2018年06月23日公開
2024年07月19日更新
スズメダイの美味しい食べ方!旬の時期や絶品の料理方法を紹介!
スズメダイという魚を知っていますか?水族館に行くと、青や黄色といった色とりどりの綺麗な小魚が、岩場やサンゴに群れているのを見ることができます。その色とりどりな小魚こそが、スズメダイと呼ばれる魚の仲間です。今回取り上げるスズメダイは、そんな水族館を彩る熱帯性の小魚たちではなく、本州近海に普通に住んでいる種類です。釣り人の間では外道として有名なこのスズメダイは、実は料理すると美味しい魚だというのです。そんなスズメダイの美味しい食べ方を紹介します。
目次
- 1スズメダイって食べられる?
- 2スズメダイってどんな魚?
- 3スズメダイは釣りでは「外道」の魚
- 4スズメダイは実は美味しい魚
- 5スズメダイの旬はいつ?
- 6スズメダイはどんな味?
- 7スズメダイが食材として嫌われる理由
- 8スズメダイの値段は?
- 9スズメダイの捌き方
- 10スズメダイを料理してみようと思ったけれど
- 11スズメダイを普通に食べている地域もある
- 12スズメダイは実は高級魚?
- 13料理レシピはある!スズメダイを料理してみよう
- 14福岡の郷土料理!スズメダイの「あぶってかも」
- 15骨に注意!スズメダイの「煮付け」
- 16スズメダイの刺身「せごし」
- 17せごしに良く似た韓国料理「チャリフェ」
- 18スズメダイは「炙り」も美味しい
- 19スズメダイの中骨を取った「唐揚げ」
- 20スズメダイの料理は他にもまだある
- 21旬のスズメダイは捨てずに食べよう!
スズメダイって食べられる?
スズメダイというと、水族館で群れをなして泳いでいる、色とりどりの綺麗な小魚を思い浮かべる人も多いことでしょう。ですが同じスズメダイの仲間で、東北以南というかなり北部まで生息しているものもいるのです。釣り人の間では有名だというそのスズメダイは、水族館で見るようなカラフルな魚ではありません。ですがとても美味しい魚だというのです。そんなスズメダイの旬の時期や、美味しい食べ方などを紹介します。
スズメダイってどんな魚?
スズメダイはスズキ目ベラ亜科スズメダイ科に分類される魚で、東北以南の岩礁でよく見られる魚です。スズメダイ科に属する魚は300種類ほどいますが、スズメダイはその中でも最も耐寒性が高く、高緯度にまで生息している魚です。通常は海流に乗って北上してきても、戻れないまま死んでしまう仲間が多い中、8℃という低水温まで耐えられるため、太平洋沿岸から日本海側でも越冬できる、生息域の広い魚でもあります。
スズメダイは身長15cmほどの小柄な魚です。その小ささと色がやや茶色がかること、そして小さな目などがスズメを連想させることから、「雀鯛」と名前が付いたと言われています。体は木の葉のような形をしていて、ウロコがは厚いだけでなく体の大きさに対してサイズが大きく、背びれの尾に最も近い付け根に白い斑点があります。この白い斑点は、スズメダイが死ぬとすぐに消えてしまう特徴があります。
スズメダイの生態
スズメダイは水深30mまでの浅瀬の岩場に、群れをなして住んでいます。体長が数cmの稚魚のうちは、タイドプールと呼ばれる潮溜まりでも、良く見かけることがある小魚です。餌は主に動物性プランクトンを食べている、肉食性の魚になります。繁殖期にはメスが岩の上に円形に産みつけた卵を、オスが新鮮な海水を送ったりゴミを取り除いたりして卵の世話をするだけでなく、卵を狙う外敵を追い払って孵化まで守る習性があります。
卵を守っている時期のオスのスズメダイは、卵に近寄ってくるものなら自分よりもはるかに大きい相手にも襲い掛かるくらい、非常に攻撃的になることがあります。そのためダイバーにも攻撃してくることがあるくらいです。餌を見つけると周辺のスズメダイがみんな集まってくるため、撒き餌釣りを始めるとスズメダイだらけになって、他の魚が釣れなくなることも珍しくありません。
餌に対しては貪欲なところがあり、自分の口より大きいルアーでも喰い付いてきます。どんな仕掛けでも釣れる魚なので、子供の釣りデビューにはとても適した魚です。小さい子でも引きが強すぎることがないので、安心して防波堤でも釣りができます。子供と釣り遊びをするには簡単に釣れるため子供は大喜びしますが、大人側としてはもっと別の魚を釣りたいと思われるような位置取りの魚でもあります。
熱帯性のスズメダイは水族館やダイバーの人気者
熱帯性のスズメダイの仲間は、4亜科・28属・300種類以上が属していて、浅い海の岩場やサンゴ礁に群れているのを良く見かけます。有名なクマノミもこのスズメダイの仲間のひとつで、色鮮やかな種類が多いことからもペットとしても人気があります。種類も豊富ならその生態もさまざまで、クマノミのようにイソギンチャクに住み着くものや、餌の海草が増えるように手入れをするものまで、見た目同様に生活ぶりも個性的な種属です。
スズメダイ科は単なる生態だけでなく、その大きさや性格もさまざまです。成長しても6cmほどにしかならないルリスズメダイや、スズメダイの仲間では最大級の25cmほどにもなるガリバルディと、大きさにも差が大きい種属の魚です。性格もデバスズメダイのように大人しいものから、成長するに従って攻撃的になるクロスズメダイなど、ペットとして飼うときにも相性が問われる種類もいます。
スズメダイは釣りでは「外道」の魚
スズメダイは磯釣りや堤防釣りでは、「餌取り」や「外道」と呼ばれて迷惑がられる魚として有名です。スズメダイは群れて生活しているため、餌撒き釣りのように餌が振ってくると一斉に群がってきて、周囲がスズメダイだらけになります。そのためアタリが来たかと思ったら釣れるのはスズメダイばかりで、がっかりさせられた経験を持つ釣り好きは多いことでしょう。スズメダイは迷惑な魚と、釣れてもすぐにリリースされています。
もしスズメダイが釣れ始めたら、場所変えをするほうがよっぽど早いです。なぜならその場所はすでにスズメダイの群れによって、占拠されたのと同じ状態になっていることがほとんどだからです。ただし、数釣りを楽しみたいのであれば話は別です。ちょっと撒き餌をすれば大量に寄ってくるので、どんな仕掛けでも簡単にたくさん釣ることができます。でもせっかく釣ったのなら、美味しく食べる方法はないのでしょうか?
スズメダイは実は美味しい魚
実は旬のスズメダイは、外道どころか本命を名乗れるとても美味しい魚なのです。海沿いの地域でも滅多に料理して食べることがないこともあり、その食べ方はもちろん食材としての知名度もとても低い魚です。サイズの小さい魚ということもあり、食材としての認知度の低さも手伝って、捌き方や食べ方の他、どんな料理があるかも知られていない、もったいない魚のひとつなのです。
スズメダイの旬はいつ?
スズメダイは夏に産卵期を迎えるため、春から初夏に向けてその実に旨味を溜め込みます。つまりスズメダイの旬は、産卵に向けて栄養を蓄える春~初夏ということになります。産卵期に入ってしまうと、オスはまだしもメスは卵に全部蓄えた栄養を取られてしまうため、旬を過ぎた夏以降は味が落ちてしまいます。他の魚でも一番の旬は産卵期を迎える直前で、産卵期を終えると味が落ちてしまうので覚えておくと良いでしょう。
スズメダイはどんな味?
産卵に向けてその実に脂を溜め込んだ旬のスズメダイは、白身魚ながら脂の乗った食味の良い魚へと変わります。旬のスズメダイの脂乗りの良さは、料理しようと食べ方に合わせた捌き方を始めた手が、その身の脂で滑ってしまうほどだと言う人もいるくらい、脂が乗りに乗っています。スズメダイは磯釣りの人気スポットには当然のようにいる魚なので、旬の時期に釣り上げたときには、一度持ち帰って料理してみませんか?
スズメダイが食材として嫌われる理由
旬の時期のスズメダイは、脂の乗った美味しい魚の上、外道とまで呼ばれてしまうくらい簡単に釣れる魚なのに、どうして食材としての捌き方や食べ方、料理方法といった情報が少なく、流通もしていないのでしょうか?確かにスズメダイは15cmという小柄な魚ですが、他にも小柄で良く食べられている魚は数多くいます。旬でもスズメダイが食材として嫌われる理由を調べてみました。
スズメダイは食べにくい魚
旬でもスズメダイが見向きもされない理由には、骨の硬さがあります。良く一緒に釣れるアジやイワシのような定番の魚と一緒に、捌き方も簡単な食べ方である丸揚げにしてみたものの、スズメダイだけは骨が硬くて食べにくかった、という話があるくらいです。食べたことがある人に言わせると、スズメダイは骨だけでなくひれやウロコも硬い、青魚とは比べ物にならない身の締まりも手伝って、全体的にカチコチの魚だというのです。
スズメダイは「お仙殺し」という地方名まである
このスズメダイの骨の硬さが理由と思われる昔話が、和歌山県に伝わっています。その内容とは、昔、紀州のとある村に住んでいたお仙という女性が、ある日お腹を空かせて食べた煮魚の骨がのどに刺さって、そのままお仙という女性は亡くなってしまったため、それ以降その魚を「お仙殺し」と呼ぶようになったというものです。実際今でも和歌山県では、スズメダイのことをオセンと呼んでいます。
こんな昔話が伝わるくらい、スズメダイの骨は硬くて食べにくいと有名です。食べられるものが限られていた時代ならともかく、現在のようにもっと簡単な捌き方で美味しく料理できる旬の魚が選び放題ならば、それこそわざわざ持って帰って食べるような魚ではなくなってしまったとしても、やむを得ないのかもしれません。こんなに食べにくいのに身の量まで少ないのでは、忘れ去られてしまう要素は確かにあります。
スズメダイの値段は?
スズメダイは一般には食材として流通していないため、旬の時期でも売られているのを見ることはまずない魚です。売られているスズメダイは、あくまで観賞用のペットとしてのスズメダイばかりです。このことからもわかるように、スズメダイは通常はスーパーなどで買って食べる魚ではなく、釣れてしまった中から食べる気になったときだけ持ち帰って、食べ方に合わせた捌き方をしてから料理する魚ということになります。
もしスズメダイを食べたいと思ったら、自分で釣りに行くか、釣りが趣味だという知人に頼んで「釣れてしまったもの」を分けてもらうか、どちらかになる魚です。もしくは後述のスズメダイ料理が盛んな地域に旅行に出かけたときに、食事どころで見かけたときに注文してみると良いでしょう。
スズメダイの捌き方
スズメダイはとにかく骨が硬い魚です。成長するにしたがってその骨の硬さは増していきます。スズメダイそのものの大きさを考えると、可食部分は非常に少ない効率の悪い魚であることは事実です。そんなスズメダイですが、サイズごとに捌き方を変えれば食べ方や料理方法も増えていきます。小さいスズメダイと大きいスズメダイ、それぞれのサイズごとに捌き方を紹介します。
大きいスズメダイの捌き方
大きいスズメダイは、骨だけでなくひれもウロコも硬いです。そのため、まずはとにかくひれをキッチンバサミで切り取ってしまいましょう。特に背びれと腹びれが鋭いので、ひれの先が手に刺さったりして、怪我をするのを防ぐこともできます。特に棘が付いているとか毒があるということはありませんが、その硬さと尖った先で怪我をしやすいため、スズメダイの捌き方のポイントとして覚えておくと良いでしょう。
全てのひれを切り取ったら、次はウロコを落としていきます。尻尾のほうから包丁でこそぎ落としていきましょう。スズメダイは皮も美味しいので、最終的に皮は付けたまま料理していきます。そのため皮は剥かないので、ウロコをしっかりと落としましょう。ただし胸びれから下のお腹の部分は、骨の構造上切り落としてしまうので、身の部分だけしっかり落とせれば問題ありません。
スズメダイのウロコを落としきったら、次は頭を落とします。スズメダイが小さい魚とはいえ、骨がかなり硬いので包丁で切り落としましょう。頭を落としたらあばら骨も硬いため、お腹の部分もまとめて切り落としてしまいます。お腹の構造的な問題で、他の魚のように腹骨だけ削ぎ取ることができません。元々小さい魚なのにさらに小さくなってしまいますが、骨がのどに刺さらないようにお腹ごと思い切って切り落としましょう。
大きいスズメダイは、中骨のない食べ方や料理方法を選んだほうが食べやすくなります。そのため元々小さい身ではありますが、食べやすいように捌き方も工夫しましょう。スズメダイの背中側から中骨に沿って、包丁を滑らせるようにして身を切り離し、3枚に下ろしてから料理に使うと中骨を気にすることなく、さまざまな食べ方ができるようになります。手間はかかりますが、旬のスズメダイにはそれだけの美味しさがあります。
小さいスズメダイの捌き方
小さいスズメダイも、大きいスズメダイと捌き方は一緒です。ひれを全て切ってからウロコを落とし、頭とお腹の部分をまとめて落としてしまいます。ただし3枚に下ろす必要はありません。小さいスズメダイは、まだ中骨もそこまで硬くはありません。小さい子供やお年寄りといった歯の弱い人にはさすがに硬いですが、普通に大人が食べる分には思ったよりも柔らかく、中骨からも旨味が出るので十分そのまま食べられますので大丈夫です。
料理によっては開きもおすすめ
腹側から包丁を入れて、背中まで切れないように中骨に沿って刃を滑らせます。左右の身を同じように中骨から削ぎ落としたら、中骨だけ取り除きます。もしやりにくいようであれば、尾びれは先端だけ切り落とすようにして、中骨を取るときは背中まで開いてしまい、尻尾の部分だけ身がつながった状態で左右の身を開いて中骨だけを出して、身のつながっている部分で骨だけ切り落とせば、料理のときに形を整えれば大丈夫です。
身の小さい魚を捌くときには、包丁以外の刃物を使うのもおすすめです。人によっては手術用のメスを使ったり、魚捌き専用のカッターを用意していることもあります。入手のしやすさや使う頻度の他、さまざまな専用包丁を調べて使いやすい刃物を用意しておくと、スズメダイに限らず料理しやすくなるのでおすすめです。
スズメダイを料理してみようと思ったけれど
スズメダイを料理に使いやすい捌き方ができたら、いよいよお待ちかねの料理を始めましょう。せっかく旬のスズメダイを頑張って捌いた以上、美味しい料理に仕上げたいものです。さて旬のスズメダイのおすすめの料理方法は?と思って調べてみると、一般に流通している量が少なすぎるのか、料理レシピの多さで名高いクックパッドでもわずか2品という少なさです。昔話にもなるくらいなのに、そんなにレシピが少ないのでしょうか?
スズメダイの料理方法は少ない?
通常他の魚の場合は、同じような料理でも個性を出したレシピ紹介がされているクックパッドだけでなく、他の料理サイトでもスズメダイのレシピ数はわずかです。料理サイトによってはそれぞれの魚の捌き方も紹介されていますが、スズメダイのこの不人気ぶりは、昔話になるほど以前から食べられている魚とは思えない扱いです。旬のスズメダイが美味しいことは徐々に広まっているようですし、本当にレシピがないのか探してみました。
スズメダイを普通に食べている地域もある
日本国内でもスズメダイを今も普通に食べている地域は、限られてはいるもののいくらかはあります。特に福岡や大阪では、人気もあるといいます。他にも愛媛県などでは、スーパーでもそれなりの値段で売っているという話もあります。スズメダイを良く食べるという地域では、スズメダイの食材としての認識はどの程度なのでしょうか?
福岡では郷土料理もある定番の魚
福岡県では、「あぶってかも」という郷土料理があるくらい、スズメダイは定番の魚です。しかもその「あぶってかも」という郷土料理名が、魚の地域名そのものになるくらいなじみの料理といいます。ただし旬のスズメダイでも、わざわざ漁をしてまで獲っているのではなく、定置網漁などで他の魚に混ざって捕まったものがほとんどらしく、そのほとんどが地元で消費されているというのが実情のようです。
大阪では韓国系の人が食べているらしい?
実はスズメダイは、韓国では一般的に食べられている魚です。そのため大阪でもスズメダイが食べられている、と言うよりも、韓国系の人たちが多く住んでいるために、単に母国料理としてスズメダイの消費があるというのが本当のところです。そのため大阪の郷土料理というわけではなく、大阪府民でもスズメダイの消費地として認識しているわけでもありません。こうして見てもスズメダイの人気は、日本ではかなり局地的と言えます。
スズメダイは実は高級魚?
日本でも定番の魚としてスズメダイを食べている地域では、スーパーでも売られていることがあるだけでなく、その値段もお高目と言います。確かに旬のスズメダイは美味しい魚ですが、他の地域では「餌取り」とか「外道」とか呼ばれて釣るのも簡単な魚が、果たしてそんな値段で売れるものなのでしょうか?福岡ではスズメダイを、食材としてどう評価しているのでしょうか?
福岡ではCMにも使われる特別な魚
スズメダイを使った福岡の郷土料理「あぶってかも」は、実は高級料亭で出されたのが始まりという、格式高い食通にも愛される高級料理です。その名前の由来は、「炙ると鴨の味」がすることから「あぶってかも」と呼ばれるようになった他に、「炙って噛も」(焼いて食べよう)という意味でもあるのだそうです。旬の走りのころの「あぶってかも」は、芋焼酎のメーカーがCMに使うくらい有名な、高級郷土料理なのです。
料理レシピはある!スズメダイを料理してみよう
スズメダイは旬のものでも局地的な人気しかありませんが、味をわかっている地域では高級魚として扱う、美味しい魚であることは間違いありません。捌き方と食べ方を工夫すれば、今まではリリースするだけだったスズメダイを美味しく食べられます。スズメダイの食べ方に困ったら、こんな料理はいかがでしょうか?
福岡の郷土料理!スズメダイの「あぶってかも」
旬のスズメダイの代表的な食べ方といえば、やはり福岡の郷土料理である「あぶってかも」をはずすことはできないでしょう。家庭でも簡単に本場のスズメダイ料理を楽しむことができる食べ方でおすすめです。用意するのは旬のスズメダイと塩だけで、スズメダイを始めて扱う人でも捌き方や食べ方がわからないという人でも、気軽にスズメダイの美味しさを堪能することができます。
スズメダイを売っている地域は少ないので、基本的には自分でスズメダイを釣ってくるところから始めることになります。休日に家族と釣りを楽しむのも良いでしょう。磯釣りの人気スポットのスズメダイは、おこぼれをたっぷりと食べられるおかげか、他よりも太り具合が良いと言う人もいます。いずれにせよ「餌取り」の異名を持つくらい良く釣れるので、数を揃えるのには特に苦労は要らないでしょう。
「あぶってかも」を作るのには、特に難しい捌き方は要りません。スズメダイを綺麗に洗ったら、少し強めに塩を振ってから、冷蔵庫で1日~2日寝かせておくと程よく塩気が入ります。うろこがある分どうしても味が染み込みにくいので、ここは数日我慢しましょう。できれば半日ほど天日干しにすると、余分な水分も抜けて旨味がより凝縮されます。
スズメダイに味が染みたころを見計らって、グリルやフライパンで20分程度じっくりと焼き上げます。先にグリルやフライパンは温めておいて、表面を固めて旨味が逃げないようにしてから、弱火でじっくりと焼き上げると良いでしょう。うろこがパリパリの狐色に香ばしく焼きあがったら完成です。本場博多での食べ方は、頭から丸齧りするとウロコが香ばしくて美味しいとか。中骨が柔らかい、小さめのスズメダイがおすすめです。
ところでこの「あぶってかも」という料理は、明治時代の終わりごろに潮流の加減からか、福岡市から宗像郡の前に広がる筑前海に、スズメダイが押し寄せたのがきっかけで生まれた料理です。船が進みづらくて困るくらいにあふれかえったスズメダイを、とにかくすくい取って何とかしたところ今度は始末に困り、とりあえず塩を振っておいたそうです。
ところがこれを後で焼いて食べてみたところ、脂乗りが良くて美味しかったことから郷土料理として定着し始め、昭和25年ごろからは福岡名物として認識されるようになったという、比較的新しい料理でもあります。現在はスーパーですでに下ごしらえを終えて塩も振った状態で売られていることもありますが、かつては八百屋で売られていたこともあるという、一風変わった経歴を持つ料理でもあるのです。
骨に注意!スズメダイの「煮付け」
スズメダイは煮付けも定番の食べ方としておすすめです。作り方にも特にコツはなく、一般的な白身魚と同じです。捌き方も小さめのスズメダイの捌き方で十分です。スズメダイの煮付けの良さは、旬が過ぎても美味しく食べられることです。スズメダイは磯釣りのシーズンを通して釣れる魚のため、一番味が落ちてしまう夏のシーズンでも良く釣れてしまいます。そんなときには煮付けにすれば、美味しく食べられるのでおすすめです。
スズメダイの旬も終わりのころ、卵を持ったスズメダイが釣れることも増えてきます。そんなときは、卵だけで腹子煮にするのもおすすめの食べ方です。卵も小さいため数は必要になりますが、お酒のつまみにも良い食べ方です。卵は内臓とも分けやすいので、シーズンが終わりのころにお腹の膨れたスズメダイが多く釣れたときに、試してみると良いでしょう。骨が硬いので、くれぐれものどに引っ掛けないよう注意してください。
スズメダイの刺身「せごし」
「せごし」という刺身を知っているでしょうか?平たく言ってしまうと、「骨が付いたままの刺身」ということになります。通常の刺身は3枚に下ろしてから、それぞれにあった切り方をして仕上げます。ですが「せごし」は捌き方も違います。まず3枚に下ろしません。そして皮を剥いても良いのですが、皮付きのままのほうが美味しいと言われるのも特徴的です。ではスズメダイの「せごし」の作り方は、どちらがおすすめなのでしょうか?
スズメダイのせごしも、皮付きのままのほうがおすすめです。そして肝心の作り方はというと、ウロコと余分なところを切り落としたスズメダイを、そのまま中骨に直角に包丁を当てて、中骨ごと薄切りにしていくだけです。中骨も噛めば旨味が出ますが、成長しきったスズメダイではさすがに硬すぎるので、小さい固体で作るのがおすすめの料理です。
ただし魚の骨が元から嫌いという人や、磯臭い臭いが苦手といった人にはあまり向かない料理方法です。北九州周辺では初夏を告げる食べ方で、酢味噌などの濃いたれと相性の良い食べ方でもあります。骨の旨味と刺身でありながら刺身とは違う、せごしならではの食感を楽しめるので、ぜひ一度挑戦して欲しい食べ方です。
せごしに良く似た韓国料理「チャリフェ」
大阪で韓国系の人が好んで食べるように、「チャリドム(韓国語でスズメダイ)」を使った有名料理があります。済州島の郷土料理で、「チャリフェ」と言います。「フェ」は韓国語で生食を指し、この「チャリフェ」も例外ではありません。料理としてみた場合、せごしにもうひと手間かけて味付けをして、韓国ならではの家庭料理に仕上げたといった感じの料理です。
チャリフェには家庭料理らしく、決まった作り方がありません。ウロコを落としたスズメダイを水洗いしたら内臓を取り出して、頭やひれ・尾の他にも家庭によっては皮も剥きます。頭を落とした背中部分から皮をはがしていくと、簡単に全ての皮を剥くことができます。下処理が終わったスズメダイは、せごし同様に生のまま中骨ごと薄く切っていきます。余分な脂や臭みを取るために、氷水で1分ほど締めると良いでしょう。
薄く切ったスズメダイに、甘めのコチュジャンや酢・醤油・砂糖・塩・味噌といった調味料を入れて味を調えたら、すりゴマや粒ゴマの他にごま油も回しかけてゴマの風味を足して、その他細かい部分は各家庭で異なります。のりやきゅうりの千切りを足したり、ネギなどの香味野菜を足したりと、アレンジしやすいのも家庭料理ならではの長所と言える料理方法です。
スズメダイは「炙り」も美味しい
大きい固体はさすがに中骨が硬すぎるので、3枚に下ろしてから料理するのがおすすめです。そんな3枚おろしにした身を、皮側をバーナーで炙ってスズメダイの「炙り」を作ってみませんか?確かに取れる身はほんのわずかな魚ですが、皮も美味しい魚なのでぜひ皮付きのまま料理したいものです。スズメダイをバーナーで炙ると皮が縮んで、小さい身からは想像が付かないような脂が浮き出てきます。
まさに旬のスズメダイを炙ると、その脂乗りの良さに驚くこと間違いなしです。とても「外道」扱いされている魚とは思えないはずです。それだけ脂乗りが良いということは、それだけ味も濃厚だということになります。わさび醤油やポン酢醤油などの、さっぱり系の調味料のほうが相性が良いです。付けた途端に表面に脂が浮いて、とても美味しい炙りを堪能できます。
スズメダイの中骨を取った「唐揚げ」
小さい固体ならば、ただ開きにして中骨を残したままでも大丈夫ですが、大きいものは中骨を取ったり3枚に下ろしてから唐揚げにしたほうが、食感も良く美味しく食べられます。姿揚げにするとひれの硬さで食べにくくなるため、あくまで捌いてから揚げたほうが、子供でも食べやすくなります。作り方のコツは、あくまで骨とひれに注意することだけなので、他の魚同様に手軽に作れる料理です。
スズメダイの料理は他にもまだある
スズメダイはレシピの紹介数こそ少な目なものの、さまざまな料理方法があります。例えばアラ汁のように味噌汁にすれば旨味がたっぷりでるので美味しく食べられます。釣りで雑魚ばかりのときにはまとめて鍋にすれば、簡単に美味しい雑魚鍋ができます。南蛮漬けにするときは素揚げもいいですが、素焼きのほうが人気があります。さらに開きにして3時間ほど干したら、甘辛醤油を塗って7分~10分焼いても美味しい炙りができます。
大きいスズメダイも、数が揃えば3枚に下ろしてマリネにしたり、ポワレのようなおしゃれな料理にも良く合います。身でつみれを作ってつみれ汁にしたり、臭み取りも兼ねた霜作りにしたりと、工夫次第でさまざまな食べ方で楽しめます。小さい上に硬いひれと中骨は厄介ですが、旬のスズメダイは脂の乗った濃厚さを楽しみ、はずれの季節でも濃い目の味付けであっさりした身を楽しむなど、工夫次第でさまざまな料理に使える魚なのです。
旬のスズメダイは捨てずに食べよう!
体の小さいスズメダイは、釣りの時には本命が釣れるのを邪魔する「外道」として扱われますが、旬の時期にはとっても美味しい魚です。料理の際に手間がかかるだけでなく、食べるときにはその骨の硬さが厄介な魚ですが、ただ捨てるにはもったいない魚なのです。もし磯釣りで釣れたときには、一度持ち帰って料理してみてください。きっと目からウロコの美味しさを味わうことができるはずです。