2019年09月19日公開
2024年09月27日更新
ノルマルヘキサン(n-ヘキサン)は何に使われる?毒性があって危険?
ノルマルヘキサンはあまり聞きなれていない物質ですが、実は私達が良く食べている食品に使われています。ノルマルヘキサンとはいったい何に使われているのでしょうか?口に入れるものだからこそ知っておきたい知識について抽出物質と一緒に解説します。
ノルマルヘキサン(n-ヘキサン)は何に使われる?
ノルマルヘキサンとは、有機溶媒の一種で、他の物質を溶かし油分を抽出すことができる物質です。有機溶媒には他に水やアセトン、アルコールなどがあります。
有機溶媒の中でもノルマルヘキサンは不純物を含んでおらず、80℃熱を加えることで蒸発する性質を使って除去することが可能なので、食用油の抽出溶媒や、工業用接着剤、機械の油汚れの除去など多岐にわたって使用されています。
ノルマルヘキサン抽出物質とは?
ノルマルヘキサン抽出物質とは物質名ではなく、ノルマルヘキサンを使用して抽出出来た物質の総称のことを言います。物質にノルマルヘキサンを添加することにより物質を溶かします。すると、物質は水分、油分、不純物と分離されます。
この時点ではまだ同じ容器の中で分離している状態です。そこで、完全に分離させるために熱を加えます。するとノルマルヘキサンと水分、不純物が揮発して物質から取り除かれます。この時に揮発することなく残った物質のことをまとめてノルマルヘキサン抽出物質と言います。
つまり、これらの抽出物質の特性は必ず不揮発性で沸騰させても気体にならない物質であると言うことです。抽出物質に当てはまる物質は、植物性油脂やアルコール、界面活性剤、鉱油、農薬などです。名前の響きから、化学物質のように捉えられることがありますが、ノルマルヘキサン抽出物質は食品も含まれた物質の総称なのです。
食品への使用
物質を溶かして分離させる性質を利用する目的で、食用油であるサラダ油等を作る時に使用します。植物から油を取り出す方法の圧搾方法がありますが、この方法では菜種や大豆、とうもろこしから半分程度の搾油しかできないのです。
そこで、菜種、大豆、とうもろこしから油を効率よく搾油するために、植物から油を溶かし出す製造工程で添加物を使用します。ノルマルヘキサンを加えることで、食材から100%油を搾油できるという訳です。このことにより食材を無駄にせず、最大値の油が搾油できることでサラダ油はお手頃価格で購入できると言えます。
ノルマルヘキサンはサラダ油の製造工程で添加されるので、添加物になります。しかし、サラダ油の表記ラベルに「ノルマルヘキサン」という表記がありません。これは、ノルマルヘキサンを添加するなら商品にする前に必ず全てを除去しなければいけないと言った決まりがあるからです。
食品以外への使用
ノルマルヘキサンを使った抽出物質は食品以外に多くあります。体を洗う石鹸もその一つです。洗剤やシャンプー、化粧品に入っている界面活性剤としてノルマルヘキサンを使用している製品もあります。
身の周りのもので言えば、接着剤や染料にも使用しており、家のどこかにはノルマルヘキサンを使ったものが使用されていることになります。その他、工業用溶媒としての使用や、工場内での油汚れや金属粉の除去など、あらゆる場所で使用が認められている物質です。
ノルマルヘキサンは毒性があって危険?
ノルマルヘキサンは、食品に使われている添加物であり、食品以外では溶剤として使用されている物質です。無色透明でかなり強い特殊な臭気を持つノルマルヘキサンは毒性があって危険なのでしょうか?
もしも、含まれる毒性が人体や環境に害をなすものならば、使用している世界は考え物です。ここからは、物質自体の危険性、ノルマルヘキサン抽出物質の危険性について解説します。
ノルマルヘキサン自体は有害
ノルマルヘキサンは、高濃度で摂取すると人体に影響を及ぼす有害物質です。危険物質として取り扱いが義務化されている物質で、取扱うには資格が必要です。また、特別な環境下のみで使用されているものです。
扱う際には必ず保護手袋、保護眼鏡、保護マスクを着用するようになっています。万が一吸引してしまうと、めまい、頭痛、吐き気が起こり、ひどい場合には意識喪失の恐れがある劇薬だからです。また、二次災害を防ぐためそのまま捨てることは許されず、化学品廃棄物として処理されます。
ノルマルヘキサン自体は、取り扱いに十分な注意が必要とされている有害物質なので、相当な有害性を有している危険物質と言えます。
液体を飲み込むと、肺に吸い込んで化学性肺炎を起こすことがある。高濃度の場合、意識低下を引き起こすことがある。中枢神経系、とくに末梢神経系に影響を与え、多発性神経障害を生じることがある。
「職場の安全サイト」より
食品には毒性がない
有害な物質であるノルマルヘキサンを食品に使って大丈夫なのでしょうか?答えは、「ノルマルヘキサン抽出物質には毒性が残らない」です。よって、サラダ油などの食品には毒性がないことになります。
なぜならば、溶媒として食品に利用する時には、ノルマルヘキサンを完全に除去することが国際的に決まっているからです。ノルマルヘキサンの大きな特徴で80℃まで熱せられると完全に揮発するようになっています。この特徴を利用して抽出物質から微量も残さず完全に除去することが可能なのです。
ノルマルヘキサンを除去して抽出物質であるサラダ油のみにする方法は、脱臭の工程で油を200℃に加熱して油を真空状態にします。すると、油以外が揮発するのです。この時にノルマルヘキサンも揮発します。揮発物質をそのまま空気中には出せないので、ノルマルヘキサンは全て回収されるようになっています。
この工程を行うことにより、抽出したい物質から完全にノルマルヘキサンを除去することが可能です。また、抽出物質からノルマルヘキサンの残留が認められないと、国際的にも証明されています。ノルマルヘキサンの食品添加物として利用は安全なのです。
食品中への当物質の移行量のモデルによる推測結果からは、食物経由の暴露量が小さく無視できると判断された。
「化学物質の環境リスク初期評価(平成9から12年度)結果」より
食品安全委員会の評価
食品安全委員会とは、内閣府に設置されている食品の安全性を検査・評価を行う公的機関です。食品安全委員会が制定されてのは平成15年のことです。ノルマルヘキサンは食品安全委員会ができる前から安全に使用されている添加物になるので、食品安全委員会独自の評価は行われていません。
食品安全委員会のノルマルヘキサンに関する評価は有りませんが、他機関によるノルマルヘキサンを使用した実験結果がありましたので紹介します。
欧州食品安全機関にて、ひまわりの種子を圧搾してできたヒマワリケーキと言うひまわりの種の塊に、ノルマルヘキサンを抽出溶剤として使用することで残留量はどうなるかの実験が行われました。その報告では、ヒマワリケーキからひまわり油を抽出して残ったヒマワリ粕でも、ノルマルヘキサンの残留する可能性は低いと言った結果になりました。
厚生省ではノルマルヘキサンが食品に及ぼす影響はないと定義し、食品添加物として表示する必要性はないとしています。
提出されたデーターでは、肯定の有効性、残留溶剤の無いこと、及びその工程がヒマワリケーキの本質及び特性に悪影響を及ぼさないことを証明する情報かどうかに関して評価された。
「食品安全委員会」食品安全関係情報より
ノルマルヘキサンに関する口コミ
ノルマルヘキサンは食品には残留しないことが認められていますが、ノルマルヘキサン自体は有害物質です。そして、ノルマンヘキサンと言う有害物質が私達の口にするものに使用されていることは事実です。この事実を正しく理解しておくことが大切と言えます。みんなのノルマルヘキサンに関する口コミを紹介します。
昔ながらの圧搾方がよいが、スーパーなどで販売の一般的なサラダ油は化学薬品で抽出精製。。大豆油は、有機溶剤のノルマルヘキサンで抽出し、リン酸で澱を除去し、苛性ソーダで遊離脂肪酸を除去・・・|知ると食べられなくなる「サラダ油」の怖い話…製造過程で“化学薬品漬け” https://t.co/95ZQrkdJhB
— 有機農業ニュースクリップ (@OrganicNewsClip) August 8, 2019
ノルマルヘキサンはサラダ油内に残らないとされています。それよりも、サラダ油を製造する時に使用されている添加物には危険なものがあり、生産される工程でサラダ油自体に変化が起こることの方が危険と言えます。どうしても気になる方はエキストラオリーブオイルや、混じり気なしのごま油を使うと良いでしょう。
ノルマルヘキサン抽出物質で、鉱油類と動植物類を分けて計量証明書を出してくる計量証明事業所がある。まぁ、証明書としては間違ってはいないんだけど。お客さんからの要望ということもあるが、おかしいっていうか「意味無い」ことを、わかっているのだろうか?
— 原田 和弘 (@pb3natural) September 7, 2019
企業は「ノルマルヘキサンは残留しない」と分かっていても、そのことを証明するためにわざわざ計量証明書を発行してもらっています。消費者に安全性を証明する為に、企業はそこまでしているのです。
ベンゾイン、トンカビーンズ、ローズアブソリュートなど、有機溶剤抽出法で精製されたアロマは肌に使うべきではないというお話ですが
— 七瀬"裏"めぐる (@meguru_salmon_2) August 24, 2019
私はそんなに気にしなくてもいい気がします。有機溶剤は精製の過程で飛んでしまうでしょう。
サラダ油もノルマルヘキサンによる有機溶剤抽出法だったりしますもん。
有機溶剤が危険物質であることに気を取られ、それを製造過程で使用した製品は使うべきではないと言うのは、考えが飛躍し過ぎかもしれません。使うか否かは人それぞれですので、ノルマルヘキサンの性質と生産過程を理解した上で自分はどうするか?を判断しましょう。
ノルマルヘキサンの危険性を知っておこう!
ノルマルヘキサンは、吸引したり目に入ったりしてしまうと、めまいや吐き気、意識喪失の重体になり得る毒性の高い物質です。しかし、これはあくまでも工場などでの使用での話です。
サラダ油などの油を搾油する為にノルマルヘキサンを添加しますが、製造工程で完全に取り除かれます。よって、サラダ油にはノルマルヘキサンが原因での害はないと覚えておきましょう。