酒米の種類や特徴は?日本酒造りの米と食べるお米との違いとは?

日本酒は、酒米と呼ばれるお米から作られているお酒です。酒米はお米の一つですが、食べるお米とは違った特徴を持っています。酒米は普段食べている食用米よりも価格が高い、日本酒を作ることに適しているなど、食べるお米とは違った特徴を持っています。この記事では、酒米の種類や特徴についてまとめています。代表的な酒米やそれを使った日本酒についてもまとめているので、日本酒が好きな方はぜひチェックしてみてください。

酒米の種類や特徴は?日本酒造りの米と食べるお米との違いとは?のイメージ

目次

  1. 1酒米の種類や食べるお米との違いを知りたい!
  2. 2酒米について知っておこう
  3. 3酒米の王者と言われる「山田錦」について
  4. 4酒米の種類や特徴について紹介
  5. 5酒米と食べるお米の違いについて
  6. 6酒米の種類や特徴を知って日本酒を味わってみよう!

酒米の種類や食べるお米との違いを知りたい!

日本酒は、お米を原料に作られているお酒です。しかし、日本酒を作る為の「酒米」と普段食べる「食用米」は違うお米です。酒米は食べるお米よりも価格が高い、日本酒の醸造に適しているなど、食べるお米とは違う特徴を持っています。この記事では、酒米と食用米の違いや特徴についてまとめています。代表的な酒米やそのお米から作られる日本酒についてもまとめているので、日本酒が好きな方はぜひチェックしてみてください。

酒米について知っておこう

酒米とは、日本酒を作ることに適しているお米の種類です。食べるお米とは違い、日本酒を作る為に開発されているお米なので、食用のお米とは全く違う特徴を持っています。日本酒の種類によって使う酒米も変われば、酒米の使い方も変わってきます。それぞれの特徴について紹介するので、原料である酒米についても知って、日本酒を今まで以上に楽しみましょう。

日本酒の出来を左右する酒米

日本酒は、お米を原料に醸造されるお酒です。日本酒を作る為のお米を酒米と呼びます。正式には「酒造好適米」や「醸造用玄米」「心白米」と呼ばれるものですが、酒米と呼ぶだけでも通じます。日本酒を作る為の特有の品質が求められるお米なので、通常の食べるお米とは違った特徴を持っています。日本酒によって使い酒米も違えば、同じ酒米でも使い方を変えることで違うお酒を醸造することができます。

日本酒は、酒米を原料に作られているお酒です。その為、酒米の出来栄えや日本酒への適正、麹にしやすいかどうか、蒸米吸水率、粗たんぱく質の含有量など様々な条件によって、日本酒の出来が変わります。例えば、お米が豊作の年は醸造に失敗しやすくなってしまいます。お米が硬いので、お酒を造る時になかなかお米が溶けない、酵母の繁殖に時間がかかり、その間に雑菌が繁殖して醸造に失敗するなどの問題が起こってしまいます。

お米が豊作の年は日本酒の醸造が上手く行かず、失敗して酒造全体がダメージを受けてしまいます。それとは逆に、お米が不作の年は米が柔らかいので日本酒を作る際にすぐにお米が溶けて酵母の繁殖、酒の発酵が早くなるという特徴があります。発酵が早すぎるのも問題ですが、低温で仕込むことで発酵を抑えて、非常に出来の良い日本酒ができると言われています。

酒米は酒造りに向くように開発されている

酒米の大きな特徴の一つとして、一般的な食べるお米よりも粒が大きいことが挙げられます。日本酒は吟醸や大吟醸などの種類があり、それに応じて原料である酒米の外側を削り、内側の白い部分だけを使うようになっています。この内側にある白い部分を「心白」と呼び、精米した時に心白が無くなってしまわないように、酒米は食べるお米よりも大きな粒をしています。

お米の中央にある白い部分を心白と言います。心白はデンプンでできており、目には見えない小さな隙間があります。この隙間に麹菌が入り込んで発酵するので、心白の大きいお米や心白の出来の良いお米が日本酒造りに向いていることになります。粒の小さいお米は心白も当然小さいので、粒の大きいお米を使うことで、多くの心白を得ようとしています。

精米の段階で削られるお米の外側は、デンプンだけでなくたんぱく質や脂肪を含んでいます。このたんぱく質や脂肪は、味の良いお米を作る為の成分です。しかし、醸造においては日本酒に苦みなどの雑味を与えてしまいます。この雑味を無くすために、酒米は丁寧に精米して外側のたんぱく質や脂肪を削り落としています。その為、日本酒の醸造に適した酒米は粒が大きく、食べるお米よりも多くの心白を確保できるようになっています。

酒を造りやすい酒米の条件とは?

日本酒を作りやすい酒米には条件があります。ある程度粒が大きく、「線状心白」と呼ばれる心白が程よく入っていること、たんぱく質や脂肪が少ないこと、お米の外側が固くて内側が柔らかいこと、保水力に優れていること。の5つの条件です。酒米はこれらの条件を満たしやすい品種のお米です。この条件の1つでも欠けてしまうと、日本酒の味が悪くなったり、醸造に失敗してしまう原因になってしまいます。

麹菌と酵母がデンプンと水をアルコールと二酸化炭素に変えることで、お米がお酒になります。その為、米に含まれるデンプンは非常に重要になります。それに対し、お米の外側にあるたんぱく質や脂肪は日本酒の雑味の原因になってしまいます。酒米は日本酒を作る為のお米なので、雑味の原因であるたんぱく質や脂肪が非常に少ないお米になっています。

お米のたんぱく質や脂肪は食べるお米にとっては大事なうま味成分なので、それをほとんど含まない酒米は、食べても全く美味しくないということになります。また、酒米は心白の隙間が大きいので、食べるお米と同じように炊いてもパサパサになってしまいます。価格の高い高級な酒米でも、価格の安い食べるお米よりも美味しくないという結果になってしまいます。

酒米の王者と言われる「山田錦」について

ここで、主な酒米の種類について紹介します。酒米はお米なので食べることもできますが、一般的なお米よりも価格が高い上に、うま味成分をほとんど含んでいないので仮に炊飯しても美味しいお米にはなりません。酒米が一般的に販売されることはほぼありませんが、もしも販売されているのを見かけても、価格が高いからといって高級なお米だと思わず、酒米か食用米かをキチンと確認しましょう。

酒造好適米の代表品種である山田錦

山田錦は、酒米の中でも最も代表的な種類のお米です。山田錦は酒米の王者とも呼ばれ、ほとんどの酒蔵が鑑評会へ出品する日本酒は山田錦という種類の酒米で作った日本酒となっています。鑑評会でも山田錦の品質の良さや有利さを考慮し、山田錦を50%以上使っている日本酒に対しては別の部門で品評するなどの対応が取られる程、山田錦という種類を使って作られた日本酒はクオリティが高いのです。

山田錦は品評会でも別の部門を作られる程に良いお酒を造ることができるお米です。このような背景もあり、酒造関係者の間では「山田錦(Y)ときょうかい9号酵母(K)を使い、精米歩合35%まで高めれば良い日本酒ができて、鑑評会でも金賞が獲れる」という意味で「YK35」という言葉まで生まれました。実際にはそのように単純なことではありませんが、それ程山田錦という酒米の存在は酒造関係者にとって大きなものとなっています。

最近では山田錦以外の種類の酒米が増えていることや、他の種類の酒米の特質を生かした様々なお酒が造られるようになってきています。まだまだ山田錦という品種は大きな存在であるものの、山田錦でなければいけないという価値観は過去の物になりつつあります。他の種類のお米から作られたお酒も増えているので、山田錦以外の種類のお米で作られたお酒も楽しんでみましょう。

山田錦の主な産地は?

山田錦の主な産地は兵庫県です。1923年に兵庫県が開発した品種で、兵庫県立農事試験場にて山田穂と短稈渡船という種類を交配して、1031年に品種が確定しました。当初は「山渡50-7」という名前でしたが、1936年に山田錦と命名され、兵庫県奨励品種となりました。当初はあまり生産されていませんでしたが、戦後になると全国へ普及し、酒米の王者と呼ばれる程になりました。

山田錦の生産の9割以上が兵庫県です。美味しい日本酒を作ることが得意ですが、イモチ病や縞葉枯病に弱いという特徴があります。中山間地帯の粘土質の土が栽培に適していると言われています。山田錦は粒が大きく、粘度があるので心白が割れにくいという特徴があります。吟醸など、お米の多くを削ってしまう製法でも割れにくいので、山田錦は特に大吟醸といった価格の高いお酒に向いています。

山田錦で作られる日本酒を紹介

山田錦から作られる日本酒の中でも有名なのが、「獺祭(だっさい)」というお酒です。獺祭は山田錦だけを使って作られたお酒で、大吟醸か純米大吟醸という規格で作られています。山田錦の80%近くを磨き削って作った、超高精米の商品も販売されています。原料のほとんどを削ってしまっているので価格は高いものの、とても美味しいお酒になっています。

他にも山田錦を使ったお酒は多く、「初孫 大吟醸」などがあります。初孫は山形を代表する名杜氏が醸し上げた逸品で、熟成酒とは思えない程の美しい香りが特徴です。初心者ではなく、枯れた日本酒の味が分かるいわゆる通向けのお酒になっています。価格は1800mlで11,800円と高価ですが、それだけ値打ちのある貴重なお酒です。

酒米の種類や特徴について紹介

ここで、山田錦以外の代表的な酒米について紹介します。酒米の中で最も有名かつ人気のある品種は山田錦ですが、最近では山田錦以外の酒米でも良いお酒は造れるという価値観が生まれ、それぞれのお米の特徴を活かした日本酒が販売されています。山田錦ではないからダメなお酒だと決めつけず、色々なお酒を楽しんでみましょう。

山田錦と並ぶ酒米「五百万石」

「五百万石」は新潟県で生産されている酒米で、山田錦と並ぶ二大トップの酒米と言われています。1956年に開発され、「新200号」と「菊水」を交配させることで誕生しました。この頃新潟の米の生産高が五百万石を突破したので、その記念としてこの名前が付きました。日本酒としてはフルーティーな香りが特徴で、1980年代からの吟醸酒ブームの立役者となっています。

五百万石は山田錦とは違い、粒が小さいので高度精米に耐えることができません。この為、山田錦とは違い精米は50%程度が目安で、大吟醸などの高度精米が必要になるお酒には適していません。その代わり、「越乃雪月花」などの本醸造酒においては手頃な価格ながらも抜群の香りとうま味を誇るお酒を造ることができます。

五百万石を使ったお酒の中で特に価格の高いお酒が、「吉乃川 秘蔵酒」です。吉乃川は「酒造りは米作りから」をモットーに、自らが丹精込めて育てた五百万石を使ったお酒が有名な蔵です。その中でも秘蔵酒は、お酒造りの全てに贅を尽くした逸品です。吟醸酒の中でも一握りのものだけが持ちえる神秘的な程の香りと、長期熟成による丸みのある深い吟味が溶けあった美味しいお酒になっています。

長野を代表的な産地とする「美山錦」

「美山錦」は1972年に農林水産省により開発された酒米です。主に長野県で栽培されています。農林省農業技術研究所で「たかね錦」の趣旨にガンマ線を照射して突然変異を起こさせて個体選抜を行い、1976年に「信放酒1号」という名前を与えられました。その後更に検討を加え、1978年に長野県の奨励品種になり美山錦の名前を付けられました。寒い地域に強く、山形県や岩手県、秋田県などの酒米の親となっています。

美山錦から作られたお酒は、スッキリとした軽快な味わいが特徴です。代表的なお酒は「くどき上手」で、山形県の銘酒です。価格も比較的手頃で、軽やかで柔らかな繊細な香りが特徴のお酒になっています。特に「くどき上手 ばくれん」は度数20超えの超辛口吟醸酒なので、日本酒通におすすめです。

酒米と食べるお米の違いについて

ここで、酒米と食べるお米の違いについて解説します。酒米もお米なので、食べることはできます。しかし、あくまでお酒を造る為に開発されたお米なので、酒米は食べても美味しくない、炊いてもパサパサになってしまうなどの特徴があります。価格も酒米の方が高いなどの違いもあるので、それぞれの違いや特徴に注目してみましょう。

外観は酒米の方が大きい

酒米は食べるお米よりも粒が大きいです。お酒を造る際に精米をして削られてしまうので、大きな粒でないと精米に耐えることができません。その為、酒米には粒の大きさが求められています。酒米の王者と呼ばれる山田錦は食べるお米と比べて一回り大きな粒をしています。五百万石のような小さな酒米もありますが、それでも食べるお米より大粒で、精米を前提に作られています。

酒米と食べるお米の外観の違いは大きさだけでなく、透明感にも表れます。一般的なコシヒカリは白く不透明ですが、精米前の山田錦や五百万石といった酒米は半透明です。食べるお米は米粒全体にデンプンとたんぱく質、脂肪が含まれているので光を通さず不透明になります。それに対し酒米は外側にたんぱく質や脂肪といった混合体が含まれているので光を通し、半透明になります。

心白も酒米の方が多い

お米の中心にある白い部分を心白と言います。酒米はこの心白に含まれるデンプンを使って、麹菌と酵母による発酵を行い、アルコールと二酸化炭素を作り出しています。その為、酒米には大きな心白が求められ、多くの酒米は大きな心白を持っています。一般的な食べるお米にも心白はありますが、酒米に比べると小さい上にデンプン以外の不純物が多いので、お酒を造ることに向いていません。

一般的な食べるお米も、玄米の状態から精米して白いお米にしています。酒米はこの白くなったお米を更に磨いて削って、中にある心白とそのデンプンだけを醸造に使っています。酒米の外側は雑味の原因であるたんぱく質と死亡が含まれ、お酒を造る邪魔になってしまいます。また、酒米の心白は細かい隙間があり、そこに麹菌が入り込んで発酵しています。

酒米の心白には隙間があるので、麹菌や酵母が入り込んで発酵することができます。この隙間が原因で、酒米は炊飯に向いていません。隙間が多いので水分をお米の中に保つことができず、パサパサになってしまいます。一般的なお米は心白の隙間が少ないので、炊飯中にたくさんの水分を保つことができるのでふっくらと炊き上がります。価格の高い酒米よりも価格の安い食用米の方が美味しいのは、この為です。

酒米は醸造適正に優れている

酒米には食用米に無い特徴があります。粒が大きいこと、程よい線状心白があること、たんぱく質や脂肪が少ないこと、米粒の外側が固く内側が柔らかいこと、保水力に優れていること。この5つが、醸造に向いているお米の条件です。酒米は玄米から精米したあと、不純物を取り除くために更に磨き、削って行きます。その為粒が大きくなければ精米に耐えられず、お酒を造ることができません。

食べるお米にとってはたんぱく質や脂肪はうま味成分なので必要ですが、酒米にとっては日本酒の雑味の原因なので邪魔になってしまいます。その為、酒米は雑味を出さない為にうま味成分がほとんど含まれず、食べても美味しくありません。炊飯しても心白の隙間に水が入らないので、食べるお米のようにふっくらと炊き上がらずパサパサになってしまいます。

食用のお米は粒が小さいので精米に耐えられない、不純物が多いので雑味が出るなど、美味しいお酒を造ることはできません。酒米と食用のお米はそれぞれの目的に合わせて作られた品種なので、同じお米でも役割を変えることができません。もしも山田錦など上等な酒米を炊飯しても、スーパーで売られている価格の安い食用米の方が美味しい仕上がりになるので、消費者が間違えないように酒米と食用のうるち米は区別されています。

食べるお米では日本酒は作れないの?

酒米は醸造適性を上げる為に改良されたお米で、食用米は美味しく食べられるように品種改良されたお米です。しかし、実は食用のお米でも日本酒を作ることはできます。現在では酒米を使わず、100%全て食用米で醸造されたお酒も普及しています。当初は酒米と食用米による味の違いもありましたが、その味の違いも徐々に少なくなり、食用米で作られた日本酒も珍しくありません。

日本酒の原料として使われるお米は醸造用玄米(酒米)がメインですが、醸造用玄米に分類されない「水稲うるち玄米」に分類される品種のお米からも日本酒を作ることができます。水稲うるち玄米は大抵の酒米より安いので、普通酒と呼ばれる日本酒の一部に多く使われています。安いお米ではありますが、杜氏の技量によっていくらでも美味しいお酒を造ることができるので、原料米の安さは時に杜氏を評価する点になります。

水稲うるち玄米に分類されるお米は、「トヨニシキ」や「亀の尾」などが有名です。水稲うるち玄米は食べることもできますが、一般の食用のお米として流通されることはあまりありません。また、水稲うるち玄米は酒造好適米ではありませんが、一般のお米や食用のお米と間違われないように、「酒造適正米」と呼ばれていることもあります。酒造適正米は食べられますが、食用として販売されることはあまりありません。

酒米と食べるお米に価格差はある?

酒米は食用のお米よりも高い価格が設定されています。これは、酒米の生産量が少ないこと、生産にコストがかかることが理由です。酒米はの生産量は日本のお米の生産量の内、わずか5%しかありません。更にその中でも日本酒への適性の高い酒造好適米は1%しか栽培されていません。また、酒米は一般のお米よりも育てづらいので非常にコストがかかってしまいます。これが原因で、酒米は食用のお米よりも高い価格がついています。

酒米の多くは一般的な食べるお米よりも稲穂の背が高いという特徴があります。また、高度精米に耐えられるように粒の大きさが求められるので、他のお米と比べて稲穂が重く、強風などの影響を受け倒れやすくなっています。害虫被害も多いのでその対策も必要となり、育てる手間の割に収穫量が少ないという問題もあります。その為、酒米は食用のお米よりも価格が高くなってしまい、蔵元にとっては大きな悩みとなっています。

酒米の種類や特徴を知って日本酒を味わってみよう!

いかがでしたか?日本酒がお米から作られているのは広く知られていることですが、お酒を造る為のお米と食べるお米が違うことや、お米の品種による日本酒の違いなどについて知らないまま日本酒を楽しんでいる方も多いと思います。原料のお米について知ることで、他のお米を使ったお酒についても知ることができます。様々な酒米やそこから作られるお酒を知って、ぜひ色々な日本酒を楽しんでみてください。

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