2018年09月03日公開
2024年07月30日更新
漢方は食前がいい?その理由とは?飲み忘れはいつ飲めばいい?
漢方薬を飲むのは食前が良いと言われていますが、本当でしょうか。また、その理由は何なのでしょうか?もしも食前に飲み忘れてしまったら、いつ飲むのが効果的なのでしょうか。今、漢方薬は副作用が少ない安全な薬として、世界中から注目されています。身近なようで、よくわからない漢方薬。今回は漢方薬の基礎知識と正しい飲み方、飲み忘れたときの対処法をご紹介します。漢方薬のことをもっとよく知って、上手に生活の中に取り入れましょう。
漢方薬の正しい飲み方が知りたい!
漢方薬と言えば、おじいちゃんやおばあちゃんが飲んでいる匂いが強い粉薬、効くのか効かないのかよくわからない、というイメージを持つ方も多いでしょう。病気やケガを治すことに重点を置く西洋医学とは違い、漢方医学では体質改善に重点を置きます。病気を治すのではなく、病気の原因となる体質や、体のバランスの乱れを治すのです。そんな漢方薬は、副作用が少なく、妊婦さんでも安心して飲める薬として注目されています。
江戸時代の末期、日本に西洋医学が入ってきて、「蘭学」と呼ばれるようになりました。蘭学は病気やケガの治療に即効性を発揮し、明治時代になると「蘭学」だけが医学であるかのような見方が一般的になりました。その流れから、1967年までは漢方薬には保険が適用されませんでしたが、現在はその効果が認められ、多くの漢方薬に保険が適用されています。今回は、そんな漢方薬の正しい飲み方についてお伝えします。
漢方薬の飲み方について解説
漢方薬は、いつ、どのように飲むのが効果的なのでしょうか?薬は飲み方によって、その効果が変わってきます。漢方薬にも、その効果を最大限に発揮するための飲むタイミングや飲み方があります。ここでは漢方薬の正しい飲み方について解説します。
漢方薬とは?
漢方薬は、中国のお薬と言うイメージを持っている方も多いでしょう。しかし、漢方薬は実は日本独自のものなのです。漢方という名前からも分かるように、そもそもは奈良時代に中国から伝わった中国古代医学が元になっているものの、その後日本の気候や風土に合わせて独自に発展してきました。自然の動物や植物、鉱物などから作られている薬を生薬と言いますが、漢方薬は日本独自の生薬なのです。
漢方薬には、私たちの馴染みが深い食材もたくさん使われています。たとえば生姜(しょうきょう)はショウガ、桂皮(けいひ)はシナモンのことです。また、カレーには何種類もの香辛料が使われていますが、その多くが漢方の生薬の原料でもあります。このため、最近ではカレーに漢方薬を入れる人もいるようですが、そのような行為は副作用を引き起こす可能性もあるので、絶対にやめましょう。
漢方薬はいつ飲むのがいいの?
漢方薬と言えば、食前に飲むというイメージがありますが、それは本当でしょうか?また、食前が良いとすれば、その理由は何なのでしょうか?食前に飲み忘れたときはいつ飲めばよいのでしょうか?漢方薬の最も効果的な飲み方について紹介します。
漢方薬は食前または食間に飲むのがベスト!
漢方薬は、食前または食間に飲むのがベストです。食前とは食事の前の30分間、食間とは食後2時間以上経過して、次の食事までの間のことです。ほとんどの漢方薬は、この食前または食間に飲むよう指示されていますが、患者の状態や薬の種類によっては、まれに食後に飲むよう指示されることもあります。食前や食間が適している理由と、飲み忘れたらいつ飲めばよいのかを解説します。
漢方薬を食前に飲む理由とは?
漢方薬を食前に飲む理由は、漢方薬の成分の吸収を良くするためです。漢方薬の薬効成分は、腸内細菌によって分解され吸収されます。しかし、食後は腸内細菌の餌がたくさんあるため、肝心の薬効成分の吸収が悪くなってしまうのです。
たとえば、漢方薬によく使われている薬用ニンジンの成分は、ブドウ糖と一緒になると吸収が悪くなることが知られています。このように、食後に漢方薬を飲むと、食事に含まれる成分と薬効成分が相互作用を起こし、効果が現れにくくなることがあるのです。また、副作用が出やすい成分は、食前の空腹時に飲むと副作用を抑えられることがわかっています。このような理由から、「漢方薬は食前または食間に飲む」方が良いのです。
食前に飲み忘れしまったときはどうすればいい?
食前や食間に漢方薬を飲み忘れた場合は、いつ飲むのがよいのでしょうか?結論から言うと、いつ飲んでも大丈夫です。ただし、2回分を一度に飲む事はやめましょう。漢方薬を服用したら、次の服用までの間隔を数時間はあける必要があります。1日2回服用の場合は6時間以上、1日3回服用ならば4時間以上は間隔をあけるようにしましょう。
漢方薬を食後に飲むとどうなる?
漢方薬を食前に飲み忘れてしまって食後に飲んだ場合、吸収が多少悪くなるとは言っても、それほど大きな差はありません。ただし、漢方薬は匂いや苦味が強いので、食後に飲むと吐き気を催すことがあります。漢方薬はぬるま湯に溶かして飲むのがベストですが、温度が高いと匂いや味もきつく感じられるため、そのような場合は水で飲んでも構いません。ただし、冷水は避けて常温の水にしましょう。
症状別のおすすめ漢方薬
漢方薬は長い間飲み続けないと効かないイメージがありますが、それは体質を改善するのに数週間~数カ月かかるからです。しかし、花粉症などのアレルギー症状、風邪、筋肉の痙攣などの症状に即効性がある漢方薬も存在します。ここでは、どんな症状にどの漢方薬が効くのか、具体的に紹介していきます。
「漢方薬を飲んでも症状が改善するとは思えない」という方もいますが、最近の研究で、漢方薬が実際にアレルギーや風邪に効くということが確かめられています。また、「いくら体に良くても、あの味と匂いが嫌だ」という人もいるでしょう。しかし、漢方ではその「匂いを嗅ぐこと」自体にも効果があるとされています。まさに「良薬口に苦し」です。
風邪を引いたときにおすすめ「葛根湯」
漢方薬には縁がないと言う方でも、葛根湯(かっこんとう)の名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。葛根湯は葛根(かっこん)、大棗(たいそう)、麻黄(まおう)、甘草(かんぞう)、桂皮(けいひ)、芍薬(しゃくやく)、生姜(しょうきょう)を配合したもので、風邪薬として昔から用いられてきました。特に風邪の初期症状、頭痛、発熱、寒気などに効果を発揮します。
葛根湯は、風邪の引きはじめに悪寒がしたり、首や肩がこわばったり、熱があるのに汗が出なかったりするときに使うお薬です。風邪がすでに悪化して汗をかいている時や、体力が落ちてしまった時には向きません。葛根湯には体を温めて汗を出す効果があるため、風邪以外に肩こりや筋肉痛の薬としても処方されます。
花粉症などのアレルギー症状におすすめ「小青竜湯」
透明な鼻水が止まらない、くしゃみが止まらないなどのアレルギー症状には、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)がおすすめです。
小青竜湯は、半夏(はんげ)、甘草(かんぞう)、桂皮(けいひ)、五味子(ごみし)、細辛(さいしん)、芍薬(しゃくやく)、麻黄(まおう)、乾姜(かんきょう)を配合したもので、体の中の余分な水分を排出してくれる効果があります。また、服用しても眠くならないため、抗ヒスタミン剤で眠気を催して困る、という方にも向いています。
長引く咳の対策に「麦門冬湯」
麦門冬湯(ばくもんどうとう)は、麦門冬(ばくもんどう)、半夏(はんげ)、粳米(こうべい)、大棗(だいそう)、人参、甘草を配合したもので、古くから咳の治療に用いられてきました。特に、痰を伴わない空咳が続いたり、口や喉が乾燥している時に効果を発揮します。また、気管支炎や気管支喘息の治療に用いられることもあります。
漢方薬には使用期限がある?
市販されている漢方薬や、銀色の小袋に密封された漢方薬は、3~5年が使用期限とされています。ただし、病院で処方された普通の白い紙に包まれているものは、保存が効くようにはできていないので、数週間で飲みきった方が良いでしょう。また、漢方薬はその時の体調や症状に合わせて処方されるものです。数年もたつと、処方された当時は合っていた薬も合わなくなってしまう可能性があります。古い薬を安易に飲むのは控えましょう。
漢方薬は二種類飲んでも大丈夫?
自己判断で2種類以上の漢方薬を同時に飲むことは避けましょう。漢方薬には共通した原料が使われている場合があり、それらが重複すると副作用が起きることがあります。
例えば、甘草(かんぞう)はいろいろな漢方薬に用いられている生薬ですが、過剰に摂取しすぎると高血圧や不整脈などを引き起こすことがあります。2種類以上の漢方薬を服用したい場合、また、漢方薬と西洋医学の薬を同時に服用したい場合などは、必ず専門医に相談してください。
漢方薬の飲み方には理由がある!
葛根湯のように、「~湯」と名前が付いているものは、もともと煎じ薬です。煎じ薬は、生薬を長い時間煮出して、その抽出液を飲むのが本来の飲み方です。現在出回っている粉末状の薬は、工場で製造される過程で香りや精油成分などが減少しています。漢方薬をぬるま湯に溶かして飲むのは、本来の飲み方である煎じ薬に近づけるためなのです。漢方薬の正しい飲み方を知って、効果的に服用しましょう。