アトランティックサーモンは意外と危険?アニサキスについて調査!

アトランティックサーモンという鮭がいるのを知っていますか?アトランティックサーモンは脂ののりも良く美味しい鮭として、スーパーでも時々見かけることのある鮭です。ところがここ最近、このアトランティックサーモンが危険な魚という噂が、ネット上でもたびたび話題に上がるようになりました。アトランティックサーモンが危険だという噂の真偽と、危険な寄生虫アニサキスについても調べてみました。

アトランティックサーモンは意外と危険?アニサキスについて調査!のイメージ

目次

  1. 1アトランティックサーモンって知っている?
  2. 2アトランティックサーモンは輸入されている鮭の一種
  3. 3アトランティックサーモンはこんな魚
  4. 4アトランティックサーモンには旬がない?
  5. 5アトランティックサーモンとトラウトサーモンとの違いは?
  6. 6養殖アトランティックサーモンは危険という噂を検証
  7. 7日本で食べるならアトランティックサーモンは安全
  8. 8アトランティックサーモンにも寄生虫アニサキスがいる?
  9. 9海外でアトランティックサーモンを食べるときの注意点
  10. 10アトランティックサーモンは美味しい安全な魚

アトランティックサーモンって知っている?

アトランティックサーモンという鮭が、時々スーパーで売られているのを見かけることがあります。ですがこのアトランティックサーモンがどんな鮭なのか、はっきりと知っている人は少ないことでしょう。このアトランティックサーモンがどんな魚で、危険なのか安全なのか寄生虫アニサキスも含め調査してみました。

アトランティックサーモンは輸入されている鮭の一種

アトランティックサーモンは日本産ではなく、海外の鮭の一種で全て輸入の鮭です。そのため日本産のシロザケ・ギンザケ・ベニザケなどとは、肉質や色もはっきりと違います。一般的にスーパーに出回ることは少なく、むしろ回転寿司で「キングサーモン」として売られたり、レストランで使われることの多い鮭です。単価が安く大量仕入れが求められるため、チェーン店でもないと扱いきれないのも理由のひとつです。

アトランティックサーモンはこんな魚

アトランティックサーモンという魚は、その名前を意識して食べられることはほとんどない魚です。回転寿司でもレストランでも、「キングサーモン」や単に「サーモン」と呼ばれているため、アトランティックサーモンという魚がいることを知らない人も多いことでしょう。知らず知らずに食べているアトランティックサーモンがどんな魚か、紹介していきます。

アトランティックサーモンは英名

アトランティックサーモンの和名は、タイセイヨウサケといいます。大西洋と付くだけあって、生息域は大西洋の温帯域から北極海域です。日本の鮭と同様に川で卵を産みますが、かえった稚魚はそのまま1年~6年ほどを川で過ごしてから海に下ります。そして1年~4年を海で過ごして再び川に上がってきて卵を産みます。体長は最大150cm、体重は35kgにもなります。

アトランティックサーモンの産地

アトランティックサーモンは、1970年前後からノルウェーで養殖が始まり、1980年代から日本に輸入されるようになりました。今ではイギリス・カナダ・チリ・オーストラリアでも養殖が行われています。日本に輸入されている大半のアトランティックサーモンは、ノルウェーから輸入したものです。近年ではオーストラリアのタスマニア産のアトランティックサーモンも、輸入されるようになっています。

アトランティックサーモンには旬がない?

輸入されているアトランティックサーモンは、全てが養殖されたものです。そのため出荷時の品質は均一に保たれるよう調整されているため、時期によって味や栄養に違いが出る、いわゆる「旬」というものがありません。そのため一年を通して同じ美味しさを楽しめる魚であり、逆を言えば一年中旬といえる状態で流通している魚です。

アトランティックサーモンとトラウトサーモンとの違いは?

ノルウェーからの輸入鮭と聞いて、トラウトサーモンを思い出した人も多いことでしょう。このトラウトサーモンも、ノルウェーから多く輸入されている魚です。このトラウトサーモンとアトランティックサーモンは、同じく養殖された魚ですが種類ははっきりと違いのある魚です。このトラウトサーモンがどんな魚で、アトランティックサーモンとの違いも合わせ紹介します。

トラウトサーモンはこんな魚

トラウトサーモンはサーモンとは言いながら、他の鮭とは決定的な違いがあります。それはトラウトサーモンは、人工的に作り出したニジマスの品種であることです。そのため名前も本来は「サーモントラウト」といいます。トラウトサーモンはアトランティックサーモンと違い、身の色の赤身が濃くて鮭と良く似ているため、ギンザケの代わりに良く「鮭」として売られています。

トラウトサーモンの養殖は、ノルウェーはもちろんチリでも盛んに行われていて、近年世界最大の養殖量を誇るチリからの輸入が増えています。トラウトサーモンは日本でも養殖が行われていて、その市場規模はギンザケをしのぐ勢いを見せています。実際スーパーでも多くのトラウトサーモンが、ギンザケとともに並んでいます。

アトランティックサーモンは品質が優れていながらも安価で、加工されてもスモークサーモンのように単価を上げるものであるのに対し、トラウトサーモンは生食から塩漬けまで利用の幅が広いのも大きな違いにあげられます。他にもトラウトサーモンは配合種の特徴として成熟することがないため、鮭やアトランティックサーモンと違い、出荷調整しやすいという強みもあります。

養殖アトランティックサーモンは危険という噂を検証

近年ネットを中心に、養殖アトランティックサーモンは危険という噂が広まっています。いくつかのブログやサイトでも話題に取り上げられていますが、実際のところ事実はどうなのでしょうか?本当に養殖アトランティックサーモンが危険なのか、それともちゃんと安全なのかを検証してみました。

ノルウェーでもチリでもサーモンの養殖は国家事業

ノルウェーでは豊富な海産資源を国家財源とするべく、早くから国家プロジェクトとして魚を好んで食べる国でも経済効果を見込める国として、日本にノルウェーの海産物を売り込むべく、視察や交渉を重ねてきた国です。『プロジェクトジャパン』と呼ばれるこの国家戦略は1986年に始まり、最初はししゃもの代用であるカペリンという魚の売込みを中心に考えられました。

ですがプロジェクト始動の前年の視察で、方針転換が決まったのです。それは日本人が鮭を、生で食べていないことに気が付いたことが発端でした。今では普通に食べられているサーモンの握りは、ノルウェーがこのプロジェクトのために考え出した料理だったのです。ノルウェーの首相が回転寿司点でサーモンの握りを振る舞うなどの徹底した戦略で、30年もの月日をかけてノルウェー=サーモンのイメージを定着させていったのです。

その後もノルウェーは日本に自国産の魚の売込みを続け、アトランティックサーモンだけでなくサバやトラウトサーモン、ニシンにズワイガニやタラバガニまでノルウェーからの輸入が増えています。特にトラウトサーモンは、チリ産との質の違いを前面に押し出したブランドとして「フィヨルドトラウト」と名付けて、日本への輸入量の8割がレストランに回されている、高級ブランドとして確立させています。

ノルウェーが国内漁獲量の95%を世界146カ国に輸出しているように、同じように長くて入り組んだ海岸線を持つチリも、魚の養殖と輸出に国家事業として力を入れている国の1つです。地形的にもノルウェーと似ており、魚の養殖が盛んです。両国とも批判の対象にされたのは、「餌」・「殺虫剤」・「抗生物質」・「密集度」といった、薬品と海洋汚染による残留物質の含有量による安全性でした。

WWFがお墨付きを与える「ASCマーク」

安全性を疑う情報の出所は、イギリスの番組だったりアメリカの新聞記事だったりと違いはありますが、共通して言えることは、出所がはっきりしていないデータを持ってきたり、都合の良い部分だけ誇張するといった点です。そのため、不安を煽られた人たちによりかなりの速度で拡散したものの、専門家による安全性を保障する丁寧な反論のほうが広く拡散する結果となりましたが、いまだ煽り記事の影響は色濃く残っています。

確かに養殖産業が環境に与える影響は決して小さくありません。WWF(世界自然保護基金)は、職員の人権と環境保護の両方の観点から、養殖業を持続可能な産業として確立するための組織として、ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)を2010年にオランダのIDH(持続可能な貿易を推進する団体)とともに立ち上げました。基準を満たした養殖サーモンには、ASCの認定シールが貼られ安全性も保障されます。

実はノルウェーの養殖基準は日本よりも厳しい

鮭は世界的にも需要があること、ノルウェーとチリの2カ国だけで養殖鮭の約6割を生産していたことから、環境を始め社会的にも深刻な影響があると認識されていました。そのため真っ先にASCが着目した養殖魚のひとつが鮭でした。そして初のASCマークを取得したのも、日本で販売されているノルウェーのアトランティックサーモンだったのです。

ノルウェーのアトランティックサーモンの養殖基準は、日本の養殖基準よりも厳しいのが現実です。遺伝子組み換えの餌を与えることは禁じられており、周辺環境への配慮などさまざまな基準が定められ、国から基準を満たしていることが認められて、初めて許可免許を交付され養殖を始められます。また衛生面で槍玉に挙げられたフナムシは、元々海岸にあふれかえっている、海のありふれた生き物のひとつです。

餌に着色料が、というのも、元々鮭は白身の魚であるため、アスタキサンチンを食べないと赤くなりません。野生の鮭は餌であるオキアミからアスタキサンチンを摂取し、身に溜め込むことで赤くなります。抗生物質も病気が蔓延すればまだしも、普段から与えるにはコスト高で割に合わないのは、病院で治療したときに抗生物質を処方されたときの値段を考えてみれば、容易に想像できることです。

養殖アトランティックサーモンは安全性に問題ない

東京都健康安全研究センターが、2005年の研究年報で輸入鮭に含まれるダイオキシン量を調査した結果を見ると、各産地ごとのダイオキシン濃度は高い順に、ノルウエー産・カナダ産・米国産(天然)・ニュージーランド産・チリ産となっています。ですが一番高いノルウェー産の鮭と、東京湾で取れたスズキのダイオキシン含有量がほとんど同じで、4pgTEQ/Kg/日以下なら問題にならない量であることはWHOでも認めています。

人は不安に思っていることを指摘された場合、きちんと調べなおして確認せずに鵜呑みにしやすい傾向が強いです。養殖鮭が危険であれば、それこそ養殖魚は同じようなノウハウで育てられているわけですから、全ての魚が危険ということになります。畜産ですら同様です。食品の危険性や安全性をテーマにした記事は、きちんと情報源も確認して正しく認識する必要があるのです。

日本で食べるならアトランティックサーモンは安全

危険と騒がれたこともあるアトランティックサーモンですが、生鮮食品は輸入の際に必ず検疫を通すことになっています。この検疫検査があるからこそ、狂牛病が流行したときにも危険部位付きの肉が事前に見つかり、ことあるごとにニュースになったのです。日本国内に輸入されたアトランティックサーモンを食べるなら、安全性は心配することではありません。

アトランティックサーモンにも寄生虫アニサキスがいる?

通常アトランティックサーモンを輸入するときは、完全冷凍させた状態で輸入します。ですが輸送技術の発達により、品質を落とすことなく生のまま空輸することもできるようになりました。こうなってくると心配なのは寄生虫です。アトランティックサーモンに寄生虫の心配はないのでしょうか?

アニサキスは危険な寄生虫

アニサキスといえば、寄生虫の中でもトップクラスの知名度を誇る、危険な寄生虫です。このアニサキスの最終宿主はクジラやイルカの仲間です。そしてノルウェーもこういったクジラの生息地のため、養殖のアトランティックサーモンといえど、浮遊している幼虫に寄生されてしまっている可能性はゼロではありません。

アニサキスは人には寄生できません。そのため通常は、一週間ほどで体外に排泄されると言われています。ですが11%ほどの確率で、「アニサキス症」と呼ばれる中毒症状を引き起こすことが知られています。時には命にも関わりかねないという、アニサキスによって引き起こされる症状とはどんなものなのでしょうか?

アニサキスによって引き起こされる症状

アニサキスは通常、人に寄生できないことは先に紹介したとおりです。ですが中には胃や腸に食いつき、外に出ようとするアニサキスもいます。そのため胃や腸が傷つけられて、激しい腹痛や嘔吐の他、ひどいときには胃腸を突き抜けられて、腹膜炎などの病気を引き起こすこともあります。他の食中毒との違いは、下痢が起こらないことです。

アニサキスは人の体内で生き続けることはできないため、放っておいてもいずれ死にます。ですが生きている間はずっと、アニサキスによって体内を傷つけられます。その痛みが尋常でないことは、多くの感染者の体験談が物語っているとおりです。またその痛みのひどさから、アナフィラキシーショックを引き起こし、ショック死しかねないほど危険な状況が続くことになります。

アニサキスは一度感染すると、2度目以降は症状が激しくなることがわかっています。そのため、最近ではサバアレルギーは実はアニサキスアレルギーではないかと言われるまでになっています。もし一度アニサキスで何らかの症状を経験したことがある人は、2度目がないよう細心の注意を払う必要があります。

アニサキスの予防法

アニサキスは調味料や薬味の殺菌・殺虫力では、料理で使う範囲内では効力不足であることが確認されています。アニサキスは酸に抵抗性があるので、酢で締めても同様です。そのため確実にアニサキスを殺すには、60℃で1分以上、70℃以上ならば瞬時に殺すことができます。また刺身で食べたいときにはー20℃で24時間冷凍するか、温度が不安な場合には48時間冷凍することで感染性を奪うことができます。

アトランティックサーモンは、通常は輸入段階で冷凍してあるので問題ありませんが、まれに冷凍せずに生のまま空輸してくるものがあります。アニサキスは魚の内臓に寄生しますが、宿主が死ぬと筋肉に移動することが確認されています。安全を期すのであれば、冷凍輸送されたアトランティックサーモンを選んだほうが確実です。

アニサキスに感染したときの対処方法

アニサキス症の怖いところは、胃潰瘍や虫垂炎といったほかの病気と症状が似ているために、誤診を受けやすい点です。そのため胃薬だけで様子見になることが多く、アニサキスが死ぬまで痛みに耐え続けることになることも多い病気です。誤診を避けるためには、食事で魚をどんな状態で食べたかを、きちんと医師に伝えることが重要です。

アニサキスには今のところ特効薬は見つかっていません。そのためアニサキスに感染した場合は、内視鏡を使って取り除くか、腸閉塞など重篤な状態になっているときには開腹手術になることもあります。アニサキスの感染が疑われるときには正露丸を飲んでおくと、正露丸に含まれる木クレオソートという成分にアニサキスの運動抑制効果があることがわかっているため、内視鏡手術の前処置薬としても有効として特許も取得されてます。

いずれにしても、アニサキスに感染した場合はとにかく病院に行って、きちんと診察を受けましょう。誤診を受けないように、食事の内容は詳細に伝えることを忘れてはいけません。先に正露丸を飲んでいくと、症状を抑えるだけでなく処置を早く行える可能性が高いので、いざというときには覚えておくと良いでしょう。

海外でアトランティックサーモンを食べるときの注意点

アトランティックサーモンは、北大西洋全域に元から住んでいる魚でもあります。現地に行って釣りを楽しむなどして入手したアトランティックサーモンは、必ず十分に加熱調理をしてから食べましょう。野生のアトランティックサーモンには、養殖と違って寄生虫がいるのが当たり前ということを、くれぐれも忘れないようにしましょう。

アトランティックサーモンは美味しい安全な魚

アトランティックサーモンは、回転寿司でも大人気なことでもわかるように、安いのにとても美味しい魚です。一時は安全性で騒がれましたが、きちんと管理された環境で育てられた安心して食べられる魚です。刺身でもムニエルでも美味しいアトランティックサーモンを、心行くまで楽しんでみてください。

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