包丁は和食の出来上がりを良くしてくれる包丁の技法のひとつです。野菜や魚など様々な食材に使われていて、特に煮物をする場合などは隠し包丁をするだけで味はもちろん見た目など仕上がりが変わります。
隠し包丁は別名「忍び包丁」といわれています。これは食材の見た目に対し、包丁の切れ目を見えない面に入れるためです。あくまでも軽く包丁で切れ目を入れるだけで、驚くほど仕上がりに変化を与えてくれるのです。
味がしっかりしみ込む
隠し包丁は味が浸み込みづらい食材などに使われています。特に煮物など味をしっかりしみこませる調理法では、隠し包丁ははずせないと言っても過言ではありません。煮物などをする場合隠し包丁をするのには理由があります。
煮物など味を浸み込ませる調理法の場合、切り目を入れることで断面が広がり、そこから味が浸み込み易くなるためです。表面がつるりとしているこんにゃくや、固めの人参、大根などによく使われます。さらに切りやすくなるため大きめの食材などにも使われる技法です。
火が通りやすい
隠し包丁をすると、味が浸み込みやすくなるだけではありません。断面が広がるため火の通りも良くなり、食材全体にまんべんなく火がいきわたります。ただし切り込みを深く入れすぎると、加熱の際割れやすくなるので注意が必要です。
盛り付けた際に綺麗
隠し包丁をした食材はあえてその面を上にして盛り付けることで、装飾のようにも見えるため盛り付けが綺麗に見えます。全部の食材の隠し包丁面を見せてもいいですし、食材によって見せるなど工夫をしてみてください。
隠し包丁の入れ方
隠し包丁と一言で言っても、食材によって入れ方はさまざまです。ここでは主に煮込み料理などに使われる大根やこんにゃく、なすなど隠し包丁を入れる代表的な食材での入れ方を説明します。
大根の場合
おでんなどの煮込み料理で大根を使う場合、味がしみこみやすくするために隠し包丁をします。厚みのある輪切りにした大根に十字で切り込みを入れてください。切り込みの深さは大根の厚さの3分の1程度が目安です。これ以上深く切り込みを入れると煮込んでいるとき、煮崩れを起こすことがあります。
こんにゃくの場合
こんにゃくは、大きな状態のときに隠し包丁を入れたほうが、切り分けるとき楽です。こんにゃくの表面に斜めに3~5mmほどの幅で格子模様を描くように切り込みを入れていきましょう。こんにゃくは表面がつるつるとして味が浸み込みづらいため、両面に隠し包丁を入れましょう。
なすの場合
なすもこんにゃくと同じように格子模様の隠し包丁をいれてください。あらかじめ縦半分に切って、ヘタを取って皮のほうに隠し包丁を入れます。間隔は1cm程度で深さは2~3mmが理想的です。
隠し包丁と飾り包丁の違い
隠し包丁に似ているもので飾り包丁があります。共に和食で使われる包丁の技法ですが、隠し包丁と飾り包丁には大きな違いがあります。味の浸み込みをよくするのが隠し包丁である一方、飾り包丁は視覚的な美しさを与えてくれます。ここでは飾り包丁について説明します。
飾り包丁とは?
飾り包丁とは料理を盛り付けるときに、見栄えよく美しくなるように食材に切れ目を入れる「飾り切り」と呼ばれるものです。隠し包丁はあくまでも食材の裏側に入れますが、飾り包丁は、縦・横・斜めに切り季節を表現した形などに切ったりします。これらは「むきもの」とも呼ばれています。
春の桜や蝶々・秋のもみじが有名
飾り包丁は季節の風情を表現したものが多く見られます。春の桜や蝶々、秋ならもみじを模ったものが有名です。その他にも祝い事に欠かせない相生結びなど、飾り包丁には100種類以上もの切り方があります。
おせちにも使われる
飾り包丁はおせちをはじめ祝いの席の料理などに多く使われます。主に煮物などが多いようです。おせち料理であれば筑前煮の人参を、ねじり梅という飾り包丁が使われていることが多く見られます。和食の祝いの席で飾り包丁は欠かせないものです。
人参の飾り包丁の種類と方法
飾り包丁がよく使われる食材の代表が人参です。人参は彩り鮮やかにするだけでなく、適度な硬さもあるため飾り包丁などの細工がやりやすいのです。初心者でも作りやすい飾り包丁の種類と方法を紹介します。
桜
桜は春を代表する飾り包丁のひとつです。切り方もポイントさえ抑えていれば、初心者でも比較的簡単に綺麗な桜型に切りことができます。最初は厚めに切って飾り包丁をしていきましょう。
手順
- まず人参を2cmの厚さの五角形に切りましょう。
- そして五角形の角と角の中央にVの切り込みを入れます。
- そして、角から花びらの丸みをつけて頂点に同じように小さなVの切り込みを入れます。
- これを五角形すべてに同じように行うことで桜が完成します。
- 厚みが気になるときは好みの厚さに切ってください。
コツ
花びらを作るとき、できるだけ角度をシャープにするよう意識してください。こうすることで綺麗な桜の型になります。また先端のVは浅くいれると可愛く上品な形になります。煮込み料理などの場合は浅く入れたほうが煮崩れを防げます。
もみじ
もみじは、秋の煮物料理や鍋料理などに欠かせない飾り包丁です。桜より手順は多いのですが、綺麗なもみじ型が出来上がると、驚くほど料理が鮮やかに見えます。
手順
- まず人参を2cmほどの厚みに切り七角形に整えましょう。
- 続いて一番上の葉の部分を切りそろえ、上から2番目になる左右の葉の角を切っていきます
- 形をととのえるため、一番下の部分を切り落とし、下幅が広い七角形にしましょう。
- その後、人参を横向きにし、包丁で先に葉と葉の間になるところにVの切り込みを入れて人参が切り離せるようにしておきます。
- そして、丸みをつけながら、一番上の葉の片方を切っていきます。
- 下の葉も同じように切っていけば完成します。
コツ
もみじは無理に左右対称にしなくても大丈夫です。形を整えすぎるとバランスが崩れることがあるためです。また、上の葉の部分が大きくなるように比率を4:3くらいにするとバランスがよくなります。切るときにトランプのスペードの形を意識すると、もみじらしく出来上がります。
ねじり梅
ねじり梅は冬から春にかけて使われる飾り包丁です。おせち料理をはじめ、煮物や鍋物には欠かせません。ベースとなる形は桜と共通しているので、桜をマスターしていれば比較的簡単に作れます。
手順
- まず桜と同じように五角形に切りVの切り込みを入れます。Vの切り込みは桜より浅く入れたほうが梅らしくできます。
- そして角から丸みをつけて花びらを作ります。
- 続いて、ねじりを作るため花びらの間から中心にかけて切り込みを入れます。
- そして花びらが浮き出るように外側のほうを集めにそぎ取ればねじりが入ります。
- これをすべての花びらに行えば完成です。
コツ
梅は全体が丸いので、最初に綺麗な五角形を作ることが綺麗にできあがるポイントです。また切り込みを入れるときは、となり合わせの辺を「ハ」を意識して切るのが綺麗なできあがりにするコツです。またねじりが入ると、多少いびつになっても目立たなくなります。
蝶々
蝶々も桜と同じ、春を代表する飾り包丁です。桜と蝶々を一緒に飾れば豪華な見た目となります。繊細な包丁使いがほかよりも必要とされますが、完成したときのうれしさも倍増します。
手順
- まず人参を1mm程度の厚さで下部分がつながっている状態で2枚スライスしてください。
- そして、触角を作ります。離れている部分とつながっている部分2箇所に切り込みを互い違いに入れます。このとき2つの間は3mm程度が理想です。
- その後反対側の下に小さくV型の切り込みを入れます。
- 触角部分を持ち上げ、つながっている部分に差し込めば蝶々の完成です。
コツ
羽を広げた蝶々は薄く切るのが綺麗な出来上がりにするポイントです。また厚く切ると触角部分などが折れてしまうので注意しましょう。出来上がりを氷水にさらせば、しゃきっとした蝶々になります。
花びら
飾り包丁の花びらは桜などの横に添えるとさらに鮮やかになります。ほかと比べると、手順もとても簡単なので、包丁使いに自信のない人は花びらから始めるよ良いかもしれません。
手順
- まず人参を3cm程度の厚さに輪切りし、両端のとがった楕円形を作ります。
- 片方のとがった先端に3~4mm程度のVの切り込みを入れて切り落とせば完成です。
- 厚みが気になるときは、好みの厚さにスライスして使ってください。
コツ
輪切りのものを楕円形にする自信がないときは、厚めに半月切りにし、片方に丸みをつけると簡単です。2mm程度の厚さにスライスすると、よりリアルな花びらができあがります。
相生結び
相生結びは別名千代結びとも呼ばれ、人参と大根を使って紅白にしたものでおせち料理や祝いの席に欠かせません。お吸い物などに添えられていることが多く、とても簡単に作れます。
手順
- まず人参と大根を10cm程度の細切りにしてください。太さはマッチ棒くらいです。
- 細切りの人参と大根に塩を振ってしんなりさせる、もしくは熱湯でさっとゆでてやわらかくします。
- その後、互いを「つ」の字にし、上下が交互になるように重ね合わせましょう。
- 人参を大根の下から穴に通します。
- もう片方も同じように穴に通し切れないよう優しく引っ張って結べば相生結びの出来上がりです。
コツ
相生結びをするとき、あまりひっぱりすぎると柔らなくなっている野菜は切れてしまうので注意が必要です。またある程度丸みがあるほうが出来上がりが綺麗に見えます。
隠し包丁や飾り包丁をマスターして味も見た目もプロ並みに
料理をさらに美味しくする隠し包丁や見た目を鮮やかにしてくれる飾り包丁は、和食を作る上で欠かせない包丁技法です。隠し包丁や飾り包丁をマスターすれば味はもちろん、見た目もまるで和食店で提供されるような料理ができあがります。
家庭での料理に一手間加えることで、出来上がりが格段に上がってきます。隠し包丁や飾り包丁を上手に使って素敵な食卓を演出してみてください。