懐石料理と会席料理の違いとは?献立メニューや料理の順番・マナー等解説

献立やマナーの違いが分かりにくい懐石料理と会席料理を丁寧に解説します。もてなしの懐石料理の献立と基本作法、宴会などで食べる会席料理のメニューが分かります。懐石と会席のどちらの席でも共通する和食マナーもチェックしましょう。

懐石料理と会席料理の違いとは?献立メニューや料理の順番・マナー等解説のイメージ

目次

  1. 1懐石料理と会席料理の正しい知識を身につけたい!
  2. 2懐石料理と会席料理の違い
  3. 3懐石料理の献立メニューと順番・マナー
  4. 4会席料理の献立メニューと順番・マナー
  5. 5懐石料理と会席料理の違いやマナーを知っておこう!

懐石料理と会席料理の正しい知識を身につけたい!

和食店の看板や案内に、懐石料理、会席料理の文字を目にすることがあります。どちらもおもてなしにふさわしい和食のお店という雰囲気はしますが、どこが違うのかは分かりにくいかもしれません。違う点をおさえておくと、本格的な料理の席でのマナーにも戸惑うことがなくなります。

懐石料理と会席料理には歴史があり、それぞれに献立が確立されています。日本の伝統ある料理の献立メニューとマナーを知っておきましょう。

懐石料理と会席料理の違い

懐石料理と会席料理の大きく異なる点をまずチェックしましょう。歴史背景と、どのような場所で食べられるものかが分かると、懐石と会席の違いが見えてきます。

懐石料理とは?

懐石料理は茶懐石と言うように、お茶の席で出される食事です。茶懐石は禅に由来します。修行中は昼食以外の食事が許されなかったため、温めた石を懐にいれて空腹と寒さをしのいだことから、懐石の名が付いたとも言われています。

茶の席では空腹のまま濃茶を飲むと胃腸へ負担がかかるために、お菓子が出されることが多いです。懐石料理も、空腹を和らげるための食事として始まりました。茶の湯が始まったころは、お茶をふるまう側の主人が簡単な食事を作っていました。当時の献立の基本は一汁三菜で、ご飯、お吸い物、3つのおかずと香の物の構成です。

茶の湯が広まり始めると茶懐石の料理を専門に作る仕出屋が登場します。そこから少しずつ豪華な食事になり、お客様をもてなす料理として懐石料理が広まりました。

会席料理とは?

会席料理は、簡単にいうとお酒の席で出される料理です。江戸時代、都市部では料理やお酒を提供するお店が増え、上客のために高級な料理を出すようになりました。食事のスタイルはお膳料理と言って、一人ひとりに脚のついた膳があり、そこに並べる料理の数で、豪華さを出していました。

このお膳料理と懐石料理の内容を取り入れて、会席料理が誕生しました。会席とは多くの人が集まる席のことで、現代の会合や宴会といったものです。そうした場で、お酒と一緒に味わう献立を会席料理と言うようになりました。

懐石料理の献立メニューと順番・マナー

懐石料理は、お茶会の主催者となる人がお客様をもてなすための料理です。献立はメインのお茶を、より美味しく味わってもらえるような構成になっています。

1.ご飯と汁物

懐石料理では、最初に折敷(おしき)という脚のないお膳が出されます。そこに、ご飯と汁物、向付(むこうづけ)がのります。茶道のように、もてなす側の亭主が客人の一人ひとりの前に座り、膳を差し出します。差し出された客側は、一礼をして受け取り膳を自分の膝の前に置きます。亭主の「お箸をどうぞ」といった挨拶があってから食べます。

食べる時のマナーは、飯椀と汁椀ともに蓋がしてあるので、飯椀の蓋を取って上向きに返し、折敷の右側に置きます。その蓋の上に汁椀の蓋を返さずにそのまま置きます。左側の飯椀と右側の汁椀、手前の箸が一直線になるように置かれているのが美しいとされます。

献立のスタートでもあり、禅の精神で残さず食べられる量として、ご飯と汁物の量は少な目です。汁物とご飯は、交互に少しずつ食べましょう。

2.向付

懐石料理の最初のメニューとして、ご飯と汁物、向付が出されます。飯椀と汁椀の向こう側に置くので、向付と言われます。正式な献立では、向付はしょう油などをつけなくても味わえる刺身や酢の物、なますです。

ご飯と汁物を先に食べたころを見計らって、亭主がお酒を勧める場合があります。お酒に口をつけた後に、向付を食べます。盃や酒杯は向付の右隣りに置きましょう。お酒は、亭主が客人のそれぞれの前に座りお酌をします。献立の終盤まで3回ほどに分けて振舞われるのが一般的です。

3.椀物

飯椀、汁物、向付と懐石料理が進むと、次に椀物が出されます。椀物は、お椀に盛り付けた煮物で、椀盛りとも言われます。椀物も亭主が一人ひとりに配り、折敷の外に置かれます。食べる時には汁が垂れないように器を左手に持ち、口に近い位置まで運び、箸で食べて構いません。

汁が少ない煮物の場合は、客人が持参している懐紙を取り皿代わりにします。懐石料理の席に呼ばれることがあったら、懐紙は準備しティッシュやハンカチの代わりに使うようにしましょう。

4.焼き物

椀物の後には、焼き物として焼き魚がふるまわれます。この焼き物は、大皿や鉢に人数分を盛り合わせ、主客から順番に取り箸でそれぞれが取っていきます。自分の分を向付の盛られていた器に取り分けたら、大皿を隣りの人へと両手を添えて手渡しするのがマナーです。

焼き魚の食べ方にも、マナーがあります。基本は、上側の身を頭から尾にむかって食べ進め、骨を抜き取った後に反対側の身を食べます。懐石、会席ともに和食では、魚をひっくり返すのはマナー違反です。骨を取る時には懐紙を使って頭などをおさえてスマートに取り除き、骨やひれ部分などは器の左手前にまとめておきます。

懐石料理の献立では、始まりのご飯からこの焼き物までが一汁三菜の基本です。焼き物までで食事が終わり、お茶へと進むこともあります。

5.吸い物

懐石料理が、一汁三菜で終わらずに続く場合は、吸い物が出ます。吸い物は箸洗いとも言われ、焼き物まで食べた箸を一度すすぐための料理です。西洋料理のコースメニューにある、口直しのような一品です。味わった後は、懐紙で吸い物の蓋をぬぐっておき、次の献立の取り皿として使えるようにしておきます。

6.八寸

吸い物までで懐石料理のメニューが一段落つくと、八寸(はっすん)という酒の肴が出されます。これは、亭主が客人と時間を共有できたことを喜び、盃を交わすための料理です。お酒に合うような一口サイズで、海のものと山のものの食材を使うのが、八寸の定番です。ここに里のものを加えることもあります。

焼き物と同様に大皿で出されるので、客人は取り箸で自分の手元にある吸い物椀の蓋に取り分けます。約24cmの八寸四方のお盆に盛り付けて取り分けることから、八寸と呼ばれるようになりました。

7.強肴

懐石料理の強肴(しいざかな)は、必ず献立に含まれるメニューではありません。一汁三菜、吸い物、八寸以外に亭主が強いてもう一品もてなしたいという意味から、強肴と言われます。かつては、新年のお茶席である初釜などのおめでたい席で出されていましたが、豪華さを演出するために出されることも多くなりました。

料理は炊き合わせや和え物、揚げ物などのメニューが定番ですが、最近ではステーキのようなものも強肴になることもあります。

8.湯桶・香の物・湯漬け

懐石料理の締めとして湯桶(ゆとう)が出されます。湯桶にはご飯を炊いた時に釜の底に残った焦げ飯を、さらに弱火で焦がし薄味をつけた湯の子と湯が入っています。これを客人は、折敷に残っているご飯の器に取り分けます。まず湯の子(おこげ)を取り、そこにお湯も注ぎます。

あわせて香の物も提供されるので、向付の器に取り分けます。湯の子と香の物を食べ、最後に湯で器をすすぐようにして飲み干します。懐紙で器を拭き折敷の上のものをきれいにして、感謝の気持ちを表すのがマナーです。

9.菓子

懐石料理の献立がすべて終了した後に、菓子と濃茶が出されます。菓子も大皿で提供されるので、一つずつ懐紙に取り分けます。ここまでが茶懐石となります。

正式な懐石料理は、茶道の流派によって作法が異なる部分もあります。懐石料理の席に呼ばれたら、懐紙を準備していくことと、大皿料理は順番に取り分けて次の人へ回すことをおさえておきましょう。

会席料理の献立メニューと順番・マナー

会席料理は、大勢の人が集まる場で出されることの多い料理です。献立に基づいて出されるものを順番に食べ進めていきます。宴会や接待の場で出されることもあるので、周りの人を不快にしないよう、和食のマナーとして一般的なものはおさえておきましょう。

1.先付

会席料理は先付(さきづけ)でスタートします。アルコールを飲み始める時につまみやすく、軽く食べられるものが多いです。

マナーとして気を付けたい点は、平らなお皿に盛りつけてある場合はお皿を持ち上げないことです。小さな鉢に入ったものは持ち上げても良いですが、平皿はテーブルに置いたまま食べるのが和食の基本です。串にささったものは、箸で串を抑えて料理を引き抜いてから食べます。串や殻などは、皿の向こう側へまとめておきます。

2.椀物

乾杯して飲み始めたころに、椀物が出てきます。旬の魚介や野菜を使った吸い物が多く、土瓶蒸しが出る場合もあります。蓋付きの器で出されるので、目上の人が蓋を取ってから自分の蓋を取ります。

汁物の蓋は内側に蒸気がつき、ポタポタと落ちる場合があります。この雫でテーブルを汚さないように、汁物の器の中に落とします。水滴がついている方を上にして、お膳やお椀の右側に置きます。食べ終わったら、蓋を閉じて、右側にずらしておきましょう。

3.向付

向付(むこうづけ)は、お造りのことです。数種類が盛り合わせてあることが多く、淡白な味わいのものが手前、脂ののったものは奥になっています。盛り付けを崩さないよう、手間側から食べ進めます。わさびが添えられている時には、お刺身に少しのせてからしょう油をつけて食べます。

しょう油皿は、手に持っても構いません。お刺身につけたしょう油が垂れてしまうからと、手を受け皿の代わりにするのは、マナー違反です。しょう油皿のような小皿を使うか、懐紙を受け皿代わりにするのが和食のマナーです。

4.鉢肴

会席料理の鉢肴(はちざかな)は、懐石料理の焼き物に当たるものです。魚の切り身を焼いたものや、一口サイズの肉料理など、アルコールに合うような味付けがされているものになります。おめでたい席の献立では、お頭付きの魚が出ることもあります。

魚の骨を取る時や貝料理で貝から身を外す時には、左手を料理に添えても構いません。汚れた手はおしぼりや懐紙でふき取ります。魚は裏返すのはマナー違反なので、気を付けてください。

5.強肴

会席料理の強肴は、煮物のが多いです。メイン料理の一つで、先付の後の椀物が澄まし汁などが多いのに対し、強肴では時間をかけて食材に味を煮含ませた料理になります。汁椀のようなサイズの器であれば、器を持ち上げて食べても構いません。大き目の器であれば、蓋を小皿代わりにするか、懐紙で汁が垂れないようにして食べます。

6.揚げ物

会席料理の献立にある揚げ物の多くは、天ぷらです。天ぷらも向付のお刺身と同様に、手前にあるものから食べます。天つゆに薬味をいれて、天つゆの器を手に持って天ぷらを口に運びます。

芋などの天ぷらで大きなものは、お皿の上で箸を使って切ってから天つゆを付けて食べて構いません。ただし、一度口に運んで噛み切ったものは、お皿ではなく天つゆの器に戻します。エビの尾など残ったものは、器の端にまとめて置きましょう。

7.蒸し物

会席料理でメイン料理が続いた後に、口直しの蒸し物が出ます。優しい味わいの茶わん蒸しや、口をさっぱりとさせる酢の物が出されます。茶碗蒸しは手前からすっくって味わいます。蓋が付いている場合は、椀物と同じように雫を落とさないようにして、右側に蓋を置いておきます。

8.止め肴

会席料理では、献立の品数によって強肴の後に天ぷらや蒸し物がなく、止め肴がでる場合があります。止め肴は、小鉢に盛り付けられた和え物や酢の物で、濃い味付けの料理の後の口直しの料理です。食べやすいように、食材を小さく切ってあることが多いですが、酢の物など雫が落ちるものは器を手に持ち、口の近くまで運んで食べましょう。

9.ご飯・止め椀・香の物

懐石料理では最初に出されるご飯ですが、会席料理では終盤に出されます。ご飯と合わせて、止め椀というお味噌汁などと香の物がセットになっています。メニューが進み、ご飯と止め椀が出されたら料理はもう締めくくりになるという合図です。お酒も止めて、温かいうちにご飯と汁物を食べましょう。

水菓子

会席料理の最後は、水菓子が出ます。和菓子のこともあれば、フルーツの場合もあります。和菓子と抹茶が出されたら、甘いお菓子を食べてから抹茶を味わいます。フルーツで、メロンなど切れ目が入っているものは右側から食べるのが基本です。

会席料理はお酒を酌み交わし会話をしながら食べ進めます。話しに夢中になりすぎたり、お酒を飲みすぎてせっかくの料理に手をつけないでいるのは、マナー違反です。周りの人と同じペースで食べ進め、その場にいる人たちも料理を食べやすいよう気配りすることも大切です。

懐石料理と会席料理の違いやマナーを知っておこう!

懐石料理は茶席でのもてなしの料理、会席料理は複数の人たちでお酒を酌み交わしながら味わう料理ということが分かりました。今では、伝統的な和食を提供するお店なら懐石料理、宴会メニューとして和食コースなら会席料理と表現されることもあります。

懐石料理でも会席料理でも、その場の雰囲気を壊すことなく、もてなす側ともてなされる側のためにマナーがあります。基本のマナーをおさえておき、季節の食材を使った料理や器をゆっくりと楽しんでください。

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