2018年11月18日公開
2024年08月16日更新
「ひやおろし」とは?秋あがりとの違いと秋限定で味わう日本酒を解説!
日本酒には、季節に合ったおすすめの飲み方があります。ひやおろしもその飲み方のひとつです。ひやおろしは、9月から11月の時期に飲まれる日本酒の飲み方です。ここでは、そもそもひやおろしとはどんな日本酒なのか?、ひやおろしの特徴や種類、ひやおろしと秋あがりは何が違うのか?などの疑問と、9月、10月、11月、それぞれの時期におすすめのひやおろしの銘柄や飲み方などを解説、紹介していきます。
目次
ひやおろしについて詳しく知りたい!
日本を代表する酒、日本酒が今、世界的なブームとなっています。アメリカ・ニューヨークやハワイなどでSAKEイベントが開催されているほか、ヨーロッパなど世界各国で注目されています。
日本酒ブームのきっかけは、ヘルシー志向の欧米人が通う日本食レストラン、寿司や和食ダイニングで食事とともに日本酒を楽しむ人たちによって、その素晴らしさは拡がっていきました。昨今、日本酒の奥深さ、味わい、繊細さなどに魅了されている外国人が増え続けています。
日本には、春夏秋冬と素晴らしい四季があります。その季節に合った服を身に着け、季節に沿った食事をして過ごす、日本は四季と共に昔から生活しています。その日本で作られている日本酒にも季節に調和した最適な飲み方があることを知っていますか?
日本酒は、秋にできた新米を原料にして冬から春先にかけて仕込まれます。昔から日本酒を仕込む時期は、真冬が最も適した時期といわれています。そして、春にできた、できたてのお酒を「しぼりたて」といい、ワインに例えるとボジョレーヌーボー、その年のフレッシュな酒を味わいます。そのまま保存して夏まで寝かせたものが、夏に味わう「夏の生酒」です。
春のしぼりたてから少し丸みを帯びた華やかさが生まれた夏の味を楽しみます。その夏の生酒に一度火入れをして秋に出す酒が「ひやおろし」です。ここでは、この夏の生酒に一度火入れをした秋の酒「ひやおろし」について詳しくみていくことにしましょう。
ひやおろしと秋あがりの違いは何?
「ひやおろし」の定義は、「厳冬期に醸造した清酒をひと夏越して超熟させ、秋口に入ってほどよい熟成状態で出荷するもの」とされています。厳しい冬に仕込まれた酒を、春先に絞り、熟成に耐えられるように一度、火入れ(加熱殺菌)します。夏の間、冷えた蔵で貯蔵し、再び火入れをする前の冷えた状態のまま卸すことから「ひやおろし」と呼ばれています。
ひやおろしとはどんな日本酒?
日本酒の美味しさを語るうえで、一番の時期、それがひやおろしを味わうことができる秋口といわれています。俳句では、「ひやおろし」は秋の季語となっているほどひやおろし、秋あがりという言葉は、昔から季節を表現する言葉として使われています。
ひやおろしとは、厳しい冬から春、そして夏を越した秋口に、生のまま樽詰め(瓶詰)して出荷される日本酒です。この時期の日本酒が一番旨いと楽しみにしているファンも少なくないとっておきの酒、それがひやおろしです。
ひやおろしの特徴
ひやおろしは、時期に限りがあります。9月、10月、11月のわずか3か月です。秋に収穫した米を冬に仕込み春、夏と熟成された酒は、秋のこの時期が一番、熟成がグッと深まり、味わいの変化が楽しめる時期になります。月ごとに味わいが変わることから、それぞれに風流な名称がついています
9月は、爽やかさを残しながらも夏とは異なるまろやかさや角がとれた酒、夏を越した酒で「夏越し酒」といいます。10月、朝晩の冷え込みを感じる季節、「秋出し一番酒」といいます。この時期のひやおろしが一番旨いと評価する人も多い人気の時期のひやおろしです。そして11月、すっかり鍋が恋しい季節になるこの時期のひやおろしを「晩秋旨口(ばんしゅううまくち)」といいます。
11月ならではの飲み方としておすすめなのが、ひやおろしをぬる癇や熱燗で味わう楽しみ方です。9月、10月、11月と秋の味覚と一緒に季節とともに変化するひやおろしを存分に味わい尽くしましょう。
ひやおろしの出荷時期
ひやおろしの出荷時期は、9月から11月の秋口です。1年のうちのたった3か月しか味わうことのできない貴重なひやおろしですが、出荷の時期によっても美味しく飲む、飲み方は変わってきます。ここでは、時期ごとの美味しくひやおろしを飲む、おすすめの飲み方を紹介していきます。同じ銘柄のひやおろしで9月、10月、11月と月ごとに飲み比べをするのも、ひやおろしを楽しむおすすめの飲み方です。
秋あがりとはどう違うかを知ろう
秋になると「ひやおろし」と「秋あがり」が出回ります。ひやおろしと秋あがり、この2つにはどんな違いがあるのでしょうか?
ひやおろしは、厳しい冬に仕込まれた酒を、春先に絞り、熟成に耐えられるように一度、火入れ(加熱殺菌)します。夏の間、冷えた蔵で貯蔵し、再び火入れをする前の冷えた状態のまま卸した酒のことです。一度火入れされて熟成した酒は、しぼりたてのフレッシュさから、味に旨みが増します。春から夏まで熟成された酒の味が、秋になると味があがることから「秋あがり」と呼ばれています。
結論、「ひやおろし」と「秋あがり」は、同じ意味で使われることが多いようです。ただ、秋になり味が下がったひやおろし、日本酒の味が落ちたものを「秋落ち」といいます。秋あがり、秋落ちと、今秋のひやおろしの出来や状態を現わす言葉として使われていることが多いです。
ひやおろしの種類を特徴とあわせて詳しく紹介
9月ごろに出回る「夏越し酒」
春から夏を越した時期に出回るひやおろしが「夏越し酒(なごしざけ)」です。春に味わった「しぼりたて」より、苦みや渋みなどの角がとれて、まろやかな味わいに変化しているひやおろしの”走り”を味わうことができます。美味しい飲み方やおすすめの料理はのちほど詳しく紹介します。
10月ごろに出回る「秋出し一番酒」
朝晩ひんやりとする10月頃のひやおろしが「秋だし一番酒」です。この時期のひやおろしが一番美味い、飲み頃の酒といわれています。9月の夏越し酒から、気温もグッと下がるこの時期のひやおろしは。味がさらに深まり、落ち着いた香りと滑らかな口当たりが特徴です。美味しい飲み方やおすすめの料理はのちほど紹介します。
11月ごろに出回る「晩秋旨酒」
鍋の恋しい季節になる11月に出回るひやおろしは「晩秋旨酒(ばんしゅううまざけ)」といいます。名前の通り、秋が深まり、円熟味を増した旨い酒に仕上がっています。晩秋旨酒の美味しい飲み方やおすすめの料理はのちほど詳しく紹介します。
ひやおろしの美味しい飲み方を知ろう!
夏越し酒の美味しい飲み方とおすすめ料理
夏越しの酒と合わせたいおすすめの料理は、やはり秋の味覚です。脂ののった秋刀魚の塩焼きやきのこのホイル焼き、松茸の土瓶蒸しなどが良く合います。
夏越し酒の美味しいの飲み方は、冷や、常温、みぞれ酒です。みぞれ酒は、今、日本酒の飲み方としてじわじわと人気が出てきている飲み方です。是非、覚えておきましょう。みぞれ酒とは、-10度~-15度で衝撃を与えず、ゆっくり冷やすことで酒が凍らず液体状態に、そのまま冷やしたグラスに注ぐとまさにみぞれのようなシャーベット状になります。とても繊細で贅沢な飲み方です。夏越しの酒と合わせたいおすすめの料理は、やはり秋の味覚です。脂ののった秋刀魚の塩焼きやきのこのホイル焼きや松茸の土瓶蒸しなどが良く合います。
自宅でもできる「みぞれ酒」の作り方を紹介します。
- まず日本酒を冷蔵庫でキンキンにしっかりと冷やしておきます。瓶からより冷たくなる容器に移し替えると短時間で冷やすことができます。
- 日本酒がしっかりと冷えたら、冷凍庫に移します。そこから90分きっちり冷やします。この時、飲むグラスも一緒に冷やしておきましょう。
- 90分冷やしたら、冷凍庫からゆっくり取り出して、少し高い位置からグラスに注ぎます。しっかりと過冷却状態になっていれば、グラスに日本酒が注がれた瞬間に氷始めます。シャリシャリシャーベット状のみぞれ酒の完成です。
秋出し一番酒のおいしい飲み方とおすすめ料理
秋出し一番酒の美味しい飲み方は、冷やでも、お燗にしても美味しい酒です。料理に合わせた飲み方で楽しめます。
秋出し一番酒に合うおすすめの料理は、やはり秋が旬のジビエ料理、そして意外ですがチーズ料理も合います。脂ののったジビエは塩コショウで、チーズ料理は、さつまいもやかぼちゃのグラタンにするのもおすすめです。
晩秋旨酒のおいしい飲み方とおすすめの料理
晩秋旨酒に合うおすすめの料理は、鍋料理です。旬の食材を使った、キノコ鍋や牡蠣鍋など好みの鍋と合わせることをおすすめします。
熟成も進んだこの時期おすすめの飲み方は、やはりお燗が一番おすすめです。ぬる癇、熱燗、お好みの飲み方でいただきましょう。
ひやおろしのおすすめ銘柄を紹介
夏越し酒のおすすめ銘柄
夏越し酒におすすめの「春鹿・純米吟醸ひやおろし」は、奈良県の酒蔵で造られている人気の春鹿のひやおろしです。爽やかな香りを残しながらも、ほどよく熟成された旨みのある秋あがりです。価格は、1.8リットル・2,700円、720ミリリットル1,400円です。
福井県の田嶋酒造が造る「福千歳~山廃純米ひやおろし生詰」は、ワインのようなスッキリとした酸味のあるひやおろし、まさに9月に飲む、秋あがりにぴったりです。ラベルもフクロウが描かれて縁起物として人気のひやおろしです。720ミリリットル1,400円です。
長野県の真澄が造る「山廃純米吟醸ひやおろし」は、芳醇な香りに甘味と酸味のバランスが良く、食事に合うひやおろしです。昔ながらの製法「山廃造り」で醸した複雑な味わいが楽しめる酒です。720ミリリットル1,680円です。
山廃純米吟醸ひやおろしの「山廃」とは、どのような製法なのでしょうか。少し解説します。山廃(仕込み)とは、「山卸し廃止」の略語です。山卸とは、蒸した米、麹、水を混ぜて粥状になるまですり潰す行程のことです。この山卸しで造っている酒を生酛(きもと)造りといいます。日本酒を造る技法として最も伝統的な仕込み方法です。この生酛造りで行われている山卸しの行程のみを省いて作られているのが「山廃(仕込み)」です。
天然の乳酸菌や酵母菌を時間をかけてゆっくりと発酵させて造られている生酛造りの製法は同じです。山廃とは、生酛系の伝統的な製法で造られている日本酒です。
現在の日本酒の製法の大半が、「速醸酛」という方法で造られています。人工の乳酸を加えて造る「速醸酛」は約2週間で酒母が造られているのに対し、生酛造り、山廃仕込みは、速醸酛の倍、30日かけて酒母が造られています。その香りや味わいの違いを比べてみるのも日本酒の楽しみ方のひとつです。
秋出し一番酒のおすすめ銘柄
青森県の八戸酒造が造る「陸奥八仙ひやおろし」は、9月のころは、フルーティーな甘みや香りを感じ、10月に入ると、さらに旨みとまろやかさが加わり、芳醇な味わいを楽しむことができます。価格は、1.8リットル2,400円です。
秋だし一番酒におすすめの「大山・特別純米ひやおろし」は、山形県鶴岡の酒蔵で造られている、毎秋人気のひやおろしです。2種類の酵母を使って作られた味は、深みのある味わいと華やかさのバランスが魅力の秋あがりです。価格は、1.8リットル2,640円、720ミリリットル1,380円です。
「越乃景虎~特別本醸造・ひやおろし」は、特別本醸造の生詰め作りですが、深みのある味わいとすっきりとした後味で杯が進みます。焼きさんまや土瓶蒸しなど、和食に合う酒です。価格は、1.8リットル2,600円、720ミリリットル1,300円です。
晩秋旨酒のおすすめ銘柄
晩秋旨口におすすめの「月山・純米吟醸ひやおろし」は島根県の吉田酒造で造られている、日本酒が苦手な人でも飲みやすいと評判のひやおろしです。超軟水で仕込まれる優しい味わいを9月、10月、11月と時期違いで楽しむのに最適な秋あがりです。価格は、1.8リットル2,400円、720ミリリットル1,200円です。
兵庫県神戸市の酒心館で造られる「福寿~純米ひやおろし」は、完熟した甘い香りと旨みをしっかりと感じられる辛口の酒です。酒心館は、杜氏制度から製造体制を全員社員に変更して、若い人たちが新しい酒造りに取り組んでいる酒蔵です。価格は、720ミリリットル1,300円です。
新潟県の千代の光酒造が造る「千代の光~ひやおろし」は、妙高連峰から流れる湧き水を仕込み水として使っています。雪どけの水で仕込まれた酒は、柔らかく優しい口当たりとキレのある後味が、秋の味覚とよく合います。価格は、1.8リットル2,100円、720ミリリットル1,050円です。
ひやおろしの定義や味の特徴を知って秋限定の味を楽しもう!
日本酒を楽しむ方法のひとつに、飲み方があります。日本酒の特徴として、他のお酒にはない飲み方のバリエーションが多いこと。ロック、冷酒、冷や、ぬる癇、熱燗と、その日本酒に適した温度、食事に合う温度、季節に、気分にとさまざまに楽しむことができます。では、日本酒の飲み方について少し、みてみましょう。
日本酒の飲用温度として最適とされている温度が5度~60度です。スタンダードな飲み方は、「冷やす」、「常温」、「温める」の3つの方法です。日本酒の温度によっても呼び方に違いがあります。冷酒でも、最近人気の-10度のみぞれ酒、5度の雪冷え(ゆきびえ)、10度花冷え、常温20度から25度は冷やといいます。お燗は40度がぬる癇、50度が熱燗、50度以上60度のお燗を飛び切り勘と呼びます。
日本酒を飲む時に、忘れてはならないもの、それが「和らぎ水(やわらぎみず)」です。和らぎ水とは、日本酒の合間に飲むチェイサーです。和らぎ水があるのと無いのとでは、酔いの回り方や次の日への影響、体への負担に大きな違いがあります。日本酒を飲む時には、必ず和らぎの水をお供に楽しむようにしましょう。
ひやおろし、秋限定で味わる日本酒、いかがでしたか?ひやおろしには、日本酒の味わい方の奥義、そして日本の四季、日本語の表現の美しさなど、ひやおろしの知識を深めたことで得られたものがたくさんありました。9月、10月、11月にしか味わえない、移りゆく、この3か月に深まる日本酒の味の変化を香り、味わってみましょう。
そして、みぞれ、雪冷えや花冷えと、美しい呼び方で、さらっと注文できるようになりましょう。それだけで女性として株が上がりそうです。そして、「和らぎ水」をお忘れなく。