スイカは野菜か果物かどっち?フルーツではない理由や定義まとめ
スイカは沖縄から北海道に至る全国で栽培され、一年中スーパーマーケットや八百屋さんで見かけるようになりましたが、旬は5月~8月です。美味しい果物?スイカは野菜じゃないの?と人によってスイカがどっちかわからなくなります。毎年夏になると美味しくなるスイカ。色々な視点から野菜か果物か考えてみました。また世界でポピュラーなフルーツのスイカを国別でどのように認識しているのか紹介します。
目次
スイカのこと
スイカの歴史
1857年にイギリス人の医療伝道者がアフリカ探検の際に南アフリカ中央部の砂漠地帯でスイカの野生種を発見して以来、現在のボツワナ共和国カラハリ砂漠が2万5千年~3千万年前のスイカ発祥地という説が濃厚で、それを裏付け様に、エジプトではツタンカーメン王のお墓からスイカの種が発見され、4000年以前の壁画にはスイカが描かれていたりと、地中海から欧州各地に広まった。
アジア方面ではインドで広まり東南アジアから11世紀に中国に広まりました。鳥獣戯画にスイカらしい丸いモノをウサギが持っている事から11世紀頃中国から伝わったという説があります。天正7年(1579)にポルトガル人が長崎に持ち込んだ説。とはっきりしない中、江戸時代初期にはすでに全国に広く普及していました。
スイカの種類
世界にはスイカの品種は300種以上あると言われています。そして世界でスイカの生産量がずば抜けて多い国が中国です。日本国内ではだいたい20種くらいのスイカが国内の市場にでまわっています。
スイカの大まかな区別は形や大きさ、果肉の色や表皮の色模様で区別できます。主な産地は熊本・千葉・山形です。スイカの原種といわれているカラハリスイカはスイカの赤い果肉ではなく、クリーム色の果肉で形は楕円型、表面の縞模様はあったりなかったりします。現地の方はカラハリスイカを日本のスイカのように果肉を食べるのではなく、水分補給のためスイカを利用しています。
野菜と果物の定義とは?
野菜と果物は明確な定義がありません。ただ、一般に野菜と果物を区別する際に基本的に草で生えてるか木になるかという違いで区別する傾向があります。もう少し詳しく言うと、野菜とは草本性の植物で田畑で栽培される副食物の総称です。草本性の植物とは茎と葉をもつ植物のことで簡単に「草」とも言えます。果物とは、樹木になる果実で食用になる木本性の植物です。木本性の植物とは茎が木質化して何年も生きる「木」のことです。
果物に関してもう少し詳しくいうと、果物は一般的に食用となる果実及び果実的野菜のうち強い甘味あり調理せずそのまま食べれるものを果物やフルーツと呼ぶことが多いです。昔から水菓子や木菓子ともよばれています。
植物学的にみたスイカは野菜か果物かどっち?
ウリ科のスイカ属の一年草で学名がCitrullus lanatus(キトルッルス・ラナトゥス)です。茎はつる性で長く伸び、葉は羽状に深裂し互生してます。と植物学的に一年草で草本性植物の理由からスイカは野菜に分類されます。ただし植物学上、野菜と果物とい分類はありません。スイカは植物学で種子植物のひとつです。
スイカは果実
生物学的用語で「果実」という言葉があます。では果実とは何か?種子植物の花の子房・花托・萼などが受精後に形成する器官とあります。果物は果実がなる植物ですが、野菜も果実がなる植物があります。ナスやトマトです。稲も果実という玄米が実がなります。ですが「果実」は生物学上で言われていて、一般的に「果実」=「果物」という認識です。
食品学的にみたスイカは野菜か果物かどっち?
野菜に多く含まれる栄養としてタンパク質ビタミンB群食物繊維ミネラルカリウム鉄不溶性食物繊維葉酸などで糖度は10度と低いものが多く、果物に多く含まれる栄養はブドウ糖果糖糖質炭水化物クエン酸水溶性食物繊維抗酸化物質などで、糖度が10度以上と高いものが多いです。この観点からみると野菜か果物を区別する基準が糖度で区別しています。だとすると、スイカの糖度は11~13度と理由でスイカは果物といえます。
スイカは野菜じゃなく果物
文部科学省公表している、「食品標準成分表」という日常的な食品の成分に関するデータをまとめたモノがあります。この中でスイカの分類は野菜ではなく果実類に分類されています。ちなみに、ここでいう果実は果物扱いになっています。
農林水産省的にみたスイカは野菜か果物かどっち?
1.田畑に栽培されること(栽培されていない山菜などは野菜と区別することが多い)2.副食物であること3.加工を前提としないこと(こんにゃくのような加工を前提とするものは野菜としていない。漬物のように原料形質がはっきり残っているものや家庭における簡易加工は加工にふくまない)4.草本性であること。
と農林水産省では定義していますが、生産・流通・消費においてのスイカの野菜か果物かの分類が違っていて、生産分野では前記の1~4のような特徴を持つ植物は野菜として扱っているとも述べています。
出典: http://iewine.jp
流通分野の青果市場ではスイカはフルーツデザートやおやつとして食べる理由から果物として扱い、八百屋さんやスーパーマーケットの消費分野ではスイカは流通分野と同じ理由でフルーツデザートやおやつとしてたべる理由から果物と扱っています。
野菜と違う?果実的野菜とは?
また、農林水産省では生産・出荷の統計上果樹として分類しているがスイカは野菜と分類しつつも果物として利用することから「果実的野菜」とあつかっている。農林水産省は「果実的野菜」と野菜に分類する条件を持つ作物の中で果物として利用している野菜を「果実的野菜」と分類してます。スイカ、メロン、イチゴは野菜に分類されますが、消費者は果物として認識にあつかっています。
逆に「野菜的果実」という分類もありアボカドやパパイヤは木本性の植物で果実がなるので果物と定義できますが、アボカドは消費者の認識は野菜として扱っています。デザートに出てきません。パパイヤは若い熟す前の果実は野菜とし、果実が熟したら果物とあつかっています。それらを「野菜的果実」と分類してます。
生産者的にみたスイカは野菜か果物かどっち?
生産している農家の方のスイカは野菜か果物どっち問題は、農林水産省の定義と同じ理由からスイカは野菜として扱っています。
スイカの生産現場で美味しいスイカを作るためには、摘果をおこないます。摘果とは多く実った果実の数を制限するため、果実が小さいうちに取り除く事により、残った果実により多くの栄養がいきわたり果実が大きく美味しくなるための作業です。その摘果された小さいスイカはお漬物にするため家庭で消費されたり販売されています。
世界的にみたスイカは野菜か果物かどっち?
アフリカの台地には欠かせないスイカ
スイカが生まれたカラハリ砂漠があるボツワナですが、この国だけで野生のスイカが約300種自生しています。ボツワナの乾燥した地域では、ほぼ水分のスイカは「砂漠の水がめ」として飲料だけでなく生活水に利用されてきました。今もスイカの栽培は盛んで、多種多様なスイカがあり甘くそのまま食べるものもあれば、料理に使うスイカもあります。そして夏のボツワナではスイカはポピュラーなフルーツです。
食べるだけでなく化粧品として伝統的に使われています。スイカの種から絞り取る油で出来るクリームは、お肌や唇の乾燥を防ぎます。また甘くないスイカの果汁をお肌にぬる美容法があります。最近では日本にも野生のスイカを使った化粧品が販売されてますれています。スイカは果物と認識し利用していますが、それだけでなくボツワナの人々には単に果物というモノだけではない大切な作物なのだと感じます。
カラハリ砂漠には野生のスイカがそこらじゅうに自生しています。そして、野生動物の水分補給として食べられています。野生動物が乾燥した砂漠地域で生き抜くためにも大切なスイカです。
中国のスイカは薬?
中国から伝わったスイカは漢字で「西瓜」と表します。中国の西側からきた瓜なので「西瓜」と言われています。その当時のスイカは品種改良された甘いスイカが中国に伝わり、フルーツデザートとして食後に食べる事から中国でスイカは果物と認識しています。
そして、スイカの種は西瓜子と呼ばれ、おつまみやお茶請け、おやつとして中国ではポピュラーな食べ物です。種の収穫目的の専用スイカもあります。そして、スイカの皮には解熱作用やむくみを治すなど薬として利用されています。
地中海のスイカはポピュラーなフルーツ
アフリカ北東部から地中海辺りに伝わった頃のスイカは交易品や旅の水分補給するためのモノとして利用されていました。その後に200年頃に書かれたヘブライ語の文献にスイカはイチジクやブドウといった分類にされていた事はスイカは甘い果物としてデザートにたべられていました。この理由から地中海の人々は昔からスイカを果物として認識していました。
地中海トルコのある青果市場ではカットフルーツの屋台でスイカが販売されてます。今も昔も水分補給にもなっているスイカです。
ヨーロッパのスイカ甘い果物
16世紀にはヨーロッパ中部と西部に伝わりイギリスにも広まりました。その頃のヨーロッパでスイカは「健康全書」にスイカが描かれた作品が残っておりその作品の題名に「果物のある静物」とあります。それらの理由から、ヨーロッパでスイカは果物として認識していました。その頃のスイカはすでに地中海辺りで品種改良された甘いスイカが伝わりました。
アメリカのスイカは野菜か果物かどっち?
そして後17世紀にヨーロッパからの移民によってアメリカに伝わりました。その当時、アメリカの農園主であり芸術家がスイカについての記述を残しています。「たいそう美味で舌にうれしく、目にも美しい。外皮は生き生きとした緑色をして~真紅の果肉に、種は黒くつややかだ~」とスイカについて語っています。
これだけでは野菜か果物かがはっきりしません。現在のアメリカでは一般的にスイカは果物と認識されています。その理由は「果物とは果実の中に種があること。」おおざっぱな区別ですが、その点からみるとスイカは果物で、フルーツとしてデザートにスイカを利用している点も果物としてアメリカでは扱っています。
スイカは野菜?全米スイカ協会の見解
もう一つスイカの分類について、アメリカにある「全米スイカ協会」という非営利団体があります。1500のスイカ生産者と輸出業者及び輸入業者を代表する団体です。その全米スイカ協会はスイカの野菜か果物かどっちか問題を、色々な観点からスイカについて述べています。
1、スイカはフルーツです。ジューシーで甘い果肉を持っています。2、スイカは野菜です。ウリ科の植物に分類され、野菜のように地面から採取されます。3、ウェブスター辞書によるとスイカは野菜生産システムを用いて野菜として栽培されるためスイカは野菜と考えられている。4、スイカは一般的にフルーツとして他の果物と同じように使用され、新鮮で楽しまれます。英文をだいぶ掻い摘んで記載しました。
植物としてみれは野菜の特長を持ち野菜と区別できます。が甘くジューシーで一般的にフルーツとして他の果物と同じ扱いから果物ともいっています。そして、アメリカの辞書にはスイカは野菜と記載されています。日本と同様にその分野それぞれでスイカは野菜・果物と扱いが変わります。
進化してきたスイカ
南アフリカから広まったスイカは苦いモノでした。ですが多くの水分を含む植物なので水の確保のための栽培が盛んになりより美味しく水分補給したいため品種改良が進み甘いスイカが生まれました。この当時のスイカの扱いからみて果物ではなく野菜とも言いにくい作物でした。
スイカの成分
スイカの約90%水分です。スイカが赤い果肉なのはβカロテンとリコピンです。βカロテンは抗酸化作用や免疫力を高めます。リコピンは生活習慣病の原因といわれている活性酸素の働き過ぎを抑え、動脈硬化を予防します。
スイカ特有の成分がシトルリンです。シトルリンとはゆうりアミノ酸のひとつで、ウリ科の植物に多く含まれており血管拡張作用があり血流改善につながり、手足のむくみがとれます。
そして、スイカの種にはオレイン酸やビタミンE・鉄分・亜鉛などミネラルが豊富です。オレイン酸は一価不飽和脂肪酸といわれる油で美肌効果や便秘解消に効果があります。コレステロールを下げる効果もあります。鉄分は貧血予防になります。亜鉛は血液生成に不可欠な栄養素です。
美味しいスイカの選び方
新鮮なスイカは縞模様がはっきりしていて黒い部分が色濃い状態が新鮮と判別できます。熟度をみる方法がスイカを叩いて見分けます。完熟したスイカからはポンポンとすんだ音がします。未熟なスイカからはポンポンとかパンパンと高い音がします。熟しすぎはより低い音がします。
ツルとスイカ本体の付け根が凹んで見えるくらい周りが盛り上がっているスイカも完熟しています。スイカのお尻の部分が大きいものは食べごろです。逆に小さいとまだ熟していない可能性があるので、少しおいて熟成しましょう。ただし、1週間を目途にしましょう。
スイカの野菜か果物かどっち問題のまとめ
スイカは社会的には果物としてデザートやお菓子に使われています。甘くない白い皮の部分は漬物にしています。小さい未熟なスイカは丸ごと漬物にしていたりもします。なぜ?野菜・果物と区別する必要性はないようにも思えます。
アメリカでは輸入する時にそのモノが野菜か果物かで課税か非課税と違ってきます。そうなるとはっきり区別しない事には業者が困ります。そういった理由が国内には見当たりません。もっと詳しく調べたら、スイカが野菜か果物か納得できるような理由があるのでしょう。ただ、美味しければどっちでもよいと思います。