ふぐの調理師免許と試験についてのまとめ!取り方や難易度は?
ふぐの調理師免許というと、国家資格で全国共通と思っている人も多いことでしょう。ですが実際には地方自治体がそれぞれの基準で試験を設け、それぞれの免許でふぐの調理取り扱い可能範囲も異なるのです。そんなふぐの調理師免許の中でも、代表的な免許ごとにどんな差があるのか、受験資格や申請方法などの揃え方から免許の取り方の他、それぞれの試験ごとの難易度や試験の内容まで紹介します。
ふぐの調理師は何ができる?
ふぐの調理師免許を取得した正式なふぐ調理師は、天然だろうと養殖だろうと生きたままのふぐでも購入することができるだけでなく、自分自身の手で毒のある部位を取り除く除毒作業を行い、調理しお客に提供することもできます。とくに除毒作業が認められているところが、ふぐの調理師免許の重要な点です。そんなふぐの調理師免許を取るために、どうしたら良いのかをさまざまな観点から紹介していきます。
ふぐの調理師免許に関する注意点
ふぐの調理師の定義はWikipediaによると、「ふぐ条例に基づき都道府県知事が行うふぐ調理師試験において免許を取得した者」とされ、かつ「有資格者以外はその業務を行えない業務独占資格」とあります。さらに「都道府県によっては、ふぐ包丁師、ふぐ取扱者、ふぐ処理師、ふぐ調理士、ふぐ取扱登録者、ふぐ調理者」と呼ばれ方もさまざまであり、「国家資格ではない」と明記されています。
つまりふぐ調理師になるためには、各都道府県で試験を受けて合格し、免許を取得して初めてふぐ調理師を名乗れるわけです。ふぐ調理士免許が国家資格でないため、ふぐ調理士として店を開いたり働いたりするためには、その都道府県のふぐ調理士免許を取得する必要があるということになります。ではそのふぐ調理士免許の取り方は、いったいどうしたら良いのでしょうか?
各都道府県毎に定められている
先ほどの説明にもあったように、ふぐの調理師免許は各都道府県のふぐ条例の基準を満たす必要があります。そのため各自治体によって、受験資格や試験内容だけでなく、難易度においても大きな差があります。自治体によっては、講習を受けるだけで取扱が許可される場合もありますが、その場合には「登録済証」や「受講済証」が交付され、試験を行う地域では合格者に対し「免許」が交付されています。
この他にも都道府県によっては、ふぐ調理士免許を持っていれば他の地域に移住した先の免許を取る際に、申請手続きだけで認可が下りる場合もあります。例えば埼玉県でふぐの調理師免許を取得している場合には、調理師免許を取得していることと健康状態が良好であることを満たせば、東京都が行っている「ふぐ取扱者受け入れ講習」を受講した後、正式に申請することで東京都ふぐ調理師の免許が交付されるといった具合です。
このことからもわかるように、ふぐ調理師免許に対して地方自治体の基準の差が大きく、また移動したらその先で免許の取り直しが必要など、消費者側も安心できる制度内容でない上、ふぐ調理師側からみても業務に支障が出やすい点があるといったことから、一般社団法人全日本ふぐ連盟から政府に対して、再三にわたって日本全国でふぐ調理士免許の取り方に統一した制度を求めているものの、2016年度になっても実現してはいません。
主なふぐ調理師免許の取り方
主なふぐ調理師免許の取り方は、試験を受ける取り方と、講習を受けた後に試験を受ける取り方、講習を受ける取り方と自治体ごとに違います。いずれも学科と実技と両方において、講習なり試験なりが行われているものの、難易度にはかなり差があります。それでも人の命に係りかねないふぐを扱う調理師免許なだけに、その試験内容も気になります。ふぐ調理師免許の取り方について、難易度や試験内容など概要をまとめてみました。
受験資格は?
各都道府県によって資格内容は異なるものの、通常は調理師免許を持っていることと、一定期間ふぐを扱う業務に従事していたことなどが求められます。とはいえ、細かいふぐ調理師免許の試験受験資格は各都道府県ごとに異なるため、各都道府県の衛生課に問い合わせて、必要な手続きを踏む必要があります。そのため、ふぐ調理師免許を希望する場合には、必要とする自治体の衛生課にその都度問い合わせましょう。
筆記試験対策は参考書を使って
ふぐの取扱参考書は、数こそ少ないものの書店やAmazonなどの通販でも購入することができます。過去のふぐ調理士免許問題から編集された、専用の問題集も売られています。ふぐは種類によっても毒のある部位が違うため、ふぐの種類の見分け方からふぐ毒の処理の仕方まで、さまざまな知識が求められます。以前のふぐ調理師免許の問題を参考にした模擬問題集もあるので、上手に活用して正しい知識を身につけておきましょう。
特にふぐ調理師免許の試験が厳しいとされる東京都では、築地市場内で教材を買うことができます。青果部の入り口から市場全体を左に見つつ300mほど進むと、鮮魚売り場の一番奥まった辺りまで行けます。そこに「東京築地魚市場ふぐ卸売協同組合」という組合が設置した「ふぐ除毒所」があります。築地市場のかなり奥ですが、売り場ではなく事務所や処理場の一角に当たる場所、といえば奥まったところにあるのも納得できます。
その「東京築地魚市場ふぐ卸売協同組合」の「ふぐ除毒所」でも、教本や過去の問題集を購入することができます。ただし、あくまで市場の作業場ですので、最低限のマナーは守るようにしましょう。この他では、東京都食品衛生協会本部の総合事務所でも、同様の教本や問題集を購入することができるので、各自の都合で購入先を選ぶと良いでしょう。
実技試験対策①講習を受ける
地域によってさまざまですが、調理師専門学校の中には、定期的にふぐの取り扱い方について講習を行っている学校もあります。地元の調理師専門学校に問い合わせて、受講料などの費用や日程などを確認しておきましょう。特に実技は単なる試験対策としてだけでなく、お客に安全なふぐを提供するためにも絶対必要な技術です。単なる試験対策としてだけでなく、納得できるまで突き詰めておいたほうが良い技術です。
先ほど紹介した築地のふぐ除毒所でも、ふぐ免許受験者向けの有料レッスンを行っています。時間的には午前7時~12時までと早いですが、入会金を払えば何度でも教材費としてふぐ代とふぐの部位の識別札代を随時支払うだけで、専門家から指導を受けることが可能です。ふぐは種類によっても値段に幅があるため、常に一定額というわけにはいきませんが、1回でふぐ調理師免許を目指すのであれば通っておきたい講習です。
単に本でふぐを見るだけと、実際に本物のふぐを捌いてみるのとでは、手間のかかる場所や身分けにくい部位など、身に付く知識に大きな幅があります。さらにふぐは種類によっても毒のある場所が異なるため、たとえ講習といえどふぐ毒で事故を起こすのを防ぐための先行投資と思って、しっかり納得がいくまで受けておいて損はありません。試験を受けるときにも自信を持って受けられるまで、しっかりと勉強しておきましょう。
実技試験対策②有資格者に教えてもらう
通常ふぐ調理師免許を目指す人は、将来ふぐ料理店を出すことを目指しているか、もともとふぐを扱っている料理店で働いている人でしょう。だからこその勉強方法もあります。すでにふぐの調理師免許をもっている人に、自主練習で捌き方を教えてもらうことができます。また勤務先と付き合いのある仕入先の魚屋さんから、冷凍ふぐの購入だけでなく、練習に使ったふぐの有毒部分の対応もお願いできます。
ふぐの有毒部分は、人を殺せるだけの猛毒だけに、生ごみとして処分することができません。そのため鍵付きの保管容器に入れて、取扱を認められている魚屋さんに頼んで、処分してもらう必要があります。職場で付き合いのある魚屋さんから冷凍ふぐを購入したほうが、講習でふぐを買うよりも安く付くことが多いので、職場で自主練習ができるのであれば、特に自信のないうちは安く上げつつ技術を身につけることができます。
主な試験内容は?
各都道府県により違いがありますが、通常は筆記試験と実技試験に分かれます。筆記試験の中にはふぐそのものに関しての知識はもちろんのこと、食品衛生法やふぐ条例に関する知識や、公衆衛生にふぐ毒に関しての知識、ふぐの種類だけでなくふぐの臓器の鑑別能力、魚類額や栄養学にいたるまで、各自治体ごとにさまざまな内容があります。その中でも特に難しいとされるのが、ふぐの種類の識別試験です。
ふぐの種類の識別は、同じ種類のふぐでも大きさや実際の柄にムラがあるなど、写真集や教材に除毒所や講習会で入手できる資料だけで、完全に見分けられるまで勉強するのはかなり難易度が高いです。築地の除毒所で有料レッスンを受けている場合には、識別用のふぐも置いてありますが、もし築地周辺に住んでいる人であれば、築地市場内にある「尾坪水産」という魚屋さんに行ってみるのがおすすめです。
この「尾坪水産」の店主は、除毒所でふぐの除毒レッスンの講師でもある人で、親切なことに識別用のふぐを店頭に展示してくれています。見た目が違うことしかわからないようなふぐ達を、お店のスタッフの人に尋ねると、しっかりと違いや共通点について説明してもらえます。貴重な情報でありながら、無料で教えてもらえる非常にありがたいお店です。もちろん礼儀としてお店の状況を見極めたり、お礼の一品は持ち合わせましょう。
難易度や合格率は?
ふぐ調理師免許の試験の合格率は60%ほどというデータもあります。ですが一方でふぐ調理師免許の取り方の難易度には大きな差があり、試験すらない県もあるなど、その難易度は大きく開きがあります。実際、試験がなく講習のみの県もあれば、講習か試験かを選べば良いだけの県もあるなど、免許というには程遠い内容のふぐ調理師免許が認められている自治体もあるのが現状です。
また東京都では、ふぐ調理師が除毒したふぐのみを扱える「ふぐ取扱者」という資格も新たに設けられました。流通事情の変化に伴い、すでに除毒したふぐの流通量が増えたことに由来します。ただしふぐ取扱者は、ふぐ調理師が貼付した「有毒部位除去済」の表示がある身欠きふぐ以外は取り扱えません。またふぐ取扱者は都に届け出て許可を得た証拠である、「ふぐ加工製品取扱届出済票」を見やすい位置に提示する義務もあります。
一方でふぐ調理師免許の取り方が講習を受けるだけで良い県は、新潟・福井・長野・岐阜・大阪・兵庫・和歌山・岡山・広島・徳島・佐賀・長崎・大分などが該当します。中には「講習か試験か選ぶ」県もありますが、通常は取り方としては難易度が低い講習を選びやすく、実際これらの県の中では毒を持つふぐの真子で煮凝りを作って客に出し、食中毒が起こった県もあります。
調理師学校を卒業するときに講習を受けて、全員が合格できて簡単だった、という県が普通にあるというのは、ふぐの毒の強さを考えると免許の取り方がどうとか、難易度がどうというのとは違うレベルといっていい問題です。全国ふぐ連盟が、国家資格として危険物ともいえるふぐの取り扱いに、国の責任で基準を設けてふぐ調理師免許試験を行い、難易度もきちんと統一するべきだと主張するのももっともなことなのです。
東京でのふぐ調理師免許取得までの道
東京でふぐ調理師免許を取るのには、まず「調理師法による調理師免許を受けている者」であることと、「東京都知事の免許を受けたふぐ調理師の下で、ふぐの取り扱いに2年以上従事した者」か「それに同等する経験があると知事が認めた者」でなければなりません。調理師としてもふぐの取扱者としても、相応に経験を積んでいなければふぐ調理師免許に挑戦もできないとなっています。
ふぐ調理師免許の受験資格が認められたら、必要な書類を提出していきます。受験の願書を築地か都庁での配布の他、都内在住の人であれば郵送でも受け取れます。必要事項を記入したら都庁で書類を確認してもらい、その時に渡された振込み票を使って受験料およそ20,000円を支払います。その後は試験まで、ひたすらふぐとふぐに関する条例に関する勉強と、捌き方と除毒の練習を行うことになります。
東京都のふぐ調理師免許試験会場は、学校法人後藤学園で行われます。まずは学科試験で、東京都のふぐ条例の内容と施行規則に関することと、ふぐに関する一般知識を問われます。次に実技試験として、ふぐの種類の識別を行いその種類名を答えます。その次に実技としてふぐの各部位を食べられるものと食べられないものに分け、各部位の名称を用意してある札を添えて答えていきます。
最後にふぐの処理技術の試験として、有毒部位を取り除いたふぐを、半身ごとにちり材料と刺身として調理します。試験自体は7月末に行われますが合格発表は10月の頭に行われ、受験者全員に合否の通知が送られます。合格していた場合は速やかに免許の交付手続きを行うことになります。注意することは、申し込み書類は1ヶ月間配布されますが、受付は3日間だけなことです。さらに本人が手続きする必要があるので要注意です。
東京でふぐ調理師の資格を取るのには、受験だけでなく技術を高めるための講習費や練習費にも、かなりの経費がかかります。改めて捌くための包丁やまな板まで揃えるとなると、10万円かかると言う人もいます。ですが東京都のふぐ調理師免許は、他の府県のふぐ調理師免許よりも基準が厳しいため、改めて申請しなおす場合でも困ることがないので、一番価値の高いふぐ調理師免許のひとつといえます。
大阪でのふぐ調理師免許取得までの道
大阪ではふぐ調理師免許ではなく、「ふぐ取扱登録者」となります。ふぐ処理登録者資格の取り方は、大阪府主催のふぐ処理講習会で講習を受けることです。参加資格は、「満15歳以上で最初の3月31日を過ぎた者」で「ふぐ処理業を営もうと思っている者」であること、「ふぐ処理に従事しようと思っている者」で「すでに講習会を受けた者でも最近のふぐの知識と調理技術を習得しようとする者」です。
受講申込書配布期間は9月~10月前半ごろで、受付期間は配布終了日を含む2日間となっています。さらに学科講習日と実技講習日が、それぞれ別の日に行われます。学科講習では食品衛生関係法規に関してと食品衛生学、そしてふぐに関する知識の講習を受けた後に小テストを受けます。実技講習では各受講者でふぐを処理し、ふぐの基本知識に関して口頭で試問を受けることになります。
ふぐ処理講習会の小テストや口頭試問で不合格になることはほとんどなく、受講者はふぐ処理講習会修了証を交付されます。その修了証を持って大阪府庁に行って健康医療部で手続きすれば、即日「ふぐ処理登録者」として登録手続きを済ませることができます。東京都と比べても非常に難易度が低く、不合格者がほとんど出ることがないという、危険物を扱うにはあまりにも簡単に取れる資格といえます。
ふぐ調理師免許の資格を活かそう!
ふぐは人を簡単に殺せる猛毒を持つ魚です。そのふぐを取り扱うふぐ調理師には、食の安全を守る責任があります。そのためふぐ調理師免許は、ふぐを食材として扱うふぐ料理店や料亭、レストランなどでも資格手当ての対象となる資格です。責任ある資格だけにやりがいもあるその資格を取って、食の現場でその技術を活かしてみませんか?