タンパク質とアミノ酸の違いは?種類や結合・分解などの働きも解説!
タンパク質とアミノ酸の違いを知っていますか?私たちの体に不可欠な栄養素であるタンパク質やアミノ酸は、食事で摂取する以外にサプリメントとしても注目されており、様々な種類が販売されています。タンパク質はアミノ酸が多数結合したものであることはよく知られていますが、両者の体内での働きや吸収速度には違いがあります。今回はタンパク質とアミノ酸の違いや、摂取すべきアミノ酸の種類について、また体内でタンパク質が分解されてアミノ酸となった後、アミノ酸同士が結合するなどの働きについても解説します。
目次
タンパク質とアミノ酸との違いを知っておきたい!
タンパク質は生命を維持するために欠かせない栄養素です。多数のアミノ酸が結合してタンパク質ができていることはよく知られていますが、タンパク質とアミノ酸の違いについては知らない方も多いのではないでしょうか。両者の違いを知っておくと、毎日の食事内容を考えたり、サプリメントのプロテインやアミノ酸を選ぶ際にも役立ちます。今回は、タンパク質とアミノ酸の違いと、種類や結合・分解などの働きについて解説します。
タンパク質とアミノ酸の違いについて解説!
タンパク質とは?
タンパク質は、炭水化物や脂質とともに三大栄養素といわれています。食事で摂れるたんぱく質には、肉や魚、乳製品、卵などに多く含まれる動物性タンパク質と、豆類に多く含まれる植物性タンパク質があります。
私たちの体を構成する成分のうち約20%はタンパク質が占めています。タンパク質は、筋肉や血液、臓器、骨、免疫反応に必要な抗体、体内機能を調節するホルモンや酵素などをつくる材料となるほか、エネルギー源としても重要な役割を持っています。
タンパク質が不足するとどうなる?
出典: https://fytte.jp
一日あたりに必要なタンパク質量は、成人男性で50g、成人女性で40gといわれています。ダイエットで食事量を減らしたり、極端に偏った食事をしていると、タンパク質不足に陥ることがあります。ビタミン不足の場合は肌荒れや口内炎などが現れ、亜鉛不足の時は味覚障害が現れるように、私たちの体には不足した栄養素によって特徴的な症状が現れます。では、タンパク質が不足した場合にはどのような症状が現れるのでしょうか?
筋肉量が減ることで体力や運動能力が低下し、骨がもろくなるため転倒した際に骨折が起こりやすくなります。また、肌のハリやツヤがなくなったり、髪の毛の材料であるタンパク質がないので枝毛や切れ毛が増加し、薄毛になる可能性もあります。さらにはタンパク質不足により抗体が作れず、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなったり、タンパク質を主成分とする血液中の赤血球やヘモグロビンが減るため貧血になりやすくなります。
タンパク質不足は気付きにくい
実は、タンパク質が不足しても前述したような症状がすぐに現れることはありません。なぜなら、わたしたちの体には体内のタンパク質を分解して消費する仕組みがあるからです。体のエネルギー源であるタンパク質の摂取量が不足すると、筋肉のタンパク質などを分解してエネルギーとして利用します。このようなことから多くの人はタンパク質の摂取量が不足していることに気が付かないまま低栄養状態に陥る可能性があります。
筋肉の分解が進み、脂質を除いた体重が健常時の7割になると、窒素死と呼ばれる生命の危機に至ることもあります。特に高齢者は、加齢で食が細くなりがちなうえ噛む力が弱まり肉類の摂取を避ける傾向があるため、タンパク質不足になりやすく日々の食事に注意が必要です。
タンパク質とアミノ酸の関係
タンパク質は、多数のアミノ酸が結合して立体構造を形成したものです。私たちの体には約10万種類にも及ぶ様々なタンパク質が存在していますが、これらのタンパク質を構成するアミノ酸の数や種類、組み合わせには違いがあります。通常、食事で摂取したタンパク質は体内でアミノ酸に分解された後、そのアミノ酸を材料にして体に必要なタンパク質が作られます。
体に必要なタンパク質を作るためには、材料となるアミノ酸を含むタンパク質を食事により摂取する必要があります。動物性タンパク質を構成しているアミノ酸と、植物性タンパク質を構成しているアミノ酸の種類には違いがあります。偏った食事では必要なアミノ酸を摂取できません。動物性タンパク質と植物性タンパク質をバランスよく摂ることが体に必要なタンパク質を作るために重要となります。
アミノ酸の種類について
自然界には約500種類のアミノ酸が存在しますが、そのうちヒトの体のタンパク質を構成しているアミノ酸は20種類といわれています。20種類のアミノ酸のうち、11種類は体内で合成することができますが、残り9種類は合成できません。合成できない9種のアミノ酸は必須アミノ酸と呼ばれ、食べ物から摂取する必要があります。
必須アミノ酸について
必須アミノ酸は、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、リジン、フェニルアラニン、トリプトファン、スレオニン、ヒスチジンの9つを指し、種類ごとにそれぞれ働きも違います。バリン、ロイシン、イソロイシンの3つは分岐鎖アミノ酸(BCAA)と呼ばれ、筋肉づくりに重要な役割を果たしています。ヒトの筋肉を構成する必須アミノ酸のうちBCAAの割合は約35%と高く、運動中に分解される量も多いと考えられています。
メチオニンは、タンパク質を合成する時に最初に必要となる重要なアミノ酸です。またメチオニンは、リジンを材料としてできるカルニチンという脂肪をエネルギーに変換する物質の生合成にも関与しています。フェニルアラニンは、チロシンを経て脳内神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンとなり血圧を上昇させるほか、黒色色素メラニンの材料となります。
トリプトファンは体内でナイアシンになったり、脳内神経伝達物質のセロトニンの材料となります。スレオニンは成長促進や脂肪肝の抑制に関与しており、ヒスチジンはヘモグロビンや白血球の産生に関与しています。子供の場合は、成長ホルモンの分泌を高める働きをするアルギニンを含め、10種類が必須アミノ酸といわれています。
アミノ酸が不足するとどうなる?
必須アミノ酸をはじめとするアミノ酸は、筋肉などタンパク質の材料として使われるほか、先に述べた通り体内で特徴的な働きをしています。母乳には必須アミノ酸が全て含まれており、不足すると赤ちゃんの発育の遅れや体力・免疫力の低下を引き起こすといわれています。またBCAA不足は筋肉量の低下を招き、疲労回復にも遅れが生じます。BCAAは肝機能維持にも関与するため、不足すると肝機能が低下し、代謝異常につながります。
必須アミノ酸のうち、特にリシンが不足すると成長に遅れが生じ、幼児でヒスチジンが不足すると湿疹ができるおそれがあることがわかっています。トリプトファンは精神を安定させるセロトニンの材料となるので、不足することにより不安やうつ状態、不眠症や多動などの精神疾患を引き起こしてしまいます。また、トリプトファン不足によるナイアシン欠乏症になると、皮膚炎や激しい下痢、認知症などが現れることがあります。
良質タンパク質とは?
良質タンパク質とは、全ての必須アミノ酸をバランスよく含むタンパク質のことをいいます。良質タンパク質とそうでないタンパク質との違いは体内での利用率です。良質タンパク質は体内でアミノ酸に分解された後の利用率が高くなります。つまり、良質タンパク質を含む食品を食べると効率よく体に必要なタンパク質をつくることができます。良質タンパク質を含む食品には、肉類、魚類、乳製品、卵、大豆製品などがあります。
食材のタンパク質の中に必須アミノ酸が含まれる割合を「アミノ酸スコア」といい、スコアが100かもしくは100に近いほど良質タンパク質といえます。豚肉のようにアミノ酸スコアが100の食材もあれば、キャベツのように53の食材もあります。アミノ酸スコアの低い食材でも、複数の食材と組み合わせて必須アミノ酸のバランスを整えることでアミノ酸スコアは上昇し、体内での利用率を高めることができます。
タンパク質の分解とアミノ酸の結合について
食事でタンパク質を摂取したとき、どのようにしてアミノ酸にまで分解されて吸収されるのでしょうか?また吸収されたアミノ酸は、どのようにタンパク質を形成するのでしょうか?タンパク質とアミノ酸の間の大きさの「ペプチド」と呼ばれる物質がもつ働きについても紹介します。
タンパク質を摂取した時の分解と吸収の仕組み
タンパク質は分子量が大きいため、そのままでは体内に吸収されません。食事でタンパク質を摂取すると、胃で胃液に含まれる消化酵素によってタンパク質はペプトンに分解されます。その後、十二指腸の膵液に含まれる消化酵素によってペプトンはさらに分子量の小さいポリペプチドに分解されます。そして小腸から分泌される消化酵素によって最終的にアミノ酸にまで分解されます。
タンパク質の分解によってできたアミノ酸は、小腸の内側にある絨毛の中の毛細血管より吸収されます。それからアミノ酸は肝臓へと運ばれ、心臓から体全体へと送られて、体に必要なタンパク質を合成する材料として利用されます。このように私たちの体内では、タンパク質の分解と合成が常に繰り返されています。
アミノ酸のペプチド結合とは?
アミノ酸はペプチド結合することによって鎖状につながり、タンパク質を形成しています。ペプチド結合とは、アミノ酸のカルボキシル基(ーCOOH)ともう一つのアミノ酸のアミノ基(ーNH₂)同士が脱水縮合(水分子H₂Oが抜けてつながる)して、ーCONHーが形成される結合のことです。ペプチド結合によってできた物質は「ペプチド」と呼ばれます。
ペプチド結合したアミノ酸の数が2個ならジペプチド、3個ならトリペプチド、4個ならテトラペプチドと呼びます。ジペプチドやトリペプチドなど、アミノ酸の数が2~20個程度のペプチドをまとめてオリゴペプチドといい、さらに多くのアミノ酸が結合したものをポリペプチドといいます。一般的にアミノ酸が50個以上結合したものはタンパク質と呼ばれます。
ペプチドとタンパク質
ペプチドとタンパク質にはそれぞれどのような特徴があるのでしょうか?ペプチドのなかにはホルモン作用や抗酸化作用など特有の機能を持ち体内で働くものがあります。健康や美容への効果が期待されるペプチドもあり、大豆ペプチドや魚肉ペプチド、牛乳から乳脂肪分やカゼインを除いた水溶液(ホエイ)由来のホエイペプチドなど、由来する食品にちなんだ名前が付けられ、サプリメントや食材として活用されています。
ペプチドは普段の食事で必要量を摂取することが難しいという欠点があります。一方、タンパク質は肉や大豆など普段の食事で簡単に摂取できます。ただし、タンパク質を体内に吸収するためには消化が必要となるので、胃腸の調子が悪い場合はきちんと消化されず、吸収できずに栄養不良となります。また腸に問題があるときにタンパク質を摂取すると、腸管の間から未消化のタンパク質が漏れてアレルギーを引き起こすこともあります。
タンパク質とペプチドはどちらの方が吸収されやすい?
タンパク質とペプチドでは体内での吸収速度に大きな違いがあります。タンパク質を体内に吸収するためには前段階として消化が必要となるため時間がかかりますが、ペプチドはすでに分解された状態で分子量が小さいため、より効率よく速やかに体に吸収されます。いくつかのペプチドにおいては、トランスポーター(輸送体)を介した吸収の仕組みがあり、アミノ酸よりも素早く吸収されることがあります。
ペプチドに期待される健康効果とは?
タンパク質より吸収の早い点に注目が集まり、様々な種類のペプチドに関する研究が進んでいます。ペプチドはもととなる食品の種類によって期待される健康効果が違います。良質タンパク質として知られる大豆たんぱく質由来の大豆ペプチドは、筋肉へのエネルギー供給を行って全身の疲労回復を促す効果が期待されています。また、魚肉ペプチドには抗酸化作用があり骨粗鬆症や生活習慣病の予防に効果が期待されています。
ホエイペプチドはBCAAが豊富で、ホエイタンパク質よりも効率的に筋肉増強を促進します。またホエイペプチドは体の免疫システムに働くグルタチオンを増加させることで免疫力を強化し、インフルエンザウィルスの感染予防効果やアレルギー症状の予防・改善効果が期待されるほか、加齢とともに減少するグルタチオンを増加させることによりアルツハイマー病の予防にも効果が期待されています。
ゴマ由来のゴマペプチドはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害作用により血圧を下げる働きがあるため、高血圧の症状を緩和するとされています。また、乳由来のラクトトリペプチドは乳酸菌の発酵過程で産生される3つのアミノ酸からなるペプチドで、ACE阻害作用による血圧降下作用に加えて高血圧に起因する循環器病の予防にも効果が期待されています。その他にも中枢神経鎮痛作用や血栓抑制作用を持つペプチドが知られています。
タンパク質やアミノ酸の知識を身に着けて健康づくりに役立てよう!
いかがでしたでしょうか?体のエネルギー源となるタンパク質をきちんと摂取すること、特に良質タンパク質を含む食品を摂取することが重要であるとわかったと思います。また、速やかに吸収されるアミノ酸やペプチドを目的に合わせて利用するのもおすすめです。タンパク質やアミノ酸を漫然と摂取するのではなく、知識を活かして体調に合わせた食事や健康な体作りに役立てましょう。