大門素麺を徹底解説！美味しい食べ方・ゆで方や販売店も調査！

大門素麺とは、富山県砺波市（となみし）の大門地区に江戸時代から伝えられる、歴史ある素麺です。寒さの厳しい10月～3月にかけて製造されています。油を使わずに仕上げられる伝統的な製法によってもたらされるコシの強さと歯ざわりのよさ、小麦の風味が最大の特徴です。

今はすでに絶えてしまった、幻と呼ばれる「能登素麺」の流れを汲む貴重な素麺です。一般的な素麺のイメージを覆す独特の食感は、食通の間で高く評価されています。

また、1950年をピークに生産者が減少していること・冬季限定で生産されることから希少価値も高まっており、高級素麺としても有名です。北陸旅行のお土産としてはもちろん、贈答品としても喜ばれる一品です。この記事では、大門素麺の歴史や作り方、おすすめの食べ方、買えるお店や食べられるお店などについて徹底解説していきます。

大門素麺は、富山県砺波市の名産品として有名です。その発祥は江戸時代後期の1848年。大門に住んでいた薬売り・田守三石衛門が行商で訪れた能登の蛸島（石川県珠州市）の御用素麺作りを知り、人を介してその製法が継承されました。寒さの厳しい10月～3月の農閑期に農家の人々が行える、冬の副業として広まってきました。

大門素麺は昔ながらの「手延べ素麺」の製法が用いられます。非常に労力がかかる製法で、生産者の方はまだ日が昇る前の午前3時頃から作業を始めるほど。完成までに約35時間をかけて丁寧に作られます。

生地には選り抜かれた上質な小麦粉が用いられ、砺波市を流れる庄川の清流を使って何度も何度も丹念に練り込みます。ねじりながら引き伸ばす→熟成させるという工程を繰り返しながら、生地をだんだん細く長くしていきます。伸ばした後は、10日間かけて乾燥させると完成です。

大門素麺最大の特徴ともいえるのが、素麺とは思えないほど珍しい独特の形。その丸まげ状にまとまった形は、文金高島田などで有名な女性の髪型「島田髷」に似ていることから、大門素麺は「島田素麺」や「丸まげ素麺」ともいわれています。

長く伸ばした麺を切らずに出荷するため、半乾の状態で一つ一つ手作業で丸めて4分の1の長さにしてから和紙で包装します。また、かつて俵を使って出荷していた頃に、折れにくいようにするために丸めて出荷していたものの名残ともいわれています。丸まげ作業と呼ばれる包装の工程が終了したら、10日間かけて本乾燥してから出荷します。

大門素麺のパッケージには、生産者の氏名が記載されています。大門素麺が農家の副業として各世帯別に作られていたことに関係していると考えられます。たとえば同じ地方で作られたパスタでも販売会社が違えば味が異なるように、どの農家で（どの生産者が）作っているかによって大門素麺も違いが出るのです。

基本的な製造工程などは同じでも、生産者によって使っている小麦粉の種類が違います。また、生地を伸ばして半乾燥状態にさせ丸まげ作業に入るタイミングの見極めは、職人が直接麺を触ってその手触りで判断します。その日ごとの温度や湿度、あるいは乾燥させている環境によっても違いが出るでしょう。

ヒトの身体、特に手のひらには常在菌（じょうざいきん）と呼ばれる微生物が存在します。常在菌は衛生的に問題があるわけではなく、病原性のないものです。常在菌の種類は多種多様で、個人の習慣や生活環境、風土の影響などによって一人一人まったく違うといわれています。

手で握ったおむすびが美味しく感じるのは常在菌の影響があるといわれています。前述の通り、大門素麺も麺の乾燥具合の確認や丸まげ作業など、手作業で行う工程が多いです。大門素麺の味が生産者ごとに違う理由として、常在菌の影響があると考えられます。生産者別に購入し、食べ比べて違いを感じるのも大門素麺の楽しみ方のひとつです。
 

大門素麺は、他の素麺とは一線を画するコシの強さと歯ざわりの良さが人気です。その秘密は、製造過程の途中で麺を切ることなく伸ばしていくことにありました。麺を伸ばすときにはただ引っ張るだけでなく「太より→熟成→中より→熟成→細より→熟成」と何度も「縒り」をかけて伸ばしていきます。

縒りと熟成の繰り返しで麺の繊維がワイヤーのようになるため、コシが強く、調理後も伸びにくい麺が完成します。途中で切らずに何度も熟成させることでグルテンの構造が立体的になり元の長さの約1万倍にも引き伸ばされます。これによりモチモチした弾力とプリッとした歯ごたえ、ツルツルなめらかな口当たりのハーモニーを実現しています。

大門素麺は、その独特の形状から、ゆで方や食べ方にも少し注意が必要です。大門素麺の良さを最大限に生かすためにも、正しいゆで方を確認しておきましょう。

まずは、大きめの鍋にたっぷりのお湯を沸かします。水の量は麺の重量の10倍が基本で、麺100gにつき1Lが目安です。お湯をたっぷり用意するのは、麺を泳がせる余裕を作るためです。これは大門素麺に限ったことでは有りませんが、お湯の量が少ないと麺同士がくっついてしまいます。

ガス代や水道代を考えると、たくさんのお湯を沸かすのは少しもったいないような気がするかもしれません。しかしそこは大門素麺を美味しくいただくための必要経費と割り切って、たっぷりのお湯を沸かすようにしましょう。

通常の素麺をゆでる工程ともっとも違うのが、鍋に入れる前に半分に割ることです。すでに解説したように、大門素麺は麺を切らずに出荷するため、長い麺を4つに丸めて折りたたんでいます。

そのままゆでると異様に長い麺ができあがってしまい、麺が絡んだり食べづらかったり何かと不便です。大門素麺をゆでるときには、必ず真ん中から2つに割った後で鍋に入れるようにしましょう。

鍋に入れた後は、麺がくっつくのを防ぐために菜箸で軽く混ぜます。その後は自然な水流にまかせ、箸でかき回すのは避けてください。箸が麺に触れすぎると、麺の表面がこすれて食感が変化してしまいます。食感は、大門素麺の味わいを決める重要なポイント。大門素麺を美味しくいただくためには、箸で無理に泳がせないことが大切です。

麺を入れた後、再沸騰したら100ml（コップ1杯）程度の冷水を加えます。一般的に「差し水」や「びっくり水」といわれているものです。素麺をゆでるときに差し水をするのとしないのとではどちらが良いのかは諸説ありますが、大門素麺はパッケージ裏面で公式に「吹き上がったら冷水を加える」と明記されています。

そもそも差し水を入れるのは、吹きこぼれを防止するためと材料の表面をひきしめるためという2つの理由があります。麺をゆでると、糊化したデンプンがゆで汁の中に溶け出します。するとゆで汁の粘性が高くなり、沸騰するときに生じる水蒸気の泡が消えにくくなって吹きこぼれてしまいます。これを防止する方法のひとつが差し水です。

また、差し水でゆで汁の温度が下がることで、麺の表面と内部の温度差を少なくする効果もあります。大門素麺は一般的な素麺よりもやや太めなので、表面と内部で多少の温度差が生じる可能性があります。また、冷水を入れることで麺の表面がわずかに引き締められます。これにより大門素麺の特徴でもある「コシ」を感じやすくなるのです。

ゆで時間はおよそ3分ですが、厳密に計らなくても沸騰の状態を見て判断して構いません。差し水を入れた後、再び煮立ったらザルに空けて冷水でしっかりもみ洗いします。まずは麺を空けたザルの下にボウルを重ね、水を流しながらかき混ぜて麺を冷やします。最初のうちは熱いので、火傷しないように注意してください。

水の温度と麺の温度が同じくらいになったら、両手を使って麺同士を擦り合わせるようにゴシゴシもみ洗いしていきます。揉み込むと麺から泡が出てくるので、泡が出なくなるまでもみ洗いを続けてください。泡がでなくなったら、麺を冷水にさらします。

冷水にさらした後は、しっかりと水分を切りましょう。大門素麺はその製造方法から、比較的伸びにくい構造になっていますが、水分を含むと柔らかくなり食感が変わります。

調理方法や食べ方にもよりますが、つゆに付けるスタンダードな食べ方の場合には特に、つるんとした食感とのどごしが重要です。美味しい大門素麺を食べるためにも、しっかりと水切りすることが大切です。

ここからは、大門素麺のおすすめの食べ方を紹介します。スタンダードな食べ方から変わり種の食べ方、地元に長く伝わる食べ方、生産者の間で定番の食べ方など、さまざまな食べ方ができるのも大門素麺の魅力。気になる食べ方があったら、ぜひ試してみてください。

大門素麺を初めて食べる人は、まずはスタンダードにつゆに付けて食べるのがおすすめです。大門素麺独特の歯ざわりの良さとのどごし、モチモチプリプリの食感を楽しめます。シンプルでありながら、厳選された小麦の香りをもっともダイレクトに感じられる食べ方です。

また、JAとなみ野農業協同組合から「大門素麺めんつゆ」という専用のめんつゆも販売されています。気になる方は専用めんつゆと合わせて食べるのもおすすめです。

寒い時期は、大門素麺をにゅうめんでいただくのもおすすめです。にゅうめんとは、温かいつゆで食べる素麺のこと。冷やして食べる際の通常のゆで時間よりも、30秒ほど短めにゆで上げると食感が良くなるのでおすすめです。にゅうめんの味付けやバリエーションはさまざまなので、好みの具材と合わせて食べるとよいでしょう。

たとえばネギやきのこと好みの野菜でヘルシーに仕上げる素朴なにゅうめんは定番です。和風だしの風味をあっさりと味わえるので、夜食にもおすすめです。少しボリュームを出したいときには、鶏もも肉を入れるとよいでしょう。鶏から出る旨味でつゆの味に深みも出て、満足感が高まります。

玉ねぎと溶き卵で作る「かきたまにゅうめん」なら、シンプルでサッと作れるので、疲れているときや食欲のないときにもぴったりです。他にも、いつものみそ汁にすりごまとにゅうめんを足した「みそ汁にゅうめん」や、豚肉と大根おろしで作る「みぞれ煮風にゅうめん」など、アイデア次第で無限の楽しみ方ができるのがにゅうめんの魅力です。

そのほか、大門素麺の生産者の間で定番の「釜揚げうどん風にゅうめん」も手軽に作れておすすめです。一般的なにゅうめんのようにつゆに具材を入れて麺にかけるのではなく、ゆで上げた後水でしめずに温かいままつゆに付けていただきます。他の素麺と比べて麺が太く伸びにくい、大門素麺ならではの食べ方をぜひ試してみてください。

大門素麺は縒りと熟成の繰り返しによって強いコシがあるので、翌日でも麺が伸びにくいという特徴があります。その特性を生かした食べ方として、大門素麺が作られている砺波市大門地区では、素麺となすを煮浸しにするという慣習があります。

半分に切ったなすに斜めに切れ目を入れ、だし・酒・砂糖・醤油で柔らかくなるまで煮付けます。いったんなすを鍋から出したら大門素麺を入れて1分程度煮込み、冷蔵庫で一晩一緒に寝かせます。翌日、すりおろしたしょうがと一緒に食べれば立派なおかずの一品に。

基本的な作り方は上記のとおりですが、みそを入れたり甘辛く煮たりなど家庭ごとに十人十色。好みの味付けで試してみてください。なすに豊富に含まれているカリウムには身体の熱を逃がすはたらきがあり、夏バテ解消にはピッタリの食材です。夏バテで食欲がないときにも箸が進むおすすめの食べ方です。

大門素麺は、洋風の味付けにもよく合います。特に、トマトとオリーブオイルを合わせる食べ方はリコピンの吸収を助ける効果もあるのでおすすめです。リコピンの抗酸化作用で生活習慣病の原因となる活性酸素を取り除き、動脈硬化・心筋梗塞などの疾患を予防できるという研究も発表されたほどです。

トマトは具材としてもソースとしてもたっぷり使うのがおすすめのアレンジ。ソースを作るときは、以下の食材をミキサーにかけると美味しく仕上がります。

• トマト120g
• オリーブオイル
• 塩コショウ
• にんにく
• 醤油
• バルサミコ酢

ここからは、大門素麺を買える販売店について紹介します。富山を訪れた際にはぜひチェックして、大門素麺を手に入れましょう。

富山空港ターミナル内の土産物店「まいどは屋」では、大門素麺を中心とした富山県の特産品を購入できます。2,000円以上購入すると、ターミナルビル前の有料駐車場を使っても1時間無料サービスがあるのが嬉しいポイント。

大門素麺はもちろん「氷見うどん」「白えび素麺セット」「麺家いろは 富山ブラックらーめん＆白エビらーめん 」セットなど富山のご当地麺が揃っています。富山観光の帰りにはぜひ立ち寄って、ご当地麺の食べ比べをしてみては。

大門素麺発祥の地・砺波市にある道の駅「となみ野」でも大門素麺を購入できます。大門素麺以外にも、JAとなみ野管内で朝採りした新鮮な野菜、お米、切り花や各種特産品が揃っています。大型の道の駅で、品揃えが豊富なので人気のスポットです。また、併設されているレストランでも大門素麺を食べられるのでおすすめです。

地元の人も以外と知らないのが、地域住民向けのスーパーマーケットでの取り扱いです。店によっては稀にセールをしているので、高級品である大門素麺がリーズナブルに手に入るチャンスです。

大門素麺はオンラインでも購入できます。東京や大阪など富山から離れた場所に住んでいても、自宅で手軽に大門素麺を味わえるので便利です。なかなか富山まで足を運べないという人は、オンラインを活用するとよいでしょう。

遠くて富山まで行けないという場合には、JAとなみ野が販売しているものをネット通販で購入することも可能です。北陸のご当地グルメお取り寄せサイト「百選横丁」で贈答用の大門素麺を購入できます。

Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなどの大手通販サイトでも大門素麺は購入できます。各ポータルサイトの特典やポイント、割引などを活用したい場合にはそちらから探して購入するとお得です。

ここまでは、家庭で食べる麺を購入できる場所を紹介してきましたが、ここからは大門素麺を食べられるレストランを紹介します。すべて富山県内のお店です。観光の際にはぜひ立ち寄ってみてください。

「めん食堂　川なべ」は、大正10年に創業された地元の有名店です。砺波の幹線道路である国道156線沿いに店舗を構えています。大門素麺の他にも、砺波のご当地グルメとして知られる「塩海老天丼」がいつでも食べられる貴重なお店として人気が高いです。
 

「農家レストラン大門」は、次の項目で紹介する「大門素麺資料館」のすぐそばにあるレストランです。築120年の伝統家屋「アズマダチ」という古民家を改装されて作られました。料理は輪島塗の器で出され、非常に雰囲気のあるお店です。大門素麺とともに、地元の野菜を使った伝承料理を楽しめます。
 

「砺波そだち」は、JAライフ富山が直営しているレストランです。持ち帰り用の麺が購入できる「道の駅となみ」に併設されており、道の駅と細い道を挟んだ向かい側に店を構えています。大門素麺の他にも、富山県産・砺波産の食材を使った料理が提供されている地産地食のお店です。
 

大門素麺に興味が湧いてきた、歴史を知りたいという人には、2018年にオープンした「大門素麺資料館」がおすすめ。廃寺を改修して、地元の自治振興会によって建てられました。なんと入場無料です。館内には当時の写真や新聞記事の他に、素麺作りの過程がよくわかるジオラマなどが設置されています。

前の項目で紹介した「農家レストラン大門」の向かいにあるので、資料館で学んだ後に大門素麺を食べれば、歴史に思いを馳せながら大門素麺をいただけます。なお係員は常駐していないので、見学希望の場合には農家レストラン大門のスタッフに声をかけてください。

大門素麺は、一般的な素麺とは一線を画するプリップリの歯ごたえとツルツルののどごしで人気のご当地グルメです。その秘密は、江戸時代から続く製法を受け継いできた生産者のたゆまぬ努力にありました。

富山を訪れた際に購入できるのはもちろん、大門素麺は通販サイトでも取り寄せができます。化粧箱に入っていることから、お礼返しなどのちょっとしたギフトにも最適です。ぜひ一度、富山名物の大門素麺を食べてみてください。